- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
消化器外科領域における消化管吻合術はsurgical site infection(SSI)に関連しての医療経済節減や患者の術後短期・長期にわたるquality of life(QOL)の改善に重要である.安全で確実な吻合についての基礎知識と十分な経験が必要となり,基本は縫合不全や吻合部狭窄を起こさないことである.幽門側胃切除後の再建には種々の方法があるが,それらを比較・検証した臨床試験やガイドラインで規定された標準術式はなく,術者(施設)が一番慣れている方法か症例に応じて判断しているのが現状である.幽門側切除後の再建法としては大きく分けてBillroth Ⅰ法(以下,B-Ⅰ),Billroth Ⅱ法,Roux-en-Y法(以下,RY),さらに最近ではパウチの付加も試みられている.1881年にBillrothによってはじめて幽門側胃切除術が成功して以来,B-Ⅰは現在まで種々の改良が加えられ,今なお広く行われている再建法である1).
B-Ⅰの特徴として吻合部あるいは断端閉鎖部の数が少なく簡便であること,食物の流れが自然で生理的であること,盲端(十二指腸)を作らないこと,術後胆道系の内視鏡的検査・治療が可能であるなどの利点が挙げられるが,吻合部に緊張がかかる,逆流性胃炎・食道炎が多い,RYと比較して縫合不全が多いなどの指摘もある.実際に,残胃が小さくなる場合や食道裂孔ヘルニアが原因で術前から逆流性食道炎を認める例や,膵頭・十二指腸周囲に再発するリスクの高い症例に対しては,B-ⅠよりRYが適応と考えられる.1999年に行われた日本胃癌学会のアンケート調査結果では基本的な再建法として60%の施設がB-Ⅰを行っているが,再建法を限定する必要性はなく,病態によって使い分けることが重要である.
また,内視鏡下手術はもとより開腹手術においても自動吻合器・縫合器の開発によってより安全かつ簡便に行われるようになったが,基本はあくまで手縫いによる吻合法であることに変わりはない.
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.