Japanese
English
特集 研究室で役に立つ新しい試薬
蛋白質,その他修飾試薬
SH試薬
SH試薬(総論)
SH reagents
山本 啓一
1
Keiichi Yamamoto
1
1放送大学教養学部
pp.286-288
発行日 1989年8月15日
Published Date 1989/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905280
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
システイン残基のSH基のpKは多くのタンパク質で8付近にあり非常に反応性の高い基の一つである。この高い反応性のためSH基はパパインやカテプシンなどのタンパク質分解酵素の活性中心にあってペプチドの加水分解反応を触媒している。また,タンパク質中のシステイン残基数はそう多くはないので,この高い反応性を利用して特定の部位を螢光やスピン化合物で標識することができ,その部位で起こる構造変化を螢光波長のシフトやスピン緩和時間の変化から検出することもできる。さらに他の反応性基(リジンのεアミノ基など)を別な螢光試薬で特異的に標識すれば,螢光試薬間のエネルギー移動から両残基間の距離を測定することもできる。一方,SH基はタンパク質内でS-S結合を作りタンパク質の構造を安定化させている。一般的に言ってSH基を持つタンパク質は細胞内のものに多く,細胞外タンパク質でSH基を持つものは少ない。細胞内ではグルタチオンによる還元的雰囲気のためタンパク質のSH基が保護されていると考えられる。こうしたタンパク質のSH基と反応する化合物をSH試薬と呼ぶわけだが,先に述べたように反応性が高く特異的な修飾が可能なため,この本の中の他の項目に分類されている試薬にもSH試薬が多数ある。
Copyright © 1989, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.