生体の科学 56巻5号 (2005年10月)

特集 タンパク・遺伝子からみた分子病―新しく解明されたメカニズム

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 近年の分子遺伝学の驚異的進歩により,多くの遺伝病の原因遺伝子が同定されてきました。現在,遺伝病解明の華々しい第一幕は終ったと言っていいでしょう。

 今はそれら「分子病」の多様性あるいはその詳細を極める時期に入っていると思われます。

1.遺伝子発現

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 Hepatocyte nuclear factor-1α(HNF-1α)はホメオドメインを含む転写因子の一つであり,別名transcription factor 1とも呼ばれ,肝の発生・分化や肝細胞特異的遺伝子発現に重要な核内転写因子である。肝臓に豊富に発現しているが,腎,小腸のほか膵β細胞でも発現がみられる1,2)。HNF-1αは莫大な数の遺伝子発現を直接調節しており3),HNFファミリーの転写因子ネットワークを介してそれらの遺伝子発現にも多彩な影響を与えている(図1)4,5)

 HNF-1α遺伝子は染色体12q24.2に存在し6),総アミノ酸数631の四つの機能的領域,すなわち二量体形成ドメイン(1-32残基),DNA結合ドメイン(98-280残基),転写活性ドメイン(281-631)と,二量体形成ドメインとDNA結合ドメインをつなぐフレキシブルリンカー(33-97残基)から成り立っている7)。HNF-1αのノックアウトマウスは著明な肝腫大とwasting syndromeのため生後まもなく死亡するが,ヒトのFanconi症候群に似た尿細管障害も示す。ホモ接合体ではインスリン分泌不全,糖尿病を発症し,また胆汁酸輸送担体遺伝子の転写が障害され,総コレステロール値が上昇することが明らかにされている。

HNF-1β(TCF2) 古田 浩人 , 南條 輝志男
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HNF-1β/TCF2の構造および機能

 Hepatocyte nuclear factor(HNF)は肝臓で発現している遺伝子の転写調節因子として同定されたタンパクの一群で,DNA結合ドメインの構造の違いから,POUドメインならびにホメオドメインを有するHNF-1,フォークヘッドドメインを有するHNF-3,Znフィンガー構造を有し核内受容体型転写因子に属するHNF-4,CUTドメインならびにホメオドメインを有するHNF-6の4種類が知られている。本稿で述べるHNF-1βならびに別稿で述べられているHNF-1αは,このうちHNF-1に属する転写因子で,両者ともN端側から順に二量体形成ドメイン,DNA結合ドメイン,転写活性化ドメインからなる構造を有し(図1),ホモ二量体もしくはヘテロ二量体を形成し標的遺伝子のプロモーター領域に結合することで転写を調節している。HNF-1βとHNF-1αの両者はともに肝臓以外にも膵臓,腎臓,腸管において発現が認められているが,相対的には肝臓においてはHNF-1αの,腎臓においてはHNF-1βの発現が強い。また,HNF-1βは胎生早期から発現が認められ,そのノックアウトマウスは胎生7.5日の段階で死亡してしまうのに対し,HNF-1αは中期以降から発現が増強し,そのノックアウトマウスは出産時には異常は認められない。

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RUNX2

 RUNXファミリーは,ショウジョウバエの体節形成遺伝子の中のペアルール遺伝子のひとつruntにホモロジーをもつRuntドメイン遺伝子ファミリーに属する転写因子である。RUNXはαおよびβサブユニットからなるヘテロ二量体で,ほかの転写因子や補助因子と結合して標的遺伝子の転写活性をコントロールし,造血・骨形成といった特定の細胞の分化,増殖に関わる重要な働きを担っている1)RUNXは哺乳類では3種類のαサブユニットが同定されている。発見の経緯により複数の名称が存在し,それぞれRUNX1CBFA2/PEBP2αBRUNX2CBFA1/PEBP2αARUNX3CBFA3/PEBP2αCと命名されていたが,簡素化するためrunt-related gene,Runxと統一された1)。この3種類のαサブユニットは保存されたRuntドメインを有し,特異的なDNA配列Pu/TACCPuCPu(PuはAまたはGを示す)に結合し,転写活性を調節する1,2)。βサブユニットは哺乳類では1種類存在し,それ自体ではDNA結合しないが,αサブユニットのRuntドメインに結合することにより,αサブユニットのDNA結合能を増強する2)

 RUNX2は未分化間葉系細胞から骨芽細胞への分化を決定づける転写因子であり,骨芽細胞においてosteocalcin,osteoprotegerin,TGF-β receptor 1,osteopontin,collagenase 3などの発現を調節している3)。一方,軟骨細胞ではosteopontin,collagenase 3,vascular endothelial growth factor(VEGF)の発現を調節している3)RUNX2ノックアウトマウスは骨形成が阻害され,生後すぐに死に至る。組織学的には,成熟骨芽細胞は出現せず,軟骨細胞は前肥大軟骨の前段階で分化がストップし,破骨細胞は細胞数が減少し小型化していた4)。このようにRUNX2は骨芽細胞,軟骨細胞,破骨細胞分化や歯の発生にも重要な因子であり,骨形成のマスターレギュレーターとなる存在である5)

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 TBX3/Tbx3はDNA結合領域T-boxを共通に有するT-box遺伝子ファミリーの一つであり,ヒトをはじめとする多くの真核生物の発生に必須の転写因子である。ヒトTBX3遺伝子のhaploinsufficiencyは,尺側上肢,乳腺およびアポクリン汗腺の低形成を主徴とするulnar-mammary syndrome(MIM181450,以下UMS)の原因となる1)。また,Tbx3ノックアウトマウス(以下KOマウス)はUMS患者に類似した表現型を示す2)

