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PPPDの立場から
PPPDの最大の特長は,幽門輪が機能することにより食物の適切な胃内停滞時間が確保でき,急激な血糖値の上昇や,小腸負荷が原因となる下痢などを緩和できることである.PPPDを選択するメリットとして,メタアナリシスの結果から次の点が挙げられる.①PPPDはPDと比較して術中出血が少なく,手術時間が短縮される.②PPPDは補助化学療法による有害事象を最小化できる.③PPPDとPDでは手術根治度に差がない.④PPPDとSSPPDでは術後合併症や手術死亡率に差がない.⑤PPPDは長期的にみて栄養状態が良好である,⑥PPPDはガイドラインにおける推奨による妥当性がある.
われわれは,PPPD再建にtwisted anastomosisによるstraight methodを行っている.DGEはISGPS(A/B/C)で2.1%/1.0%/0%であり,DGEが臨床的に問題になることがないため,術式の変更を考慮する必要性がない.
一方,PPPDのデメリットとして,制酸剤を処方する必要がある点を挙げることができる.
SSPPD;PrPDの立場から
①胃排泄遅延の発生からみたメリット
幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PpPD)では胃の貯留能は温存されるが,郭清に伴う迷走神経支配の喪失や血流の乏しくなった幽門輪の存在は胃排泄遅延の危険因子になる可能性がある.幽門輪のみを切除し,すべての胃を温存する幽門輪切除膵頭十二指腸切除術(PrPD:SSPPD)とPpPDとのRCTを施行した.胃排泄遅延の発生頻度はPrPD 3例(4.5%)(grade A 1例,B 1例,C 1例),PpPD 11例(17%)(grade A 6例,B 5例,C 0例)でありPrPDで有意に減少した(p=0.0244).
②SSPPD;PrPDを選択した場合のデメリット
長期成績として術後2年間フォローし,晩期合併症,栄養評価(アルブミン値,プレアルブミン値)および体重変化を評価した.両術式ともに晩期合併症に有意差はなく,栄養状態および体重変化は同等であった.PrPDは長期成績である晩期合併症,栄養状態,体重変化においてPpPDと比較して遜色のない有効な術式であり,SSPPD;PrPDを選択した場合のデメリットはない.
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