特集 もっとうまくいく! 病診連携の「伝え方」―わかりやすく伝えるための診療情報提供書作成のコツ
第Ⅲ章 医療連携Q&A
B.診療上のギモン
7.十二指腸に病変を見つけた際に生検は取るべきですか?
矢作 直久
1
1慶應義塾大学腫瘍センター
pp.686-686
発行日 2018年9月1日
Published Date 2018/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika122_686
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- 文献概要
十二指腸腫瘍は比較的まれな腫瘍であり,とくに原発性十二指腸がんは全消化管悪性腫瘍の0.5%程度といわれている.しかし,内視鏡検診が浸透してきたことや,以前とは異なり十二指腸下行部までしっかり観察する習慣が根付いてきたため,十二指腸腫瘍が発見される機会が増えてきている.残念ながら食道や胃,大腸で確立されたような診断学は十二指腸にはまだ存在せず,上皮性腫瘍においては肉眼所見のみでがん・非がんを鑑別することや粘膜内がん・sm浸潤がんを鑑別する十分なデータが存在しないのが実情である.一般的に十二指腸の上皮性腫瘍は,境界明瞭で管状や乳頭状,絨毛状の表面構造をもつ平坦型腫瘍が多く,大多数は良性の腺腫かリンパ節転移のない高分化型の粘膜内がんである.しかし,残念ながら生検による良悪性の正診率はせいぜい7割程度である.また,粘膜や粘膜下層の薄い十二指腸で生検を取ってしまうことにより,粘膜下層の線維化をきたし,いざEMRやESDによる内視鏡治療を行おうとすると著しいnon-lifting signを呈して治療に難渋する場合も少なくない.したがって,明らかな上皮性腫瘍で内視鏡的切除の適応となりそうな病変を見つけた際には,NBI観察や色素内視鏡による表面構造の観察のみに留めて,生検は決して行わずに十二指腸腫瘍の内視鏡治療を積極的に行っている先進施設に紹介することが望ましい.
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