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 メチル化CpG結合タンパク2(MeCP2)は,メチル化されたDNAに結合し,ほかの因子と共同でクロマチン構造を変化させ転写を抑制する機能をもつ。ヒトでは485アミノ酸からなり,メチル化CpG結合ドメイン(MBD)と転写抑制ドメイン(TRD)の二つの機能ドメインをもつ1)。MeCP2をコードしている遺伝子MECP2はX染色体上(Xq28)に存在し,四つのエキソンをもつ2)MECP2は調べたどの組織でも発現しているが,特に分化途上の神経細胞における発現の高いことが知られている3,4)。最近になり,第2エキソンを欠く転写産物(MECP2B)が同定され,本来の長さのものはMECP2Aと称されるようになった。MECP2Bは中枢神経でも高い発現が認められ,成人脳ではMECP2Aの10倍量も発現していると報告された5)。一方,ES細胞でもMECP2Bの発現が高く,その後分化ともにMECP2Aの比率が上昇することが示されている6)

 ラットやマウスの新生仔を用いた研究で,視床・延髄・基底核でMeCP2陽性細胞が出現するが,生後1,2週で発現量が急速に低下すると報告されており3,7),またヒト脳を用いた研究でも,胎児期には大脳,中脳,橋,延髄,小脳と広く発現が認められるのに対し,大脳では胎児期後期から発現が低下し,脳幹部は乳児期から低下する8)。また,中脳の黒質と縫線核,傍中脳水道灰白質,橋の青班核で乳児期後期から発現がみられなくなるが,10歳頃から再び発現が観察される8)

2.酵素および酵素制御

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 ATPシンターゼは電子伝達系酵素複合体ⅤまたはF1Fo-ATPaseとも称され,10-16個の核DNA上にコードされたサブユニットと2個のミトコンドリアDNA(mtDNA)にコードされたサブユニットa鎖(MT-ATP6)とMT-ATP8で構成される。ヒトのa鎖はmtDNAの塩基番号8527-9207に,もう一つのサブユニットMT-ATP8は塩基番号8366-8572にコードされており,8527-8572の部分はフレームを違えてオーバーラップしている。この2個のサブユニットはミトコンドリア内膜に組み込まれるように存在するFo部分の一部を構成し,疎水性のアミノ酸(a鎖は47.6%,MT-ATP8は37.7%)が主体である。

 ヒトの病気との関連でa鎖の変異がはじめて報告されたのはT8993G変異である。Holtらにより,発達の遅れ,網膜色素変性,けいれん,失調,神経原性の筋力低下,感覚性ニューロパチーを症状とする家系で,本変異がヘテロプラスミーで見出された1)。症状の組み合わせから,Neurogenic weakness,ataxia,retinitis pigmentosa(NARP)と呼ばれ,また報告した研究者の所属していた施設名からQueens Square diseaseとも呼ばれた。その後,この変異は母系遺伝を示すLeigh脳症患者でも発見され,その場合は変異率が極めて高くほぼホモプラスミーの状態(95%以上)になっていることが判明した2)。一方,NARPの場合にはそれよりやや低い変異率であり,一家系内にNARPとLeigh脳症が混在している場合もある。

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ゲノムのメチル化とDNAメチル基転移酵素

 ゲノムの安定化のため,また遺伝子の適切な発現のため,ヒトゲノム(染色体)DNAには飾り付けが施されている。この修飾は個体発生の初期に細胞の運命に沿って施され,その後は分裂をくり返してもゲノムの記憶として忠実に伝承される。これはヒトのからだの正常な個体発生とその機能の維持に必須のメカニズムである1)。ゲノムの記憶のくずれは老化となり,癌化となる。ゲノムの修飾とは,具体的にはDNAのメチル化修飾であり,それが契機となって生じる一連の染色体ヒストン蛋白の修飾である。

 ヒトゲノムDNAのメチル化とは,DNAメチル基転移酵素によって,CpG二塩基配列のシトシン塩基上にメチル基(CH3基)が付与されることである。ヒトゲノムDNA上のCpG配列のほとんどはこのメチル化を受けている。しかしながら,遺伝子の発現に関与するプロモーター領域は例外的にCpGのメチル化を免れている。プロモーター領域のメチル化は,スイッチの意義をもっている。したがって誤ったメチル化は誤って遺伝子のスイッチを切ってしまうことになり,これが癌や先天異常といったさまざまな疾患の発症要因となっている。

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 蛋白質のセリン(Ser)あるいはスレオニン(Thr)のヒドロキシル基にマンノース(Man)が結合した糖鎖をO-Man型糖鎖という。哺乳類のO-Man型糖鎖の主要な構造として,Siaα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-2Man-Ser/Thrが報告されている1)。Protein O-mannose β1,2-N-acetylglucosaminyltransferase1(POMGnT1)はO-Man型糖鎖の生合成において,UDP-N-アセチルグルコサミン(UDP-GlcNAc)を糖供与基質としてGlcNAcをβ1-2結合でManに転移する酵素である。一方,N-結合型糖鎖の生合成過程におけるGlcNAcβ1-2Manを合成する酵素としてβ1,2-N-acetylglucosaminyltransferase-Ⅰ(GnT-Ⅰ)とGnT-Ⅱが知られており,POMGnT1はこれらとの相同性をもとにクローニングされた。しかし,GnT-Ⅰ,ⅡとPOMGnT1の糖受容基質に対する特異性は完全に異なり,GnT-Ⅰ,ⅡがO-Man型,あるいはPOMGnT1がN-結合型糖鎖の生合成酵素として機能することはできない2)

 POMGnT1は660個のアミノ酸からなり,N末側の約40アミノ酸が細胞質側,幹領域と触媒活性領域を含むC末側の大部分が管腔側に存在するⅡ型膜結合蛋白質である。POMGnT1のArg367-Gly505の領域はGnT-Ⅰの触媒活性領域との相同性が高く,POMGnT1のN末端側から298個およびC末端側から9個のアミノ酸を除いても触媒活性は保持されることから,Val299-Glu651が触媒活性領域であると考えられる3)。GnT-ⅠのX線構造解析から,触媒活性領域にある16個のアミノ酸がUDP-GlcNAcとMn2+の結合に必要であることが示されており,糖転移酵素に特徴的なD/E-X-Dモチーフがこの中に含まれている4)。これら16個のアミノ酸のうちD/E-X-Dモチーフと,触媒活性中心と予想されるアスパラギン酸残基を含む10個のアミノ酸がPOMGnT1で保存されている。また,GnT-Ⅰの触媒領域でジスルフィド結合を形成することが示されている二つのシステイン残基もPOMGnT1で保存されており,POMGnT1もGnT-Ⅰの触媒活性ポケットと同様の構造を形成するものと予想される2)

