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はじめに
縫合不全は外科医が最も頭を悩ます合併症の1つである.本稿では,縫合不全への対策をつねに念頭に置いて適切な縫合や吻合を行うためのポイントを述べる.
近年の平均寿命の延長によって,ヒトが人生において何らかの外科的手術を受ける機会は増加してきている.その際に体内に残存する縫合材料の代表的なものとして縫合糸が挙げられる.残存した縫合糸が誘因となり,術後に様々なトラブルを引き起こす可能性が報告されており,縫合糸の選択は術後の短・長期的な経過を左右する意味で非常に重要な要素と考えられる.1999年に米国厚生省疾病管理・予防センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)から「Surgical site infection(以下,SSI)予防ガイドライン」が公開されて以来,わが国でもSSIに対する関心が高まってきており,さらに近年導入され定着しつつあるdiagnosis procedure combination(DPC)制度においては,SSIの予防は医療経済の面からもきわめて重要であるとされる1).実臨床においては,術野における吸収糸の使用がわが国ですでに常識化したSSI対策のエビデンスの1つとして認識されつつある2).
本稿では,現在使用することの可能な縫合糸の特性や使用目的について概説し,SSI予防の観点から現時点での選択されるべきベストな縫合糸について述べる.
縫合針,持針器は縫合・吻合といった手術の基本操作に不可欠な器具である.これらの器具のそれぞれの特徴を理解することは,縫合・吻合を安全に行うためにはぜひとも必要であり,ひいては安全な手術につながるものと思われる.
今日の外科手術において自動縫合器や自動吻合器はなくてはならない機器になっている.これらは簡便で均一な縫合・吻合手技を可能にしたが,使用法や特性を十分に理解しなければ重大な合併症を招く危険性がある.各機器の機構を熟知したうえで適切なステイプラーを選択し,かつ的確に使用することによってはじめて安全な手術手技が確立される1).
本稿では,各種ステイプラーの特性と使用法,さらに使用時のコツとピットフォールについて述べる.
皮膚および皮下組織の縫合の目的は,創縁を正確に接合させ,緊張なしに縫合することによって創面を被覆し,感染や汚染を防ぎ,一次治癒をはかることにある.早く,かつきれいに傷を治すためには創の縫合法に熟練し,症例に応じて適切に使い分ける必要がある.
顔面を中心とした露出部での皮膚縫合の場合には,その後の瘢痕を目立たなくするといった整容的な配慮が重要になってくる.目立ちにくい瘢痕を得るためには(1)皮膚を愛護的に扱うこと,(2)創治癒を速やかに営ませる皮膚縫合を習得すること,(3)術後の後療法の重要性を認識することが必要である1).
本稿では,顔面における創の扱い方ならびに縫合法の基本手技,さらに抜糸後の後療法について述べる.
通常,筋および筋膜縫合は深部の処置が終了したのち閉創に際して行われるが,的確に行われないと創治癒の遷延やヘルニアを生じるばかりか,筋の機能障害をもたらすことになる.一方,腱縫合術の成否は四肢の運動機能に大きく影響を与える.
本稿では,筋・筋膜・腱縫合における手技やポイントなどについて概説する.
末梢神経が断裂すると,その遠位はWaller変性に陥るが,神経細胞の突起である近位断端内の軸索には再生能力があり,発芽(sprouting)が生じる.この再生軸索が遠位断端内に入って末梢効果器官と結合すれば断裂前の機能を回復することができる.有効な機能回復を得るためには,できるだけ早期に,より多くの再生軸索をできるだけ元の末梢効果器官に誘導することができるように両断端を縫合する必要がある.
外科医が骨や軟骨を縫合することは少ないが,救急外来においては指骨や顔面骨などの骨折および耳介や鼻などの挫創をしばしば経験する.この際,骨や軟骨の縫合の知識は必要になる.
本稿では,これらの症例を中心に具体例を挙げて概説する.
四肢外傷時の主幹動脈損傷における血行再建や術中の血管損傷時など,外科医にとって血管縫合・吻合術をマスターすることは必須であろう.われわれはマイクロサージャリーの技術を用いた微小血管吻合や四肢の比較的大きな血管吻合も行っている.
本稿では,橈骨動脈や大伏在静脈など比較的太い直径(3~5mm前後)の血管に対するルーペを用いた縫合・吻合法について述べる.
マイクロサージャリー(microsurgery:微小外科)は1960年代から臨床応用され,再建外科領域においては当初からわが国が世界をリードし続けている.過去40年間,この手技によって切断肢指の再接着や,皮弁,筋,骨,腸管などの血行を有する組織移植が可能となった.また最近では,超微小血管吻合術がわが国で開発され,神経の単一神経束の縫合も可能となっている(スーパーマイクロサージャリー).これに伴って超微小神経血管解剖の新知見も解明されつつあり,現在,わが国で開発された新しい再建術が海外に発信され続けている.また,この手技によって外科のすべての領域において新しい術式が開発されており,各科に浸透しつつある.
外科医にとって消化管の縫合不全は最も落胆する,そして不名誉な合併症である.すべての外科医は縫合不全を回避すべく最大限の努力を払って消化管吻合を行っているが,他施設の外科医がどのような方法で消化管吻合を行っているかは知る由もなく,また,同じ施設内でも外科医ごとに吻合法は多少異なっているのが現実である.
本稿では,当科で厳格に標準化し統一している消化管吻合・縫合法を示し,われわれの消化管吻合についての基本的理念と手技を解説する.
本稿では,呼吸器外科領域でよく行われる手術経路である後側方開胸,前側方開胸,胸骨正中切開ならびに胸腔鏡の閉胸法の要点を述べる.
〔一般的注意〕
(1)閉胸前に胸腔内をよく観察し,胸腔内出血や肺からの空気漏れがないことと,ガーゼなどの遺残がないことを確認する.また,手術介助のナースに閉胸の開始を知らせ,ガーゼや手術器械のカウントを必ず行う.
(2)ドレーンの先端が適切な部位に位置していることを確認する.麻酔科医師に術側肺を加圧してもらい,換気が正しく行えることと,無気肺や肺の軸捻転がないことを確認する.
(3)閉胸・手術の終了後,全身麻酔の終了前に胸部X線写真を撮影し,胸腔内遺残物のないことをさらに確認する.ガーゼによる異物肉芽腫症は腹腔内に比べると頻度は低いが,1,000~1,500件の手術に1例の割合で発生すると報告されている1).
閉腹は基本的な手術手技であり,経験の浅い外科医に任されることも多い.しかし,合併症が生じることも稀ではなく,慎重な操作が要求される.また,縫合の手順や使用する縫合糸などは施設によって多少の相違がみられ,surgical site infection(以下,SSI)の観点から議論のある領域でもある.
本稿では,当科における閉腹手技に関して大腸切除術を中心に述べる.
一般消化器外科の手術において横隔膜縫合が必要になる場面は多くはない.筆者らが最も多く経験するのは下部食道癌や食道浸潤胃癌に対する左胸腹連続切開による手術の閉創時で,ついで多いのは大きな食道裂孔ヘルニアの修復時,そして癌の横隔膜浸潤に対する横隔膜合併切除のあとの修復であろう.通常経験することの少ない手技であるだけに,いざというときに困らないように思考実験と心の準備が肝要である.
気管形成術の歴史では,気管をいかに授動してその可能切除長を得るかという点が論じられてきた.1950年にFergusonらが動物実験によって気管全長の1/3が切除可能であることを示し,1957年にBarclayらが腺様囊胞癌に対して5cm管状切除および端々吻合による分岐部再建を施行した.1959年にはHarrisらが頸部屈曲位と伸展位で2.6cmの授動が可能であることをX線で示し,1964年にGrilloらが屍体で全長1/2切除および端々吻合が可能であることを証明した.1974年にMontgomeryらは喉頭授動術を発表し,1975年にPearsonらによって喉頭下への浸潤病変に対する反回神経を温存した輪状軟骨を含む喉頭気管切除の一期的再建術式が報告されている1).
一方,気管支形成術は1947年にPrice-Thomasらが最初に気管支の管状(スリーブ)切除および端々吻合による再建を行ったのが始まりと言われており,1954年にAllisonらが肺癌に対する最初のスリーブ肺葉切除術を報告し,1955年にPaulsonらが気管支形成術(bronchoplastic procedures)と名付けている.
