ひとやすみ・52
父親,息子,孫
中川 国利
1
1仙台赤十字病院外科
pp.125
発行日 2009年10月22日
Published Date 2009/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102775
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- 文献概要
息子と父親との関係は何かと難しいものである.父親は息子の成長を願い,何かと世話を焼く.そして息子は父親の背中を見ながら,親を乗り越えられるように努力を重ねる.しかし,父親は息子の未熟さを歎き,息子は父親の干渉に反発する.さらには,相互に相手を思いやりながらも互いのプライドがコミュニケーションを疎遠にする.一方,父親にとって孫は責任がないだけに可愛がる.そして,孫がどんな悪ふざけをしても父親は孫の行為をすべて受け入れて溺愛する.
10年ほど前に父親が鼠径ヘルニアになった.そこで,息子である私が局所麻酔下に手術を施行した.手術はいつものように進み,特に痛みを訴えることもなく終了した.術後に父親に手術を受けた感想を聞くと,「手術のときに少なからず痛みがあった」と答えた.「痛いと言ってくれれば麻酔薬を追加したのに」と言うと,父親は「手術をするお前の立場を考え,他人の前では痛いと言えなかった」と答えた.さらに術後しばらく経っても,「手術をした場所に痛みがある」としばしば訴えた.「術後に少しの痛みが残るのはしょうがないでしょう」と答えても,父親は私の行為に理解を示さなかった.
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