臨床雑誌内科 122巻3号 (2018年9月)

特集 もっとうまくいく! 病診連携の「伝え方」―わかりやすく伝えるための診療情報提供書作成のコツ

第Ⅰ章 困った事例と,書き方のコツ A.記載がなくて困った事例

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 診療情報提供書の傷病名に「末梢性神経障害性疼痛」,「身体表現性障害の疑い」と記載されており,これらの病名は,しばしば神経内科で診断する疾患である.基本的に痛みを客観的に捉える検査がないため,痛みを訴える患者さんの診断は難しく,一般内科医の先生ではしばしば診断に難渋する.そのため,痛みを訴える患者が神経内科によく紹介されてくる.痛みはどこからきているのか? 具体的には,筋・末梢神経・脊髄・脳などのうち,どこの障害からきているのか? ストレスやうつなどの心因性の要素により,身体表現性障害として,痛みを訴えている可能性はないのか? 器質的な障害に心因性要素が加わり,病態が複雑になっていないか? など,その診断を担うことができるのは神経内科医である1)

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 事例は後期高齢男性で,前立腺特異抗体(prostate-specific antigen:PSA)高値のため他院泌尿器科で前立腺の生検をすることになった.術前の血糖管理を求められインスリン導入(おそらく強化療法)を試みようとしたが,患者さんの理解度が悪く断念.地元で腰を据えてインスリン導入してほしいという趣旨の紹介状である.当院は糖尿病が専門で,紹介元の医師とも面識があり,期待して紹介してもらったことはむしろ光栄である.しかし,インスリンの導入には種々の判断材料が必要であるので,そのための紹介状としては情報不足で不親切な内容である.

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 本症例は糖尿病を専門としない開業医の先生からご紹介いただいた.HbA1cが高値のため紹介されたことはわかったものの,病歴や家族歴の記載がなく,目的も治療内容の見直しなのか,合併症の精査なのか明確ではなかった.また,当科受診後のフォローについても判断に迷った.

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 感冒様症状,腹痛,外傷そのほかの症状にてクリニックなどを受診し,血液検査で偶然高血糖を認め,糖尿病疑い,もしくは糖尿病の精査加療目的で紹介を受ける場合がある.また,他疾患でかかりつけの診療所で徐々に血糖が上昇し,専門医受診が望ましいと判断され紹介されることもあるが,事例のような診療情報提供書では直近の検査結果のみが記載されており,過去の検査結果がわからない.

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 26歳の女性が,上に示す診療情報提供書を持参し,当科を受診した.

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 この診療情報提供書には2型糖尿病の診断とインスリンによる治療の経過は書かれている.しかし,注射しているインスリン総量が247単位もあるのに低血糖に関する記載がまったくないことと,診断名に肥満症と記載されているのに,体重の記載がまったくないのが不思議である.低血糖がどのくらいの頻度で起こり,その対応はどうしていたのか,また,いつから肥満であるのか,インスリン治療前の体重と注射後の体重の推移の記載が必要である.また,食事療法・運動療法に関する記載は必須であるがまったく記載がない.それゆえ,これらに関しては患者さんに直接聴取せざるをえなかった.

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 肺がんの確定診断は病理診断によってなされるため,診療所で確定診断にいたることはまずないと思われる.以下は,病院で病理診断などを経て原発性肺がんと確定診断がついた後に,患者の希望などで他病院に紹介する必要がでてきた場合を想定し,概説する.

8.臨床経過がわからない! 八田 告
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 腎臓内科への紹介の大半は,検尿異常か腎機能異常である.電解質異常も少数ながら紹介されるが,圧倒的に前者が多い.2006年ごろから本邦で慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)の概念が啓発され,健康診断でもCr軽度高値,eGFR低下例はCKDとして腎臓内科に紹介されることが多くなった.参考までに日本腎臓学会が推奨する専門医への最新の紹介基準を図1に示す.

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 発熱を主訴に前医を受診した80歳の女性が,診療情報提供書を持参した.

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 健診により肝機能障害を指摘され,C型肝炎治療が可能な医療機関へ紹介された事例である.紹介元は健診を実施した医療機関であり,過去にC型肝炎治療を行ったり,日常診療したりしていたいわゆる「かかりつけ医」ではない.

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 本症例は,蛋白尿および腎機能障害で当科に紹介された事例である.現在本邦においては超高齢化社会に突入し,生活習慣病に伴う慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)患者が増加してきており,今後ますます「病診連携」の必要性が高まってきている.事実,本症例のように,腎機能障害,あるいは尿蛋白精査のため紹介されるケースも増加してきている.しかしながら,今回の事例のように併存疾患の経過や治療内容の記載がない場合も少なくない.本稿ではCKD患者の診療情報提供書作成の際の「コツ」について概説する.

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 施設入所中の88歳女性が誤嚥性肺炎を疑われ,診療情報提供書を持参し紹介となった.

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 検診での上部消化管内視鏡検査にて発見された早期胃がん(0’-Ⅱa)疑いで内視鏡治療(内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopic submucosal dissection:ESD)目的に紹介された症例である.診療情報提供書には,ESD目的の紹介であるものの,抗血栓薬投薬の理由,抗血栓薬休薬の可能性,休薬に伴うリスクについての記載がない.また,病変からの生検による診断を行ったかどうかの記載がない.おそらく,検診での検査であることから抗血栓薬の中止はなく,生検は行わなかったことが想定される.

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 虚血性心疾患に対する経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention:PCI)は本邦で広く行われており,循環器内科医のみならずプライマリケア医もPCIの既往をもつ症例を診療する機会は増えてきている.プライマリケア医がPCI後の患者診療において虚血性心疾患の再発や心不全を疑う症状を認めた際は,PCIを行った医療機関に紹介することが一般的だが,患者さんの希望や転居など,急性期治療の情報をもたない医療機関へ紹介することも少なくない.

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 85歳の男性が冒頭の紹介状を持参し来院された.

第Ⅰ章 困った事例と,書き方のコツ B.対応に苦慮する事例

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 症例1は,下部消化管の腫瘍性病変に対する治療目的での診療情報提供書である.本診療情報提供書の問題点は大きく2点ある.

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 発熱を主訴に前医を受診した70歳の女性が,診療情報提供書を持参した.

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 咳嗽の原因として肺結核症の疑いがあるとわかった時点で,この症例は医学的に診療がうまくできている.なぜならば結核症で一番難しいのは,結核症を鑑別に入れることだからだ.疑うことができれば,その先の診断や治療は十分に確立している.

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 本邦の認知症患者数は500万人を超え,今後も増加が予想されることから,認知症患者の診療は日本認知症学会や日本老年精神医学会の認定専門医だけでは到底及ばない.国としても認知症サポート医などの制度を設けているが,一般臨床医の認知症への対応力を向上させることが急務である.

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 冒頭のようなケースはかなり多い.さまざまな反応をされる患者さんがいる.なかにはがんが確定したものとして不安や悲しみを隠せずに受診される方も多い.腫瘍マーカーにもさまざまあるが,感度特異度は低く,早期発見が目的となる人間ドック・がん検診に用いられるものに有用なものはほぼないといってよいが,まだ検査の整備などが十分に間に合っておらず,次々と内科初診外来などに紹介されるのが現状である.

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 HIV感染症は厚生労働省の発表によると年間1,500人近い新規感染者がみられている.治療は複数の抗ウイルス薬によるanti-retroviral therapy(ART)を行い,各都道府県にはHIV拠点病院が設置されている.

第Ⅰ章 困った事例と,書き方のコツ C.コラム

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 専門外来への紹介についての総論とのテーマだが,大学病院と地域の基幹病院で認知症専門外来を担当している立場から述べさせていただきたい.

