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はじめに
外科手術による胃の切除術は,切除する臓器である胃の量(切除範囲)によっていくつかの術式に分けられる.最も一般的な胃全摘術や幽門側胃切除術に対して,切除範囲を縮小する術式として噴門側胃切除術,分節切除術,楔状切除術,局所切除術などが挙げられる.これらの縮小手術のなかで分節切除術については幽門保存胃切除とほぼ同様であり(そもそも両者の相違は明確でない),また噴門側胃切除については他稿で解説されるので,本稿では楔状切除を含めた広義の局所切除後の縫合法を解説する.
楔状切除術とは,正常範囲を含めて胃を楔型(V字型)に切除する術式である.楔状切除を含めた胃の局所切除術を採用する目的としては(1)胃の容量を極力温存することで胃酸分泌や貯留能などの機能温存をはかること,(2)切除範囲を最小限とすることで低侵襲とすることが挙げられる.
胃局所切除の適応としては(1)良性疾患,(2)局所切除で十分な根治性が得られると考えられる疾患〔gastrointestinal stromal tumor(GIST)など〕,(3)早期の胃癌(現時点ではあくまで研究的段階であることに留意する),(4)進行胃癌でも全身状態などから手術を縮小して侵襲を最小限にしたい場合(姑息的)などが考えられる.早期胃癌への局所切除手術の適応について「胃癌治療ガイドライン」1)では「EMRと縮小手術の中間に位置づけられる手術法である」,また「いまだ研究的な治療法とみるべきである」としている.すなわち,胃癌に局所切除を適応する場合には近傍のリンパ節切除も可能ではあるが,郭清範囲が十分か否かは議論があり,“lymphatic basin”などの概念が検討中である2).
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