生体の科学 40巻4号 (1989年8月)

特集 研究室で役に立つ新しい試薬

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 最近の試薬の進歩は,とくに分子生物学,細胞生物学領域で著しいものがある。たとえば,ある論文が「Cell」に出て,いくつかの新しい試薬を駆使しているとする。数ヵ月後それらをキットにしたものが売り出されるといった状態である。研究者がしなくてはならないことに,Sigma,mersham,BioRad,国内ではフナコシ等の広告に,絶えず目を通さねばいけなくなったということは,昔と違ったことであろう。

 本号はこのような試薬の進歩をふまえて,主として細胞生物学,生化学領域を中心に,生理学,薬理学の領域でも次々と出てきている新しい試薬をまとめてみた。機能別に大まかな分類を行って,それぞれの機能を知るために最近使われてきた試薬を取り上げ,それぞれの研究室で使うノウハウもできるだけ書いて頂いた。各分類の編者の方に総論を書いて頂き,各論は編者の方々から指定して頂いた。したがって各論の各項目はそれぞれの編者の方々の方針が出て個性的なものとなっている。

基礎試薬(一般実験試薬) 分子量マーカー

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 蛋白質の分子量決定ということはひと昔前は非常に大事なことであった。沈降分析,光散乱,浸透圧,そしてゲル濾過,電気泳動と種々の方法が行われ,比較され議論された。生物物理化学の重要な部門であった。現在,cDNAクローニングでDNA配列が決まり,アミノ酸配列が400KDという巨大蛋白質でも決まってしまう時代となった。これは文字通りアミノ酸の一つ一つがわかった真の分子量で,従来のように形を仮定したみかけの分子量ではない。細胞生物学,分子生物学の進歩が次々と新しい蛋白質を見出してくるようになると,cDNAクローニングやプロテインシーケエンサーによってアミノ酸配列が決まる前におおよその分子量の検討がつけたくなる。nativeに近い状態で蛋白質を精製してくるゲル濾過,とくにそのHPLCで分子量の見当をつける分子量マーカーが必要となる。一方,その純度をチェックするSDS-PAGE上での分子量マーカーは重要である。それも高分子,低分子といろいろ問題があり,さらにBlotting使用,オートラジオグラフィー上など応用がいろいろ必要である。これらについて簡単にまとめ,終りに分子量マーカーではないが等電点電気泳動マーカーについてもふれておく。

 この領域は各社製品がキットとなって売られており,それぞれ詳しい解説書も各社から出ており,それに従えば何不足なく実験できる。

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 ゲル濾過における分子量マーカー

 分子ふるいとしてのゲル濾過は分子の大きさを基準として分子をわけるという原理から蛋白質精製にとって基本的なものである。網目の中を分子が入りこんで移行していくために分取時間を要することが欠点だったが,HPLC-ゲル濾過の登場の結果,迅速に分離できるようになり,現在非常に広く使われている。後述するSDS-PAGEなどとは異なってnativeな状態で分離できるのでnativeな粒子の分子量を知ることが可能になる。すなわちSDS-PAGEでサブユニット分子量が既知の時,何量体であるのかを知る事ができるわけである。そこで分子量マーカーが必要になってくる。このためには純粋な分子量の異なった蛋白質を購入し,または精製して混ぜ用いれば良い。しかし分子形が鎖状であったり異状形であったり,相互作用を起こしたりすると標準とはならない。いくつかの社から球状蛋白質の混合キットが市販されている。たとえば生化学工業から255〜450KD間9個の蛋白質,ポリペプチド混合と451〜6.5KD間の8個の低分子蛋白質,ポリペプチド混合,Sigmaからは6.5KDから66KD間の4個の蛋白質キット,12.4KDから200KD間の5個の蛋白質キット,29KDから669KD間の6個の蛋白質キットの3種が市販されている。

基礎試薬(一般実験試薬) 界面活性剤

界面活性剤(総論) 武居 能樹
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 界面活性剤の膜タンパク質に関わる利用面に話を限定する。膜タンパク質は細胞社会での物質交流,エネルギー変換および情報伝達において重要な働きをしている。膜タンパク質の機能の研究を現象的な記述に留めず,分子論的な解析にまで進めていくためにはその分子構造を知ることが不可欠であり,それには純化した膜タンパク質の獲得を経るのがもっとも確実な道である。膜タンパク質の膜存在様式はそのcDNAから推測されるアミノ酸配列に基づいて考察できるが,現状では,推定された存在様式はまったく一つの可能性を示しているに過ぎない。現在,タンパク質の構造を知るのにもっとも有力な方法はX線結晶解析法である。膜タンパク質の結晶化は非常に困難であったが,最近,いくつかの膜タンパク質が結晶化され1),他の膜タンパク質についても結晶化は夢でなくなってきた。膜タンパク質を無傷のまま可溶化できるのは一般的には界面活性剤しかなく,結晶化を含めてその精製の成否を左右する重要なポイントは如何なる界面活性剤を使用するかにある。そこで,界面活性剤の使用に関して具体的な一般的指針があれば好都合である。しかし,多くの研究者が様々の界面活性剤を用いて種々の膜タンパク質を可溶化,精製してきて明らかになったことは,端的にいえば,「この膜タンパク質にはこの界面活性剤がよいと予見することはできない。どれと限ることなく色々と試みて見よ」ということである。

界面活性剤(各論) 藤田 道山
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 双生イオン性界面活性剤

 陽イオン基と陰イオン基の両方をもつ界面活性剤である。以下で扱うこの部類の代表格であるCHAPSとCHAPSOでは陽イナン基はアンモニウム基,陰イオン基はスルホン酸基である。正味の電荷がないから非イオン性界面活性剤のごとく振舞う。

基礎試薬(一般実験試薬) バッファー

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 ■基本

 バッファー(緩衝剤)とは衝撃(この場合急速な水素イオンの発生または消失による水素イオン濃度の変化)を緩和する試薬である。

 一般に共役酸・塩基(HAとA)の間には以下の関係が成り立つ。

  HA⇒H++A-

  Ka=(H+)(A-)/(HA)

  pH=pKa+log[(A-)/(HA)]

 最後の式をHenderson-Hasselbalchの式という。また,上では酸の解離を考え,その定数をKaとしたが,同様に塩基の解離を考え,その定数をKbとすると,両者のあいだにはKa・Kb=KwすなわちpKa+pKb=14の関係がある。しかし,一般にはKaだけで議論ができる。

バッファー(各論) 藤田 道也
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 以下に挙げる緩衝剤は総論(とくにその図4)で取り上げたものである。それらの中には本増大号の趣旨("新しい")に合わないものも少なからず含まれていると思う。また,そのデータを企業のカタログに拠ったものも少なくない。しかし,あるバッファーを使用する際に単に先行論文に従ったり,口伝えをそのまま信用したりしていることが多いことを思えば少し古いものも含めてここでそれらを綱羅し,それらに関するデータの典拠を個個に記しておくのも価値のないことではないだろうと思われる。以下のバッファーの使用例に関して統計をとってみるのもおもしろいと感じたが今回は間に合わなかった。利用者のご批判を仰ぎ後日の参考にさせていただきたい。

基礎試薬(一般実験試薬) タンパク質の定量法

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 タンパク質の定量は簡単なようでいて難しい。すでに方法がいくつも考案されているが,いまだに決定的な方法がないことは最近になってもいくつも新しい方法や改良法が考案発表されているところからも明らかであろう。この難しさは定量されるタンパク質の複雑さに基づく。つまり原理的にタンパク質ごとの発色能率の違いをなくすことが不可能であるうえ,取り扱い上どうしても含まれる夾雑物の影響があるからで,将来的にもすべての試料に適用できるような理想的な方法の開発は望めないと思われる。したがって測定方法を選択するには,はじめに誰かから習った方法をそのまま踏襲し,必要に応じて新しい方法を選択するという安易ともいえる態度でよいように思われる。これまでの方法の詳細や文献はやや古くはなったが菅原・副島1),および中尾・中尾2)にゆずり,ここではおもにそれ以後の方法を記すことにする。

 また,タンパク質の定量法が困難といっても特定のタンパク質の個別的定量法については純化されていれば当然可能のはずであるし,夾雑物があっても免疫定量法により精密な測定が可能であるので,以下は種々のタンパク質の混合物の定量法に話を限りたい。

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 各論的に方法をいくつか紹介したい。総論の部分にも書いたが,従来の方法についてはすでに詳細な紹介が単行本1)や実験講座2)のなかに書かれているので,最近の文献からいくつかをひろって紹介することにする。また正直なところ筆者自身が十分に知っている方法ばかりではなく,受け売りが多いこともあらかじめお断わりしておく。

蛋白質,その他修飾試薬 SH試薬

SH試薬(総論) 山本 啓一
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 システイン残基のSH基のpKは多くのタンパク質で8付近にあり非常に反応性の高い基の一つである。この高い反応性のためSH基はパパインやカテプシンなどのタンパク質分解酵素の活性中心にあってペプチドの加水分解反応を触媒している。また,タンパク質中のシステイン残基数はそう多くはないので,この高い反応性を利用して特定の部位を螢光やスピン化合物で標識することができ,その部位で起こる構造変化を螢光波長のシフトやスピン緩和時間の変化から検出することもできる。さらに他の反応性基(リジンのεアミノ基など)を別な螢光試薬で特異的に標識すれば,螢光試薬間のエネルギー移動から両残基間の距離を測定することもできる。一方,SH基はタンパク質内でS-S結合を作りタンパク質の構造を安定化させている。一般的に言ってSH基を持つタンパク質は細胞内のものに多く,細胞外タンパク質でSH基を持つものは少ない。細胞内ではグルタチオンによる還元的雰囲気のためタンパク質のSH基が保護されていると考えられる。こうしたタンパク質のSH基と反応する化合物をSH試薬と呼ぶわけだが,先に述べたように反応性が高く特異的な修飾が可能なため,この本の中の他の項目に分類されている試薬にもSH試薬が多数ある。

SH試薬(各論) 山本 啓一
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 2-ニトロ-5-チオシアナト安息香酸〔2-Nitro-5-Thiocyanatobenzoic acid,NTCB〕

 この試薬はシステイン残基のSH基と特異的に反応しそのN末端側をかなり効率よく切断する。タンパク質中のシステイン残基数はあまり多くはないので大きなペプチド断片が得られ,一次構造の決定に役立つ。反応は図1のように進む。図1でわかるように生成したC末端側のペプチドのN末端はブロックされているので直接エドマン分解を行えないのが欠点である。ラネーニッケルを用いN末端を再生することも可能ではあるが1),条件が少々過酷すぎてペプチドへの適用には問題点が多い。

蛋白質,その他修飾試薬 光反応試薬

光反応試薬(総論) 岡本 洋
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 酵素と基質,レセプターとリガンド,などにみられる特異的認識機構は,生物現象を特徴づけるものである。これらの相互作用は,多くの場合,蛋白質などの巨大レセプター分子と比較的低分子量のリガンドの間で起こる。巨大分子上に局在する結合部位の性質を知ることは,特異的認識の生理的意味を理解するために欠くことができない。

 結合部位の局在を知るためには,何らかの目じるしを付ける必要がある。SH基やアミノ基などの反応性の高いアミノ酸残基と反応する基を組み込んだアフィニティラベル試薬が多数用いられてきた。この方法の問題点は,結合部位に反応性のあるアミノ酸がなければ標識できないことと,目的部位以外でも反応性の高い残基があれば,反応してしまうことである。この点を解決するには,結合部位でのみ標識が行われ,どのようなアミノ酸とでも共有結合できる試薬が必要になる。光反応性試薬は,この要求を満足させるものである。結合部位との特異性の高い相互作用と,ラジカル反応の非選択性を兼ね備えたフォトアフィニティラベルは,分画や精製の手があまり加えられていない,自然に近い実験系で,今後その重要性が増していくものと思われる。すぐ使える市販の試薬は限られているが,合成に便利な中間化合物が市販されている。一般にまだなじみのうすい光反応試薬の特性と,それを川いた実験を行うための留意点を述べる。