第Ⅱ章 <診療科別>コンサルトのポイント A.総合診療科へコンサルト

1.急な発熱 上原 由紀
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 本症例では,紹介元のさらに前に受診した医療機関で処方されたクラリスロマイシンに対するアレルギーとして皮疹や肝障害が生じている可能性を考え,またクラリスロマイシンを中止しても元の疾患(おそらくウイルス性上気道炎と推察される)に悪影響を与えないことを考慮のうえ,これを中止して経過をみることとなった.紹介先における血液検査では,紹介元で実施された3日前の結果と比較してASTとALTのわずかな上昇を認めたが,クラリスロマイシン中止後1週間後に再診したところ,皮疹は軽度の色素沈着を残すのみでほぼ消失,ASTやALTも改善に向かっていた.

2.不明熱(精査) 島田 和之
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 不明熱は,古典的には3日間の入院精査あるいは3回以上の外来受診で原因が同定されない3週間を超える38.3°C以上の発熱と定義される1,2).感染症,悪性腫瘍,膠原病が3大不明熱疾患であるが,近年第4の不明熱疾患として自己炎症性疾患が注目されている3)

3.体重減少 鈴木 清澄
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 本症例は,6ヵ月間で5%以上の体重減少を認め,「食欲不振を伴う意図しない体重減少」と判断できる.随伴症状として強い全身倦怠感を認め,身体所見では,舌,手指を中心に色素沈着を認めた.紹介先の血液検査では,電解質異常,副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hormone:ACTH)高値,コルチゾール低値を認め,全身CTでは,石灰化を伴う両側の副腎腫大を認めた.迅速ACTH負荷試験を施行し,最終的に結核性Addison病と診断した.抗結核薬およびヒドロコルチゾンの内服によって症状の改善を認めた.

4.突然の激しい頭痛 坂本 壮
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 本症例では,紹介元受診時に激しい頭痛があり,その段階でくも膜下出血が疑われ当院へ紹介受診となった.頭痛を訴える患者さんで何といっても見逃したくない疾患がくも膜下出血であり,一般的には「人生最大の頭痛 “the worst headache of my life”」と表現される1).頭部CTが診断のゴールドスタンダードであるが,クリニックで撮影できる施設はまれであり,病歴や身体所見,バイタルサインから評価しなければならないのが現状である.そのため,くも膜下出血らしい病歴,身体所見,バイタルサインを把握し,否定できない状況であれば速やかに精査可能な施設への紹介が必要である.

5.繰り返す頭痛 髙橋 祐二
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 繰り返す頭痛を呈する疾患は非常に多岐にわたるが,日常診療で頻繁に遭遇するのは一次性頭痛の代表である片頭痛と緊張型頭痛である1).これらに比較すると頻度が低いが,群発頭痛そのほかの三叉神経・自律神経性頭痛も念頭に置かなくてはならない.適切な治療・管理を行うためにはこれらの頭痛病型の鑑別が必須である2)

6.リンパ節腫脹 伊藤 勇太 , 丸山 大
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 リンパ節腫脹の原因は多岐にわたり,日常臨床においても高頻度に遭遇する症候の一つである.一般的には,触診上1.0cm以上のリンパ節をリンパ節腫脹と定義する1).リンパ節腫脹はほとんどが感染症に伴う反応性腫脹であり経過とともに改善を得ることが多い.病態としては,感染症のほかに自己免疫性疾患やCastleman病,サルコイドーシスなどの炎症性疾患に附随する反応性リンパ節腫脹と,固形がんなどの上皮系悪性腫瘍のリンパ節転移や悪性リンパ腫などの造血器悪性腫瘍による腫瘍性リンパ節腫脹に大きく分類することができる.鑑別診断の手掛かりとして患者さんの年齢,リンパ節腫脹が局所的なものか全身的なものか,臨床経過,咽頭痛などのリンパ節腫脹に関連すると思われる臨床症状や体重減少や盗汗,発熱などの附随症状があるかどうかを念頭に置いて診療にあたる.

7.咳嗽・喀痰 北村 英也
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 本症例は,既存の慢性気道疾患の感染増悪を考え,来院時に再度喀痰検査を施行し,起炎菌の同定を行った.来院前にすでに14日間の抗菌薬加療が施行されおり,採取された喀痰への抗生剤の影響は否定できなかったが,グラム染色で緑膿菌と思われる細菌の貪食像が確認された.紹介元における血液検査と比較して,さらに白血数増加とCRP上昇を認めたために,抗緑膿菌活性がある抗菌薬を選択し,入院での抗菌薬加療を開始した.翌日紹介元の喀痰培養検査で緑膿菌が同定された報告を受け,加療を継続した.

8.胸 痛 水野 篤 , 齊藤 輝
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 本症例は胸痛でかかりつけ医を受診して,総合診療科に紹介となっている.胸痛というと,後述する虚血性心疾患などがまず否定すべき疾患であるためすぐ循環器内科に紹介することが多いと考えられる.循環器疾患,とくに虚血性心疾患の除外は必要であるが,本症例のような若年女性における胸痛の鑑別疾患は循環器疾患に限らず幅広く考える必要性がある.実際には症状の増悪なく,クリニック受診から1週間後に当院受診となった.

9.呼吸困難 佐藤 智則 , 横山 俊樹
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 本症例は感染を契機とした呼吸困難の増悪から慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)増悪が疑われ,紹介となった患者さんである.主訴は呼吸困難であるが,もともと慢性的な症状があった症例が,今回の感染を契機に急性増悪をきたしたという経過であった.

10.腹 痛 石井 孝政 , 瓜田 純久
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 本症例では,主訴である右上腹部痛の発症から経過,初診時の診断と対応,そして投与薬剤とその効果,さらに血液検査の結果が記載され,比較的情報量が多い診療情報提供書である.腹痛が主訴であるにもかかわらず,便通異常がなく,発熱もないことなど,陰性症状も記載されている.加えて,婦人科関連の情報も簡潔に記載されている.また,腹部超音波検査も実施されており,限られた時間で,多くの患者さんの診療にあたっている熱心な先生であることが行間から読み取れる.とくに既往歴に今回の腹痛と一見無関係にみえる1年前の右股関節痛が記載されている.整形外科での検査で原因が明らかでなかったこと,非ステロイド性抗炎症薬のみで治癒していたことから,反応性関節炎が示唆された.その原因として最も多いクラミジア感染による肝周囲炎を疑った.造影CT検査を行ったところ,造影早期の動脈相で肝周囲の被膜が濃染される像が認められ,Fitz-Hugh-Curtis症候群と診断.アジスロマイシンの内服治療で速やかに改善した.

11.腰 痛 西迫 尚
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 腰痛はcommonな主訴でありながら,苦手意識をもっている医師が多い.腰痛患者の多くは初診時に整形外科を受診することが多く,そのほかの診療科の医師が腰痛を主訴とする患者を診察する機会が限られているためであろう.明確な診断名のつかない非特異的腰痛が全体の85%を占めており1),診療経験が少ない医師にとっては,診断名を求めてやってくる患者に明確な回答をしにくいことも腰痛の診療に対して及び腰にさせる一因になっている.しかし,総合診療医のほうがいわゆる筋骨格系疾患のエキスパートよりも,“鑑別診断” という意識をもって診察するため,(とくに筋骨格系由来でない場合には)的確な診断にいたる可能性が高いのではないかと考える.

12.健診異常 兵働 英也 , 安武 正弘
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 この症例は健康診断で貧血が指摘され,精査目的で紹介になったケースである.健康診断の項目には上部消化管造影検査や大腸がん検診の項目も含まれていたが,それらに特記すべき異常がなく,また正球性貧血であることも精査依頼の理由であった.