気管形成術の適応は,悪性疾患では腺様囊胞癌,扁平上皮癌などの原発性気管腫瘍,甲状腺癌,副甲状腺癌,食道癌の気管浸潤などの続発性気管腫瘍がある.良性疾患では先天性や炎症性(結核性や気管内挿管後)の気管狭窄,外傷性気管断裂,気管食道瘻などがある.気管支形成術の適応は,悪性疾患では原発性肺癌の直接または肺門部リンパ節を介した浸潤によるものが多いが,そのほかに結核性気管支狭窄,気管支良性腫瘍,外傷性気管支断裂,小児の先天性気管狭窄などがある.
気管支形成術は術中の気管支断端の迅速組織診の結果によって全摘術を選択しなければならない可能性があるため,術前に呼吸機能や一側肺動脈閉塞試験による残存肺機能の評価が必要となる.一方,気管形成術では代替の術式がないため,術前に腫瘍の浸潤部位と,ある程度のマージンを考慮した気管切除長の正確な計測が必要となる.Mullikenら2)の気管の授動と平均切除長との関連の報告では,甲状腺峡部剝離および頸部屈曲(15~35度)によって4.5cm(気管軟骨数7.2個),心膜切開による右肺門部授動によって1.4cm(気管軟骨数2.5個)の平均切除長が得られている.
永久気管孔の作製を必要とするのは主として耳鼻科領域における喉頭切除術などである.胸部外科あるいは一般外科領域でこれが必要になるのは甲状腺癌の広範気管浸潤,気管腺様囊胞癌,あるいは頸部食道癌の気管浸潤例などである.これらはいずれも喉頭のみでなく気管合併切除を伴うことが多く,気管切除範囲が広範に至る場合は通常の永久気管孔作製が困難となり,縦隔前面に気管孔を作製することを余儀なくされることがある.いわゆるGrillo型と呼ばれる縦隔型永久気管孔である.
本稿では,永久気管孔ならびに縦隔型永久気管孔作製の要点を述べる.
心臓は袋状の心囊(心膜)に取り囲まれている.内外の心囊の間の空間は心囊(心膜)腔と呼ぶ.心囊(心膜)腔と心臓の関係は,大きな袋のなかに握りこぶし大の心臓が入っている図を想像するとわかりやすい.心膜の表面は平滑な漿膜が覆っている1).心臓側の心膜を臓側心膜(心外膜),それ以外を壁側心膜と呼ぶ(図1).
食道切除後の再建では通常,胃が再建臓器の第1選択とされる.食道切除後の再建に空腸が用いられるのは,主として頸部食道切除後の遊離空腸再建症例と,胃切除後や胃病変の合併で食道亜全摘後に胃管が使えない場合の有茎空腸再建症例である.
食道切除後の頸部食道-挙上胃(胃管)吻合は,最近では器械吻合で行われることが多い.器械吻合では挙上胃の長さに余裕が必要になるためか,時折「胃管が届かないとき」という論議を聞く.筆者らは手縫い吻合を基本としているが,胃側に問題があって大きな切除となった場合を除いて,まず挙上胃の長さが足らずに困ったことはない.
本稿では,筆者らが行っている食道挙上胃手縫い吻合を,最近の変更点も含めて解説する.
喉頭や気管に明らかな癌浸潤を認めるような頸部食道癌に対しては咽頭喉頭頸部食道切除術が標準術式であるが,再建術として遊離空腸移植術が一般的に行われている1~5).本稿では,頸部食道切除後の再建術としての遊離空腸移植術における手縫い吻合法について概説する.
近年,食道癌の外科治療は手術手技の向上や周術期管理の進歩,さらに器械吻合の導入に伴って手術成績が向上し,術後合併症も著しく減少している1,2).しかし,食道癌の主な手術後合併症である縫合不全および術後肺合併症は手術症例が高齢化し,さらには合併疾患を有する症例や根治照射後のサルベージ手術などの適応が拡大されるに伴い,今日でも術後管理上の大きな課題である.また,自動縫合器・吻合器などの手術器具の開発は著しく,様々な器械吻合が臨床の場で実施されている3).食道切除術後の吻合方法は手縫い吻合と器械吻合とに大別され,吻合する腸管の部位によって端々吻合,側々吻合,端側吻合がある3).
本稿では,食道切除後の器械による食道胃管吻合の手技の実際とそのポイントを中心に概説する.
食道-結腸吻合は器械吻合が試行されることが一般的である1).しかし,器械トラブルや腸管の挙上性が悪い場合などでは手縫い吻合が必要となる.器械吻合では腸管をpunch outすることによって壁内の細血管を犠牲にするデメリットもあり,いざとなったときの手縫い吻合を習熟しておくことは非常に重要である.
再建結腸は右側結腸や横行結腸が用いられることが多い2,3).それぞれに長所,短所があるが,われわれは腸管の伸展性と血流を考慮して左結腸動脈を血管茎とした横行結腸を用い,端側吻合を第1選択としている.本稿では,結腸再建での手縫い吻合について解説する.なお,結腸の離断はリニアカッターを用いることを前提とする.
結腸を食道再建臓器として使用するのは胃全摘術後や胃切除術後,あるいは同時性重複胃癌の存在などの理由によって胃が利用できない場合がほとんどである1).近年,当科においても胃切除術後や同時性重複胃癌の症例は増加してきており,結腸による再建の重要度は増してきている.
本稿では,食道切除術後の結腸再建における食道結腸吻合の手技について概説する.
胃全摘後の食道-空腸吻合は,現在では自動吻合器を使用すれば短時間に安全に行うことが可能である.縫合不全などの合併症の発生率も低く術後の成績も良好なことから,ほとんどの施設で器械吻合が第1選択となっていると思われる1).しかし稀ではあるが,患者の特性や器械の不都合などの予期しない状況のために安全な器械吻合を行えず,手縫いで食道-空腸吻合を行う場合も起こり得る.視野や操作性が決して良好でない手縫いによる食道-空腸吻合であるが,いくつかのコツを知っていれば安全に施行することが可能である.
本稿では,われわれが行っている本術式の手技とコツを概説する.読者の参考になれば幸いである.
今日では胃全摘後の食道-空腸吻合はサーキュラーステイプラーを用いた器械吻合を行うことが一般的である.吻合はステイプラーを打ち込むことによって実行されるが,「ステイプラーをファイヤーする時点で,実は吻合はすでに終了している」と考えなければならない.すなわち,器械吻合の要点はファイヤーする以前の様々な準備操作である.
本稿では,当科で厳格に標準化し統一している器械による食道-空腸吻合法(空腸断端からステイプラーを挿入する端側吻合法)を示し,われわれの器械吻合についての基本的考え方と手技を解説する.
胃全摘によって失われる機能のうち,外科的に再建できる機能としては(1)貯留能,(2)食道への逆流防止機構,(3)十二指腸への通過ルートの確保であろう.筆者らは1989年から貯留能の確保として空腸パウチを作製し,再建ルートとして十二指腸を通過する間置法を採用してきた1~3).また,食道への逆流防止策としてHis角や穹窿部の作製に加えて,食道-空腸吻合部を正中弓状靱帯や横隔膜脚に固定してできる限り腹部食道を確保するようにし,良好な成績を得ている4).
本稿では,胃全摘後の空腸パウチ間置再建法の手術手技を述べるとともに,コツやpitfallについても言及する5).
胃全摘後の再建に際してはRoux-en-Y法が最も汎用されている術式である.近年の自動吻合器の普及によって食道-空腸吻合の確実性・安全性が飛躍的に高まったため縫合不全の発生頻度は低くなっており,安定した手術術式となってきている.一方で,全胃喪失による食事摂取に関する種々の術後障害を軽減する目的で様々な再建術式が考案されてきた.具体的には,逆流防止弁の喪失による不快な逆流症状の防止や胃貯留能喪失に対する食事摂取量の改善など,術後のquality of life(QOL)を重視した様々な再建法が検討されている.
そのなかで,Lee1)によってはじめて報告されたBauhin弁を含む回腸上行結腸間置法は逆流の防止にBauhin弁を利用するため長い腸管の間置を必要とせず,同時に単管の空腸より大きな貯留能を期待できる術式であると考える.Roux-en-Y法と比較しても逆流性食道炎やダンピング症候群の発生頻度が低く,良好な体重回復を認めるなどの有用性が報告されている2).
本稿では,回腸上行結腸間置法による縫合・吻合の具体的手技とポイントを中心に述べる.
