特集 できる!縫合・吻合
Ⅲ.部位(術式)別の縫合・吻合法
5.大腸
直腸・肛門脱手術の縫合
中島 紳太郎
1
,
高尾 良彦
2
Shintaro NAKASHIMA
1
1東京慈恵会医科大学附属第三病院外科
2順和会山王病院
pp.274-277
発行日 2009年10月22日
Published Date 2009/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102817
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
直腸脱は肛門外に直腸が脱出した状態で,粘膜のみが脱出したものは直腸粘膜脱(mucosal prolapse)と分類され,直腸全層が脱出した完全直腸脱(complete prolapse)とは治療法が異なる.
解剖学的な発生に関わる構造の異常として表1のような要因が挙げられるが1),これらは2次的変化に過ぎず,排便における骨盤底筋や肛門括約筋の機能失調が1次的要因であるとする説もある.直腸脱患者の多くは便秘を伴っており,直腸が脱出した状態で「いきみ」を長時間持続する習慣がついている.このため骨盤底筋や括約筋の弛緩状態が持続し,直腸脱自体とこれに伴う2次的変化がいっそう悪化し,悪循環になっているという考えである.
以上のような観点から,直腸脱の外科治療はそれぞれの症例の解剖学的病態を正確に把握して選択すべきであろうと考える.
歴史上,多岐にわたる術式が考案されているが,これらは①過長腸管の縫縮・切除,②肛門括約筋の補強,③S状結腸や直腸の固定,④骨盤底筋および括約筋の補強,⑤深いDouglas窩の閉鎖などに大別できる.修復の目的を理解し,症例に応じて術式を単独もしくは適宜組み合わせて病態に応じた選択をする必要がある.
以下に代表的な手術の手技の実際およびポイントを解説する.
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.