13.多彩な訴え 國松 淳和
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 「疑い病名→以後の診断・治療をお願いします」という紹介ではなく,本症例のような「よくわからないので診断についてよろしくお願いします」といった依頼を受けることは,総合病院の総合内科医としては非常に多い.事実上の「お手上げ」,すなわち診断・精査だけでなく以後の診療の継続を依頼されることも少なくない.診断がつかない,原因が不明といった様相は,医師だけの問題とならず,医師の戸惑いが患者や患者の家族にも憑依し,信頼関係が揺らぎ問題解決をさらに遠のかせる.

第Ⅱ章 <診療科別>コンサルトのポイント B.循環器科へコンサルト

1.急性心筋梗塞(疑い) 山本 慶
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 急性心筋梗塞とは冠動脈が閉塞し心筋壊死が起こる疾患で,冠動脈のプラーク破綻が原因で起こる.高血圧,脂質異常症,糖尿病,喫煙といった動脈硬化因子を複数有する患者の発症リスクは高い.多くの場合は強い胸痛を伴うが,背部痛,歯痛,心窩部痛など非典型的な症状を訴えたり,また糖尿病患者では無症状の場合もある.心筋梗塞は心電図のST変化によりST上昇型心筋梗塞(ST elevated myocardial infarction:STEMI)と非ST上昇型心筋梗塞(non-ST elevated myocardial infarction:NSTEMI)に分類される.とくにSTEMIは経時的に心筋壊死が進んでいるため,治療までの時間の短縮が重要である.発症から治療までの時間が長いと予後が悪くなるといわれており1),早期診断・治療が重要となってくる.診断は冠動脈造影で冠動脈病変が指摘されることで確定診断される.多くの場合はそのままカテーテル治療(経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention:PCI))となるが,病変・性状によっては薬物療法のみで経過観察したり冠動脈バイパス術となる場合もある.

2.心房細動(治療) 若林 靖史
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 心房細動患者の紹介を受ける場合,最も多いのはカテーテルアブレーションの適応についてである.したがって,その点について重点的に解説する.

3.慢性心不全(治療) 末永 祐哉
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 慢性心不全は,いわゆる見た目は「代償されている」心不全ということになるが,その代償は非常にきわどいバランスの上に成り立っており,ちょっとしたことで容易に非代償期に入る.そのためにもある程度代償されている時期にどのような治療を行うかが大切となってくるが,本症例のように緩徐に心不全症状が進行してきており,かつ初めての心不全症状の出現である場合,心エコーを含めた検査および薬物調整が必要となるケースが多く,循環器専門医へ紹介することが望ましいと考えられる.症状が日に日に進行する場合は1~2日以内に紹介,利尿薬で症状が落ち着いている場合でも1週間以内に一度循環器専門医を受診することが望ましいと考えられる.また,本症例のような陳旧性心筋梗塞の症例は過去に心不全の病歴がなくても心不全発症のハイリスクと考えられるので,定期のフォローアップにおいても一般的な心不全症状がないかを定期的にスクリーニングして,疑わしい場合は脳性ナトリウム利尿ペプチド(B-type natriuretic peptide:BNP)or NT-proBNPを測定することが望ましい.BNP<35pg/mL,NT-proBNP<125pg/mLでは心不全はそれほど疑わしくないが,そうでない場合は症状・身体所見との総合判断となる.

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 慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromoboembolic pulmonary hypertension:CTEPH)は厚労省指定難病の一つである.肺胞にて酸素と二酸化炭素のガス交換に携わる肺動脈内に,血栓が下肢静脈より反復して飛来して起こることが原因となることが多い.肺動脈内の血栓が自己線溶系あるいは抗凝固療法により溶解しない場合は,血管閉塞・線維化を通じて残りの肺血管床の肺動脈圧が上昇し,慢性的な肺高血圧に至る.

5.狭心症(疑い) 上原 良樹
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 複数の冠動脈危険因子を有する内科医院通院中の患者さんが胸部症状を訴え,狭心症疑いにて循環器専門病院へ紹介となった.

6.難治性高血圧(治療) 星出 聡
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 本症例では,別の医院で高血圧の治療を受けており,最近になり紹介元の医院へ転医され治療を継続していた.診察室血圧や家庭血圧での血圧コントロールが不良になり,ガイドラインで推奨されているCa拮抗薬,レニン・アンジオテンシン(RAA)系阻害薬,利尿薬の3剤を投与しても,なお血圧コントロールが不良となって紹介となった症例である.

第Ⅱ章 <診療科別>コンサルトのポイント C.消化器科へコンサルト

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 器質的疾患を有さないにもかかわらず,腹部症状を呈する機能性消化管疾患には,機能性ディスペプシア(functional dispepsia:FD),過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)などが含まれる.一つ一つの疾患にコンサルトのポイントはあるが,本稿ではFDを例に機能性消化管疾患のコンサルトの要点を解説する.

2.炎症性腸疾患 小林 拓
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 本症例では,紹介元でも疑われたように,当院に受診後速やかに内視鏡検査を行い,潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)の確定診断がなされ,5-アミノサリチル酸製剤単独で寛解導入が得られた.

3.急性肝不全 海老沼 浩利
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 急性肝不全(acute liver failure:ALF)とは,肝細胞の急速な破壊とそれに伴う機能低下によってそれまで正常と考えられていた肝臓が短期間に肝不全に至る疾患である.以前は,劇症肝炎といわれていたが,欧米に多いアセトアミノフェン中毒は肝炎の所見がなくても,肝不全の原因となりうるため,薬物中毒や血流障害による肝障害など,肝炎以外の原因によるものを併せて急性肝不全と定義されている.

4.急性膵炎 岩崎 栄典
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 本症例では,紹介元の医院へ急な腹痛で受診した患者さんの初期対応をするも改善に乏しく,救急要請,転送となった症例である.転送時にすでにクイックSOFA(意識障害,収縮血圧100以下,呼吸回数22回以上)3点で敗血症の診断であり,紹介搬送後に血液培養採取,各種採血を提出後に造影CTを施行し,胆石性膵炎の診断となった.胆管炎を合併した膵炎にてガイドラインに遵守して大量補液,抗菌薬の開始とともに24時間以内のERCP処置を施行して胆道ドレナージの留置を行った.集中治療室で2日間経過をみたが尿量も順調に保たれ,通常病床へ移動し,8日後に退院となった.

5.悪性腫瘍 酒井 元 , 船越 信介
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 本症例はかかりつけのクリニックに定期通院中の患者が,比較的急性の経過で出現した上腹部症状を主訴に同クリニックを受診し,精査する方針となった.この時点で,バイタルサインは異常なく,身体所見上,眼球結膜に貧血徴候を認めるものの,下血や血便など消化管出血を積極的に疑わせる所見を認めなかったことから,胃・十二指腸潰瘍,逆流性食道炎,胆石症,膵炎などをまず疑い,H2ブロッカーを処方のうえ,待機的に腹部超音波検査と上部消化管内視鏡検査を施行する方針となった.

6.総胆管結石 田中 麗奈 , 糸井 隆夫
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 本症例では心窩部痛精査にて総胆管結石がみつかった症例である.心窩部痛にて受診の際は一般的に胃炎疑いとされH2ブロッカーやPPIを処方されるケースが多い.しかしながら,心窩部痛の原因としては消化器疾患のみでも胃・十二指腸疾患のほか,胆石や総胆管結石,急性膵炎など多岐にわたる.

第Ⅱ章 <診療科別>コンサルトのポイント D.呼吸器科へコンサルト

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 「胸部異常陰影」として認識することができる病態には,きわめて多様な疾患が含まれる(表1)1).異常所見は,肺疾患による異常陰影とは限らず,胸膜,心血管系,消化管,骨軟部組織などに起因する病態も含まれることにも留意しなければならない.