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 ■構造

 カテコールアミンは図1に示すようなカテコール骨格と塩基性側鎖を有する3種のアミンの総称である。側鎖の水酸基の結合している炭素は,不斉であり,生理活性を示すのはD-マンデル酸から誘導されるので絶対配位はD体である。しかし旋光度は左旋性を示すのでι-と表記されていることもある。

Con Aのフォトラベル 別府 正敏
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 p-アジドフェニルα-D-マンノピラノシド

 Concanavalin A(Con A)は,マンノースに親和性を持つレクチンであり,その糖結合部位のフォトアフィニティラベルとして,ρ-アジドフェニルα-D-マンノピラノシド1),4-アジド-2-ニトロフェニルα-D-マンノピラノシド2)(いずれもナイトレン前駆体),4-ジアゾアセトアミドフェニルα-D-マンノピラノシド2)(カルベン前駆体)が合成されている。このうち,実際に糖結合部位への特異的ラベルが確認されたのはρ-アジドフェニルα-D-マンノピラノシド(図1)であり1,3,4),ここではこの試薬を紹介する。

3H-ニトレンジピン 平田 肇
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 ■特性および構造

 ニトレンジピンは,いわゆるカルシウム拮抗薬として知られる1,4-ジヒドロピリジン誘導体の一つである。カルシウム拮抗薬は,狭心症,不整脈あるいは高血圧などの治療に用いられ,臨床的な有用性が高いが,とくに心筋や平滑筋などにおけるL型Caチャネルの特異的阻害剤であることが明らかにされて以来,Caチャネルの研究に広く用いられている1)。これらカルシウム拮抗薬の中でニトレンジピンの3H標識化合物がもっとも早期に市販され,L型Caチャネル同定のリガンドとして用いられている。

 ニトレンジピンの構造式は図1に示すとおりで,化学名:ethyl methy1-1,4-dihydro-2,6-dimethyl-4-(m-nitrophenyl)-3,5-pyridine dicarboxylate。分子式:C18H20N2O5。分子量は360.37で,淡黄色の結晶性粉末で無臭である。融点は157〜160℃,水にはほとんど溶けないが,クロロホルム,エタノールなどによく溶ける。遮光して保存。

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 ■構造・特性

 1)(+)PN 200-110(PN)は1,4-dihydropyridinc(DHP)誘導体の一つであり,その構造式を図1に示す。2)分子式はC19H21N3O5,分子量は371.4,黄色で結晶性粉末である。融点は166〜170℃,溶解性は25℃の時,水の場合0.01以下,エタノールは6.7,ポリエチレングリコールは0.9である。3)光に不安定である(nifedipineの場合,350〜500nmの波長により分解されやすいことが報告1)されており,PNの場合も同じと考えられる)。4)PNは電位依存性Caチャネル,とくにL-型のCaチャネルを選択的に抑制する。その作用はDHP誘導体中でもかなり強力で,また選択性も高い。

蛋白質,その他修飾試薬 ビオチン—アビジン試薬

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 ビオチン(Biotin)(ビタミンH)は図1に示す分子構造を持つ。一方,卵白中には,アビジン(avidin)と呼ばれるビオチンに強く結合するタンパク質が存在する。また,streptomyces avidiniiという細菌はストレプトアビジン(streptavidin)というアビジンよりすこし小さいが機能はアビジンにそっくりなタンパク質を生産する。アビジンは分子量17,000のサブユニット4個からできており,4箇所のビオチンに対する結合部位を持っている。アビジンとビオチンの相互作用は,自然界に存在するタンパク質とリガンドの結合としてはもっとも強く,その解離定数は10−15Mにも達する。生化学,分子生物学あるいは細胞生物学の分野で,この強いアビジン-ビオチン間の結合を利用したさまざまな試薬や実験法が開発されている。アビジンは塩基性の強いタンパク質で他のタンパク質と非特異的な相互作用をしやすいので,市販の試薬キットなどではアビジンと同じ機能を持ちながらこのようなことのないストレプトアビジンを用いることが多い。ただ,ストレプトアビジンはアビジンに比べて高価なので(フナコシ薬品などが市販している),アビジンをスクシニル化し非特異的吸着を減らして利用することも可能である1)。またメーカー(Vector社注1))によっては非特異的吸着の少ないアビジンをアフィニティクロマトグラフィで精製して販売しているところもある(商品名はavidin D)。

核酸の検出 藤多 和信
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 ■ビオチン標識プローブの有用性

 従来の放射性同位元素を用いた方法と比較して,ビオチン標識プローブ法1)は,①法的制限なく使えること,②廉価であること,③プローブを長期保存できること,④とくにin situハイブリダイゼーションに応用すると検出時間を大幅に短縮できる上,解像性に優れていることが長所である2)。最近,特定の染色体の核内局在の解明に応用した例が報告された3)。また,アビジンセルロースと組合せて,特異的に核酸やその結合蛋白質を分離することも可能である4)。SouthernおよびNorthernブロットハイブリダイゼーションでは32Pに匹敵する感度が得られている5)

タンパク質の検出 須藤 和夫
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 ■抗体のビオチン化

 何らかの理由で抗体のビオチン化を自分でやらなければならない場合,市販のビオチン化キット(たとえばAmersham社)を用いればプロトコールがしっかりしているので簡単でよい。自分で薬品やカラムを集めてやらなければならない場合には次のようにする。アフィニティ精製したIgGあるいは硫安分画-DEAEカラムできれいにした総IgGフラクションを0.15M NaCl,50mMトリエタノールアミン-HCl(pH 8.5)に溶かす(1〜10mg/ml)。NHS-ビオチンあるいはその類似化合物(Pierce社でさまざまなものを市販している)を10mMになるようにジメチルフォルムアミド(DMFA)に溶かし,これと数mgのIgG溶液とを混和する。このときDMFAの最終濃度が1%を越えないようにする。NHS-ビオチンの最終濃度は,タンパク質とのモル比で10:1(NHS-ビナチン:IgG)前後に成るようにする。IgGの濃度が濃い場合は,NHS-ビオチンの濃度を低めにしてよい。室温で1時間から3時間反応させ,これを0.15M NaCl,20mMリン酸バッファー(pH 7.0)(PBS)で平衡化しておいたG25カラム(1cm×20cm)に通す。PBSで溶出し,す抜け画分を集める。このときあまり最後まで集めると未反応のNHS-ビオチンが混入するので,適当なところでやめておく。これをPBSに対して透析し,4℃で保存する。

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 ■特性

 近年,金コロイドが電子顕微鏡観察に用いられるようになってきた。金コロイドは電子密度が高く観察が容易であるのに加え,任意の大きさの粒子を目的に合わせて選択できるという利点がある1)。金コロイド標識した蛋白質を用いた手法のなかでもビナチン=アビジン系は,反応が起こりやすく(会合速度定数:108M−1 sec−1),複合体も安定である(解離定数:10−15M)という特徴を持ち,応用範囲も広く利用価値が高い。

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 アビジン分子を標識として用いて,蛋白質の特定部位の位置を電子顕微鏡により直接決定することができる。SH基用にはIAA-biotin(N-iodoacetyl-N'-biotinylhe-xylene dlamine)を用いる方法1),ATP結合部位用には光反応性ビオチニル化ADPを用いる方法2)が,須藤らにより開発されている(須藤の総論参照)。アビジンは4×5.5×5.5nmの大きさ3)で電子顕微鏡による観察が容易であることと,ビオチンとアビジンの結合が非常に強いこととが,当方法を有用ならしめている。

 まず,修飾反応により蛋白質をビオチニル化する。これをアビジンと混ぜてアビジンを結合させ,電子顕微鏡で観察するという手順で行う。

蛋白質,その他修飾試薬 蛋白質の架橋試薬

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 蛋白質の架橋試薬として有用なものの条件は次のようなことが考えられる。反応性が高く,収率がよくなること,蛋白質の機能を損わないこと,架橋の度合をコントロールすることができることなどである。しかし,従来蛋白質の架橋試薬は蛋白質の構造と機能の関係を明らかにするための研究や蛋白質を疾患の診断,治療に利用するための研究など多くの目的に利用されてきたので,それぞれの目的に適した架橋試薬は異なるかもしれない。筆者は酵素分子と抗体分子を架橋することにより高感度酵素免疫測定法を開発してきたので,この経験に基づいて記述するが,その内容が他の目的のためには必ずしも適切でない可能性もある。こうした点に留意してお読み頂ければ幸いである。

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 合成ペプチドに対する抗体を得るために動物を感作するには,合成ペプチドを担体とするタンパク質に共有結合させたほうが能率がよい。

 架橋剤としては,(1)アミノ基相互間を架橋するグルタールアルデヒドや二価のジアゾ化合物,(2)アミノ基とカルボキシル基との間にペプチド結合を作らせる水溶性のカルボジイミド剤,および(3)チオール基とアミノ基とに反応する異反応性の二価試薬などが用いられる。このうち北川らがはじめに報告した,(3)に属するm-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)1)は水に難溶性であり,不安定であるとも指摘されるが抗ペプチド抗体を作る目的に従来からよく用いられている。種々の架橋剤と比較して結合安定性がグルタールアルデヒドにやや劣る2)が,抗体産生性3)は満足できるものとされている。

蛋白質,その他修飾試薬 螢光ラベル試薬

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 螢光分析法の特徴は,高感度高選択性にある。近年,光発生装置の高性能化,高輝度レーザー発信装置の普及,発光を捉える光計測技術の長足の進歩などにより,その特徴が際だったものになり,医学薬学の分野で大いに活用されるようになった。フルオロイムノアッセイ,フローサイトメトリー,顕微螢光測光法の実用化などはその現れであろう。一方,無螢光の生体物質を螢光物質に変換する螢光ラベル化試薬,あるいは新しい螢光反応の開発などがあり,ピコモルレベルの物質の検出,定量が可能な方法としての螢光分析法の普及が著しい。本節ではこの螢光ラベル化試薬を取り上げた。

 生体物質であるアミノ酸,ペプチドなどと反応して,それらの物質を高感度あるいは,高選択的に検出するときに用いる螢光ラベル化試薬の多くは,各アミノ酸やペプチドなどの官能基(functional group,アミノ基,チオール基,カルボキシル基など)と反応してそれらを螢光誘導体に変換する螢光ラベル化試薬である。たとえば,無螢光のアミノ酸のアミノ基と反応して螢光性のアミノ酸誘導体を与える試薬や,無螢光のプロスタグランジンのカルボキシル基と反応して螢光性のプロスタグランジン誘導体を与える試薬などがその例である。

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 1.NBD-F1)

 ■構造および特性

 NBD-F(4-フルオロ-7-ニトロ-2,1,3-ベンゾナキサジァゾール)は,それ自身は無螢光であり,図1に示すように第一アミンおよび第二アミンと反応し螢光誘導体を与える。その螢光波長が530nm,ならびに励起波長が470nmと長波長であるため,生体試料などに共存する低波長の螢光(300〜400nm)を有する螢光物質の影響を受けにくく,アミン類の選択的で高感度な分析を可能にしている。NBD-Fはアセトニトリルに溶解し冷蔵庫に保存すると1週間は安定であるが,エタノールに溶解し,用いるときは1日しか活性がもたず,要時調製する必要がある。

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 1.モノブロモビマン(MBB)1)