消化器外科領域における消化管吻合術はsurgical site infection(SSI)に関連しての医療経済節減や患者の術後短期・長期にわたるquality of life(QOL)の改善に重要である.安全で確実な吻合についての基礎知識と十分な経験が必要となり,基本は縫合不全や吻合部狭窄を起こさないことである.幽門側胃切除後の再建には種々の方法があるが,それらを比較・検証した臨床試験やガイドラインで規定された標準術式はなく,術者(施設)が一番慣れている方法か症例に応じて判断しているのが現状である.幽門側切除後の再建法としては大きく分けてBillroth Ⅰ法(以下,B-Ⅰ),Billroth Ⅱ法,Roux-en-Y法(以下,RY),さらに最近ではパウチの付加も試みられている.1881年にBillrothによってはじめて幽門側胃切除術が成功して以来,B-Ⅰは現在まで種々の改良が加えられ,今なお広く行われている再建法である1).
B-Ⅰの特徴として吻合部あるいは断端閉鎖部の数が少なく簡便であること,食物の流れが自然で生理的であること,盲端(十二指腸)を作らないこと,術後胆道系の内視鏡的検査・治療が可能であるなどの利点が挙げられるが,吻合部に緊張がかかる,逆流性胃炎・食道炎が多い,RYと比較して縫合不全が多いなどの指摘もある.実際に,残胃が小さくなる場合や食道裂孔ヘルニアが原因で術前から逆流性食道炎を認める例や,膵頭・十二指腸周囲に再発するリスクの高い症例に対しては,B-ⅠよりRYが適応と考えられる.1999年に行われた日本胃癌学会のアンケート調査結果では基本的な再建法として60%の施設がB-Ⅰを行っているが,再建法を限定する必要性はなく,病態によって使い分けることが重要である.
また,内視鏡下手術はもとより開腹手術においても自動吻合器・縫合器の開発によってより安全かつ簡便に行われるようになったが,基本はあくまで手縫いによる吻合法であることに変わりはない.
幽門側胃切除後の胃-十二指腸吻合,いわゆるBillroth-Ⅰ法(以下,B-Ⅰ)再建は1881年にBillrothがはじめて成功してから現在に至るまで種々の改良が加えられながら,現在でも幽門側胃切除後再建の過半数に行われている.近年では自動吻合器や自動縫合器の信頼性の向上や腹腔鏡補助による低侵襲手術の普及によってB-Ⅰ再建が器械吻合で行われるケースが増加してきた.
本稿では,現在行われている主なB-Ⅰの器械吻合法について手技とその特徴を解説する.
幽門側胃切除術後の再建法としてはBillroth Ⅰ法(以下,B-1法),Billroth Ⅱ法(以下,B-2法),Roux-en-Y法などが代表的であり,広く行われている.近年の腹腔鏡補助下幽門側胃切除術の普及や器械吻合の進歩に伴い,手縫い吻合を行う機会が減少してきている.
縫合法は大別すると1層縫合と2層縫合があり,胃-空腸吻合術の場合,それぞれの施設や術者によって様々な吻合法が行われている1).Gambee法に代表される1層縫合は,初心者の場合には縫合間隔や縫い代が安定せずに技術的に困難を伴う.そのため,漿膜をしっかり合わせることによって物理的に強く簡便な縫合である2層縫合がより安全である(図1).
本稿では,幽門側胃切除術後のB-2法と,Roux-en-Y法で行う胃-空腸吻合について述べる.
幽門側胃切除後の再建にはBillroth Ⅰ法,Billroth Ⅱ法,Roux-en-Y法,空腸間置法などが行われている.再建の単純さ,簡便さからBillroth Ⅰ法が広く行われてきたが,縫合不全がほぼないことや,十二指腸液の逆流がなく残胃炎,食道炎がみられないことからRoux-en-Y法も増えてきている.空腸間置法は再建手技がやや煩雑であるが,食物の生理的流出経路を保ちつつ十二指腸液の胃への逆流を予防する.
自動縫合器や吻合器による吻合の成績は安定しており,手縫いによる吻合に比べて術者間の差がないことから,幽門側胃切除後の再建でも広く使われるようになっている.また,腹腔鏡下胃切除の広がりも,吻合を器械で行うことが多くなったことの一因と思われる.
胃-空腸吻合はRoux-en-Y法,空腸間置法で行われるが,本稿では縫合器を用いた側々吻合とcircular staplerを用いた吻合を解説する.
幽門側胃切除後の再建法はBillroth Ⅰ法が最も頻用される術式であるが,残胃が小さい場合は十二指腸液逆流に起因する障害を避ける目的でRoux en Y再建も広く行われている.しかし,小胃症状や停滞,下痢,ダンピングなどの胃切除後障害がみられる1).小胃症状を回避する方法として,1949年にSteinberg2)が胃亜全摘後の空腸パウチ再建を試みた.近年は自動縫合器や自動吻合器の開発によってquality of life(QOL)の向上を目指した術式として空腸パウチ間置再建術が行われるようになっている3,4).
われわれも残胃が1/4より小さくなる症例に対して,三輪ら3)が提唱した幽門側胃切除後の空腸パウチ間置再建法(jejunal pouch interposition:JPI)をmodifyした術式を採用している.本術式は十二指腸を通る生理的な食物ルートを維持し,二重腸管となる空腸パウチがリザーバー機能を確保して小胃症状やダンピングを防止する.また,順蠕動の導管を有するので,残胃逆流を予防する術式でもある3).
本稿では,幽門側胃切除術での空腸パウチの縫合・吻合について,手技の実際とポイントについて述べる.
噴門側胃切除術の多くは胃上部に限局する早期胃癌に対して行われているが,本術式を適応とする患者の多くは長期生存する可能性が高く,術後のquality of life(QOL)の保持は重要な問題である.特に逆流性食道炎の発生は食道残胃端々吻合で100%,端側吻合で60%と高率とされており1),その予防を目的とした噴門形成が諸家2,3)によって報告されている.
本稿では,噴門側胃切除後の噴門形成を付加した手縫いによる食道-胃吻合法を紹介する.本法は逆流性食道炎を抑え,吻合が簡便で,残胃の観察も容易な術式である.また近年,ほとんどの部位の消化管吻合に器械吻合が導入されているが,器械吻合が使用できないような状況に遭遇する可能性もあり,消化器外科医にとっては手縫いによる吻合法も習得しておくべきである.
U領域での胃癌の発生は少なく,噴門側胃切除の術後予後や合併症,残胃癌発生率,quality of life(QOL)の維持についてのエビデンスが少ないことから噴門側胃切除術が選択される症例は少ない.しかし,噴門側胃切除が胃全摘と比較して摂食量や術後体重回復などが良好であったという報告もあり,すべての上部胃癌症例に対して胃全摘術を施行することは好ましくない.そのため,根治性を下げることなく術後のQOLを維持するために各施設で様々な工夫が行われている1).また,噴門側胃切除後の食道-胃吻合においては,逆流性食道炎をいかに予防するかが重要なポイントであることが明らかである.
本稿では,本手技の実際およびポイント,Pitfallを述べる.
噴門側胃切除術は主に上部早期胃癌症例に対する機能温存手術として位置づけられている術式である.術後生存期間やquality of life(QOL)の維持に関するエビデンスは乏しいため,胃全摘術との比較において適応についての議論の余地は残されているものの,2008年4月改訂の保険点数にも収載されており,広く普及した術式の1つと考えるべきである.
当科においては残胃が1/2以上残存する上部早期胃癌を本術式の適応としている.そのため,UM領域の広い0-Ⅱc病変などは適応からはずれることとなる.切除範囲については幽門側胃切除術と異なり,どのような再建法を採用するにせよ,術後の逆流性食道炎を考慮すると残胃は大きいほうがよいと思われる.
リンパ節郭清範囲については「胃癌取扱い規約」(第13版)1)と「胃癌治療ガイドライン(医師用)」(第2版)2)に従うべきと考えるが,上部胃癌に対する縮小手術が規定されていないため,通常はNo. 1,2,3,4sa,4sb,7が縮小手術Aに相当し,No. 8a,9を追加して縮小手術Bに相当すると考えるのが妥当であろう.ただし,後胃動脈沿いのリンパ流は特に上部胃癌では重要と考えられるため,脾動脈沿いの後胃動脈根部周囲までのNo. 11pは特に縮小手術Bでは郭清の対象になると考えている.