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 本症例は,間質性肺炎が進行しているため高次医療機関に紹介された例である.間質性肺炎は原因不明の特発性に分類されるものが最も多く,それ以外には膠原病肺,薬剤性間質性肺炎,石綿肺を含むじん肺,過敏性肺炎,好酸球性肺炎などが含まれる1).治療の方針はそれぞれの間質性肺炎の病型ごとに異なるため,例外を除いて専門医の診察を受けておくことを推奨したい.

3.喘息(治療) 福家 聡 , 今野 哲
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 気管支喘息は「気道の慢性炎症を本態とし,臨床症状として変動性を持った気道狭窄(喘鳴,呼吸困難)や咳で特徴づけられる疾患」1)である.

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 慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)は,タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することにより中高年に発症する肺疾患である.呼吸機能検査で気流閉塞を示し,末梢気道病変と気腫性病変が関与し気流閉塞が起こる.臨床症状としては徐々に進行する労作時の呼吸困難や慢性の咳・痰を示すが,これらの症状に乏しいこともある.COPDは気管支喘息の合併が15~20%と多く,近年ではasthma and COPD overlap(ACO)という概念が提唱されており,その診療においては喘息との鑑別や合併の評価が重要である.COPDの治療では禁煙と吸入気管支拡張薬がその中心となるが,喘息の合併が考えられる場合,吸入ステロイドの併用が必要である.また,COPDは主に感染を契機として呼吸状態の悪化や病状の進行が起こるため,その増悪の管理も重要である.増悪時に低酸素血症を伴う場合には入院治療が必要であり,病状が進行した場合には在宅酸素療法や在宅人工呼吸療法による加療も必要となる.また,身体活動性の向上および維持が生命予後にもつながることから早期からの呼吸リハビリテーションも推奨されている.

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 提供された診療情報の内容からは本症例は急性経過の下気道感染症(とくに肺炎)をまず疑うものであるが,肝機能障害や山での活動歴などが鑑別疾患を広くさせるなかで慎重に診断アプローチを行わなければならない.

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 睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea sydrome:SAS)が疑われる患者を精査目的で紹介する場合の診療情報提供書の例とSASの治療中に他院に紹介する場合の診療情報提供書の2種類を提示した.

第Ⅱ章 <診療科別>コンサルトのポイント E.脳神経内科へコンサルト

1.歩行障害 土井 宏 , 田中 章景
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 歩行は神経系,骨格筋,骨・関節系さらには循環器・呼吸器系など全身のほとんどすべての臓器・組織に加え,認知機能や精神状態も関与する非常に複雑な活動である.したがって「歩行障害」の有病者は非常に多く,漠然と原因疾患を列挙すると,ありとあらゆる疾患が含まれてしまう.また,まったく別の複数の疾患(たとえば脳梗塞と腰部脊柱管狭窄症)が重なって歩行障害を呈している場合もある.実際,海外のコホート研究では60歳以上の約3分の1が何らかの歩行障害を有し,神経疾患による歩行障害(15%)が非神経疾患による歩行障害(約8%)よりやや多く,両者の合併例も約9%程度存在するとされている1).歩行には,まず外界からの情報,すなわち視覚情報,前庭神経からの平衡感覚情報,末梢神経を経由して得られる運動覚,関節位置覚などの固有感覚情報の獲得が必要である.次に,これらの情報を前頭葉皮質,錐体外路系,脳幹,小脳で統合処理し,歩行に必要な運動プログラムを出力する.そして,複雑に制御された出力情報が錐体路,末梢神経を経て骨格筋へと伝えられることで,安定した歩行が得られる.つまり,神経疾患による歩行障害はこれら一連の過程に関わるいずれかあるいは複数の部位の障害に基づくものである.歩行障害はそれ自体でADL・QOLの低下と直結する問題であり,とくに転倒・骨折などによって,寝たきり,合併症による死亡にもつながる重大な障害であるため,治療可能な疾患を見逃さないことが重要である.

2.Parkinson病 濱田 雅
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 Parkinson病は振戦,筋強剛,無動を主徴とし,黒質線条体ドパミン神経細胞が障害される神経変性疾患である.近年の高齢化に伴い本邦でも患者数は増大しており,クリニックを受診するケースも今後さらに増加すると考えられる.Parkinson病では,上述の運動症状(安静時振戦,筋強剛,無動)が主症状ではあり,これらの症状,具体的には手(足)のふるえ,動かしにくさ,歩行障害,あるいは何ともいえない違和感などを主訴に受診することがある.Parkinson病ではこれら運動症状の発症前に高率に便秘,気分障害(不安,抑うつ),レム睡眠行動異常を呈するため,歩行障害や手のふるえを主訴に患者さんが来院した場合,これらの前駆症状があるかを問診することが重要である.

3.記憶障害 森 友紀子 , 金野 竜太
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 記憶とは,新しい経験を記銘し,それを一定期間保持して,その後に再生(想起)する機能であり,認知機能の一つである.記憶障害は多くの認知症でみられる症状だが,とくにAlzheimer型認知症(以下AD),Lewy小体型認知症,血管性認知症において目立つ.記憶は言葉で表せて意識化できる陳述記憶,技術の記憶など言葉にできない非陳述記憶に分類され,陳述記憶はさらに出来事(エピソード)記憶と意味記憶に分けられる.出来事記憶の障害は,ADの最も初期に現れる徴候である.一般的な症状としては,「同じ質問や同じ話を何度も繰り返す」,「大切な約束を忘れている」,「コンロを消し忘れる」などがあげられる.ADでは,海馬と側頭葉内側部に最も早期に,かつ深刻な障害を受ける.ADで出来事記憶の障害が顕著なのは,海馬が個人の新たな体験を記憶することに直接関連する脳部位だからである.意味記憶は「対象物が何であるか」,「バナナの色」や「皇居に誰が住んでいるか」といった概念や事実に関する知識であり,特定の出来事記憶と関連しない.意味性認知症ではこの意味記憶が障害される.出来事記憶の障害がある患者でも非陳述記憶である手続き記憶(自転車乗りやスポーツのような技能としての記憶)は保たれるので,日常生活動作は行えていたりする.記憶障害のある患者が受診したときに,“どのような記憶障害があるのか” を正確にとらえることは,疾患を想定するうえで非常に重要である.また記憶障害は認知症以外にも,脳血管障害,てんかん,内科的疾患(ビタミン欠乏症,甲状腺機能低下症,神経梅毒,肝性脳症など),正常圧水頭症でも認めることがあり,薬剤の副作用,抑うつなどの精神状態も考慮すべき病態である.

4.てんかん 宇佐美 清英 , 松本 理器
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 てんかんとは,「てんかん性発作を引き起こす持続性素因を特徴とする脳の障害」であり,慢性の脳の病気で,大脳の神経細胞が過剰に興奮するために,脳の発作性の症状が反復性に起こる.発作は突然に起こり,普通とは異なる身体症状や意識,運動および感覚の変化などが生じる1).本症例はいわゆるけいれん発作とは異なるが,上記のてんかん発作の定義に当てはまると考えられる.

5.脳梗塞 崎山 快夫
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 近医の外来から救急要請され,午前10時30分に救命センター搬送となった72歳男性である.脳神経内科に診療要請があり,記載例のような紹介状と心電図を持参していた.持参していた心電図は心房細動であった.

6.正常圧水頭症 鮫島 直之
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 特発性正常圧水頭症(idiopathic normal pressure hydrocephalus:iNPH)は,診療ガイドラインが2004年発刊,2011年改訂と,わが国が高齢化社会に突入したことも相まって徐々に関心が高まっている.診療ガイドラインでは,概念を「先行疾患がなく,歩行障害を主体として認知障害,排尿障害をきたす,脳脊髄液吸収障害に起因した病態で,高齢者に多くみられ,緩徐に進行する.適切な髄液シャント術によって症状の改善を得る可能性がある」症候群としている.