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 P450シトクロムオキシドレダクターゼ(POR)は,ミクロソーム内電子伝達に必須の補酵素である1)。2004年,本遺伝子変異が骨形成異常と男女共通の性分化障害を呈する新たな常染色体劣性遺伝疾患の原因であることが明らかとなった2)

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 UDP-N-アセチルグルコサミン-2-エピメラーゼ/N-アセチルマンノサミンキナーゼ(GNE/MNK;EC5.1.3.14およびEC2.7.1.60)は,シアル酸(シアル酸転移酵素に対するシアル酸供与基質)の生合成経路において,UDP-N-アセチルグルコサミンからN-アセチルマンノサミン(ManNAc)へのエピマー化とManNAcのC6位の水酸基のリン酸化の2反応を触媒する酵素である1)。約75kDaのタンパク質で,アミノ末端側の原核生物のGNEと相同性のあるドメインと,カルボキシ末端側の糖キナーゼと相同性のあるドメインからなる。発現タンパク質は,機能ドメインとして,アミノ末端半分はGNE,カルボキシ末端半分はMNK活性を持つことが証明されている2)。活性型は二量体が三つ会合した六量体として存在する。つまり,この六量体形成はGNE活性に必須である。

 縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(distal myopathy with rimmed vacuoles, DMRV)は,1981年に埜中らにより国際的に初めて報告された疾患である3)。常染色体劣性の遺伝性筋疾患で15-40歳にかけて発症する。下腿の前脛骨筋が好んで侵される。筋力低下と筋萎縮は進行性で,下腿のみならず大腿後部,腰帯部も次第に侵され,発症から平均12年で歩行不能となる。比較的後期まで大腿四頭筋は保たれる。筋組織の病理学的特徴は,病名にもある縁取り空胞の形成である。筋線維の大小不同があり,多数の小角化した萎縮線維が認められるが,縁取り空胞はこの萎縮した筋線維に多い。壊死線維や再生線維はほとんど認められない。電子顕微鏡観察では,縁取り空胞は多数の自己貪食空胞とミエリン様小体(myeloid body)が集まったものである。この自己貪食空胞は,局所的な筋原線維変性部位を取り囲むように存在していることから,オートファジーが二次的に活性化されたものであると考えられる。また,核内にはしばしば,直径15-20nmの線維状の封入体が認められる。さらに,筋線維内にはアミロイドの沈着,リン酸化タウやユビキチン化タンパク質の蓄積が認められる。アポトーシスの関与を示唆する報告もある4)

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機能・遺伝子・蛋白

 酸性マルターゼ(α-グルコシダーゼ[GAA])はライソゾーム酵素であり,グリコーゲンのα-1,4およびα-1,6結合を加水分解することによりグルコースを生成する。酸性マルターゼのcDNAは約3.6kbで952個のアミノ酸をコードしている1)。遺伝子は20個のエクソンを含み,ゲノム上でおよそ28kbの領域に拡がっており2),染色体の17q25.2-25.3に位置する3)。第1エクソンは5'側非翻訳領域のみからなり,第2エクソンに開始コドンが存在する4)。翻訳されたペプチドは小胞体で7ヵ所に糖鎖が付加され,そのうち2ヵ所がリン酸化を受け110kDaの前駆体となる。その後,ゴルジ体からライソゾームにかけての輸送過程とライソゾーム中で段階的に翻訳後修飾が行われ,95kDa,76kDaを経て最終的に70kDaの活性型酵素が生成される5)

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 パーキンソン病(PD)は安静時振戦,動作緩慢,歯車様固縮,姿勢反射障害を四大症候とする神経変性疾患である。黒質神経細胞の変性がこれら運動障害の責任病巣であるが,さらに青斑核,迷走神経背側運動核も障害される。組織学的にはLewy小体と呼ばれる封入体が出現するのが特徴である。発症年齢は主に50代後半から60代にかけてであるが,一部に若年で家族内発症例が見られ,これが本邦での家族性パーキンソン病(FPD)研究のきっかけとなった。

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 筋強直性ジストロフィー(DM)は筋緊張,筋萎縮などの主症状のほかに,白内障,精神遅滞,性腺萎縮,前頭部脱毛などの全身にわたる症状を併発する常染色体優性の遺伝病である。責任遺伝子である筋強直性ジストロフィープロテインキナーゼ(DMPK,EC2.7.1.-)はヒト19番染色体長腕13.3に位置する。DMでみられる遺伝子変異は非常に特異なもので,DMPK遺伝子の3'側非翻訳領域にCTG三塩基からなる繰返し配列(CTGトリプレットリピート)があり,正常対照では繰返し数が5-30であるのに対し,DM患者では100以上,多いものでは数千にまで伸長していることが報告されている。さらに,リピート数と症状に相関関係があり,リピートが長いほど発症年齢が早まり,症状も重篤になることが知られている(表現促進現象と呼ばれる)1)

 ヒトDMPKの場合,セリン/スレオニンキナーゼ部位はN末端から中間部分に位置し,C末端に疎水的領域が存在している。中間にある挿入配列とC末端の違いにより,ヒトDMPKには全部で6種のスプライシング分子があることが知られている2)。C末端側には二種類のスプライシング様式が存在し,その違いにより,DMPKはミトコンドリアと小胞体のそれぞれに局在することが報告されている3)。DMPKは骨格筋,心筋,脳,胃などで発現が確認されているが,骨格筋においてはDMPKは筋小胞体の終末槽に局在することが明らかとなっている4)。培養細胞5)や分裂酵母6),出芽酵母7)にヒトDMPKを強制発現させた場合,細胞の形状が変化することが報告されており,DMPKが細胞骨格の再構成や細胞分裂の一機能を担う可能性が示唆されている。一方で,DMPKの生理的機能については,いまだに不明な点が多く,in vitroにおいてDMPKはミオシンホスファターゼ(MYPT1)をリン酸化するとの報告がある8)が,これが実際の生体内における基質であると確信をもっていうには,今なお詳細な研究を必要としている。

