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症状(発症時期・発見の契機)
発症時期は術直後から術後早期が多く,術中に留置したドレーン排液より診断される.2011年International Study Group of Liver Surgery(ISGLS)により,術後3日目以降のドレーン排液中のビリルビン値が血清ビリルビン値の3倍以上の場合,または胆汁貯留に対するドレナージ処置や胆汁性腹膜炎に対して手術が必要な場合を胆汁漏と定義している1).術中にドレーンを留置しない場合,もしくはドレナージが不良の場合は,感染徴候が出現してから診断されることがある.また無症状に経過してCTを撮影して初めて診断される症例も存在する.稀に術後2週間以上経過してから遅発性に胆汁漏が発生する症例も存在するがその成因は不明なことが多い.術中のエネルギーデバイスによる胆管の熱損傷や胆管吻合部の血流障害などがその原因として推測されている.
胆汁漏の発生頻度は,National Clinical Database(NCD)Feedbackによると7.66%(2013〜2017肝切除術後・全国集計)とされており,肝胆膵外科領域では決して稀な合併症ではなく,常にその可能性を念頭に置き術中操作,術後管理を行う必要がある.胆汁漏の発生頻度を低下させるためには,胆汁漏を起こさない確実な手術手技が重要であることはいうまでもないが,それ以外にも術中胆汁リークテスト〔色素法・インドシアニングリーン(ICG)法〕,術中胆管造影,肝離断面へのフィブリン糊の散布などさまざまな工夫がなされている.しかし,いずれの対策でも胆汁漏を完全に防ぐことは困難で,胆汁漏は肝内胆管から乳頭部まで胆道のいずれの部位からも起こり得る.肝切除では肝切離面の胆管から,膵頭十二指腸切除や肝移植などの胆道再建を伴う手術では胆管・空腸吻合や胆管・胆管吻合部から,胆囊摘出術,総胆管截石術では胆管,胆囊管閉鎖部や胆管損傷部から胆汁が漏出する.乳頭部近傍の十二指腸損傷でも胆汁様の腸液の漏出が起こり,時にその鑑別が困難となる.
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