第Ⅱ章 <診療科別>コンサルトのポイント F.腎臓内科へコンサルト

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 本症例では,健診で発見された若年女性の無症候性血尿と蛋白尿につき紹介となった.

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 浮腫とは組織間質内に過剰の体液が貯留した状態を指し,間質液の移動は毛細血管内圧と膠質浸透圧によって規定されている(Starlingの法則).患者本人や家族が気付きやすく,一般診療においてよくみられる症状である.出現部位によって全身性,局所性に区別される.全身性では顔面や下肢などに出現しやすい.また,圧痕性,非圧痕性でも区別される.これらの区別は浮腫の原因を考えていく際に有用である.浮腫の3大原因として心臓性,腎性,肝性があり,まずはこれらの検索を行っていくことになる.表1に発生機序に基づいた原因を示す1,2)

3.ネフローゼ症候群 石本 卓嗣
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 ネフローゼ症候群は,腎糸球体係蹄壁(毛細血管壁)の障害により大量の蛋白尿とこれに伴う低Alb血症や全身の浮腫をきたす腎疾患群である.主症状は低Alb血症に起因する圧痕性の浮腫で,発症早期は眼瞼など局所浮腫であるが,進行すると両側下腿などに広がり,胸腹水を伴う全身性の浮腫へと拡大する.また,血液凝固能が亢進し静脈血栓症が合併しやすい.高度の蛋白尿が長期間持続すると腎機能が慢性的に低下するが,とくに高度の尿蛋白量・低Alb症の症例では急性腎障害を呈する例もある.左右差のある下肢浮腫を認める場合には下肢深部静脈血栓症を疑う必要がある.

4.急性腎障害 藤垣 嘉秀
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 本症例は,当院に紹介受診時の検査で高Ca血症(補正Ca 12.1mg/dL)を認め急性腎障害(acute kidney injury:AKI)の原因の一つと考えられた.高Ca血症は活性型ビタミンD3製剤であるエルデカルシトール内服中に下痢を契機として脱水をきたしたためGFRの低下が起き,このため高Ca血症となり,高Ca血症によりさらにGFR低下を招く悪循環となったと考えられる.詳細には高Ca血症は,腎濃縮力の低下(腎性尿崩症)を惹起し多尿となり,さらに脱水を進行させ,腎血管の収縮も引き起こしGFR低下に関与する.また,脱水は代謝性アルカローシスを惹起し,ヘンレループ・遠位尿細管からCaの再吸収増加が起き,高Ca血症増悪の悪循環が形成される.この間にレニン・アンジオテンシン系阻害薬であるテルミサルタンと骨粗鬆症の腰痛に対し非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)であるロキソプロフェンナトリウム水和物を使用しており,いずれも糸球体内圧を低下させGFR低下を助長した可能性がある1)

5.慢性腎臓病 河原崎 宏雄
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 慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)は推定糸球体濾過量,蛋白尿の異常,腎臓形態の異常を3ヵ月以上継続して認めるときに診断される.そしてCKDの原疾患によらない腎障害進行の共通のメカニズム(final common pathway)が提唱されており,その対策・治療がCKD管理の主体となっている.

6.末期腎不全 小野 慶介 , 石橋 由孝
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 末期腎不全とはeGFRが15mL/分/1.73m2未満の慢性腎臓病で,腎代替療法(血液透析,腹膜透析,腎移植)が必要,もしくはその準備が必要となる状態のことである.eGFRが15mL/分/1.73m2未満の腎機能障害には,もともとクリニックでフォローアップされていた場合と,本症例のように突然受診する場合がある.前者の場合は専門医と連携をとっていることが望ましく,連携先の腎臓専門医に紹介を行う.後者の場合には,腎機能障害が急性のものか慢性のものか不明なので,可能な限り早めに腎臓専門医へ紹介すべきである.

第Ⅱ章 <診療科別>コンサルトのポイント G.血液内科へコンサルト

1.貧血(精査) 樋口 敬和
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 貧血のために血液内科にコンサルトするのは,① 貧血の原因の精査(治療)が必要な場合と,② 貧血に対する緊急の対応が必要な場合である.

2.血小板減少(精査) 宮川 義隆
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 血小板数が10万/μL以下に減少した状態を,血小板減少と定義する.血小板が減ると出血しやすくなるので,精査を要する.重度の場合,深部出血(脳,肺,消化管)により致命的になることがある.原因は多彩であり,急性かつ重篤な疾患が含まれるため,早めに専門医に紹介してもよい.

3.多血症(精査) 桐戸 敬太
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 多血症とは,ヘモグロビン値や赤血球数が上昇した状態を指す用語である.多血症の要因となる病態は,反応性(見かけ上),エリスロポエチン(EPO)上昇に伴うもの,そして赤血球の自律的な増殖(骨髄増殖性腫瘍)によるものに大別される.骨髄増殖性腫瘍としての多血症は,真性赤血球増加症(polycythemia vera:PV)以外にも慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia:CML)でも合併することがある.これらの疾患では,造血幹細胞に生じた遺伝子変異がその要因であり,前者ではJAK2V617F変異が,後者ではBCR-ABL融合遺伝子が関わっている.EPOが増加する病態としては,慢性的な低酸素血症に対する反応性の場合と,腎臓がんなどで腫瘍性にEPO産生が亢進している場合がある.

4.急性白血病(疑い) 大橋 一輝
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 急性白血病には骨髄性やリンパ性,混合性などのタイプがあり,また発症様式もde novo以外にも治療関連のもの,骨髄異形成症候群からの移行や慢性骨髄性白血病の急性転化などさまざまである.本稿ではhematologic emergencyの一つである急性前骨髄性白血病(acute promylocytic leukemia:APL)をとりあげた.

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 本症例で疑われる,慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia:CML)は,フィラデルフィア(Ph)染色体を伴う造血幹細胞レベルの異常による白血病である.Ph染色体は9番染色体と22番染色体の相互転座の結果生ずる染色体で,CMLの95%以上の症例に検出される.また,急性リンパ性白血病(acute lymphocytic leukemia:ALL)の15~30%(小児ALLでは約5%),急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)の1%未満の症例にも検出される.このPh染色体が転座によって形成される過程で9番染色体上のc-abl遺伝子はその上流側に切断を生じ,22番染色上のbcr遺伝子と融合し,bcr-abl型のキメラ遺伝子が形成され,BCR-ABL蛋白の恒常的なチロシンキナーゼ活性化によって造血細胞の異常な増殖をきたす.CMLは,慢性期(chronic phase:CP),移行期(accelerated phase:AP),急性転化期(blast crisis:BC)の3病期に分類され,本邦ではこの症例のように,他疾患フォローアップ中の採血や健康診断などを契機に,白血球の増加が認められるが自覚症状の乏しいCPにおいて多く診断される.CPでは,総白血球数の増加とともに,しばしば血小板数増加や好酸球,好塩基球の増加もみられる.身体所見では,脾腫のほか,しばしば肝腫大を呈する.自然経過では,CP(診断後約3~5年間),AP(約3~9ヵ月間)を経て,未分化な芽球が増加してAMLに類似するBCへと進展し,生命予後不良となる.よって,CPの時点から治療を開始し,AP/BCへと病期を進展させないことが重要となる.

6.骨髄腫(疑い) 竹迫 直樹
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 本症例は多発骨病変・腎機能障害・高Ca血症・貧血と多発性骨髄腫における臨床症状であるCRAB症状(CはCa(calcium)値の上昇,Rは腎臓(renal)の障害,Aは貧血(anemia),Bは骨(bone)の病変の意味)がすべてそろっており比較的容易に診断がついた症例である.当院においてM蛋白の検索および骨髄穿刺を行い,多発性骨髄腫(国際病期分類Ⅲ期,Bence Jones λ型)と診断し,化学療法を行い最終的に貧血の改善・腎機能の改善をみた.加えて添付されていたCT画像により整形外科的にバルーンカイフォプラスティ(balloon kyphoplasty:BKP)の適応があると判断され第12胸椎・第1・4腰椎にBKP治療を行い腰痛はすぐに改善した.