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 ミオチュブラリン(EC3.1.3.64)はチロシン/デュアル特異性ホスファターゼ活性部位(PTP/DSP)と相同配列をもつタンパク質ファミリーのメンバーである1)。しかし,実際には,タンパク質よりも脂質に対して2000倍以上強い脱リン酸化活性をもち,ホスファチジルイノシトール3-リン酸(PI3P)とホスファチジルイノシトール3,5-二リン酸(PI3,5P2)の3位の脱リン酸化に働くことが示されている。全長603アミノ酸残基からなり,酵素触媒部位を含め六つの機能ドメインが報告されている2)。アミノ末端からホスファチジルイノシトール3,5-二リン酸と結合するGRAMドメイン,細胞膜ラッフルへの移行に必須であるRIDドメイン,ホスファターゼ活性を担うPTP/DSPドメイン,ホスファターゼ不活性型ホモログ分子MTMR12と相互作用するSIDドメイン,さらに,カルボキシル末端にはコイルドコイルドメインとPDZ結合部位が存在する。ヒトでは,分子構造のよく似た13の相同遺伝子と二つの偽遺伝子とともに大きな遺伝子ファミリーを形成することが報告されている。

 ミオチュブラリンはXq28に存在するMTM1遺伝子にコードされている。元々MTM1遺伝子はX連鎖性劣性ミオチュブラーミオパチー(X-linked myotubular myopathy:XLMTM)の原因遺伝子として,ポジショナルクローニングにより同定された3)。現在までに300人以上の患者で分子全域にわたるMTM1遺伝子変異が報告されている2)。XLMTMは大部分の例が,臨床的には乳児期重症型を示す。新生児期から全身の著明な筋力・筋緊張低下と呼吸困難を伴い,ほとんどの患者が4-8ヵ月齢で死亡する。骨格筋組織の病理所見は,中心核を持つきわめて小径の丸い筋線維が特徴である。ほとんどすべての筋線維がタイプ1線維である。また,筋線維中心部での酸化酵素活性の上昇とperipheral haloと呼ばれる周辺部での低活性を示す。これらの組織学的特徴は胎児筋のそれに類似し,筋線維の未熟性が強いと考えられた。そのため,筋管細胞(myotube)に似ていることから,ミオチュブラーミオパチーと名付けられた。

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 5,10メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ(methylene tetrahydrofolic reductase, MTHFR:EC2.1.1.13,別名Cobalamin-dependent methionine synthase)はビタミンB12関連酵素群の一つで,5-10メチレンテトラヒドロ葉酸を5-メチルテトラヒドロ葉酸へ変換する140.3kDの酵素であり,ヒト染色体1p36.3に位置する(図1)。MTHFR酵素の活性低下によりmethyl folate trapと呼ばれるほかの葉酸関連酵素の欠乏をきたし,最終的には血中ホモシステイン(homocysteine:HCY)濃度の上昇を介してDNA合成能の低下や悪性貧血発症などの原因となる。

 MTHFR酵素の活性低下以外に,高HCY血症をきたす原因としてホモシステイン尿症,腎不全,甲状腺機能低下症,葉酸代謝拮抗剤(ナイアシン,メトトレキセート,イソニアジド,フェニトインなど)の長期内服などがあり,遷延する高HCY血症により心血管系疾患や脳血管障害,末梢血管動脈硬化性疾患などの発症率が上昇することが知られている。すでに糖尿病,高脂血症,喫煙,高血圧などは動脈硬化促進因子,あるいは冠動脈危険因子として確立されているが,高HCY血症は食後の一時的高血糖や少ない運動習慣などと並んで新興動脈硬化危険因子の一つとして認知されつつある。

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ムコ多糖症IVA型(GALNS遺伝子異常症)

 細胞外マトリックスの基質成分であるプロテオグリカンは,タンパク質とグリコサミノグリカン(ムコ多糖)から構成される。ムコ多糖症はグリコサミノグリカンの代謝に関わるリソソーム酵素の遺伝子異常症群である。11種類の酵素の遺伝子異常が認められている。ムコ多糖症IVA型は,コンドロイチン6硫酸やケラタン硫酸を分解するN-アセチルガラクトサミン-6-スルファターゼ(GALNS)の遺伝子異常症である。常染色体劣性遺伝形式をとり,発症頻度は10万-15万人に1人と推定されている。臨床症状は骨変形を主徴とし,低身長,X脚,角膜混濁,難聴などの症状が認められる。知能は正常である。症状の重度に違いがあり,重症型と軽症型そして程度は様々であるがその中間型に位置する症例が存在する。筆者らは1991-1994年にGALNSのcDNA,ゲノム遺伝子,染色体座位(16q24)を報告し1-3),続いて本症の遺伝子上の変異を明らかにしてきた4-6)。現在までに約100種類の変異が同定されているが,その内の約80%は点変異であった。

ニューロシンneurosin(KLK6) 岩田 淳
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ニューロシンとは

 ニューロシン(neurosin)はKallikrein-6(KLK-6),myelencephalon-specific protease,zyme1-3)などともいわれる223アミノ酸よりなる25kDaのセリンプロテアーゼである。組織特異性では脳,および脾臓に非常に多く発現しており,中枢神経内の分布では黒質,大脳基底核,脊髄,海馬,小脳に多いとされる1,3,4)