再建法に関しては食道-胃吻合術,空腸間置術,パウチ作製などの方法が行われているが,何と言っても術後の逆流性食道炎が大きな問題となる.当科では犠牲腸管を作製した単管の空腸間置術を施行しており,逆流を予防すべく様々な工夫を行なっている.以下で術式の実際やポイントなどを詳述する.
外科手術による胃の切除術は,切除する臓器である胃の量(切除範囲)によっていくつかの術式に分けられる.最も一般的な胃全摘術や幽門側胃切除術に対して,切除範囲を縮小する術式として噴門側胃切除術,分節切除術,楔状切除術,局所切除術などが挙げられる.これらの縮小手術のなかで分節切除術については幽門保存胃切除とほぼ同様であり(そもそも両者の相違は明確でない),また噴門側胃切除については他稿で解説されるので,本稿では楔状切除を含めた広義の局所切除後の縫合法を解説する.
楔状切除術とは,正常範囲を含めて胃を楔型(V字型)に切除する術式である.楔状切除を含めた胃の局所切除術を採用する目的としては(1)胃の容量を極力温存することで胃酸分泌や貯留能などの機能温存をはかること,(2)切除範囲を最小限とすることで低侵襲とすることが挙げられる.
胃局所切除の適応としては(1)良性疾患,(2)局所切除で十分な根治性が得られると考えられる疾患〔gastrointestinal stromal tumor(GIST)など〕,(3)早期の胃癌(現時点ではあくまで研究的段階であることに留意する),(4)進行胃癌でも全身状態などから手術を縮小して侵襲を最小限にしたい場合(姑息的)などが考えられる.早期胃癌への局所切除手術の適応について「胃癌治療ガイドライン」1)では「EMRと縮小手術の中間に位置づけられる手術法である」,また「いまだ研究的な治療法とみるべきである」としている.すなわち,胃癌に局所切除を適応する場合には近傍のリンパ節切除も可能ではあるが,郭清範囲が十分か否かは議論があり,“lymphatic basin”などの概念が検討中である2).
幽門保存胃切除術(pylorus preserving gastrectomy:以下,PPG)はMakiら1)によって潰瘍に対する手術として提唱された.近年の早期胃癌の占める割合の増加とともに,術後のダンピング症状や十二指腸液の逆流などの後遺症を最小限にし,胃の貯留機能や排泄機能を保つ縮小手術としてPPGが早期胃癌の治療に用いられるようになってきた2).しかしながら,その術式の適応や手技上の細かい点は施設によって異なっている3).また,PPG後の再建である胃-胃吻合に関しても,使用する糸や縫合法などは施設によって異なっている.
本稿では,われわれが行っている胃-胃吻合を中心にPPG後の胃-胃吻合の手技の実際とそのコツを文献的考察を加えながら述べる.
十二指腸断端の縫合閉鎖は胃全摘術(Roux-Y再建)や幽門側胃切除(Roux-Y,Billroth Ⅱ法再建)といった手術で不可欠の過程である.十二指腸では胆汁や膵液といった消化液が多量に分泌されており,万が一,縫合不全を生じると活性化された消化液が漏出し,重篤な合併症を引き起こす.しかし,不可欠かつきわめて重要な十二指腸閉鎖という操作も,器械を用いれば初心者が行っても熟練者が行っても差はなく,良好な結果が得られる.また,腹腔鏡下手術の普及に伴って,十二指腸縫合閉鎖の際に手縫いではなく器械が用いられる頻度も増加してきている.
本稿では,器械を用いた十二指腸断端縫合閉鎖について(1)器械使用の前段階における胃,十二指腸の処理,(2)器械の種類と選択,(3)断端の埋没の3点について述べる.
本稿では,手縫いによる十二指腸断端閉鎖の方法を述べる.また,手縫い縫合が選択されやすい状況での対策についても言及する.
十二指腸切開は,十二指腸内の出血部位の確認や,良性腫瘍あるいはリンパ節転移,周囲進展のない悪性腫瘍の内腔からの局所切除に際して行われる手技である.内視鏡治療の発達した近年においては,かなり施行頻度の低い術式である.
十二指腸の部分切除が行われるのは,粘膜下腫瘍,カルチノイドなどの摘出や,大腸癌,胆囊癌などの十二指腸浸潤,胆囊十二指腸瘻,外傷性損傷などの場合である.実際には2~3cmにわたって切除した場合でも十二指腸を十分に脱転することによって縫合閉鎖することが可能である.したがって,十二指腸部分切除後の十二指腸-空腸吻合は,腫瘍浸潤や炎症の波及のためにかなり広範囲に切除しなければならない場合など,その適応はきわめて限られている.
十二指腸も空腸も血行はきわめて良好であり,ほかの消化管吻合に比べて十二指腸-空腸吻合による縫合不全は発生しにくい.しかし,ひとたび十二指腸の縫合不全が発生すると,きわめて重篤な状態に陥る可能性が高いため,細心の注意を払って吻合を行う必要がある1).
胃切徐再建における空腸-空腸端側吻合はRoux-en-Y法において必要とされる吻合手技である.以前は幽門側胃切除術後の再建法はBillroth Ⅰ法,Ⅱ法がほとんどであったが,近年は腹腔鏡下手術の普及に伴ってRoux-en-Y法が盛んに行われるようになってきている.また,胃全摘術でも一時期のパウチ志向からその見直し,特に消化管運動の回復遅延が示唆され1),簡便なRoux-en-Y法が再評価されつつあり,空腸-空腸端側吻合を行う機会も増えてきた.消化管の再建において器械吻合が増加しているなか,研修医や若手医師に行わせる手縫いの吻合は少なくなりつつある.空腸-空腸吻合は数少ない研修のための手縫いによる吻合と考える.
2004年度の社会保険診療報酬の改定に伴って自動縫合器の加算が増額され,また,腹腔鏡下手術の普及もあいまって,胃切除後の再建に器械吻合が増加している.Roux-en-Y再建術における空腸-空腸吻合は以前は手縫い吻合が一般的であったが,今日では器械吻合が普及してきた.
本稿では,空腸-空腸側々吻合の手技について述べる.
胃の手術における再建術式は多岐にのぼる.胃切除や胃全摘,バイパス術などの術式や,その目的によって様々な再建方法が行われてきた.
Braun吻合とは小腸同士を側々吻合する方法で,胃切除術後やバイパス術での胃-空腸吻合時に輸入脚症候群を防止する目的で付加される吻合法である.
1849年のSedillot以来,胃瘻造設術には種々の術式が考案された.目的別では,(1)食物の経口摂取が不能な場合の栄養補給,(2)種々の原因による胃内容の貯留に対する減圧に分類される.一方,その手技から,(1)開腹胃瘻造設術,(2)経皮内視鏡的胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastrostomy:以下,PEG),(3)腹腔鏡,内視鏡併用下胃瘻造設術にも分類できる.通常は低侵襲のPEGが第1選択であるが,腹水の存在がある場合や経口的に内視鏡の挿入が不可能な場合,または腹腔内癒着によって大腸穿刺の可能性がある場合には小開腹による胃瘻を造設する場合もあり,患者の状態に合わせた術式を選択する必要がある.
本稿では開腹胃瘻造設術の手技を述べるが,現在多用されているのは,間接瘻であるWitzel法(1891年),直接瘻であるStamm法(1894年),Kader法(1896年)などである1).
動・静脈の縫合・吻合は分野を問わずすべての外科領域手術において修得すべき基本的手技である.一般外科において血管吻合,特に上腸間膜動静脈の吻合は非常に利用が限られているが,血管外科の基本手技を修得することによって血管を恐がることなく,むしろ肝胆道癌の手術も安全で十分な郭清ができることを理解できると思う.一般外科における血管吻合としては,膵癌における上腸間膜動脈合併切除における再建,門脈合併切除における門脈-上腸間膜静脈(SMV)分枝再建,小腸移植などが考えられる.
腹部内臓の血管吻合の基本手技はあまり変化がないため,本稿では,筆者が経験している肝移植1)や門脈圧亢進症疾患2,3),生体部分膵臓移植4,5),肝胆道疾患における血管吻合の知見から述べる.
消化管吻合には手縫い吻合と器械吻合がある.近年では簡便な器械吻合が多く行われることも一般的となっているが,熟達した消化器外科医による手縫い吻合はより確実・安全であり,重要な吻合は手縫いにより行われている.特に胆管-空腸吻合,膵管-空腸吻合,全身状態不良,低栄養,腸管浮腫が高度な場合などで手縫い吻合は不可欠であり,縫合不全回避は消化器外科医の技量に大いに依存している.そのため吻合において手縫い吻合は消化器外科医が習得すべき重要な基本的手技である.