第Ⅱ章 <診療科別>コンサルトのポイント H.内分泌・代謝科へコンサルト

1.1型糖尿病(初発後) 高池 浩子
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 1型糖尿病は膵β細胞の破壊性病変によりインスリンの欠乏が生じて発症する糖尿病であり,発症後は一生にわたりインスリン療法を継続する.そのため各ライフステージに応じて小児科や産婦人科,また転居などの場合は糖尿病専門医療機関同士での連携が必要である.また糖尿病の治療として重要なのは,ただ単に血糖コントロールをするだけではなく,合併症や併発症の発症進展を抑え,患者さんのQOLを高く保つことである.したがって眼科,腎臓内科,循環器内科,消化器内科,神経内科,精神科,歯科など,多くの診療科と密接な連携が必要となる.このように代表的な慢性疾患である1型糖尿病をめぐり,診療情報提供書を記載すべきシチュエーションは数多く想定されるが,本稿では初発時の診療情報提供書について的を絞り概説する.

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 本症例は,2型糖尿病の治療中断により糖尿病ケトアシドーシスにいたった症例である.罹病期間は14年であり,もともと治療アドヒアランスは不良であった.前医での血糖コントロールの詳細は不明だが,罹病期間に相当した糖尿病慢性合併症を認めていること,SU薬を含めた4種類の抗糖尿病薬が投与されていることから,血糖コントロールは不良であったと推察される.このように,血糖コントロール不良の治療中断例やインスリン療法の中断例で来院時に著明な高血糖を認めた場合,常に糖尿病ケトアシドーシスを念頭に置いて診察や精査を進めていく必要があり,疑われる場合はすみやかに専門施設施設への紹介や搬送を考慮する.

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 新規に治療を開始する患者さんで,治療方針決定のために初診時に確認すべきポイントは,主に以下の3点である.

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 Cushing症候群はコルチゾールの分泌過剰により,多彩な徴候,症状をきたす症候群である.病型は,ACTH依存性とACTH非依存性に大別される.前者の代表として,下垂体ACTH産生腺腫(Cushing病)と異所性ACTH産生腫瘍(肺小細胞がんなど)がある.後者の代表は,コルチゾール産生副腎皮質腺腫(狭義のCushing症候群)である.

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 原発性アルドステロン症(primary aldosteronism:PA)は,高血圧の5~10%の原因となり,その約半数が手術で高血圧の治癒や改善が期待できる二次性高血圧のなかで最も頻度の高い疾患である.高血圧診療でアルドステロンとレニン同時測定が普及したことにより,PAが疑われる症例が増えている.PAが疑われるが精密検査や手術治療を希望されない患者さんはミネラロコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)による内科治療を行う.精密検査や手術を希望する患者さんは,PAの診断確認の検査や手術適応の有無と術式を決定するための副腎静脈採血(adrenal venous sampling:AVS)を専門施設へ依頼することになる.

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 血中Ca濃度は,腸管からのCa吸収,腎尿細管でのCa再吸収,および骨中のCaとの平衡により維持されている.またCa調節ホルモンである副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone:PTH)と1,25-水酸化ビタミン[1,25(OH)2D]は,これらの臓器に作用することにより,血中Ca濃度を上昇させるように機能している.すなわち,PTHは主に骨吸収と腎遠位尿細管Ca再吸収を,1,25(OH)2Dは腸管Ca吸収と腎遠位尿細管Ca再吸収を亢進させる.したがってPTHや1,25(OH)2Dの作用障害,あるいは骨や軟部組織へのCaの沈着により低Ca血症が惹起される(表1).

7.無月経,更年期障害 宮尾 益理子
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 初経前,妊娠,産褥,授乳期,閉経以降の生理的無月経と,病的無月経に分類される.病的無月経には,通常平均12歳で始まる初経が15歳を過ぎても発来をしない原発性無月経と,これまであった月経が3ヵ月以上停止した続発性無月経がある.原発性無月経では,子宮や卵巣の先天的異常を伴う場合が多く,婦人科への紹介が必要となる.一方,続発性無月経では,障害部位(原因)別分類を試みる(表1).全身性疾患や心因性(ストレスなど)や薬剤性,体重減少などに対する初期のアプローチで再開しない場合,腫瘍を含め,より専門的な治療が必要な場合には,婦人科や内科(内分泌・代謝科),脳外科などへの紹介が必要となる.

第Ⅱ章 <診療科別>コンサルトのポイント I.アレルギー・リウマチ科へコンサルト

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 薬剤アレルギーは,被疑薬が体内に入ることでアレルギー反応を起こす疾患で,アナフィラキシーのほか,薬疹,薬剤性の肝障害や肺炎なども起こしうる.本稿では,I型の即時反応として重篤化しやすいアナフィラキシーを中心に概説する.紹介例にあるのは典型的なペニシリンアレルギーによるアナフィラキシーである.アナフィラキシーは,薬剤投与によりI型アレルギー反応が惹起され,皮膚の瘙痒感や発赤(皮膚症状),喉頭の絞扼感,喘鳴(呼吸器症状),立ちくらみや血圧低下(循環器症状),腹痛発作や下痢(腹部症状)といった全身症状が急激に出現する.被疑薬の中止と回避で予防は可能であるが,抗菌薬や非ステロイド系消炎鎮痛薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)など,汎用されやすい薬剤や投与機会が多い薬剤,投薬しないことの不利益が大きい薬剤については,適切に回避するための調査を必要とする.

2.食物アレルギー(疑い) 南 崇史
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 食物アレルギーは,食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象と定義され1),皮膚,粘膜,呼吸器,消化器などのさまざまな臓器に症状を認める.ときにはアナフィラキシー(ショック)のような生命に関わる重篤な症状も生じることがあり,食物アレルギーには正確な診断・対策が必要とされる.

3.関節リウマチ(疑い) 六反田 諒
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 関節リウマチは全身の関節滑膜に生じる自己免疫性滑膜炎であり,骨・軟骨の破壊によって機能障害へと至る疾患である.罹患率は人口の0.6~1.0%,本邦の患者数は60~100万人と推定されており,プライマリケアの現場で関節リウマチないし疑い患者に遭遇することはまれではないと思われる.近年の生物学的製剤や分子標的薬の登場とともに治療戦略に大きな進歩があり,早期診断・早期治療によって関節破壊を抑止し機能障害を残すことなく寛解を得ることが可能となりつつある.その一方で,プライマリケアの現場ではより早期・軽症例の診断・専門施設への紹介が要求されるため,その紹介ポイントについて熟知しておくことは重要といえる.

4.Sjögren症候群(疑い) 住田 孝之
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 Sjögren症候群(Sjögren’s syndrome:SS)は,関節炎(関節痛,関節腫脹),ドライマウス,ドライアイを三大主徴とする膠原病の一疾患である.約30%の患者に全身の臓器病変(リンパ節腫脹,クリオグロブリン性紫斑病,肺病変,間質性腎炎,末梢神経障害,中枢神経障害など)が認められる1,2).発症年齢は40~60歳代で女性にきわめて多く(男女比1:17),膠原病のなかでは関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)についで多い(約7万人)疾患である.厚生労働省の指定難病である.SS単独の一次性SSと,RAや全身性エリテマトーデスなど他の膠原病を合併した二次性SSに分類される.