 当初は,アミロイド前駆体蛋白(APP)の切断酵素として発見されたが2),その生理的役割は不明である。正常組織以外では卵巣癌,子宮癌細胞に多く発現するといわれ,これらの癌患者血液中での濃度上昇が報告されている5,6)。アルツハイマー病に関係する研究では,Mitsuiらが脳脊髄液中のニューロシン濃度は加齢とともに増加するが,アルツハイマー病患者ではその濃度が著明に低下している場合があると報告しており7),異常蛋白質の分解に関わっていることが推察される。神経細胞のほかに乏突起神経膠細胞での発現も認められ,実験的アレルギー脳炎では脱髄に伴い乏突起神経膠細胞での発現は増加する8,9)。さらに,Ogawaらはアルツハイマー病の老人斑,パーキンソン病患者の神経細胞内にニューロシンが高発現することを見出しており,これら神経疾患との関わりが注目される10)

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 1997年,常染色体優性遺伝性を示す南イタリアContursi村起源の家族性パーキンソン病(FPD)家系において,α-synuclein遺伝子(SNCA)のミスセンス変異(A53T)が報告された1)。これは単一遺伝子病の形をとるFPDの中で病因遺伝子が同定された最初の例であり,park1として登録された。臨床的には,発症年齢が30-50歳台とやや若年である以外は孤発例に類似しており,病理学的にLewy小体(LB)の出現を伴っていた。SNCAのFPD変異としてはその後A30P2),E46K3)の2変異が報告されている。

 ほぼ同時期に,α-synuclein(aSyn)蛋白は孤発性PDやLewy小体型痴呆症(DLB)の変性神経細胞に出現するLBの構成成分であることがわかった4,5)。この発見により,aSynの蓄積は単なる終末的な病理学的結果ではなく,FPDのみならず孤発性PDを含めた,aSynの蓄積を特徴とする神経変性疾患(synucleinopathy)の病因に関与するというコンセンサスが成立した。

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 1995年,SherringtonらはChr. 14q24.3にリンクする若年発症家族性アルツハイマー病(familial Alzheimer's disease;FAD)の原因遺伝子S182を同定した1)。また同年,Levy-LahadらはChr. 1q31-42にリンクする別のFAD原因遺伝子STM2を同定した2)。これら二つの分子は非常によく似た構造をもち3),前者はプレセニリン1(presenilin 1, PSEN1),後者はPSEN2と命名された。

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グアニンヌクレオチド結合タンパクG(s)αサブユニット

 高等生物はその体内の恒常性を維持するため情報伝達系により生体機能を調節する。グアニンヌクレオチド結合タンパク(Gタンパク)はこの情報伝達系を担う分子である。

 細胞外からの情報は,ファーストメッセンジャーであるホルモン,神経伝達物質,増殖因子,サイトカインなどのシグナルによって伝えられ,リガンドとして,イオンチャネル共役型,酵素共役型,Gタンパク共役型などのかたちを持つ受容体に受容される。Gタンパク共役型では,受容体にリガンドが結合するとGタンパクによってシグナルは変換され,エフェクターを活性化することによりセカンドメッセンジャーを産生し,これによってさらに信号は増幅され,伝達される。

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 成人急性骨髄性白血病(AML)においてもっとも高頻度に認められ,かつ予後不良因子であるFLT3遺伝子変異につき,その臨床的,生物学的特徴,さらにFLT3を標的とした治療法開発の現状について概説する。

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 Notchファミリーは1回膜貫通型の糖タンパク質受容体分子であり,その名前の由来はショウジョウバエの翅先端部がV字型に欠損(Notch)する遺伝座位として同定されたことによる1,2)。Notchはショウジョウバエのほかに線虫などの無脊椎動物をはじめ,ヒトやマウス,ニワトリ,カエル,ゼブラフィッシュなどの脊椎動物にも保存されており,その活性化には2種類のリガンド,DeltaおよびSerrate(哺乳類ではJagged)が関与する。Notchの機能に関してはショウジョウバエの神経細胞の分化課程がもっとも知られている。ショウジョウバエの神経芽細胞は腹側の表皮前駆細胞群の一部から分化するが,Notchの欠失では全て前駆細胞が神経細胞へと分化し,また,Notchの過剰発現変異体では全ての細胞が表皮細胞へと分化して両者とも致死となる。従って,Notchは細胞間相互作用を介して細胞の発生運命を決定する重要なシグナルと考えられる。

 Notchは現在までに,ヒト,マウスにおいて4種類(Notch1-4)が知られており,それぞれ約50%程度の相同性が認められている。これらの4種類Notchの役割・発現は不明な点が多いが,Notch1はおもに神経細胞や造血細胞の分化を,Notch2はグリア系細胞の増殖に関係していることが報告されている。また,Notch1およびNotch2ノックアウトマウスは中胚葉分節(somite)形成異常により致死となるが3),Notch3およびNotch4ノックアウトマウスでは発生や形態的異常は認められず正常である。従って,Notch1およびNotch2は胚発生に重要な働きを担っていると考えられる。4種類のNotchとも同じリガンドでシグナル伝達が活性化されることから,発現の時期や局在がその機能に深く関係している可能性がある。

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PPAR-γの構造と機能

 PPARは,まずPPAR-αが齧歯類の肝細胞において,ペルオキシソーム増殖作用を持つ化合物で転写活性能が誘導される核内受容体型転写因子として同定された1)。これに続きPPAR-β/δ2),PPAR-γ3)の二つのアイソフォームが単離され,これら3種類のサブタイプでファミリーを形成していることが明らかとなった。PPARはそのN末側にDNA結合領域(DBD)をもち,C末側にリガンド結合部位(LBD)を有する構造をとるリガンド依存性核内受容体型転写因子である。基本的に,9cisレチノイン酸をリガンドとするレチノイドXレセプター(RXR)とヘテロ二量体を形成し,遺伝子上流の転写調節領域に存在するPPAR応答配列(PPAR-response element:PPRE)に結合して標的遺伝子の転写活性を調節する(図1)。