 ■構造および特性

 MBB(4-ブロモメチル-3,6,7-トリメチル-1,5-ジアザビシクロ〔3,3,0〕オクタ-3,6-ジエン-2,8-ジオン)は黄色の結晶で(融点142℃,実際に合成してみると文献値1)より数度高いようである),図1に示す構造をもち,組成式C10H11BrN2O2,分子量271.21,結晶状態では暗所にて数ヵ月以上保存可能であるが,溶液状態では光の照射により徐々に分解するので遮光する必要がある。

 MBB自身は無螢光であり,蛋白質中のチオール基と反応し,その生成物の励起波長390mm,発光波長482nmで強い螢光を発する安定な生成物を与える。

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 ■特性

 1,2-ジフェニルエチレンジアミン(メソ体,DPE)はすべてのカテコールアミン(ノルエピネフリン,エピネフリンおよびドーパミン)をfmolレベルで検出可能とする高感度性と生体試料へ応用する場合,試料の前処理を容易にする高選択性を兼ね備えた試薬である。DPEはフェリシアン化カリウムの存在下,緩和な条件(pH6.5〜7,0〜50℃)でカテコールアミンと反応して螢光誘導体を与え,これらは逆相HPLCで分離できる1-3)。またDPEはポストカラム誘導体化反応にも適用可能で前処理も自動化した自動分析計が市販されている。

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 現在知られているカルボン酸の螢光試薬は主として,高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のプレラベル化剤として用いられており,本文中"誘導体化法"とあるのは,プレラベル化法を指す。

グアニジノ化合物 三浦 敏明
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 ■目的

 アルギニンをはじめとし生体内には多種類のグアニジノ化合物が存在するが,それらの体液中の濃度は肝の尿素サイクル異常(高アルギニン血症,アルギニノコハク酸尿症など)や腎機能異常(腎不全,尿毒症など)と関連して増減する。それゆえ,これらの病態解析の重要な手段としてグアニジノ化合物の迅速で高感度な測定法が求められるようになってきた。

活性制御試薬 蛋白質分解酵素抑制薬

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 ■プロテアーゼの分類

 現在ではプロテアーゼは図1のように分類されることが多い。この図に従ったプロテアーゼの分類,性格づけ,生物学的意義などを調べるために多種多様なプロテアーゼ抑制剤が用いられる。プロテアーゼ抑制剤には天然のものと合成のものがあるが,本項では合成抑制剤を中心とした。とくにセリンプロテアーゼの天然の抑制剤にはアブロチニンのように治療にも応用されているものもあるが,それらは他の成書を参照して頂きたい。

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 ■プロリルエンドペプチダーゼ

 プロリンを認識し,そのカルボキシル側を切る酵素で,その性質からポストプロリン切断酵素とも呼ばれる。仔ヒツジやウシの脳から精製され,その酵素化学的性質が検討されてきた1)。分子量76,000,等電点4.8で,脳以外に睾丸,肝臓,微生物,および植物からも精製されている。酵素は種々のプロリンを持つ生理活性ペプチドに働き,そのカルボキシル側を切断し不活性化する。酵素はDFPにより阻害されるセリンプロテアーゼである。

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 プロテアーゼインヒビターは今までに数多く報告されているが,分別阻害が可能な程度に作用するインヒビターはきわめて少ない。プロテアーゼの生理機能追求およびそれらの治療医学への応用を考えるとき酵素群に特異的な,さらにある特定の酵素に特異的なインヒビターの開発が強く望まれている。本項で紹介するプロテアーゼ基質のホウ酸誘導体は,特定のセリンプロテアーゼ群に特異的なインヒビターであるだけでなく,ある酵素に特異的なインヒビターを合成することが可能で広範囲の利用が期待される。

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 ■構造

 多くの培養細胞,とくに,線維芽,上皮,内皮,骨芽,軟骨各細胞,血小板,単球/マクロファージ,腫瘍細胞などが産生する分子量30万前後のシアロ糖タンパクである。cDNAのクローニングによってヒトTIMPの一次構造が明らかにされ(図1),前期および後期赤芽球前駆細胞(BFU-EとCFU-E)の分化を促進するEPA(erythroid-potentiating activity)タンパクの一次構造と同じであることがわかった1)。12残基のCysはすべてSS結合を形成している。

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 カルシウム依存性中性プロテアーゼ(CANP,calpain)は,細胞内に存在するカルシウムによって活性化されるチオールプロテアーゼである。これまでに,いくつかのCANPに対する阻害剤の報告があるが,ここでは比較的,入手しやすいE-64について述べる。

活性制御試薬 蛋白質分解酵素関連試薬

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 蛋白質を温和な条件で分解するためのもっとも一般的な方法は,プロテアーゼによる分解である。原理的には20種類のアミノ酸に特異性をもつプロテアーゼが準備されておれば,それらを単独あるいは組合わせて使うことによって,目的に応じた分解が可能である。しかし,これまでにいくつかのアミノ酸特異的なプロテアーゼが見出されて実用化されてきたが,まだ思い通りの分解を行える段階には達していない。それでも使用するプロテアーゼと消化条件をうまく選べば,かなりの程度に目的を達成することができる。また,プロテアーゼによる分解法の短所を補う方法として,化学的な分解法の併用も場合によっては有効であろう。要は,当り前のことであるが,蛋白質を分解する目的をはっきりとさせた上で,分解のメディアと蛋白質の性質(予測される性質)をよく理解して分解する方法を選び,分解の条件を設定することである。

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 AchromobacterプロテアーゼI(EC3. 4. 21. 50)

 ■構造

 AchromobacterプロテアーゼⅠは,Achromobacter lyticusM497-1株より単離された分子量約28,000,アミノ酸総残基数268個よりなる単純蛋白質で,ジイソプロピルフルオロリドリン酸(DFP)やフェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF)によりその活性が化学量論的に阻害される典型的なセリンプロテアーゼである1)。その一次構造を図1に示すが,同じセリンプロテアーゼであるトリプシンやキモトリプシンとの構造比較からHis57,Asp113,Ser194がその触媒部位を形成していると推定されている2)

活性制御試薬 プロテインキナーゼ阻害剤

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 プロテインキナーゼは基質蛋白質を燐酸化し機能調節を行う酵素の一群であり,細胞の多様な生理機能の調節機構において重要な役割を果していると考えられている。それらの多くはTPAをリン酸供与体とし,そのγ-リン酸基を基質蛋白質の特定なアミノ酸残基(セリン/スレオニン,チロシン)に転移する反応を触媒する。1959年Krebsらのホスホリラーゼbキナーゼの発見単離以来,cAMP依存性プロテインキナーゼ(A-キナーゼ),cGMP依存性プロテインキナーゼ(G-キナーゼ),ミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK),プロテインキナーゼCなどのいくつかの重要な酵素が発見されてきたが,とくに1980年以降遺伝子組み換えの手法が有効に応用されて,癌遺伝子産物のプロテイン-チロシンキナーゼ(以下チロシンキナーゼ)を中心とする新しい酵素や,従来の酵素のサブタイプの発見,構造解明が相次ぎ,現在までその数は100を越えるに至っている2,4)。これらの個々の酵素がどのような細胞機能に関与しているかは,多くは未解決の問題として残されている。この問題の解明にプロテインキナーゼ阻害剤を用いた解析は有効な一つの手段と考えられる。

 表1にこれまで報告された主なプロテインキナーゼ阻害剤をその(推定)作用部位と阻害の選択性から分類しまとめた。作用部位は酵素の阻害様式に基づいて決められたものであり,選択性はいくつかの主要なプロテインキナーゼについてのみ調べられた結果を示してある。

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 ■特性および構造

 H-7,1-(5-isoquinolinylsulfonyl)-methylpiperazineは,1984年世界で初めて発見されたCキナーゼ特異的阻害剤で1),現在世界中で広く使用されている。H-7は図1に示すごとく,イソキノリン骨格を有し,CキナーゼのATP結合部位に1分子当り1個結合する。Cキナーゼは最近複数の分子種の存在が判明しているが,H-7はどの分子種のCキナーゼに対しても一様に阻害活性を示すことが証明されている2)

 H-7がCキナーゼ研究用試薬として広く利用されているのは以下の利点に基づくものと思われる(表1)。

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 ■特性および構造

 ML-9は,1986年,筆者の日高により開発されたナフタレンスルフォナマイド誘導体で,ミオシン軽鎖キナーゼを直接阻害する化合物として世界で初めて報告されたものである1)

 ML-9は,平滑筋や血小板から精製したミオシン軽鎖キナーゼを選択的に阻害するが,その阻害様式はATPに対し競合的である。そして,その作用点はミオシン軽鎖キナーゼのATP結合部位,すなわち活性中心かその近傍であることが判明している2)

スタウロスポリン 玉沖 達也
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 ■特性および構造

 スタウロスポリンは最初,Streptomyces staurosporeusが生産する微生物アルカロイドとして単離され1),その後,各種の放線菌によって産生されることが報告されている。1986年にCキナーゼの非常に強い(現状では最強)阻害剤であることが明らかにされ2),注目されるようになった。さらにスタウロスポリンはCキナーゼ以外にAキナーゼや発癌遺伝子srcの産物であるp60v-srcチロシンキナーゼも同程度に強く阻害することが明らかになった3)(表1)。表2に示すように強い抗細胞活性をはじめ,多彩な生物活性が報告されており興味深い。

 構造は図1に示すとおりで,indolo〔2,3-a〕carbazole骨格を有し,実験式C28H26N4O3,分子量466である。水にはほとんど不溶性で,メタノール,クロロホルムにはわずかに溶け,DMSOによく溶ける。有機溶媒中で冷暗所に保存すれば安定である。

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 ■特性および構造

 カルフォスチンCは,Cキナーゼ阻害剤の探索の過程で,糸状菌Cladosporium cladosporioidesの培養液から単離されたCキナーゼ特異的な阻害剤である1,2)。CキナーゼをIC500.05μMで阻害するのに対し,AキナーゼやP60v-srcチロシンキナーゼを50μM以上でも阻害しない。既存のCキナーゼ阻害剤と比べて阻害活性,特異性の面できわめて優れている。また各種の培養細胞に対して強い抗細胞活性を示す(HeLaS3;IC500.23μg/ml,MCF-7;IC500.18μg/ml)。

 構造は図1に示すとおりで,perylenequinone環を有し,実験式C44H38O14,分子量790の赤色物質である。水にはほとんど不溶性であるが,メタノール,クロロホルムにはわずか溶け,DMSOによく溶ける。有機溶媒中で冷暗所に保存すれば安定である。

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 ■構造

 アーブスタチンはStreptomyces sp. MH435-hF3株からEGFレセプターの持つチロシンキナーゼ阻害物質として単離され,構造はスペクトル解析,X線結晶解析により図1に示すように[(E)-2-formamidovinyl-1,4-hydroquinone]と決定された。分子式C9H9NO3,分子量179,融点156〜157℃である。メタノール,アセトンには可溶であるが水,クロロホルムおよびヘキサンには不溶性である。紫外部吸収スペクトルでは中性,酸性下では215,278および330nmに極大吸収を示すが,アルカリ条件下ではアーブスタチンは分解し208nmにのみ吸収を示す1)

ゲニステイン 小河原 宏
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 ■特性および構造

 ゲニステインはPseudomonas stutzei,Pseudomonas mendocia類縁のPseudomonas sp. YO-0170Jにより生産されるイソフラボンに属する物質である1)。それ以前にも放線菌Streptomyces roselus,Streptomyces xanthophaeusの代謝産物として得られている2)。もともとは豆科植物の成分であったものがこれら細菌の酵素により切断されて培養液中に遊離してきたとも考えられている。