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 本症例は日光曝露を契機に全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)を発症したと考えられた.関節炎,皮疹,血球減少に加えて血尿,蛋白尿を認めており,腎生検を行いループス腎炎Ⅳ型(A)の診断となった.追加採血では抗核抗体640倍(homogeneous),抗DNA抗体・抗Sm抗体・抗Ro/SS-A抗体陽性,低補体血症が確認された.

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 多発性筋炎(polymyositis:PM)は骨格筋の炎症により,四肢近位筋や体幹,頸筋,咽頭筋などの筋力低下をきたす原因不明の慢性炎症性疾患である.筋炎症状に加え典型的な皮疹を伴うものは皮膚筋炎(dermatomyositis:DM)と呼ばれる1).ともに関節炎,間質性肺炎,心筋障害など骨格筋以外の臓器障害も合併する.抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体など疾患特異的な自己抗体が認められることより,発症に自己免疫学的機序が関与していると考えられる.表1に2015年に改訂された診断基準を示す2).また一般人口と比してDMでは約3倍,PMでは2倍弱悪性腫瘍の合併率が高く,PM/DM診断前後2年以内に発症することが多い3)

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 全身性硬化症または強皮症(systemic sclerosis:SSc)は,皮膚および肺,心臓,消化管などの内臓諸臓器に線維化と血流循環障害をきたす全身性自己免疫疾患である.病型分類は皮膚硬化範囲に基づき,皮膚硬化が肘を越えない限局性皮膚硬化型とびまん性皮膚硬化型,および他の膠原病との重複症候群に分類される.男女比は1:7~12で女性に多く,好発年齢は30~60歳である.病態形成に各種自己抗体が関与し,とくに抗Scl-70抗体,抗RNAポリメラーゼⅢ抗体,抗セントロメア抗体,抗U1-RNP抗体が重要である.臨床症状は多岐にわたり,Raynaud現象と皮膚硬化はほぼ必発であり,加えて各種臓器が障害されうる.医療機関への受診は,手指の冷え・痺れ,Raynaud現象,手指の荒れ,手指のむくみ,朝のこわばりを初発とするケースが多い.Raynaud現象をきたす疾患としては,ほかに混合性結合組織病,全身性エリテマトーデスなどの他の膠原病疾患,動脈閉塞性疾患,神経疾患,内分泌疾患,悪性腫瘍,外傷,化学薬剤などの可能性も考慮する必要がある.また,皮膚硬化をきたす疾患は,SSc以外にも慢性GVHD,糖尿病性浮腫性硬化症,好酸球性筋膜炎などもあるため鑑別を要する.

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 抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome:APS)は,抗リン脂質抗体(antiphospholipid antibodies:aPL)が持続的に検出され,動静脈の血栓症または妊娠合併症を呈する疾患である1).aPLは複数存在し,それぞれが高力価であればあるほど血栓症のリスクが増大する2).また喫煙,高血圧などの血栓症のリスクは相加的に血栓発症のリスクを上げる3)

第Ⅲ章 医療連携Q&A A.コンサルトのギモン

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 当院はプライマリケア的な能力をもっており,当院に通院しながら専門医に通院する患者さんもいるため,プライマリケア医としての立場で書く.

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 病診連携において,事前に電話などで連絡をいただきたい状況は,大きく以下の3つと考えられる.第一に緊急性が高い場合や診療に高度の専門性が必要な場合,第二に海外渡航などによる特殊な感染症や高度薬剤耐性菌の感染症が考えられる場合,第三に社会的要素を考慮した対応が必要な場合である.

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 患者さんを逆紹介する際,診療情報提供書に加えて事前に電話をするのは手間である.本音では,電話は避けたいという人も多いであろう.かくいう筆者も,相手の顔を見ずに話さなければならない電話は苦手である.

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 急性心筋梗塞(acute myocardial infarction:AMI),とくにST上昇型急性心筋梗塞(ST-elevation myocardial infarction:STEMI)は,病院搬送前死亡は約1/3にものぼると報告されており,一刻も早く治療を要する疾患の代表例である.

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 かかりつけ患者さんが健診で蛋白尿を指摘されたと報告があっても,多くの場合患者さんには自覚症状は何もない.さらに血液検査で腎機能に異常がないと,どの時点で専門医へ紹介すべきか判断に悩む場面は多いと考えられる.

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 手や足の痛みを訴えている患者さんをコンサルトする際には,以下の3つのカテゴリーに大まかに分けて考えることが重要である.

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 腎機能は30歳代から加齢とともに低下するが,高血圧を合併する場合は腎機能低下速度は速い.高血圧は慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD),さらには末期腎障害の発症リスクを上昇させる.コホート研究では,収縮期血圧10mmHg上昇あたり,将来の末期腎障害リスクが30%前後上昇することが明らかになっており,高血圧と尿蛋白は末期腎不全(end-stage renal disease:ESRD)の発症に関与する強い因子であることが明らかになっている.

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 耳鼻咽喉科への紹介が基本である.しかし後頸部リンパ節腫脹例で伝染性単核球症が疑われれば内科または小児科がより適切である.濃厚に結核性リンパ節炎が疑われれば内科を優先する.この場合,感染予防の観点から,安易な穿刺細胞診検査は控える.

第Ⅲ章 医療連携Q&A B.診療上のギモン

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 経口糖尿病薬のうちビグアナイド薬を内服している患者さんが造影CTを撮るときには,造影CTの前後に休薬が必要となる.ビグアナイド薬の重篤な副作用として乳酸アシドーシスがあり,発症頻度はきわめてまれであるが,いったん発症すると予後は不良である.ビグアナイド薬は主に腎排泄であるため,ヨード造影剤の投与による腎機能障害が起きた場合には,体内に蓄積されて乳酸アシドーシスを起こす危険性が増す.ビグアナイド薬の添付文書には,重要な基本的注意事項として以下のような記載があり(一部引用),ビグアナイド薬やビグアナイド薬を含む合剤を内服している患者さんに造影CTを施行する際には注意を要する.

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 急性心筋梗塞の治療では早期再灌流が最も重要とされている.日本循環器学会のガイドラインでは,その重要性から症状と心電図所見を中心にST上昇型急性心筋梗塞の診断を行い,生化学マーカーの結果を待つことで再灌流の施行が遅れてはならない,とされている1).ただ,急性心筋梗塞の臨床診断では心筋壊死を示す生化学的マーカーの一過性上昇を認めることは必須であり,そのなかで心筋トロポニンはCKが上昇しない程度の微小心筋障害も確実に検出されるものである.

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 東京医科大学附属病院は認知症疾患センターとして,近隣のかかりつけの先生から,認知症の患者さんをご紹介いただいている.紹介していただいた患者さんの一回目の返事では,明確な診断を控えさせていただくことがある.その背景には,昨今注目されている混合病理がある.

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 老若男女問わず多くの人が,頭痛を頭蓋内病巣と関連づけ心配して受診する.頭痛は大きく一次性頭痛と二次性頭痛に分けられる.一次性頭痛は片頭痛や緊張型頭痛,群発性頭痛といった機能性頭痛で一般に頭部MRIでは異常所見を認めない.一方,二次性頭痛は症候性頭痛ともいい,器質的疾患に伴って起こる頭痛であり,頭頸部外傷・頭頸部血管障害・非血管性頭蓋内疾患などでは頭部MRIにて原因病巣を認める.頭痛患者さんの多くは一次性頭痛であるが,そのなかに混じって,見逃してはいけない器質的疾患を有する二次性頭痛患者が来院する.

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 現在,吸入薬の種類は非常に多く,逆紹介時に取り扱いのない薬剤があることも生じる可能性はあるかもしれない.変更を検討する場合にはいくつかの留意点がある.

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 早期胃がん疑いの症例を紹介する場合,紹介直前のピロリ菌除菌治療はすべきではない.