 1994年に,PPAR-γは脂肪酸をリガンドとして前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化を促進する機能をもつことが示された4)。PPAR-γには組織特異的なスプライシングの違いにより,比較的発現量は低いものの免疫系組織,心臓,骨格筋,小腸,副腎,脂肪細胞など多くの臓器に発現しているγ1と,ほぼ脂肪細胞特異的に強い発現を示すγ2の2種のアイソフォームが存在する。PPREをもつPPAR-γの標的遺伝子としてはaP2,CD36,LPL,perilipin,アディポネクチンなど脂肪細胞の分化や脂質代謝に関連する分子が知られている。

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FGFR2の構造と機能

 FGFRはチロシンキナーゼ型レセプターファミリーに属し,FGFR1-4の4種類が同定されている。構造は,細胞外領域に免疫グロブリン様領域(Ig domain),酸性ボックス領域,膜貫通領域,細胞内領域には2個のチロシンキナーゼ領域を有する。FGFR1-3のゲノムにはIgⅢの後半部分をコードするエクソンが二つ(Ⅲb,Ⅲc)あり,この部分の組織特異的なスプライシングによってFGFR2ではⅢbアイソフォームは上皮系細胞に,Ⅲcアイソフォームは間葉系細胞に発現し,異なるリガンド特異性を有する。頭蓋冠縫合部における骨成長および肢芽の発生にFGFR/FGFシグナルが重要な役割を担っていることが報告されているが1-3),中でもFGFR2Ⅲc遺伝子が発生中の頭蓋骨のosteogenic frontに限局して発現することから,FGFR2シグナルは頭蓋縫合部における骨芽細胞の増殖,分化に重要であることが伺われる2)。FGFR2Ⅲcは膜性骨化のみならず軟骨内骨化にも影響を与えることから,長管骨の形成異常の病態成立にFGFR2Ⅲb/cのシグナル異常が関与する可能性も示唆される。FGFR2のノックアウトマウスは胎生致死である4)が,ノックアウトマウスのキメラマウスおよびFGFR2Ⅲbのコンディショナルノックアウトマウスの解析の結果,fgf10ノックアウトマウス3)と同様に四肢・肺が形成されないことが報告されている。

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構造と機能

 β3アドレナリン作動性受容体(β3-AR)はヒトでは408個のアミノ酸残基よりなり,β1,2-ARに共通した7回膜貫通型のG蛋白質共役型受容体である。膜の内側のC末端は短いので,プロテインキナーゼAとβ-アドレノセプターキナーゼのリン酸化部位がないため脱感作が受けにくい。カテコールアミンの受容体刺激により4番目の細胞内ドメインのCys361残基のパルミチン酸化した部位はアデニリルシクラーゼを活性化し,G蛋白質と共役し細胞内cyclic AMP濃度を高めてその作用を発揮する1)

 一番特色のある作用は,白色および褐色脂肪組織の脂肪細胞においてみられる。β3-ARが最も多く発現している褐色脂肪組織では,その組織に多いミトコンドリア内膜の脱共役蛋白質1(UCP-1)を活性化し,脂肪酸を熱として処理し,体を寒冷より保護する。一部の熱産生には白色脂肪組織も関与する2)。β3-ARが刺激された結果,増加するcyclic AMPは白色および褐色脂肪組織においてホルモン感受性リパーゼを活性化し,貯蔵されている中性脂肪を分解し脂肪酸として放出する3)

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 TNFRSF11Aは腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーの一員であり,RANK(receptor activator of NF-κB)あるいはTRANCE-R(TNF-related activation-induced cytokine receptor)とも呼ばれている(以下の記述ではRANKとする)1-3)。RANKのリガンドはRANKL(RANK ligand)であり,TRANCE,OPGL(osteoprotegerin ligand),ODF(osteoclast differentiation factor)とも呼ばれている。RANKはほかの腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーと同様に,細胞外領域に4個のシステインに富む繰り返し配列(cysteine-rich domain)を有する1型膜結合蛋白質であり,616個のアミノ酸からなっている。RANK mRNAの発現は種々の組織および細胞株などで認められるが,細胞膜表面におけるRANK蛋白の発現は脾臓,リンパ節,樹状細胞,活性化T細胞,破骨細胞およびその前駆細胞などに限られている。三量体化したRANKLがRANKに結合すると,RANKも三量体となり,下流にシグナルを伝えるものと考えられている。RANKL-RANK系のおもな機能は破骨細胞の分化誘導およびその活性化,樹状細胞の分化・成熟,樹状細胞とT細胞の相互作用などである。RANKのノックアウトマウスは破骨細胞の分化が障害され,骨大理石病を示すとともにリンパ節の器官形成が全く認められない4)

 RANKのシグナル伝達機構にはTNF receptor-associated factor(TRAF)と呼ばれるアダプター蛋白質が重要な役割を果たしている2,3)。RANKの細胞内ドメインにはTRAFの結合部位が少なくとも3ヵ所存在し,6種類のTRAFファミリー(TRAF1,TRAF2,TRAF3,TRAF4,TRAF5,TRAF6)のうち,TRAF4を除くすべての因子がRANKに結合しうることが明らかにされている。これらのTRAFファミリーのうちTRAF2,TRAF5,TRAF6はNF-κB(nuclear factor-κB)およびJNK(c-jun N-terminal kinase)を活性化する機能を有している。RANKの細胞内ドメインには,これら三つのTRAFと結合する部位(TRAF-interacting motif:TIM)が同定されている。TRAF6結合領域はもっとも膜に近い側に存在し,特異性が高い。そのC端側にTRAF2,TRAF5の順にそれぞれの結合領域が存在している。TRAF2およびTRAF6のN端側に存在するRING-zinc finger(RZF)ドメインがIKK(I-κB kinase),JNK,p38 kinaseを活性化することが明らかにされている。これら三つのTRAFのうちでTRAF6を介するシグナル伝達経路が破骨細胞の分化にもっとも重要と考えられている。

酸化型LDL受容体 中村 治雄
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 酸化型LDL受容体(以下,OX-LDL)は,一般にスカベンジャー受容体(SR)と呼ばれる蛋白群に属している。現在,約11種が確認・同定されており,その主要な構造は図1に示す通りである。