手縫い吻合は接合する部位により漿膜接合型(Albert-Lembert縫合,Halsted縫合,Connell縫合)と断端接合型〔Gambee 1層縫合,層々縫合(layer to layer法)など〕がある.Albert-Lembert縫合は抗張力に優れ,簡便,確実であり当科でも第一選択としている.Gambee 1層縫合は粘膜・粘膜下層が適切に接合・癒合する層を重視した吻合である.さらに1層縫合であるため狭窄をきたしにくい.
本稿では代表的なAlbert-Lembert縫合とGambee 1層縫合による小腸-小腸吻合の手技,注意事項について述べる.
小腸切除後の吻合は手縫いによる端々吻合によって行われることが少なくないが,Steinchen1)による機能的端々吻合の報告以来,小腸でもこの吻合法が広く行われるようになった.機能的端々吻合はクローン病においては術後の再狭窄までの期間を延長することが報告されており,特に良性疾患の吻合法として優れた吻合法である.
本稿では主に小腸切除後の器械による機能的端々吻合について解説する.
小腸切開部の縫合閉鎖は,これを本来の目的として手術を行うことは稀である.小腸切開は通常は,腹膜播種やほかの癌の浸潤によって小腸壁の一部を合併切除したり,観血的に小腸ポリープを切除する場合に行うことが多い.また,癒着の剝離時に小腸壁を損傷し,縫合閉鎖することもしばしばある.したがって,最も小さな手術の1つであるが,通常は手縫いで行うものであり,消化器外科医としては必須の手術手技である.
小腸狭窄に対する形成は,狭窄の範囲が短いときに小腸を切除せずに温存し,狭窄を解除する方法であり,狭窄形成術と呼称されている.Crohn病に対する小腸狭窄形成術は1982年にLeeら1)が施行したものが初めてである.
人工肛門には,その形態から単孔式または双孔式人工肛門,用いた腸管から結腸または回腸人工肛門,さらにその使用期間から永久的または一時的人工肛門など,いくつかの分類がある.
最近では,肛門にきわめて近い下部直腸癌に対して括約筋切除肛門温存術(intersphincteric resection:ISRやexternal sphincter resection:ESR)など新しい手術術式の開発や,炎症性腸疾患,特に潰瘍性大腸炎に対する大腸全摘術に際し,吻合部の安静を保つために,一時的回腸人工肛門造設術を施行する機会が多くなってきた.別名,カバーリングあるいはダイバーティングイレオストミー(covering ileostomy, diverting ileostomy)とも呼ばれる.吻合部の状態が問題ないことを確認した後(多くの場合,初回手術から3か月~6か月後)に閉鎖する.
今回,本稿では回腸を用いた一時的双孔式人工肛門造設術の縫合について述べる.
近年,自動縫合器の普及により消化管再建は器械吻合で行われることが一般的となり,消化器外科医が手縫い吻合を行う機会は,多くの施設で以前と比較してかなり少なくなっているように思われる.器械吻合は手縫い吻合と比較して短時間での吻合が可能である,術者の技量差の影響が少ない,などの点で有利とされている.また,本稿で述べる右側結腸切除後の小腸-結腸吻合のように,口径差のある腸管同士の吻合において広く行われている自動縫合器を用いた機能的端々吻合は,大きな吻合口径が確保でき,術後吻合部狭窄の心配が少ない,という点からも好まれて用いられているようである.
しかしながら,機能的端々吻合などの器械吻合では吻合に使用する腸管を十分に授動することが必須であり,腹腔内の癒着などにより腸管授動が制限される状況においては手縫い吻合を選択せざるを得ないこともあり,手縫い消化管吻合は今もなお外科医が習熟しておかなければならない手技であると考えられる.本稿では特に右側結腸切除後の手縫い小腸-結腸吻合について概説する.
器械吻合に必要な自動縫合器・吻合器は20世紀に大きく進歩し,現在は腹腔鏡下手術では不可欠となった1).自動縫合器・吻合器の基本的な特長は,縫合・吻合の際の時間短縮,出血量の減少,さらに術者の経験に左右されない安定した結果を期待できることであるが,手術を安全・確実に成功させるためには,器械の特徴,使い方の習得が必要である2).
まず,器械吻合はすべて漿膜面同士が接合する吻合であること,適切な組織の圧縮と確実な切離縫合が求められることを理解する.種類は,直線状の縫合を行うものを自動縫合器(linear stapler),環状の縫合を行うものを自動吻合器(circular stapler・環状吻合器)として扱うことが普通である.
近年,自動吻合器・縫合器の安全性・確実性の向上と簡便性から,消化器外科領域では縫合・吻合のほとんどを器械で行うようになり,大腸外科においても自動縫合・吻合器が頻用されている3).しかし,結腸右半切除術の小腸-結腸吻合においては未だに手縫い吻合が繁用されているのが現状である.
ここでは,自動縫合器,吻合器の代表的なものの特徴と実際の使用方法について述べる.
結腸亜全摘術後の回腸-直腸吻合術(ileorectal anastomosis:IRA)は,1943年にWagensteen1)により報告され,潰瘍性大腸炎や大腸ポリポーシスなど大腸全体に病変を認める疾患に術後の機能を考慮して行われてきた.
しかしながら,根治性と良好な術後の排便機能を合わせ持つ大腸全摘術,直腸粘膜切除術,J型回腸囊-肛門管吻合術が標準術式として確立し2),IRAは徐々に行われなくなり,近年は左側結腸癌の閉塞や汎結腸にわたる大腸憩室炎,結腸温存が困難な難治性大腸型クローン病に対する一期的手術の1つとして行われている.
最近ではdouble stapling technique(DST)による器械吻合が主流となりつつあるが,器械のトラブルや,ステイプルによる組織損傷を認めた場合など器械吻合が困難と判断される場合には手縫い吻合が必要となり,基本手術手技として重要であると考えている.ここでは,吻合の手技とその注意点について解説する.
直腸の切離と吻合をともに器械で行うdouble stapling technique(DST)は1980年KnightとGriffenらによってはじめて導入された.DSTは簡便で術野汚染が少なく骨盤深部でも比較的安全に吻合できる一方,器械の使用方法や特性を熟知する必要がある.本稿ではDSTを用いた回腸-直腸吻合につき解説する.
大腸全摘術は潰瘍性大腸炎(UC)や家族性大腸腺腫症(FAP)に対して行われる手術である.両疾患とも比較的若年者が手術の対象になることが多いため,全摘後は回腸囊と肛門あるいは肛門管を吻合し,自然肛門からの排便が可能になる回腸囊-肛門(管)吻合によって再建されることが標準になっている.本稿では回腸囊の作製法と,回腸囊と肛門あるいは肛門管との吻合法について解説する.
結腸-結腸吻合にも最近では器械吻合を行う施設が増加しているが,手縫い吻合は腸管再建の基本であり,これを十分に習得しておくと,予期せぬ事態にも対処できる.消化管の手縫い吻合には多くの方法が報告されているが,本稿では1層吻合の代表として,粘膜接合型のGambee吻合,2層吻合の代表として,漿膜接合型のAlbert-Lembert吻合について述べる.
いずれの吻合にしても,要点はまず①縫合不全を生じさせないこと.これには,吻合部腸管の血流に十分に注意すること,粘膜欠損を生じないように吻合すること,見た目に美しい等間隔な吻合を行うことが必要である.
次に,②吻合部の狭窄を生じないようにすること.吻合後の腸管は吻合部に浮腫を生じてしまうため,特に2層吻合では必要以上の内翻は行わないほうがよい.また,③吻合部の手術後出血を生じさせないこと.このためには,吻合時に出血が認められた部位には迷わず1針追加縫合を行うことである.
腹腔鏡下手術の普及や縫合・吻合器械の進歩に伴い,現在結腸切除後の吻合は手縫い吻合から器械吻合へと移行してきている.器械吻合の利点は誰がやっても手技が安定しており,吻合にかかる時間の短縮が図れることである.さらに手技を比較的短時間でマスターできる点もある.開発の歴史からも器械吻合は手縫い吻合の延長上にあり,手縫い吻合を含めた吻合方法・手技の基本および使用する器械の特性について十分理解しておく必要がある1~4).
本稿では,結腸切除後の結腸-結腸吻合の手技のポイントについて述べる.
