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本症例で疑われる,慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia:CML)は,フィラデルフィア(Ph)染色体を伴う造血幹細胞レベルの異常による白血病である.Ph染色体は9番染色体と22番染色体の相互転座の結果生ずる染色体で,CMLの95%以上の症例に検出される.また,急性リンパ性白血病(acute lymphocytic leukemia:ALL)の15~30%(小児ALLでは約5%),急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)の1%未満の症例にも検出される.このPh染色体が転座によって形成される過程で9番染色体上のc-abl遺伝子はその上流側に切断を生じ,22番染色上のbcr遺伝子と融合し,bcr-abl型のキメラ遺伝子が形成され,BCR-ABL蛋白の恒常的なチロシンキナーゼ活性化によって造血細胞の異常な増殖をきたす.CMLは,慢性期(chronic phase:CP),移行期(accelerated phase:AP),急性転化期(blast crisis:BC)の3病期に分類され,本邦ではこの症例のように,他疾患フォローアップ中の採血や健康診断などを契機に,白血球の増加が認められるが自覚症状の乏しいCPにおいて多く診断される.CPでは,総白血球数の増加とともに,しばしば血小板数増加や好酸球,好塩基球の増加もみられる.身体所見では,脾腫のほか,しばしば肝腫大を呈する.自然経過では,CP(診断後約3~5年間),AP(約3~9ヵ月間)を経て,未分化な芽球が増加してAMLに類似するBCへと進展し,生命予後不良となる.よって,CPの時点から治療を開始し,AP/BCへと病期を進展させないことが重要となる.
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