 このクラスA(SR-A)はⅠ,Ⅱ,Ⅲ型と,MARCO(macrophage receptor with collagenous structure)に分けられる。細胞質,膜通過,スペーサー,コラーゲン,α-ヘリカルコイルドコイル,C端側の六つのドメインから成り,C端側にシステインリッチ(SRCR)ドメインをもつのがⅠ型,もたないのがⅡ型である。細胞外にあるコラーゲン様構造がリガンド結合活性を示している。

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グルタミン酸受容体サブユニット2(GluR2)の生体における役割

 中枢神経系においてグルタミン酸(以下Glu)は興奮性神経伝達物質として知られ,その受容体はイオンチャネル型,代謝調節型に分類される。イオンチャネル型受容体はさらにα-3-hydroxy-5-methyl-4-isoxazole propionic acid(AMPA)受容体,kainic acid(KA)受容体,N-methyl-D-aspartic acid(NMDA)受容体に分けられ,急性の神経細胞死に関与していることが知られていた。さらに近年の細胞培養系1)およびアゴニストの持続髄注によるin vivo動物実験系において2),AMPA受容体が遅発性の脊髄前角運動ニューロン(MN)死に関与する知見が積み重ねられ,神経疾患の発症機序とAMPA受容体との関連が注目されてきている。

 AMPA受容体を構成するサブユニットにはGluR1~GluR4の4種があり,生物種を越えて高い相同性を保っている。各々が異なるチャネル特性のアイソフォームを持つこと,およびheteromericあるいはhomomeric四量体を形成することから,サブユニットの構成によりAMPA受容体の特性は多様であると考えられる。各サブユニットは第2膜領域にRNA編集を受けるQ/R部位を持ち,この部位のアミノ酸残基はGluR2以外のサブユニットではグルタミン(Q)であるのに対し,GluR2ではアルギニン(R)となっている。ゲノムレベルでは,GluR2においてもQがコードされているが,転写後,RNA編集という塩基置換(CAG:Q→CI(G)G:R)を受ける3,4)。RNA編集は胎生期から成熟期に至るまで,正常神経細胞においてはほぼ100%に保たれている5)。Q/R部位はチャネルポアに面しており,Ca2+透過性を決定する因子の一つである。Rを発現したGluR2(R)をサブユニットに持つAMPA受容体はCa2+透過性が低く,未編集のGluR2(Q)をサブユニットに持つ場合はほかのサブユニットと同様,Ca2+透過性が高い(図1)6)。このようなチャネル特性の違いによる細胞内への過剰なCa2+流入が細胞死への引金を引くと考えられる。

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TSHRの概説

 ヒト甲状腺刺激ホルモン(thyrotropin:TSH)受容体(TSHR)は,764個のアミノ酸からなる糖蛋白であり,長い細胞外領域(N端側に存在),7個の細胞膜貫通領域,および細胞内領域(C端側)によって形成されるG蛋白共役型受容体である。LH/CG受容体やFSH受容体と相同性が高く,糖蛋白ホルモン受容体ファミリーを形成する1)

 TSHRは甲状腺膜上に存在し,下垂体から分泌されるTSHの作用を伝達する。TSHはTSHRを介して甲状腺の種々の機能や増殖を調節している。甲状腺機能に必須なヨードトランスポーター(Na/I symporter:NIS),甲状腺ペルオキシダーゼ(thyroid peroxidase:TPO),サイログロブリン(Tg)の産生を高める2)。また,コロイドへのヨード遊離,サイログロブリンのヨード化,甲状腺ホルモン産生も刺激する。さらに,TSHは甲状腺細胞の増殖を刺激することはin vivoでもin vitroでも確認されているが,増殖作用にはIGF-1やインスリンの存在が必要と考えられている。

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成長ホルモン(GH)分泌と成長ホルモン受容体(GHR)

 下垂体からのGHの分泌は,視床下部ホルモンであるGH分泌促進因子とソマトスタチンによって調節を受け,それらは神経性因子や代謝性因子,あるいはフィードバック調節による修飾を受ける。GHの分泌は拍動的であり,ヒトでは1日に数回の分泌サージがある。GHは生後の成長を調節するとともに,脂質代謝や糖代謝においても重要な役割を担っている。

 GHRは1回膜貫通型の蛋白で,cytokine/hematopoietin受容体ファミリーに属する。GHR遺伝子はヒトでは第5染色体短腕(5p13-p12)に位置し,10のエクソンからなる。GHRは620アミノ酸からなり,246アミノ酸からなる細胞外領域と24アミノ酸からなる膜貫通領域と350アミノ酸からなる細胞内領域がある。ヒトをはじめ霊長類では蛋白分解によって細胞外領域が切断されてGH結合蛋白(GHBP)が作られる1)

Fc receptor-like 3(FCRL3) 沢田 哲治
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 自己免疫性疾患は遺伝素因を有する個体に環境因子が作用することで発症すると考えられている。近年,Single nucleotide polymorphism(SNP)を用いた疾患感受性遺伝子検索が精力的に行われている。ヒト主要組織適合性複合体であるHLA(human leucocyte antigen)は多くの自己免疫性疾患の疾患感受性遺伝子であることが明らかにされているが,HLA以外にも自己免疫性疾患に共通の疾患感受性遺伝子が存在することが推定されている。Non-HLAの自己免疫共通遺伝子に関する最初の報告はリンパ球特異的チロシンホスファターゼPTPN22であり,PTPN22の多型(R620W)は全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus, SLE),関節リウマチ(rheuamtois arthritis, RA),Ⅰ型糖尿病,慢性甲状腺炎と関連する1)。FCRL3(Fc receptor-like 3)は成熟B細胞に発現するFc受容体類縁分子であるが,理化学研究所の高地や山田らにより,FcrL3も関節リウマチ,自己免疫性甲状腺疾患,全身性エリテマトーデスに共通する疾患感受性遺伝子であることが見出された2)