直腸の切除手技である前方切除は,肛門側切離線が腹膜翻転部以下となった場合を低位前方切除,それ以上を高位前方切除と呼ぶ.吻合としては口側結腸と残存直腸の吻合を行う.吻合線が腹膜翻転部より口側になると,肛門側直腸に漿膜が残って腸管壁の強度が保たれるとされるが,残るのは前壁の一部であり,吻合での腸管壁の強度は高位・低位前方切除ともほぼ同じと考えられる.もちろん,低い部位での吻合である低位前方切除のほうが,視野の展開に工夫を要し,操作も難しくなる.
現在,前方切除では,保険で使用が認可されたため吻合器を用いる施設が多いと思われるが,諸事情で吻合器を使用できない場合には手縫いによる吻合も必要であり,習得しておくべきであろう.
直腸癌に対する系統的な切除術は,1908年に発表されたMiles1)の腹会陰式直腸切断術に始まる.その後の長きにわたり腹会陰式直腸切断術が直腸癌に対する標準的手術となったが,1980年にKnightとGriffenによってdouble stapling technique(DST)が紹介され,以降,低位で吻合する括約筋温存手術が確立されてきた2).
肛門括約筋温存手術,いわゆる低位前方切除術は下部直腸癌に対して最も行われている術式である.これまでの様々な手術器械の開発により,直腸低位における吻合がより安全に行われるようになってきたが,直腸癌はそれでもなお結腸癌に比べ縫合不全率が高いことが知られており,より確実な吻合法が求められる.本稿では低位前方切除術における吻合法,特にDST法について概説する.
1972年,St Mark's HospitalのParksは“transanal technique in low rectal anastomosis”について述べている1).当時,TurnbullあるいはMaunsell-Weirなどによる経肛門吻合法は知られていたが,いずれも肛門側断端を反転し肛門管外で吻合後に還納するものであった.Parksは,これらの方法は「より広範な剝離・授動を要し,その過程における支配神経の障害が懸念される」ものであると述べている.また肛門管上縁から1,2cm口側での経腹的吻合は,前立腺や腟の存在および直腸と肛門管の成す角度(anorectal angleあるいはflexura perinealis)により視野展開が悪く困難であり,natural portである肛門からの吻合が有用であると考えた.
Double stapling technique(DST)によってより低位での吻合が可能となった現在では,内肛門括約筋切除術(ISR)手術における経肛門吻合を別にすると,Parksにより行われたconventionalな経肛門的結腸-肛門吻合(colo-anal anastomosis:CA)はその適応が限られる.しかしながら腫瘍縁からのdistal margin(DM)の確保が不明確となる症例や,DSTにおけるアクシデントへの対処の1つとしても習得すべき手技であると考えられる.
近年,これまで直腸切断術を余儀なくされていた肛門にきわめて近い下部直腸肛門管癌に対する括約筋切除肛門温存術(intersphincteric resection:ISRやexternal sphincter resection:ESR)など肛門機能を温存した手術術式が普及してきた.内肛門括約筋や一部の外肛門括約筋を切除するこれらの術式の再建方法は,経肛門的結腸-肛門吻合術である.今回,本稿ではISR・ESR後の経肛門的結腸-肛門吻合術(縫合方法)について述べる.
ストーマ合併症の原因は造設時の手技によることが多いため,術前に適切なマーキングをした部位に,セルフケアが容易なストーマを造ることが重要である1).
消化管切除手術後の吻合には大なり小なり縫合不全のリスクが伴っている.縫合不全のリスクを高くする患者側因子としては,内科的併存症による全身状態不良,糖尿病,低酸素血症,低栄養,ステロイドの長期使用,腹膜炎の存在などが挙げられる.手術関連因子としては,口側腸管の血行不良や吻合部に緊張がかかることが予想されることなどがある.
上部直腸ないし直腸S状部癌手術において,一期的な結腸-直腸吻合を行わず,直腸断端を閉鎖し結腸断端を挙上して単孔式人工肛門とする術式を1923年にHartmann1)が報告した.この術式は,左側結腸癌や結腸憩室炎穿孔例,潰瘍性大腸炎重症例などの緊急手術例にも応用できるものである2).
ハルトマン術式における肛門側断端の閉鎖法には,手縫い縫合法と自動縫合器による方法がある.近年では後者が一般的ではあるが,ステイプル単独では縫合不全をきたす症例も経験する.したがって,消化器外科医としては手縫い縫合法についても熟知しておく必要がある.その手順について以下に概説する.
リンパ節郭清を必要としない直腸早期癌や一部の非上皮性腫瘍などでは,低侵襲手術として直腸部分切除術が適応となる.直腸部分切除術はアプローチの経路により,経肛門的切除,経仙骨的切除および経括約筋的切除に分類される.
経肛門的切除の方法としては,局所切除,内視鏡的切除,transanal endoscopic microsurgery(TEM)およびminimally invasive transanal surgery(MITAS)が行われる.また,経仙骨的切除の方法として,局所切除と管状切除が行われる.一方,経括約筋的切除は肛門挙筋や括約筋を切開する方法で,術野の展開がよいことが長所であるが,手術侵襲が比較的大きく術後合併症が多いことが欠点であり,その採用には慎重であるべきである.本稿では経肛門的切除と経仙骨的切除における縫合について解説する.
直腸脱は肛門外に直腸が脱出した状態で,粘膜のみが脱出したものは直腸粘膜脱(mucosal prolapse)と分類され,直腸全層が脱出した完全直腸脱(complete prolapse)とは治療法が異なる.
解剖学的な発生に関わる構造の異常として表1のような要因が挙げられるが1),これらは2次的変化に過ぎず,排便における骨盤底筋や肛門括約筋の機能失調が1次的要因であるとする説もある.直腸脱患者の多くは便秘を伴っており,直腸が脱出した状態で「いきみ」を長時間持続する習慣がついている.このため骨盤底筋や括約筋の弛緩状態が持続し,直腸脱自体とこれに伴う2次的変化がいっそう悪化し,悪循環になっているという考えである.
以上のような観点から,直腸脱の外科治療はそれぞれの症例の解剖学的病態を正確に把握して選択すべきであろうと考える.
歴史上,多岐にわたる術式が考案されているが,これらは①過長腸管の縫縮・切除,②肛門括約筋の補強,③S状結腸や直腸の固定,④骨盤底筋および括約筋の補強,⑤深いDouglas窩の閉鎖などに大別できる.修復の目的を理解し,症例に応じて術式を単独もしくは適宜組み合わせて病態に応じた選択をする必要がある.
以下に代表的な手術の手技の実際およびポイントを解説する.
ヒルシュスプルング病(以下,H病)は診断が確定すれば外科的治療は必須であり,肛門側の無神経節腸管を切除し,口側の正常神経節腸管を肛門部に吻合する結腸プルスルー法(PT法)が行われる(図1).腹腔鏡補助下PT法(LPT法)は1995年にGeorgesonによって考案された.本稿では,われわれの改良点を含めたLPT法について述べる.
今日,肝実質の縫合操作は,主として肝損傷を対象とした外科技術と認識される.一方,肝損傷の治療法として肝縫合という術式はありえないとの考え方もあり1),筆者としてもこの考え方には一理あると考えている.
肝切除時の肝離断面からの出血防止対策やその対応策として,肝縫合はかつて肝臓外科領域では応用頻度の高い手技であった.今日においても肝硬変例や出血傾向を伴う症例の肝切除などで肝離断面の出血防止対策として利用されている有用な手技ではあるが,今日の手術機器発達に伴い,この点ではその必要性が低下しつつある.
しかし,肝実質の縫合操作は消化器外科医,腹部救急外科医にとっては実際臨床上必須の手技であることは否めない.本稿では,その正確な手技のあり方とその実際を紹介する.
1989年から現在まで5,000件を超える生体肝移植が国内で施行されており,末期肝疾患患者を救命する有効な治療手段として日常診療に組み込まれた感がある.生体ドナーから提供されるグラフトは,部分肝であるがゆえにグラフト肝動脈が短くその口径はきわめて細い.そのため,肝動脈吻合には特別な手技と熟練を要し,生体肝移植手術のなかで最も注意を払う手技の1つといえる.
術後急性期に肝動脈血栓症が発生した場合,的確な対処が行われなければ,グラフト不全に至る可能性が高くなる.脳死移植が普及せず,再移植が困難なわが国では特に避けなければならない事態であり,本稿では筆者らがこれまで行ってきた肝動脈吻合法とともに,術後の肝動脈血栓症の診断と対処法について触れる.