 化学構造は図1に示すとおりで,分子式C15H10O5,分子量270.23,融点297〜298℃の棒状の結晶形を示す。水に約200μg/mlと難溶であるが,メタノール,エタノール,ジメチルスルポキシドのような有機溶媒にはよく溶ける。稀アルカリには黄色を呈して溶ける。紫外部最大吸収を262.5nm(ε=138)を示す。

活性制御試薬 プロデインキナーゼ阻害剤

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 ■特性および構造

 K-252aとK-252bはNocardiopsis sp. の代謝産物から単離され,KT5720,KT5823,KT5926はK-252aから合成された誘導体である。これらの化合物はプロテインキナーゼC(PKC),環状AMP依存性プロテインキナーゼ(PKA),環状GMP依存性プロテインキナーゼ(PKG),ミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)を強力に阻害し,プロテインキナーゼの選択的阻害剤であると考えられる。その阻害様式は酵素の触媒部位に作用しATPと拮抗することによる。したがって阻害の強さは,ATPの濃度によって大きく影響される。ATPに対するKi値で比較するとK-252aは四つのプロティンキナーゼに対する選択性が低いが,K-252b,KT5720,KT5823,KT5926はそれぞれPKC,PKA,PKG,MLCKに対して選択性を示す(表1)1,2,3)

活性制御試薬 カルモデュリン拮抗薬

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 カルモデュリンは初め,環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE)の活性化因子として発見された蛋白質であるが,その後,細胞内Ca2+受容蛋白質としてほとんどすべての真核細胞に広く存在していることが明らかにされ,生体における主要な細胞内Ca2+情報伝達系を構成していると考えられるようになった1)

 現在,生理活性物質の多くはCa2+を介して細胞機能調節を行っていることが明らかにされており,細胞膜Ca2+チャネルからのCa2+流入や細胞内貯蔵Ca2+の遊離による細胞内Ca2+濃度の増加という形で細胞外からの情報が細胞内に伝達される。このCa2+の標的分子としてもっとも有力なものが細胞内Ca2+受容蛋白質で,これまでにトロポニンC,カルモデュリン,パルブアルブミン,S100蛋白,カルパイン(CANP),カルシニューニンなど多くの種類が知られている。これらの中で,カルモデュリンはもっとも普遍的に存在し,表1に示すような数多くのカルモデュリン依存性酵素やカルモデュリン結合蛋白質が精製されていることから,もっとも重要であると考えられている。

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 ■特性および構造

 W-7を始めとしたナフタレンスルフォナマイド誘導体は,筆者の日高により開発された化合物1)で,カルモデュリン拮抗薬としてもっとも系統的に合成され,研究が行われた化合物群である。

 ナフタレンスルフォナマイド誘導体は,Ca2+存在下でのみカルモデュリンと結合し,阻害作用を示す。これは,Ca2+結合により露出したカルモデュリンの疎水性部分にW-7などが結合するため2)で,W-7とその誘導体を用いて調べると,薬物の疎水性とカルモデュリンに対する親和性(結合性)には正の相関があることが判明している3)(図1)。

活性制御試薬 血液凝固関連試薬

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 実験室で最近用いられる凝固・線溶系の試薬として,主に3種類の試薬があげられる。

 第一は凝固・線溶系の酵素により切断される基質であり,第二は純化した酵素そのものである。第三として血中,組織液中の凝固・線溶系関連因子の微量定量に用いるための抗体などである。本稿ではこの順で作用機序,反応機構を含めて説明し,おのおのの試薬の各個的解説については各論で述べる。

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 1.合成基質・螢光基質

 合成発色基質としてはKABI社製のパラニトロアニリンの405nmにおける発色を見る基質が発売されている。日本では第一化学により輸入されている。表1に商品名,構造,基質特異性を示す。

 螢光基質としては,アミノメチルクマリンによる螢光を測宗する某質が大阪のペプチド研究所より癸売されている。表2に基質の構造とそれに比較的特異性をもつ酵素名を示した。

活性制御試薬 ヌクレオチドおよび類似物

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 ヌクレオチドは,塩基,リボースまたはデオキシリボース,およびリン酸の三つの部分からなり(図1,ATPの構造を参照),DNAおよびRNAの構成要素として重要であるばかりでなく,ATPやGTPなどの形で様々な生体反応に関与している。この総論では,ATPおよびその類似物について,その性質および基本的な取り扱いなどを記述する。なお,cAMPなどのサイクリックヌクレオチドはここでは扱わない。

AMP-PNP 室伏 擴
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 ■構造および特性

 AMP-PNP(5'-adenylylimidodiphosphate)は,ATPのβ位のPとγ位のPとを結び付けるOをイミド基(-NH-)で置き換えた化合物である(総論の図1参照)。この化合物は,ATPのβ-リン酸とγ-リン酸との結合の切断を伴う反応を触媒する酵素の阻害剤として開発された。類似の構造を持つ化合物として,イミド基の代わりにメチレン基(-CH2-)を持ったAMP-PCP(5'-adenylylmethylenediphosphonate)があるが,-NH-の結合角度が-CH2-の場合よりも-O-の結合角度に近いため,ATPの類似体としてはAMP-PNPの方がAMP-PCPよりも優れている。

ATPγS 清水 隆
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 ■構造および特性

 正式な名称はadenosine 5'-O-(3-thiotriphosphate)であり,下記の構造式に示すようにATPのγリン酸の酸素原子の一つがイオウ原子に置き換えられたものである1,2)

 この置き換えにより分子の酸性度はATPより高い。また,β-γのピロリン酸結合の加水分解によって放出される自由エネルギーは,ATPの場合に較べ,2〜3kcal/mol大きい。さらに,この置き換えのため酸性の水溶液ではかなり不安定であり,ADPとチオリン酸へと分解する。pH7〜10で冷凍保存すれば安定である。

Caged ATP 原田 慶恵
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 ■特性および構造

 試験管内でATP濃度ジャンプを行い,それによって引き起こされる化学反応の過渡的状態について研究する場合,一般にラピッドミキシング法が用いられてきた。しかし,組織内のATP濃度を瞬時に変えたい場合や,顕微鏡下でATP分解反応に伴った現象を追跡したい場合などは,ラピッドミキシング法を用いることはできない。そこで,光化学分解によってATPの濃度ジャンプを行うことができるcaged ATPが開発された1)

 Caged ATPは図1に示すように,ATPと紫外線照射によって解離する化合物との複合体からなっている(分子量〜722,ε260nm=19,600M−1cm−1)。Caged ATPはタンパク質分子内のATP結合部位と何ら相互作用することはない。図に示す反応によってcaged ATPはATPと2-nitrosoacetophenoneに光分解される。そしてATPのイオン化状態に依存してHも放出される。その光分解反応速度はpHに依存しており,たとえばpH 6.5で103s−1,pH7.0で200s−1,pH7.5で80s−1である2)

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 ATPaseやサイクリックヌクレオチドの機作を調べるために種々のヌクレオチドアナログが用いられている。それらを目的別にまとめると次のようになる。

バナジン酸 奥野 誠
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 バナジウムは原子番号23(原子量50.94)の遷移元素で,-1〜+5の酸化数をとり得る。バナジン酸は+5価の酸化物で(以下Vi),ナルトバナジン酸(VO43-)やメタバナジン酸(VO3-)などがある。バナジウムは生体の必須微量元素の一つであり,脂質代謝や歯骨の石灰化に関与しているといわれている。ホヤの血液中には,ヘモバナジンとして多量に存在するが,その生理的意義はまだ不明である。

活性制御試薬 ホルボールエステル関連試薬

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 1941年にBerenblumらによって,化学発癌には二つの独立した過程,すなわちイニシエーションとプロモーションからなることが提唱された1)。彼らはマウスの皮膚での化学発癌実験に基づき,その量では腫瘍を発生しえない少量の発癌物質(bcnzopyrene)を1回マウスの皮膚に塗布したのち,同じ部位にそれ自体では発癌性のないクロトン油を繰り返し塗布すると皮膚ガンが形成されると報告した。この場合,benzopyreneのような物質をイニシエーター,そしてクロトン油のような物質をプロモーターと称した。その後,クロトン油から強力なプロモーター活性を持った物質,TPA(12-O-tetradecanoyl-phorbol-13-acetate)が分離された2)。そしてTPAには腫瘍のプロモーション活性だけではなく多彩な生物学的作用を持つことが明らかになった3)。TPAの作用機構は長らく不明であったが,1982年に神戸大学の西塚研においてTPAをはじめとするホルボールエステルがイノシトールリン脂質の代謝回転に共役して活性化を受けるカルシウム・リン脂質依存性蛋白質リン酸化酵素(C-キナーゼ)を活性化することが明らかにされ,世界中の注目を集めた4)。さらに,C-キナーゼがTPAの細胞内レセプターそのものであることが,西塚研を含む4つの研究室から独立して報告された5-8)

ホルボールエステル 佐野 公彦
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 ■特性および構造

 ホルボールエステルはクロトン油から分離された強力な発癌プロモーターであり,多彩な生物学的作用を有する1)。ホルボールエステルはジテルペン核を骨格に持つ物質でその側鎖の構造によって様々な種類が存在する。中でももっとも強力な発癌プロモーター作用を有し,汎用されているホルボールエステルはphorbol 12-myristate-13-acetate(PMA)であり,TPA(12-O-tetradccanoyl Phorbol-13-acetate)とも呼ばれる。TPAの構造を図1に示す。TPAの実験式はC36H56O8で,分子量は616.8である。他のホルボールエステルの中でphorbol-12,13-dibutyrate(PDBu)はTPAとはほぼ同様の活性を持ち,3Hで標識されたPDBuはホルボールエステルのレセプターアッセイに使用される。一方,4-α-phorbol-12,13-didecanoatcなどは発癌プロモーター作用はなく,また,他の生物学的活性も見られない。ホルボールエステルの中で生物学的活性のあるものと活性のないものの一部を表1に示した。

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 ■特性および構造

 C-キナーゼの生理的役割を明らかにするため,細胞膜を容易に透過し,細胞内のC-キナーゼを直接活性化する合成ジアシルグリセロール(DG)が研究に汎用されている。この種の透過性DGとして1-オレオイル-2-アセチル-sn-グリセロール(OAG)がよく知られているが1),最近では1,2-sn-ジオクタノイルグリセロール(dic8)や1,2-sn-ジデカノイルグリセロール(diC10)のような短鎖飽和脂肪酸をもつDGもまたOAGと同様の活性を有することが明らかになっている(表1)2)。これらのDGはC-キナーゼの活性化能において立体特異性を有しており,1,2-sn-DGの構造を有するもののみ有効であり,光学異性体の2,3-sn-DGはC-キナーゼを活性化しない。

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 ■特性および構造

 テレオシジンは1962年にTakashimaらによって放線菌Streptomyces mediocodicusより分離,精製された物質である1)。テレオシジンには分子量437のテレオシジンAと分子量451のテレオシジンBとがある。さらに,テレオシジンAは二つの異性体を持ち,テレオシジンBは四つの異性体を持つ(図1)。これらはトリプトファン,9員環のラクタム環,イソブロピル基とヒドロキシメチル基からなる共通骨格を持っている。メゼレインはDaphnemezereneumuの種子より分離,精製されたノン・ホルボールタイプのジテルペンで,分子量は654である(図1)2)。アプリシアトキシンは1975年にKatoらによってアメフラシ(Aplysia)の中腸腺から分離された物質で3),さらに1982年にMooreによってハワイの海藻の一種であるLyngbya majusculaから海水浴皮膚炎の原因物質として分離,精製された4)。アプリシアトキシンはアセトジェニック・フェノリック・ビスラクトンを基本骨格とし,結合するBr原子の数が0,1,2,3個と異なる化合物をそれぞれデブロモアプリシアトキシン,アプリシアトキシン,プロモアプリシアトキシン,ジブロモアプリシアトキシンと呼ぶ(図1)。