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 十二指腸腫瘍は比較的まれな腫瘍であり,とくに原発性十二指腸がんは全消化管悪性腫瘍の0.5%程度といわれている.しかし,内視鏡検診が浸透してきたことや,以前とは異なり十二指腸下行部までしっかり観察する習慣が根付いてきたため,十二指腸腫瘍が発見される機会が増えてきている.残念ながら食道や胃,大腸で確立されたような診断学は十二指腸にはまだ存在せず,上皮性腫瘍においては肉眼所見のみでがん・非がんを鑑別することや粘膜内がん・sm浸潤がんを鑑別する十分なデータが存在しないのが実情である.一般的に十二指腸の上皮性腫瘍は,境界明瞭で管状や乳頭状,絨毛状の表面構造をもつ平坦型腫瘍が多く,大多数は良性の腺腫かリンパ節転移のない高分化型の粘膜内がんである.しかし,残念ながら生検による良悪性の正診率はせいぜい7割程度である.また,粘膜や粘膜下層の薄い十二指腸で生検を取ってしまうことにより,粘膜下層の線維化をきたし,いざEMRやESDによる内視鏡治療を行おうとすると著しいnon-lifting signを呈して治療に難渋する場合も少なくない.したがって,明らかな上皮性腫瘍で内視鏡的切除の適応となりそうな病変を見つけた際には,NBI観察や色素内視鏡による表面構造の観察のみに留めて,生検は決して行わずに十二指腸腫瘍の内視鏡治療を積極的に行っている先進施設に紹介することが望ましい.

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 冠動脈を含む硬化性疾患へのカテーテル治療の対象となった患者さんは,アスピリン内服下に治療を行う.よって,アスピリンを中止する必要はない.日本循環器学会の「安定冠動脈疾患における待機的PCIのガイドライン(2011年改訂版)」では,カテーテル治療(percutaneons coronary intervention:PCI)前にアスピリン81~325mgを少なくとも2時間前までに,クロピドグレルのloading dose(300~600mg)を少なくとも6時間前までに投与することが推奨されている1).循環器領域でPCI患者に抗血小板薬を投与する意味は二つある.一つはステント血栓症の予防,もう一つは硬化性疾患におけるアテローム血栓症,つまり血栓性イベントの予防である2)

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 結論からいうと,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)患者さんへの投薬でお困りの際には,遠慮なく腎臓専門医や薬剤師にご相談いただければと思う.腎機能の低下したCKDにおいて,腎排泄性薬剤は排泄が遅延し血中濃度が高くなり,薬効の増強や副作用の発現のリスクが高くなる.そのため,腎機能に応じて1日投与量を減量するか,投与間隔を延長することが必要となる.

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 脳卒中(脳梗塞,脳出血,くも膜下出血の総称である),とくに脳梗塞の場合,発症からの時間経過はその治療法を大きく左右する.一般医家の外来を経由し脳卒中センターに紹介搬送される急性期脳卒中例は,総じて発症から治療開始までの時間が遅延し,最適な治療を受療する機会を逸することがまれではない.迅速かつ適切な初期対応が必要である急性期脳卒中例に対する診療情報提供書作成のポイントを概説する.

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 全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)は挙児可能年齢の女性に多く発症する疾患であることから,SLEと診断後,治療を受けている女性が妊娠を希望することはまれではない.われわれの施設には日々,挙児希望のSLE女性がセカンドオピニオンを求めて来院されるが,次のような不安と心配を抱いている方が多い.まず第一に,妊娠によって原疾患が悪化しないか,流産や早産といった妊娠合併症を起こすのではないかという不安である.そして第二に,内服中の薬剤の,胎児への影響についての心配も強い.SLEの挙児希望患者さんに対するセカンドオピニオンを求める際には,依頼を受けた医師がこのような心配や不安に適切に答えられるよう,その判断の助けとなる診療情報が含まれることが望まれる.

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 歯科インプラント治療の全身的リスクファクターは,「手術に対するリスク」と「骨結合を妨げるリスク」の二つに分けられる.糖尿病患者の「手術に対するリスク」としては,インプラント手術後の腫脹などで食事摂取できなかった場合,定時の血糖降下剤服用やインスリン注射を行った結果の低血糖と,できなかった結果の高血糖があげられ,術前・術中・術後の管理が必須となる.一方,「骨結合を妨げるリスク」としては,軟組織の創傷治癒不全・易感染性だけでなく,骨の治癒や骨結合に対してもリスクが高いことがあげられる.すなわち,糖尿病患者のインプラント治療はリスクの高いものである.

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 さまざまな眼科手術のなかでも,とくに糖尿病患者さんに対する白内障,糖尿病網膜症手術を中心に述べていきたい.

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 関節手術は人工関節,関節鏡手術,関節内骨折の手術に大別される.一般的には人工関節,関節鏡手術は待機手術となるため,血糖コントロールをするための期間を設けることが可能となる.それに対して関節内骨折手術は受傷後急性期に行われるため血糖コントロールを行う期間が短く,コントロール不良の症例には積極的なインスリン強化療法によるコントロールが必要とされる.

Book Review

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 近年,臨床医学の領域では各種ガイドラインが整備され,学会ホームページなどでも簡単に閲覧可能になったが,ガイドラインの作成にあたっては,多くの班員,協力員が膨大な労力と時間をかけて議論するため,改訂のサイクルは5年以上の場合が多い.とくに進歩の激しい循環器領域においては,その時代にそぐわなくなってしまう場合もしばしばである.日常臨床を最新のエビデンスに基づいて実践するには,リアルタイムに情報を取得し,かつ国内外の学会でコンセンサスの得られている治療法を把握する必要があるが,多忙を極める臨床医にとって,学会に行く時間を確保し,日々発表され続ける論文を読みこなすことはかなりの負担である.また,最近では多くの教科書やマニュアルが出版されているが,教科書は臨床の現場に即応するには難があり,一方,コンパクトなマニュアル本では,治療方針の根拠となるエビデンスを十分に知ることができない.そのような状況において,2年ごとに刷新されている本書は大変実用的であり,また長年の実績からも高い信頼を得ているシリーズである.

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続編はツマラナイという常識を打ち破る “続編”

 「あなたのプレゼン 誰も聞いていませんよ! シンプルに伝える魔法のテクニック」(著:渡部欣忍)は素晴らしい書籍である.この好評のオリジナル作は,プレゼンテーションの極意とスライド作成のコツを,読者にわかりやすく伝授してくれる珠玉の一冊である.この書籍の続編が登場したと聞いたときに自分はある種の不安を感じた.続編はコケる場合が多いからである.その傾向は映画で明らかで,「ヒット作の続編は失敗する」というジンクスを乗り越えた作品は少ない.第一作の緊張感を愛する映画ファンの期待は裏切られることが通常である.オリジナルに比べ,アイデアが新鮮でなくなることが一番の理由である.

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タイムリーな企画と刊行:心不全―識る・診る・治す

 日々の臨床実践に役立つことを目指した新しいシリーズ「循環器内科専門医バイブル」が企画され,第1巻として「心不全」が刊行されました.心不全は世界的にパンデミックと言われるほどの広がりを見せています.わが国の循環器疾患の有病者数は脳血管障害を除いても総人口の9.2%を占めています.その特徴は年齢が高齢化するほど有病率が高いこと,循環器疾患の原因は遺伝性,先天性,生活習慣関連,感染等々と多彩ですが,その終末像は押並べて心不全に陥ることです.したがって,心不全の診断と治療の本質をきちんと理解して日常臨床に臨むことは臨床医にとって基本中の基本になりつつあります.本書は,循環器専門医と専門医を目指す若手医師に留まらず臨床に携る医療者が渇望していた「心不全の座右の書」ではないかと思います.

基本情報

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臨床雑誌内科
122巻3号 (2018年9月)
電子版ISSN:2432-9452 印刷版ISSN:0022-1961 南江堂

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