転移性肝癌や肝内胆管癌をはじめとする腺癌などでは,ときに下大静脈や残肝の肝静脈への浸潤を合併する症例が存在する.これらの症例に対する積極的な合併切除再建は,その予後の向上に寄与する場合が少なからずある1,2).
下大静脈の再建法としては,下大静脈の切除範囲により単純縫合閉鎖,パッチ再建,リング付きゴアテックスグラフトによる再建,非再建の方法がある.肝静脈再建は適応症例は限られるが,浸潤範囲が1/4周程度を超えており距離がある場合にはグラフト再建が必要になる.本稿ではこれらの再建法を詳述する.
肝内胆管-空腸吻合術の適応は,肝門部胆管の良性閉塞あるいは切除不能な悪性閉塞に対して,胆管ステントによる内瘻化が不可能あるいは不確実な場合に,主として左肝内胆管と空腸を吻合し,胆汁のバイパス路を造設する手術である.古くはLongmireら1)が提唱した術式があるが,肝外側区域左側を部分切除し,断端に露出した細い肝内胆管と空腸を端側に吻合するため,吻合部狭窄や胆管炎を惹起しやすい欠点がある.
その点,Bismuthら2),中村ら3)の方法は,segment Ⅲの肝内胆管を長く露出し,空腸と側々吻合して広い吻合口を作ることにより,吻合部狭窄を起こすことが少ない.筆者らは彼らの方法に準じて,切除不能な胆囊癌,肝門部胆管癌あるいは生体肝移植症例における胆管-胆管吻合後の狭窄4)に対して肝内胆管-空腸側々吻合を行い,良好な結果を得ているので,その手技について述べる.
中部から上部にかけて存在する胆管癌は,術中迅速診断で断端癌陽性の場合には肝側に向かって追加切除を行う.そのとき,肝門板まで切離することが必要な場合がある1).また,胆管-空腸吻合術後の良性狭窄や,胆囊摘出術後の医原性狭窄でも,再手術にあたっては肝門板での切離が必要とされる.
肝門部胆管は肝門板内を走行しているため,壁は比較的しっかりしており吻合自体はそれほど難しくはないが,周囲の血管との剝離は慎重に行う必要がある.
本稿では,当教室で行っている肝門部胆管-空腸吻合の実際を述べてみたい.
胆道癌や膵頭部癌などの悪性腫瘍や,胆管狭窄,総胆管囊腫などの手術で胆管切除が行われる.その再建において,胆管-十二指腸吻合術は胆汁の流れが生理的な状況に近く,腸管-腸管吻合もなく簡便であるが,吻合部消化管内を食物が通ることにより逆行性胆管炎が起こりやすく,晩期の発癌が懸念されるため1),食物が胆管吻合部を通過しないRoux-en-Y式胆管-空腸吻合術が選択される場合が多い.
胆管-空腸吻合は手技的に比較的容易であり合併症の頻度も低い.しかし縫合不全や吻合部狭窄などの重篤な合併症をきたす例もあり,注意が必要である.膵頭十二指腸切除術での胆管-空腸吻合法を中心に手術手技について報告する.
従来,胆道再建術は胆道癌や膵頭部領域癌に対する手術における胆道切除後の再建手技として,あるいは膵胆管合流異常症に対する分流手術における再建時に行われ,胆管-空腸吻合術が基本手技となっている.さらに,先天性胆道閉鎖症などの難治性小児肝胆道疾患に対する治療として進められてきた生体肝臓移植術においても,その疾患特性から再建に利用可能な胆管が存在しないことが多く,レシピエント胆道再建は胆管-空腸吻合術が主流である.
一方で,近年の生体肝臓移植術の適応疾患拡大に伴い,成人生体肝移植症例が増加している.非代償性肝硬変や肝細胞癌に対する成人生体肝移植症例では,その対象疾患特性からレシピエント胆管が利用可能である.
そこで,胆管-空腸吻合術では必須の挙上空腸作製に伴う消化管離断や空腸-空腸吻合術を行う必要がなく,胆管-空腸吻合術よりもより簡便で,なおかつ生理的胆汁流出経路が確保できる再建法として胆管-胆管端々吻合術が施行され,当教室でも1999年7月以降,成人生体肝臓移植術においては胆管-胆管吻合を第一選択としている.
本稿では胆管-胆管吻合術の手術手技およびそのコツを述べるほか,注意すべき合併症とその対策についても概説する.
膵実質縫合は膵体尾部切除術の断端処理に必要な手技であり,主として膵体尾部に限局した膵癌が適応となることが多い.このほかに,悪性疾患では進行胃癌あるいは腎癌・副腎癌の膵浸潤や,他臓器からの膵転移,リンパ節郭清を徹底させる目的で膵体尾部の合併切除が必要な場合に適応がある.良性疾患では膵内分泌腫瘍・慢性膵炎・膵体尾部の外傷に対して,また良性・悪性境界領域疾患ではmucinous cystic neoplasm(MCN),intraductal papillary mucinous neoplasm(IPMN),solid-pseudopapillary tumor(SPT)に対して膵切除が施行され,最近では悪性所見が乏しい場合には,腹腔鏡下あるいは腹腔鏡補助下の手術が適応となる.
膵体尾部切除の際に問題となるのは術後膵液漏であり,その予防のために様々な膵実質縫合方法が報告されている.本稿では,膵体尾部切除の際に行う膵実質縫合・膵切離断端処理方法の実際につき述べる.
膵癌では門脈,上腸間膜静脈浸潤をきたすことが多く,癌を遺残なく切除するためには血管合併切除を必要とする場合が少なからず存在する.膵頭部癌における門脈合併切除群は門脈合併切除非施行群と同等の生存率が期待できると報告され,膵癌診療ガイドライン1)でも門脈合併切除により切除断端および剝離面における癌浸潤を陰性にできる症例に限って門脈合併切除の適応となるとしており,いまや門脈合併切除は膵臓外科領域では必須の手技となっている.本稿では,膵頭部領域癌における門脈再建を中心に門脈の縫合法について述べる.
膵管-膵管吻合は,今泉ら1)の提唱する膵再建術の1つであり,膵または膵管を完全に切離したうえで,膵(膵管)を膵(膵管)と吻合して膵液の流出路を作る再建法である.最近の画像診断の進歩に伴い,手術適応となる膵の限局性病変が診断される機会が増加してきたが,これらに対し臓器機能温存に配慮したいわゆる膵縮小手術が施行されることがある.特に膵中央切除術(MP)や十二指腸温存膵頭切除術(DPPHR)などでは,膵再建術に消化管を用いない膵管-膵管吻合が選択される場合がある1~5).本稿では,膵管-膵管吻合の実際とポイントについて述べる.
膵頭十二指腸切除術後の膵再建法には様々な方法がある.そのなかで膵管-空腸粘膜吻合は組織癒合に優れ,縫合不全(膵瘻)が少ないとされている1).しかし縫合不全の危険因子である膵管非拡張例(いわゆるsoft pancreas)では,膵管-空腸粘膜吻合の操作が技術的にやや困難であるというジレンマがあり,適切な手術手技を習得する必要がある.
本稿では膵管-空腸粘膜吻合の手術手技を述べ,さらに吻合を容易かつ確実に行うためにわれわれが開発した膵管ホルダー2)について紹介する.
膵頭十二指腸切除術の再建術式のなかで最も重要な吻合は膵-空腸吻合である.特に膵管の拡張がなく膵組織が軟らかい場合の吻合には注意を要する.膵断端空腸内嵌入法では,膵断端の膵組織が直接消化液に曝されて二次的障害を受けないように膵断端を空腸壁で十分に覆っている.縫合にはatraumatic needleの非吸収性縫合糸(ナイロン糸)を用いると出血,血腫形成も少なく強固な吻合ができる1,2).膵断端空腸内嵌入法は操作が簡単であり,膵を空腸内に重積させるので接合面が広く,強固で安全性も高いため賞用される術式である3).
膵切除後の膵-空腸吻合の合併症として,短期的には膵液漏と縫合不全,長期的には膵管吻合部の閉塞が挙げられる.前者ではときに致命的となり,後者では慢性膵炎の急性増悪を繰り返し最終的に膵機能の廃絶につながる.膵-空腸吻合に限らず,膵切除後の膵-消化管吻合を行ううえで最も重要なのは,このような合併症が起こらないような適切な吻合法を選択することと,確実な手術手技を行うことである1).