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 ■構造および特性

 ブライオスタチン(BS)は1982年にPettit, G. R, らにより海産生物Bugulaneritinaから分離精製された物質である1)。大環状ラクトン構造を有し現在までに約10種類が知られている(図1)。BS-1は融点230〜235℃,分子量886.4,紫外線吸収域は233nm,263nmである。水に不溶でクロロホルム,メタノールなどの有機溶媒によく溶ける。

 当初マウス腫瘍細胞(P388)を用いた抗腫瘍活性が,その後腫瘍プロモーターであるphorbol ester様活性が示され多くの興味をひくようになった2-5)

膜関連試薬 カルシウムチャネル関連試薬

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 カルシウム拮抗薬は高血圧や狭心症の治療薬として臨床的に繁用されているが,主としてL-typeの電位依存性カルシウムチャネルの抑制を介してその薬理効果を発揮する。したがって,カルシウム拮抗薬は,その作用機序の研究がカルシウムチャネルの研究に結びつくという大変恵まれたクスリであり,カルシウムチャネル研究にも必須の試薬である。

 もっとも作用の強い,1,4-dihydropyridine(1,4-DHP)系の化合物にカルシウムチャネルをactivateする化合物が見出されて研究面での価値も一段と高まった。ここでは,合成有機化合物である各種のカルシウム拮抗薬と試薬用にデザインされた周辺化合物について述べる。

アジドピン 高橋 正身
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 ■構造および特性

 心筋,平滑筋,骨格筋や神経細胞のL型Caチャネルのアンタゴニスト(あるいはアゴニスト)として知られるジヒドロピリジン誘導体の1種で,アジド基を持ち光反応試薬として用いられる(図1)1,2)。nM以下の低濃度ではいろいろな組織のL型Caチャネルに結合し,α1サブユニットを光標識する1-3)。0.1μM程度の高濃度になると多剤耐性細胞のP糖蛋白質やミトコンドリアの構成成分など非Caチャネル成分も標識するようになる2,4)。非Caチャネル成分への結合は低親和性であること,結合部位数がL型チャネル数の100倍以上と桁違いに多いこと,結合するDHP誘導体の立体特異性がまったく異なることなどの点でCaチャネルへの結合と区別することができる(表1)2)

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 ■構造,薬理作用および適用

 PN200-110(PN),isopropyl 4-(2,1,3-benzoxadiazol-4yl)-1,4-dihydro-5-methoxycarbonyl-2,6-dimethyl-3-pyridinecarboxylate(図1)は,最近サンド社から開発された新規の1,4-dihydropyridine(DHP)系カルシウム(Ca2+)拮抗薬で,血管拡張,血圧下降,徐脈を示す1)。DHP環の4位にbenzofurazone環を導入し,3,5位のエステル基を非対称としたところに特徴がある。きわめて低濃度(10−11〜10−9M)に0おいて電位依存性Ca2+channcl(voltage dcpendent Ca2+channel:VDC)に直接相互作用して,心筋や血管平滑筋細胞の膜興奮に伴うCa2+の流入を阻止する。従来の薬物と比べ,その作用は強力(イヌ脳底動脈でnifedipineやnimodipineの400〜700倍)で,脳・冠動脈への選択性が高く,かつ持続性である1-3)。これより細胞膜の興奮に伴うCa2+流入を阻止する"Pharmacological tool"として,Ca2+動態の研究に有用な試薬となる。

フルナリジン 赤池 紀扶
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 ■特性および構造

 フルナリジン(flunarizine)は図1の化学構造を有するcinnarizineのdifluoro誘導体で,ベルギーのJanssen社で開発された。本剤は血管拡張作用,各種収縮物質に対する拮抗作用1,2)や大脳皮質のPO2上昇作用3)を有し,臨床的に脳の循環障害治療薬として用いられている。近年になって,脳神経細胞に見られる3種類のCa2+チャネル(T,NとL型)のうち,T型Ca2+チャネルをフルナリジンがより選択的に抑制することも明らかとなり4),本剤の抗痴呆作用がこのT型Ca2+チャネル抑制作用と関係があるのではないかと注目されている。

BAY K 8644 大地 陸男
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 ■構造

 BAY K 8644(methyl 1,4-dihydro-2,6-dimethyl-3-nitro-4-(2-trigluromethylphenyl)-pyridine-5-carboxylate)はジヒドロピリジン誘導体の一種であり,Caアンタゴニストのニフェジピンなどと近い構造を持つ(図1),Caアゴニストである1)。分子量356.3。Bayer薬品で製造される。他に類似のCaアゴニストとしてCGP 28392,202-791のSエナンチオマーなどがある。BAY K 8644ラセミ体で(-)エナンチオマーはCaアゴニストであるが,(+)エナンチオマーは10〜50倍の濃度でCaアンタゴニストとして作用する2)

 BAY K 8644はCaチャネルにジヒドロピリジン系Caアンタゴニストと拮抗的に結合する。結合によってCaチャネルを通過するCaイオンの流入を増加する。

l-シス-ジルチアゼム 長尾 拓
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 ■薬理作用および構造

 代表的なカルシウム拮抗薬の一つであるdiltiazemは1,5-ベンゾチアゼピン骨格に二つの不斉炭素原子を持ち,cis,trans異性体および,それぞれの光学活性体が存在する。薬理活性,とくに冠血管拡張作用は,cis体で強いことが明らかにされ,trans体にはほとんど作用が認められなかった1)。diltiazemはd-cis体であり,カルシウム拮抗作用も早くからd-cis体に強いことが知られていた2)。カルシウム拮抗薬として,立体構造が重要なことが知られた最初の例である。diltiazem(d-cis)の立体異性体であるl-cis体の分子量は451であり,その構造式を図1に示した。l-cis-diltiazemは,血管拡張作用の他,平滑筋に対する作用もd-cis体よりかなり弱かったが,中枢作用はl-cis体にあり,d-cis体には見るべきものがない。局所麻酔作用は,l-cis体とd-cis体で差がなかった3)

ω-コノトキシン 吉岡 亨
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 ■構造および特性

 ω-コノトキシンは最初フィリピンの海岸に棲息するイモ貝(Conus geographs)から抽出された毒の一つでCaチャネルに特異的な阻害剤である。この毒の一次構造は図1(a)に示すように27個のアミノ酸から成るペプチドで,S-S結合が三つあることから図1(b)に示すような2次構造をとっていると推察されている。この毒はしたがって水溶性であり,最近は合成されるようになったので手に入りやすくなった1)

膜関連試薬 ナトリウムチャネル関連試薬

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 動・植物界には神経系に作用する毒物(トキシン)の存在が数多く知られているが,これらトキシンの作用点がイオンチャネルである場合,その大部分はNaチャネルをターゲットとしている。起源や化学構造の違った多様なNaチャネルトキシンは,Naチャネル分子上のいくつかの異なった部位に結合し,それぞれ異なった薬理効果や生理作用を示すことが知られている。このようなタイプの異なったトキシンの存在は,他のイオンチャネルにもまして,Naチャネルを分子レベルで研究するうえで格好の分子プローブ群を提供しているといえよう。これらNaチャネルトキシンの代表的なものについては,5年前の本誌特集「細胞毒マニュアル」(35巻6号,1984年)で詳述されているが,その刊行と相前後して,電気ウナギ発電器官Naチャネルの一次構造がイオンチャネルとして初めて明らかにされた。以後Naチャネルの分子レベルの研究が展開されてきており,またその後新たなトキシンの発見もあり,ますます盛んな研究が続いているので,このような視点からNaチャネル関連試薬としての現況をまとめてみたい。

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 ■特性および構造

 熱帯や亜熱帯のサンゴ礁海域に生息するイモ貝類は,毒矢を用いて魚や貝などの餌生物を麻痺させて捕食する巻貝である。ジェオグラフトキシン(GTX)類は,イモ貝の一種アンボイナConus geographusの毒腺に含まれる猛毒である。筆者らは,マウス骨格筋の収縮を阻害する活性を指標にして沖縄産アンボイナの毒腺から活性物質の精製を行った。その結果,アミノ酸22残基よりなる2種類のペプチド毒を単離・構造決定に成功し,それぞれGTX-ⅠおよびGTX-Ⅱと命名した1)。これらのペプチドの構造は図1に示すように互いに類似しており,分子内にシスチンが6残基含まれS-S結合が3個存在する。一方,オリベラらのグループもインドネシア産アンボイナからμ-コノトキシンGⅧAおよびGⅧBと呼ばれるペプチドを単離したが2),それらはGTX-ⅠおよびGTX-Ⅱとそれぞれ同一物質であると考えられるので,以下GTXという名称に統一した。

グアニジニウム化合物 瀬山 一正
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 ■構造,特性および使用目的

 興奮性細胞におけるチャネル蛋白の高次構造を明らかにするうえで有力な方法の一つは生物毒を用いる薬理学的方法である。生物毒はチャネルのある特定機能を修飾することにより薬理作用を発現するので,そのための化学的必要条件を明らかにすることによりチャネル側の機能的構造について情報が得られる。生理的環境液の中で常に陽電荷を持つグアニジニウム基を分子末端に持つ化合物がNaチャネルを細胞内面より閉塞することについての可能性は従来から指摘があった。ここに紹介する二つの生物由来の物質もいずれも分子端に1個もしくは2個のグアニジニウム基を有し,細胞内面に投与された時に限ってNaチャネルのみを選択的に閉塞する特長を共通して持っている。

ブレベトキシン 坂東 英雄
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 ■特性および構造

 ブレベトキシンはフロリダ沖の赤潮に関係している渦鞭毛藻,GYmondinium breve(Ptychodiscus brevis)から単離された脂溶性のポリエーテル型のトキシンである。そのトキシンは構造上,2種類の基本骨格を持つ化合物に分類され(図1,a,b),現在までに7種類の化合物の構造が決定されている1,2)

 ラットの心臓標本で,10−8M濃度で陽性変力的な不整脈を引き起こし,その効果はテトロドトキシンによって阻害される。またNa,K-ATPaseの活性を阻害しない。この神経毒はNaチャネルの第5薬物レセプター部に結合して膜の脱分極を引き起こし,テトロドトキシンによってその分極は阻害される3)。ラット脳のシナプトソームにおいて,バトラコトキシンやアコニチンなどのNaチャネルの第2薬物レセプター部への結合力を増大させる。またα-サソリ毒には影響しないが,β-サソリ毒の第4レセプター部への結合力も増大させる4,5)。最強毒のBrevetoxin-Aについては標識された化合物がないので今後の研究が待たれる。

膜関連試薬 アラキドン酸カスケード修飾試薬

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 ■アラキドン酸力スケードと細胞間情報伝達

 炭素数20(C20)の不飽和脂肪酸であるアラキドン酸よりプロスタグランディン(以下PG),トロンボキセン(TX),ロイコトリエン(LT),リポキシン(LX)などの生理活性物質が作られる。これらエイコサノイド(ラテン語で20をエイコサ,eicosa-と呼ぶ)は表1に示したように血圧調節,血小板凝集の制御,神経系,免疫系などで多彩な役割を果たしており,生体のもっとも重要なモデュレーターの一つと考えられている。エイコサノイドは一般にはパラクリン的に働く一種のオータコイド(局所ホルモン)と考えられており,プロスタサイクリン,トロンボキセンによる血小板や血管平滑筋に対する作用がその代表的様式である。

 筆者らは1979年当時,PGD2が神経系におけるneuromodulatorという考え方を提唱したが1),最近の研究ではむしろアラキドン酸リポキシゲナーゼ系産物が細胞内でのセカンドメッセンジャーとしての役割を果たしていると考えられている。1987年Nature誌に掲載されたKandelらのグループによるアメフラシの感覚ニューロンの実験が最初であり2),続けてKurachi,Kimらがモルモットあるいはラット心房細胞でG蛋白にカップルしたポタシウムチャネル開口にLTC4が関与することを見つけた3,4)

AA861 吉本 谷博
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 ■構造および特性

 コエンザイムQ(ubiquinone)やビタミンK1(phylloquinone)などのイソプレノイド側鎖をもつキノン化合物は,植物や動物に普遍的に分布しており,電子伝達系,血液凝固,光合成などに関与している。AA861は,特異的な化学修飾によって有機合成されたベンゾキノン誘導体のうち,アラキドン酸5-リポキシゲナーゼに対する特異的阻害剤として開発されたものである1,2)。図1にその構造を示してあり,分子量は326.42(C21H26O3)で,その形状は黄色結晶性の粉末である。融点は57.4℃で,アルコール,アセトニトリル,酢酸エチル,クロロホルムなどの有機溶媒にはきわめて溶けやすいが,水にはほとんど溶けない。そのメタノール溶液は,268nmに吸収極大を示す。

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 ■特性および構造

 1973年Augsteinらにより,最初のロィコトリエン(以下LTと略)拮抗薬としてFPL55712が報告された。しかしながら,FPL55712は生物学的半減期が非常に短く経口吸収も悪いためin vivoの実験には使用しづらかった。YM638(YM-16638)(図1)は山之内製薬でロイコトリエン拮抗薬研究の中から見出された経口投与で有効なLTD4拮抗薬である。YM638はin vitroでFPL55712と同等かやや弱い抗LT作用を有する。

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 ■構造・特性

 Streptomyces fradiaeの産生する抗生物質でA,B,Cの3種をネオマィシン複合体と総称する。このうち,ネオマイシンBがホスホリパーゼC阻害剤として用いられる。ネオマイシンBの構造は図1に示すとおりで,市販されている硫酸塩の分子式はC23H46N6O13・3H2SO4,分子量は908.9である。水やメタノールに溶けるが,クロロホルムなどの一般的な有機溶媒にはほとんど不溶である。硫酸塩の水溶液はpH 2〜9の範囲で非常に安定である。

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 RS-5186は強力なトロンボキセン(TX)合成酵素阻害剤で,その構造式を図1に示す。実験式C13H11O2N2SNa,分子量282.3,融点>300℃,水に易溶な無色結晶である。

 TX合成酵素(ウサギ血小板ミクロゾーム)に対するRS-5186の50%阻害濃度(IC50)は13nM。同じ条件での他のTX合成酵素阻害剤のIC50。は次のとおりである:OKY-046,38nM:CV-4151,39nM:Dazoxiben,106nM。シクロオキシゲナーゼ,5-リポオキシゲナーゼおよびホスホリパーゼA2は300μMでも阻害しない1)

 RS-5186は動物に投与した時,作用が長時間持続するのが特徴である。イヌにRS-5186または,他のTX合成酵素阻害剤(OKY-046,CV-4151)を静脈投与後,経時的に採血し,血液凝固させた後に得られた血清中のTXB2値を図2に示す。RS-5186の0.1,1,10mg/kgの投与で用量依存的にTXB2の生成を抑制し,他のTX合成酵素阻害剤よりも持続性がある1)。このようにRS-5186の作用が長時間持続する理由は,この物質が特異的に血小板に蓄積すること,および代謝を受け難いためであることが明らかにされている2)

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 ■特性および構造

 S-145はトロンボキサンA2(TXA2)受容体を特異的に認識するリガンドとして合成された化合物であるが,その作用は選択的であり,かつ強力である1)。化学構造および化学名は図1に示す。分子式C20H27NO4S,分子量377.54,融点91.5〜92℃の白色結晶で,熱,湿度,光に対してきわめて安定である。水には不溶性であるが,メタノール,エタノール,クロロホルムのような有機溶媒にはよく溶ける。一方そのナトリウム塩も同等の活性を示すが,水によく溶けかつ安定である。

膜関連試薬 リポソーム関連試薬

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 ■二分子層膜小胞

 リポソーム(liposome)とは脂質二分子層膜の小胞である(図1)。脂質の分子の大きさから,二分子膜の厚さは図1のように約50〜70Åとなり,また安定な小胞の直径は200〜1,000Å程度となる。細胞は外側の形質膜をはじめ,内部の細胞小器官の多くが生体膜でできているが,生体膜の基本構造は脂質二分子膜に各種の膜タンパク質が組み込まれた構造であるために,ここで述べるリポソームは生体の科学にとって,重要なモデル系となっているのである。一般にリポソームと言えば図1のような一層の膜小胞(単ラメラ小胞small unilamellarvesicle,SUV)を指すが,図2に示すように同心円状に小胞膜が重なった多重ラメラ小胞(multilamellar vesicle,MLV)もある。その脂質は,リン脂質,糖脂質などの極性脂質で,膨潤性不溶性両親媒性物質(swelling insoluble amphiphiles)に属する。これらの脂質を水相に懸濁させて,超音波処理をするか,有機溶媒や可溶性両親媒性物質(soluble amphiphiles)に溶かして後,透析などで溶媒や界面活性剤を除去すると,図1に示すような小胞が形成される。

 リポソームが閉じた構造を持つことは図3に示すように,リポソーム形成前に加えたフェリチンが小胞内に取り込まれて,これを洗ってもフェリチンが失われないことから示される。

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 リポソームを膜タンパク以外のタンパク質で修飾するためには,タンパクに疎水性の錨(anchor)をつける必要がある。そのような錨の材料として代表的なものにN-[4-(p-maleimidophenyl)butyl]phosphatidylethanolamine(MPB-PE)(図1a)がある1)。少量のMPB-PEを他の脂質(phosphatidylcholine,cholesterolなど)と混ぜリポソームを作り,MPBのマレイミド基とタンパクのSH基を37℃,中性pH下に共有結合させる。同様のものにMB-PEがある2)。タンパクに適当なSH基がないか,あっても吸着が不十分な場合はsuccinimidyl-S-acetylthioacetate(SATA)3)やN-succinimidyl-3-(2-pyridyldithio)propionatc(SPDP)4)などでタンパクを修飾してSH基を増やす。

 N-3-(2-dithiopyridyl)propyonyl phosphatidylethanolamille(DTP-PE)を含むリポソームとタンパクのSH基を反応させ,SS結合をつくる方法もある4)(図1b)。

セカンドメッセンジャー関連試薬 遊離カルシウム測定試薬

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 カルシウムイオンCa2+(遊離カルシウムイオンを表す時のみ"Ca2+"を用い,それ以外の場合は単に"Ca"と表記する。他のイオンたとえばマグネシウムについても同様とする)が細胞内情報伝達物質であることは骨格筋,心筋,平滑筋で確立され,さらにCa2+-ATPase活性,ホスホリラーゼキナーゼ活性をはじめとするいろいろな酵素活性や諸分泌現象(神経伝達物質,非ステロイド性ホルモンの分泌,肥満細胞の脱顆粒など),さらには増殖,成長に関連した過程などにおいても明らかとなってきている1)。これらの反応は一般的には以下のように略記できる。

 nCa2++RFCan-R……→反応――(1)

 ただしR:Ca2+受容蛋白(単にCa2+を結合しうるだけのCa結合蛋白と,Ca2+を結合した結果一定の反応を惹起しうるCa2+受容蛋白とを区別して考えることが必要である)。

fura-2 小西 真人
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 fura-2はEGTAに類似したCa結合部位をもつ高親和性螢光Ca指示薬である1)(図1)。Caと結合すると吸光スペクトラム,螢光励起スペクトラムのピークは長波長側(>360nm)から短波長側(<340nm)にシフトする。発光スペクトラムのピークは500〜510nmである。Ca結合のstoichiometryは1:1で,解離定数(KD)は135nM(20℃,100mM KCI,pH 7.1〜7.2)である1)。KDはイオン強度,温度,pHによって影響をうける。Mgに対するKDは9.8mM(20℃,イオン強度0.1〜0.15M,pH 7.2)1)で,Caに対する選択性は高い。

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 Fura-2は水溶性の物質であり,細胞膜透過性はほとんどない。他方,膜透過性の高いfura-2のacetoxymethyl体(fura-2/AM)はきわめて水に溶けにくい。通常fura-2/AMはDMSOに溶かしてあるが,これを栄養液に加えると白濁し,そのほとんどが管壁に沈着する。fUra-2/AMの量を増やせばその有効濃度はある程度は増加するが,超音波の使用により溶解度の増加を計っても,その最大有効濃度は1μM以下である。この溶液を螢光顕微鏡で観察すると,fura-2/AMの大部分は直径2μm程度の顆粒として浮遊し,遠沈によりこれらの顆粒はほとんどすべて沈澱する。このような溶液を用いても,血小板,単離細胞などはfura-2/AM顆粒と接触し,これを取り込むことができる。しかし,これらの大きな顆粒は細胞間隙に入り込めないために,組織片にfura-2/AMを取り込ませることはほとんど不可能である。また1μM以上の有効濃度のfura-2/AM溶液を使用しないとその取り込みが悪い細胞も多いので,単にfura-2/AMを加えた栄養液では実験ができない場合が多い1)

 Fura-2/AMの有効濃度を増し,その顆粒を小さくするためには,比較的細胞毒性の低い界面活性剤を少量添加することが有効である。

Indo-1 杉山 卓郎 , 矢崎 義雄
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 Indo-1は1985年にFura-2と同時に発表された細胞内カルシウムイオン濃度指示薬であり,図1に示す構造と次の特徴を有する。

 1)Quin 2やFura-2と同様に,エステル型(Indo-1AM)で細胞に取り込まれた後,非エステル型に変換され細胞内に留まる。

 2)Quin 2に比べKd値が高く(表1),比較的高濃度のカルシウムイオン濃度まで測定でき,またキレート作用が弱く細胞障害性が低いと考えられる。

 3)Quin 2に比べ螢光強度が約30倍強く(表1),低濃度の細胞内Indo-1でも測定できる。

 4)螢光波長がカルシウムイオン濃度により変化するので,単一波長の励起光でカルシウムイオン濃度の値が求められる。

Aequorin 井上 敏
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 ■特徴および性質

 Aequorinは,発光オワンクラゲ(Aequorea victoria)から単離されたCa2+受容蛋白で,アポ蛋白(Apoaequorin),発光源のエミッター(セレンテラジン),分子状酸素がコンプレックス状態で存在している。Ca2+(あるいはSr2+)と特異的に結合し発光する蛋白(Photoprotein)である。この微弱発光を利用することにより,Ca2+濃度を測定することが可能である。一次構造解析の結果,Ca2+結合のためのEF-hand構造が3ヵ所存在する。一般性質を表1に示した1,2)

セカンドメッセンジャー関連試薬 GTP結合蛋白関連試薬

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 われわれはこれまでに薬物の作用点としての受容体の機能,脱感作,病態について研究してきた。GTP結合蛋白質(以下G蛋白質と略す)は受容体に直接共役する蛋白質であり,ある種の病態とも関係しているので興味を持っている。本総論はそのような研究の視点より述べたい。受容体,GTP結合蛋白質については他の総説も参考にしていただきたい1-1)