端側の膵-空腸吻合で吻合部にステントチューブを留置する方法(以下,tube法)は膵液ドレナージと膵管ステンティング効果によって前述の術後合併症が少ないといわれている.最近では,チューブを入れないno-stent法も多く行われているが2),これには確実な膵-空腸粘膜吻合が要求される.実際にはほかに複雑な要素が加わるためtube法とno-stent法の統計学的な有意差は明らかではないが,tube法に術後膵液漏が少なかったというRCTの報告もみられ3),経験の少ない術者や膵管が細い症例などで不安が残る場合はtube法を選択するのがよいと考える.
慢性膵炎に対する手術は,その臨床経過において日常生活動作(ADL)の視点から除痛対策として外科治療が適切であると判断され,患者がそのことに納得して初めてclose upされる治療法である1).
その施行に際しては,「可能な限りの疼痛の消失」,「慢性膵炎の再燃防止」,「膵機能の可及的温存」が目的として挙げられる.これら3要因を念頭に置き,評価できるとの予測ができての手術操作となることが良好なアウトカムとするための必須条件である1~3).同時に,術者としてあるいは助手として,吻合時における円滑な吻合操作内容を熟知していることが極めて重要である.
膵囊胞は,囊胞内腔に存在する上皮組織の有無によって,真性囊胞と仮性囊胞に大別される.真性囊胞は内面に上皮を有するもので,腫瘍性囊胞や貯留囊胞が含まれる.一方,仮性囊胞は内腔に上皮を持たず,慢性膵炎の急性再燃や急性膵炎,膵外傷後などに認められ,膵液,壊死物質,凝血塊などが貯留して器質化し,次第に線維性皮膜を形成したものと理解されている.
仮性囊胞は急性膵炎や膵外傷の症例に形成される急性仮性囊胞以外に無症状のまま偶然発見されるものも多く,慢性仮性囊胞と呼ばれている.一般には,慢性膵炎を背景とした主膵管あるいは分枝膵管の狭窄や破綻が起こって形成されるものが原因として最も多い.近年,各種画像診断法の普及に伴って膵囊胞性疾患が発見される機会が多くなり,その症例数が増加している.膵囊胞性疾患の鑑別診断は必ずしも容易な症例ばかりでなく,腫瘍性囊胞との鑑別が困難な仮性囊胞の症例も存在する1).
このように,膵仮性囊胞の診断には各種画像検査の結果や,その背景となる病因と病態に対する十分な理解が必要である.また,治療面では保存的治療から内視鏡・手術治療まで様々な治療法が開発されており,病態に応じた治療法の選択が必要となる.
膵仮性囊胞とは膵液や浸出液,壊死組織の融解物が線維または肉芽組織の壁で覆われたもので,急性膵炎,膵外傷や慢性膵炎などに起因する1).膵仮性囊胞の約25%は6cm以下の大きさで無症状であり2),経時的な画像診断による経過観察が可能である.大きな囊胞の場合には,疼痛,消化管通過障害,閉塞性黄疸,囊胞内出血,感染などの症状を有することがあり治療対象となる.また,経過観察中に囊胞の増大がみられた場合にも治療対象である.
膵仮性囊胞の成因,大きさ,部位,合併症に応じて治療法は選択される.治療法として外瘻,内瘻と切除があり,従来は外科的治療が主体であったが,経皮的,内視鏡的,腹腔鏡下治療などの低侵襲な治療法も行われるようになってきた.
膵仮性囊胞-消化管吻合術は囊胞の内容を直接消化管に誘導する内瘻術であり,近年は内視鏡的内瘻術も広まっているが再発率は外科的内瘻術のほうが低い.仮性囊胞の位置と周辺臓器の位置関係をCTやUSで確認し,囊胞へのアプローチ経路と吻合する消化管を決定する.仮性囊胞が網囊内に存在し,胃後壁が囊胞壁となっている場合には経胃的囊胞-胃吻合術が適応となる.胃壁と癒着していない場合には網囊を開き,胃後壁と吻合する仮性囊胞-胃吻合術や仮性囊胞-空腸吻合術が選択される.
ここでは,経胃的膵仮性囊胞-胃吻合術の手技を中心に述べる.
脾縫合術は,外傷あるいは術中副損傷によって生じた被膜裂傷から単純深在性損傷程度のものが適応となる.そのほかに脾臓の試験切除や脾部分切除断端処理などの際にも行われる.
わが国では外傷の大半は鈍的外傷であり,脾臓は肝臓とならび,腹腔内臓器のなかで最も外傷を受けやすい臓器である.脾損傷には直接外力が加わる圧縮力による組織の破壊と,脾臓が横隔膜・胃・膵・結腸などと固定・癒着しているため移動が阻止されることによって起こる引きちぎられるような損傷がある.術中副損傷は過度の牽引が原因となることが多い.最近は腹腔鏡下手術の合併症として散見される1).
近年,画像診断の進歩,interventional radiology(IVR)の普及,全身管理の向上により,循環動態の安定した脾損傷患者の初期治療は非手術的療法(non-operative management:NOM)が標準的治療となりつつある.また,開腹した場合にも脾摘後の易感染性のリスクから可及的温存への試みが行われてきた.外傷性脾損傷に対する初期治療としての外科的手術の頻度は23%~27%と低く2),一方,非手術的療法の成功率は83%~97%と高率である3).
本稿で解説する縫合技術とは,自動縫合器やクリップを用いず,持針器を用いて運針し,糸結びを実施する体内縫合を指す.様々な状況下においてこのような縫合技術が行えれば,内視鏡下手術の安全性は向上し,手術の応用範囲拡大(図1a,b,c),開腹移行の回避などにつながると考える.筆者は1991年から内視鏡下手術に積極的に縫合技術を取り入れ,多数の症例を経験してきた.本稿ではこれらの経験に基づき,筆者が行っている内視鏡下縫合技術について解説する.
食道胃接合部癌,食道浸潤胃癌や食道癌の一部では食道切除後に胸腔内吻合による再建が必要になる.これらに対する術式には定型手術はなく,個々の症例の病態や合併疾患に配慮した術式が採用されることが多い.開腹手術のみで対応できないときは多くは左開胸開腹アプローチが用いられるが,横隔膜切離を伴い胸壁創も大きいため,手術侵襲が大きい.同じ手術が小さな創で行えれば,低侵襲といわれる内視鏡下手術のメリットは大きくなる.
本稿では,われわれがこれまで経験した胸腔鏡下胸腔内食道-空腸(胃管)吻合症例の手術手技とそのポイント,pitfallを紹介する.
近年,腹腔鏡下の胃切除術が広まってきているが,その再建方法によっては皮膚切開法も用いる器機も異なる.本稿では,腹腔鏡補助下胃切除(LADG)術後Billroth-Ⅰ法再建(B-Ⅰ再建)の際に行われる様々な方法を解説する.
腹腔鏡下幽門側胃切除後のRoux-en-Y再建は,通常は上腹部正中5~6cmの小切開から腫瘍の位置や口側断端距離を直視下に確認するため,切除に引き続いて直視下操作で行っている.一方,内視鏡的粘膜下層切開剝離術(ESD)後の追加郭清目的や,下部病変で腫瘍の局在や断端距離が問題にならない場合は,腹腔鏡下の操作で行っている.
吻合の手順は,まず残胃からY脚の吻合部までの長さが25~30cmになるよう空腸-空腸吻合を行い,その後Roux脚を結腸前経路で挙上する.残胃-空腸吻合は,残胃大彎に自動縫合器を使って順蠕動性に側々吻合する.ただし残胃が小さい症例では,残胃縫合線の大彎断端に自動吻合器でhemi-double stapling(HDS)になるように端側吻合する.
腹腔鏡補助下でも完全腹腔鏡下でも同じ器械を使って同じ方法で行っており,本稿ではその手技のコツと注意点を述べる.
近年内視鏡下手術は,その発展・普及に伴い,悪性疾患に対しても適応が拡大されるようになってきており,胃癌でも中・下部領域の病変に対する腹腔鏡下幽門側胃切除術が多くの施設で行われている1).
しかし,切除後再建の技術的困難性もあり,胃上部癌に対する腹腔鏡下胃全摘術は未だ広く普及しているとはいい難い.われわれは胃上部癌に対しても積極的に腹腔鏡下胃全摘術を施行しているので,その再建手技を概説する2~5).