コレラ毒素 三木 直正
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 ■特性および構造

 コレラ毒素はコレラ菌(vibrio cholerae)のが産生する,分子量約85,000の純蛋白質である1)。α,βサブユニットからなり,図1のような構造をしている。FieldやGreenoughら(1969)によりコレラ毒素の作用がcyclicAMPを介して作用すること,Finkelstein(1970)によりコレラ毒素が純粋な蛋白質として精製されたこと,毒素によるアデニレートサイクラーゼ(AC)の活性化にNADが必要である2)などの実験より,コレラ毒の作用がADP-ribosylatlonによることが証明された。これは,ジフテリア毒素の作用機作と類似している。疎水性のA1サブユニットに酵素活性が存在し,Bサブユニットは親水性で,5個ある。Bサブュニットが細胞表面のGM1ガングリオシドに結合すると,A1サブユニットが細胞膜に侵入し,GTP結合蛋白質をADP-ribosyl化する。したがって,コレラ毒と細胞をインキュベートしても,すぐにはACは活性化されず,数十分かかる。

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 ■特性および構造

 百日咳菌Bordetella pertussisが産生する毒素で,5種6個のサブユニットからなる蛋白質である。最大のサブユニット(S1)がAプロトマー,残りの5量体(S2〜S5)がBオリゴマーとして機能するいわゆるA〜B構造の毒素の一つである(図1)1)。百日咳毒素はBオリゴマーの部位で細胞表層に結合し,Aプロトマーが細胞内に侵入して毒素特有の効果を標的細胞に対して発揮すると考えられる。

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 ■構造および特性

 ジフテリア毒素は,分子量約60Kの単純タンパク質で,Corynebacterium diphteriaeに毒素遺伝子(tox)を持つβファージが感染または溶原化したとき,菌体外に分泌される。タンパク質合成伸長因子(EF-2)を,ADP-リボシル化して失活させる酵素活性を持ち,感受性動物および由来の細胞を死に至らしめる1,2)。毒素タンパク質の構造は機能分担されている(図1)。還元剤の存在下,トリプシンで温和に処理すると,フラグメントA(分子量約20K)とフラグメントB(分子量約40K)に分離する。フラグメントAはADPリボシル化活性を持ち,フラグメントBは感受性細胞表面のリセプターに結合し,フラグメントAを細胞内に送り込む活性をもっている。フラグメントAのみを産生する変異株も樹立されている。フラグメントAの活性は,真核細胞のEF-2に特異的で,植物,動物,酵母に至るまで働くが,原核細胞性のバクテリアおよびミトコンドリアのEF-Gには働かない。一方,毒性は,細胞膜上のリセプターの有無によって左右されるので,働く範囲が狭まり,ヒト,サル,ハムスター,モルモット,ニワトリ由来の細胞は感受性だが,マウスとラット由来の細胞は非感受性である。マウス,ラット由来の細胞には,PseudomonasのエクソトキシンAが効く。

GTP analog 渡辺 康裕
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 ■特性および作用機序

 神経伝達物質,ホルモンの膜受容体は,GTP結合蛋白(Gs,Gi,Go,GNなど)を介して,adenylatecyclase,phosphoHpase C,ion channelと共役する。はじめに,肝adenylate cyclase系が,GTPにて活性化されると報告され,その後,数種のGTP analogが開発され,GTP結合蛋白の研究に用いられている。

 HR+GGDP→HRGGDP (1)

  (G:GTP結合蛋白,H:ホルモン,R:受容体)

 HRGGDP+GTP→HR+GGDP (2)

 式(1),(2)に示すように,不活性なGGDP(GDPがG蛋白に結合した状態)は,受容体刺激により,GDPとGTPは置換され,情報伝達能力を持つ活性化されたGGDPとなる(turn on)。この結合したGTPは,G蛋白に存するGTPaseにて水解され,GGDPとなり不活性化される(turn off)。

セカンドメッセンジャー関連試薬 PI関連試薬

PI関連試薬(総論) 竹縄 忠臣
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 哺乳動物のような高等動物ともなると,諸々の組織を形作る細胞はホルモンを初めとする多くの液性因子によって二重三重にその機能が調節されている。ほとんどの液性因子は標的細胞の細胞膜上に特異的な受容体を持ち,情報を細胞内に伝え,細胞機能を調節する細胞内情報伝達系を持つ。

 ホルモンや神経伝達物質の細胞内情報伝達系として,cAMPをセカンドメッセンジャーとする系は,今日よく知られている。近年,cAMPとは異なった伝達系として,イノシトールリン脂質代謝を情報伝達の手段とする系の研究が精力的に行われ,その情報伝達系の全貌がほぼ明らかとなってきた。今からさかのぼること36年前の1953年,Hokin and Hokinは,ホルモンによるイノシトールリン脂質代謝亢進を初めて見出した。しかし当時この現象が何を意味するのか,どのような生理作用と関係しているのかまったくわからず,現象そのものもすぐに忘れ去られてしまった。ホルモンによって生じるイノシトールリン脂質代謝亢進の生理的役割についての考えを初めて述べたのは,R.H.Michcll1)である。発見から経ること22年後の1975年であった。

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 ■特性・有用性

 抗PIP2抗体,抗PIP抗体は,おのおのPIP2,PIPを特異的に認識するマウスモノクローナル抗体である。

 PIP2,PIPはともにイノシトールリン脂質代謝回転の構成員であるが,とくにPIP2はホルモンや,細胞増殖因子によるレセプターの刺激の際,ホスホリパーゼCによって分解されることがイノシトールリン脂質代謝亢進のトリガーと考えられており,この情報伝達系を考察する上で重要なリン脂質である。

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 ■有用性

 セカンドメッセンジャーであるIP3は,神経伝達物質やホルモン,細胞増殖因子で刺激した時,PIP2の分解によって生じ,小胞体からのCa2+遊離を引き起こす。細胞内Ca2+濃度の上昇は,さらにカルモジュリン/Ca2+キナーゼを活性化し,機能蛋白をリン酸化することにより,おのおのの作用を発現する。このことからIP3の産生は,イノシトールリン脂質を介するシグナル発生の示標として注目される。

 IP3の受容体は当初,肝臓や副腎のミクロゾーム画分に存在していることが確認された1)が,その後,小脳にはこれらの組織に比べて数百倍も多く存在することが判明した2)

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 ジアシルグリセロール(1,2-DG)はPI responseによって産生され,プロテインキナーゼC(Cキナーゼ)の生理的活性化因子として働く。生理的条件下では,Cキナーゼ活性はDGの産生,消失によって調節されることになる。よってDG量の変化を把握することがCキナーゼ活性の動向を調べる上で重要である。しかしDGの微量定量が難しかったため,従来はラジオアイソトープラベルによる代謝変化のみが捕えられていた。ラベル実験では大まかな量的変化はわかるが,正確な量を反映しているとは言えなかった。これらの弱点を克服するためDGの微量定量法が開発された。生体内ではDGはDG lipaseによってモノアシルグリセロールへと分解される経路と,DGキナーゼによってホスファチジル酸へ変換される経路によって代謝される。

ヘパリン 飯野 正光
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 ■特性および構造

 硫酸化ムコ多糖の一種,D-グルコサミンとL-イズロン酸,およびD-グルコサミンとD-グルクロン酸の繰り返し単位からなる長鎖多糖で,グルコサミンの2位のアミノ基,6位の水酸基,イズロン酸の2位の水酸基に硫酸が結合する。アンチトロンビンⅢと結合し,協同して血液凝固阻害を起こすことがよく知られている。最近,ヘパリンはイノシトール1,4,5三燐酸(IP3)受容体とIP3の結合を強く抑制し1),IP3による細胞内ヵルシウムストアからのカルシウム放出を特異的に阻害することが見出され2-4),細胞内カルシウム動員機構の研究に有用な道具として用いることができるのではないかとして注目されている。

 市販されているのは,肺,腸粘膜などから抽出されたものが多い。分子量は6,000から20,000程で,水によく溶ける(50mg/ml程度)。

PI関連合成物質 尾崎 庄一郎
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 ホスファチジルイノシトールニリン酸(PIP2)を加水分解するとミオイノシトール(1,4,5)三リン酸(lns(1,4,5)P3,1)が生成する。Ins(1,4,5)P3の代謝物としてIns(1,3,4)P3(4),Ins(1,3,4,5)P4(5),Ins(1,2-サイクリック4,5)P3(6),Ins(1,3,4,6)P4,Ins(1,4)P2などが知られている。これらの化合物は全部われわれおよび他の研究者により合成されている。

 これらの化合物はいずれも水溶性である。フリーの化合物は非結晶性のねばい油状であるがカリウム塩,ナトリウム塩,アンモニウム塩はいずれも結晶性となる。結晶は常温で安定であり,アルカリ性水溶液も比較的安定であるが,酸性水溶液ではリン酸基の転移がおこりやすく不安定である。ただしIns(1,2-サイクリック,4,5)P3は水溶液中アルカリ性でも不安定である。

糖関連化学物質(試薬) レクチン

レクチン(総論) 辻 勉 , 大沢 利昭
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 レクチンとは,特定の糖構造に結合する活性を有する蛋白質の総称である。歴史的には,ある種の植物種子抽出液に赤血球を凝集する物質が発見されたことが発端となっており,その後,数多くの凝集素が植物,動物,微生物に広範囲に分布していることが報告された。また,これらの多くが赤血球表面の糖を認識し結合していることが判明し,レクチンという名称が与えられている。生物体における機能は,ほとんどのレクチンについて未だ解明されていないが,生物科学の様々な分野で研究用試薬として広範に利用されている。試薬としての観点からみると,1)結合特異性が比較的よく解明されている,2)安定性,3)入手の容易さなどの理由で,植物および無脊椎動物由来のものが多く使用されている。

 一般にレクチンは,非共有結合により結合した複数のサブユニットで構成される多量体構造をとるため,1分子のレクチンに糖の結合部位が複数あり,細胞を架橋し凝集させる活性を有していたり,多糖類や糖蛋白質と沈降反応を起こしたりする。多くのレクチンは,特定の単糖によって結合の阻害を受ける(この単糖のことをしばしばハプテン糖と呼ぶ)。たとえば,代表的なレクチンであるコンカナバリンA(Con A)やレンチルレクチンなどのレクチンは,D-マンノースによってもっともよく,また,より高い濃度のD-グルコースによっても結合が阻害される。いずれの糖の場合もαアノマーの方がβアノマーより阻害活性が高い。

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 レクチンを不溶性の担体に固定化した吸着体のカラムを用いてアフィニティクロマトグラフィ(AFC)を行うと,レクチンと親和性のある糖構造をもつ,小は単糖グリコシド,オリゴ糖,糖ペプチドから,大は糖タンパク質や,さらには細胞までも分離・分画することができる。とくに,特異性の異なる種々のレクチンカラムを用いて逐次AFCを行うと,混合試料中の各種糖質成分を分離することができるとともに,各成分の糖鎖構造をある程度推定できる利点がある1)。レクチンを自分で固定化することもできるし1),主要な固定化レクチンは市販されている(ホーネンコーポレーション,他)ので,購入することもできる。以下にレクチンAFCの最近の知見を紹介する。

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 レクチンを組織細胞化学的に適用することにより,いろいろな組織や細胞,あるいは細胞内に存在する複合糖質の分布の検索,また特定の組織,細胞の同定や分別,さらには臨床的な診断への応用などが可能である1-3)。レクチンの結合部位である糖鎖構造は,化学固定や熱処理に比較的よく耐えるため,パラフィン包埋切片,電顕用樹脂包埋切片,凍結切片など様々な処理を経た材料に広く適用できる。

マイトーゲン 豊島 聰
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 ■特性と構造

 ある種のレクチンはリンパ球を活性化し,その分裂増殖を誘導する1)。このようなレクチンをマイトーゲンと呼ぶ。表1にマイトーゲン活性を有する主なレクチンを示した。この表のマイトーゲンのほとんどはT細胞のみを活性化する。PWMはB細胞も活性化する。PWMには5種類のイソレクチン(Pa-1〜Pa-5)が存在し,多少活性が異なる2)。マウスでは,Pa-1のみがB細胞をT細胞に依存しないで活性化するが,Pa-2〜Pa-5はT細胞のみを活性化する。ヒトのB細胞は,Pa-1およびPa-2によって活性化されるが,T細胞依存的であり,B細胞が直接活性化されるのではないと考えられる。マイトーゲンによる活性化は,T,B細胞に対する特異性を示すのみでなく,動物種に対しても特異性が存在し,SBAはブタリンパ球を活性化するが,ヒト,ラット,マウスのリンパ球を活性化しない。またPNA,SBA,WFHおよびDolichos biflorusの葉・茎からのレクチンはシアリダーゼ処理したリンパ球に対してのみ活性化能を示す。

糖関連化学物質(試薬) 糖鎖分解酵素(グリコシダーゼ)

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 複合糖質の糖鎖構造や機能の解析にはグリコシダーゼが非常に有用である。グリコシダーゼは複合糖質を糖とアグリコンに加水分解する酵素であるが,その触媒作用の特異性と反応条件を利用するので,緩和な状態でタンパク部分や脂質部分の分解なしに特異的に糖鎖を切り出すことができる。とくに,対象が組織や細胞である場合や,糖鎖の生理的機能に関する研究には不可欠である。グリコシダーゼは,切断する糖の種類やアノマー構造には非常に特異性が高いが,一般にアグリコンの性質には比較的寛容であるとされている。しかしながら,アグリコン特異性がきわめて厳密なものもあり,酵素起源により,相対的特異性やアグリコン特異性が著しく異なることも少なくない。

 グリコシダーゼには,糖鎖の非還元末端から特定の単糖を遊離するエキソ型と,複数の糖残基から成る特定の構造部分を認識し,オリゴ糖を切り出すエンド型があり,細菌,カビ,植物,軟体動物,哺乳動物に至るまで広く分布している。分離・精製され,試薬として汎用されているものも多いが,それぞれの詳しい性状や試薬としての使用法などについては各論に譲り,ここでは,グリコシダーゼの大まかな種類と一般的性状を述べるにとどめる。なお,グリコサミノグリカン分解に関するグリコシダーゼについては,ページ数に限りがあるので触れなかった。

ガラクトシダーゼ 宇田 裕
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 β-ガラクトシダーゼ

 ■種類

 β-ガラクトシダーゼ(β-Gal)標品として,E. coli1),Aspergillus niger2),Asp. oryzae,Streptococcus pneumoniae3),St. 6646K4),ホラ貝(Canonica lampus),タチナタマメ(Jack bean)5),アーモンド・エムルシン6),インゲンマメ7),ウシ肝臓,および睾丸由来のものが市販されている。このうち,複合糖質糖鎖構造解析の目的には,タチナタ豆,ASp. niger,St. pneumoniae,ホラ貝由来のものが比較的多く使用されている。E. coli由来のものは酵素免疫測定の標識酵素などに用いられることが多い。

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 天然に見出されるフコースの大部分はL型でα結合しており,血液型ABH,ルイス式血液型,種々の分化抗原の抗原決定基,およびアスパラギン結合糖鎖の構成糖として自然界に広く分布している。これらのフコシル残基を加水分解するα-L-フコシダーゼはそれぞれの基質特異性を利用してフコースの結合した抗原決定基を簡便に同定したり,糖鎖構造研究に有効に用いられている1)。現在までに多くの起源を異にするフコシダーゼが報告されてきているが,ここでは試薬として用いられているフコシダーゼについて要約する(表1)。

シアリダーゼ 宮城 妙子
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 シアリダーゼ(EC3.2.1.18)は,糖タンパク,糖脂質,オリゴ糖などの末端に結合しているシアル酸を遊離させる加水分解酵素で,糖鎖構造研究のみならず,複合糖質におけるシアル酸の生理的役割の解析にも用いられ,近年,試薬としての重要性がますます増加している。

 シアリダーゼは,インフルエンザウイルスの赤血球凝集反応の研究が発端となって発見され,ウイルス,細菌,放線菌などの微生物や動物に広く分布している。これらのうち,ウイルスや細菌からは高純度のシアリダーゼが得られており,性状も詳しく調べられて,試薬としてよく利用されているが,動物からは精製標品が得がたく,性状も不明な点が多い。試薬として使用する際に留意すべきことは,シアリダーゼ標品の純度と基質特異性に関する情報の把握である。酵素標品は純度が高いほど良いが,とくに蛋白分解酵素活性や他の糖鎖分解酵素活性を含んでいてはならない。また,シアリダーゼ活性は,基質のシアリル結合やシアル酸の置換基の種類によって影響を受け,後者についてはとくにN-アセチルノイラミン酸がN-グリコリルノイラミン酸よりも加水分解されやすいことが知られている。

グリコペプチダーゼ 高橋 禮子
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 ■反応機構

 アーモンド由来のグリコペプチダーゼは,糖ペプチドの糖部とペプチド部との結合部位(GlcNAc-Asn)を特異的に切断し,糖鎖をその根元から丸ごと遊離させる酵素である1)。この酵素はグリコシダーゼではなく図1に示す反応機構の(1)式を触媒する一種のアミダーゼである。(2)式は引き続き非酵素的に進行する。酵素番号〔EC3.5.1.52〕が与えられている。

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 エンドグリコセラミダーゼ(EGCase)はRohdococcussp.の培地から単離されたエンド型酵素で,スフィンゴ糖脂質に作用し,オリゴ糖とセラミドを同時に完全な形で生成する1)。スフィンゴ糖脂質は両親媒性であり,疎水性のセラミドを細胞表面の脂質二重膜の中に埋め込み,親水性の糖鎖を細胞膜から外に突き出していると考えられている。セラミドを構成するスフィンゴシン塩基と脂肪酸に構造上の変異がある他,糖鎖構造にも様々な種類があり,糖鎖構造で区別しても,200を超える異なる分子があるという。これらの糖脂質は細胞表面にあって,ウイルスや毒素のレセプターとなる他,細胞周期,細胞分化,癌化により種類も量も変化するし,外から加えた糖脂質が細胞分化を惹き起こす場合も知られてきて,細胞にとって重要な生物情報を担う分子と考えられるようになった。しかし,今まで,このスフィンゴ糖脂質から定量的にオリゴ糖とセラミドを得る方法がなかったことを考えると,このEGCaseの貢献は大きなものだと言える。

糖関連化学物質(試薬) 糖鎖

糖鎖(総論) 岩森 正男 , 永井 克孝
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 生体の四大成分のうち,蛋白質は抗体,酵素,細胞構築などの多様な機能が明らかにされ,また核酸は遺伝情報を伝達する基本的役割が解明されるに至ったが,最後に残された糖質については,その機能が十分に明らかにされているとは言い難い。現在までに得られているデータから糖質の機能は三つに大別できる。その一は,血糖や肝,筋の貯蔵グリコーゲンに代表されるようにエネルギー源としての役割である。生体のほとんどの組織,とくにエネルギー消費のもっとも激しい脳はエネルギー源として糖をもっぱら用いている。しかし,通常状態のエネルギー源として糖の占める割合は非常に大きいものの,瞬発力を必要とする時にはクレアチンリン酸,飢餓状態では,脂肪酸,ケトン体,アミノ酸もエネルギー源として使用されるようになるため,エネルギー源としての糖の役割は非常に重要であるが,不可欠のものとは言い難い。また,第二の機能として,胃粘膜ムチンや耐寒糖鎖構造に代表されるように,温度,水素イオン濃度などの環境要因から生体を保護する役割がある。いずれも糖蛋白質の構造の一部として母体である蛋白質に対し独特の立体構造を付与し,物理化学的変化に対応している。一方,第三の機能である認識反応は,細菌やウイルス感染,細胞の増殖,分化,癌化,形態形成,免疫反応における自己非自己の識別,神経ネットワークの形成など高次の生物現象に関与し,近年もっとも活発な研究が展開されている分野である。

グルクロン酸糖脂質 杉田 陸海
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 ■特性および構造

 グルクロン酸含有糖脂質は昆虫類(キンバエLuciliacaesar幼虫1)およびホホアカクロバエCalliphera vicina蛹2))から単離された(表1)。構造上の特色としては,①直鎖型である,②アミノ糖残基を多く含む,③マンノースを1モル含有する,④GalNAcβ1-4GlcNAcβ1-3Manの三糖残基は自然界で初めて見出された糖配列である,などがあげられる。また,最近になってヒト末梢神経に硫酸化グルクロン酸糖脂質が見出され(表1)3,4),これらの酸性糖脂質に対する自己抗体が末梢神経障害症状を呈するIgMM-蛋白質血症の患者血清中に存在することが報告されている。昆虫類のグルクロン酸糖脂質もまた,IgMM-蛋白質血症患者血清と反応することが明らかになっている。しかし,その活性はヒト末梢神経由来のsuifoglucuronylparaglobosideの1/100〜1/150程度(ELISA法による測定結果)であることから,この蛋白質は糖脂質の非還元末端部の三糖残基を特異的に認識するものと思われる。

糖蛋白質糖鎖 古川 清
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■特性および構造

糖蛋白質中の糖鎖は,アスパラギン(Asn)残基の酸アミド基や,セリン(Ser),スレオニン(Thr)残基の水酸基と結合して存在する。Asn結合糖鎖はその生合成過程にそって,高マンノース型,混成型,複合型に分類される(表-1A)。いずれの糖鎖もManα1→6(Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAcの母核構造を有するが,側鎖構造が異なる。複合型の側鎖構造は一般にNeu5Acα2→3or6Galβ1→4GlcNAcであるが,この構造がさらに修飾され多数の異なる糖鎖が生じる(表-1A)。これらの糖鎖構造の差は,個体の臓器特異性,種特異性,細胞内局在性,癌性変化として見られるが1),同一蛋白質でもミクロ不均一性としても発現する。

 一方,Ser/Thr残基に結合するムチン型糖鎖は,その鎖長に不均一性が見られ,単糖から20糖の大きさに及ぶ2)。糖鎖はGa1β1→3GalNAcおよびGlcNAcβ1→3GalNAcの母核構造と,これらの母核のGalNAc残基にGlcNAcがβ1→6で結合した糖鎖(4種類)に分類される(表-1B)。

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 螢光標識法は糖(糖鎖)の検出や構造解析を高感度かつ簡素に行うため,糖鎖の還元末端アルデヒド基に2-アミノピリジンを結合させ,螢光性のピリジルアミノ(PA-)糖鎖にするもので1),原理を図に示した。ピリジルアミノ基は螢光性であるばかりでなく,酸水解,アルカリ水解,ヒドラジン分解,スミス過ヨウ素酸酸化,メチル化分析,部分アセトリシスや光に比較的安定であるため,螢光標識したままで少糖の構造解析を行うことができる。

糖関連化挙物質(試薬) レクチン

糖結合特異性 山本 一夫
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 ■構造

 レクチンとは糖に特異的に結合するタンパク(ただし抗体・酵素は除く)の総称である。植物レクチンは主に分子量3万前後のサブユニットの四量体として存在することが多い。動物レクチンはその特性からC型,S型の二つに分類されるが,構造は多様である。

糖関連化挙物質(試薬) 糖鎖

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 ガングリオシドのようなシアロ複合糖質ならびにそのアナログを系統的に合成する際,Key stepとなるのがシァル酸(Neu5Ac)による位置および立体選択的グリコシル化反応である。最近含硫シアル酸誘導体(1〜4および6)をシアル酸供与体として用いる新しいグリコシル化反応が開発され,広くガングリオシド関連化合物の合成に応用されている。

基本情報

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生体の科学
40巻4号 (1989年8月)
電子版ISSN:1883-5503 印刷版ISSN:0370-9531 金原一郎記念医学医療振興財団

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