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 シトリンcitrinは,成人発症Ⅱ型シトルリン血症(CTLN2)の原因遺伝子としてKobayashiら1)が1999年に同定した遺伝子SLC25A13にコードされるタンパク質で,2001年には,脳や骨格筋に発現するアララーaralar(SLC25A12にコードされる)とともに,アスパラギン酸・グルタミン酸ミトコンドリア膜輸送体(AGC)として機能することが明らかになった2)

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 MRP2/ABCC2/cMOATは染色体10q24に位置し,おもに肝臓の毛細胆管側に発現している。MRP2はATP結合領域(ATP結合カセットATP-binding cassette)ドメインをもつABCトランスポータースーパーファミリーに属し,ATPのエネルギーに依存して様々な物質を膜の内外へ能動輸送すると考えられている。現在まで約48種類のABC蛋白が単離,同定されている。このMRP2/cMOATはMRP1と47%の相同性を示し,疎水性分析の結果から,ヒトでは数回膜を貫通する疎水性のドメインとATP結合領域を含む細胞質ドメインが2回繰り返される形になっている1,2)

 毛細胆管側に発現するMRP2は,肝細胞からビリルビンをはじめとする有機アニオン化合物を胆汁中に排出する機能をもつ。MRP2の欠失したラットにおいては黄疸を示し,有機アニオン化合物の排出活性が低下していた。MRP2は肝臓以外では腎近位尿細管の刷子縁や腸管上皮細胞,胆囊上皮細胞に発現している。脳では血液脳関門,脈絡叢に弱いながらも発現し,異物排泄として機能すると考えられている3)

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 グルメの時代も30年を経て,今日では,過食に伴う肥満,高血圧,糖尿病,高脂血症など生活習慣病の増加という負の局面が強調されるようになってきた。このような時代の要請に沿って3-hydroxy-methylglutaryl Co-enzyme A(HMG-CoA)reductase阻害薬による高コレステロール血症の治療やPPAR-αのリガンドであるフィブラート系薬剤による高中性脂肪血症の治療が行われた結果,動脈硬化や脳血管障害の予防に著効が得られた。しかし,一部症例では依然,治療目標値までコレステロールや中性脂肪の値を十分に低下させることができないため,より高いQOLを求めて新薬の開発が続けられている。ミクロソームトリグリセライド運搬タンパク(microsomal triglyceride transfer protein;以下MTP)阻害薬もその一つである。

 アポリポ蛋白Bを含むリポ蛋白に中性脂肪を付加する機能を持つMTPは,同一分子が腸管の上皮と肝細胞のミクロソームに主に局在する1)。腸管から吸収された中性脂肪は,アポリポ蛋白Bと腸管上皮細胞内で結合してカイロミクロンとなり,胸管を経て血中に放出される。他方,腸管から吸収された糖は門脈を経て肝臓に至り,一部はグリコーゲンとして肝細胞に貯蔵される。残りの大部分の糖は肝細胞内で脂肪酸や中性脂肪に変換される。細胞内で過剰となった中性脂肪は,オレイン酸などの刺激によりさらに発現が高まったMTPの働きで効率よくアポリポ蛋白Bに結合し,VLDL(very low density lipoprotein)として肝静脈に放出される2)(図1)。過食や高脂肪食が続くとこの二つの経路の働きが亢進し,食後高中性脂肪血症やインスリン抵抗性が誘発される。肥満とインスリン抵抗性はメタボリックシンドロームの重要な誘因なので,過食や高脂肪食が身に付いた当今,高中性脂肪血症に対するMTP阻害薬の活躍が期待される。

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 尿素サイクルの反応の一部はオルニチンがミトコンドリア内に移動し,ミトコンドリア内で行われる。オルニチンはミトコンドリア外膜を自由に通過するが,内膜では通常mitochondrial ornithine transporter(ORNT,またはornithine carrier〔ORC〕とも呼ばれる)による能動的輸送機構を必要とする(図1)。ORNTはSLC25遺伝子によってコードされるmitochondrial carrier(MC)ファミリーに属する。ちなみに現在ヒトではSLC25遺伝子ファミリーが29個知られている。

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 Na/HCO3 cotransporter(NBC)はNa1分子と重炭酸イオンHCO3 1分子を運搬する膜蛋白である。NBCは10個の膜貫通部位を持ち,N末端とC末端はともに細胞質内に位置する1)。NBC蛋白は種々の組織に発現して細胞内pHを調節する。腎型NBC(kNBC)蛋白はおもに腎近位尿細管基底膜側に,わずかにHenle上行脚基底膜側に発現する。さらに,kNBC蛋白は角膜の血管内皮細胞と角膜上皮細胞にも発現する。

 kNBC蛋白は膵臓型NBC蛋白(pNBC)遺伝子(SLC4A4)(遺伝子座4q21)から由来する1)。すなわち,SLC4A4のイントロン3の3'側にオールタネィブスプライシングを起こすプロモータが存在し,SLC4A4のイントロン3に由来する41個のアミノ酸がkNBC蛋白(1,035個のアミノ酸)の5'部を構成する。従って,pNBC蛋白(1,079個のアミノ酸)の5'部の85個のアミノ酸はpNBC蛋白に固有であり,kNBC蛋白の5'部の41個のアミノ酸はkNBC蛋白に固有である。そして,pNBC蛋白とkNBC蛋白はともに共通した994個のアミノ酸を3'部に持つ。pNBC蛋白は膵臓に大量に発現し,脳,脊髄,腎,大腸,甲状腺,前立腺にも少量発現が見られる。kNBC蛋白もpNBC蛋白もNBC蛋白族の一員であり,いずれもanion exchangerとアミノ酸レベルで30-35%の相同性がある。kNBC蛋白は代謝性アシドース,K欠乏状態,副腎皮質ホルモンの過剰分泌状態で発現が増強する。

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 SCN5Aは心筋型電位依存性ナトリウムチャネルαサブユニットをコードする遺伝子である1)。電位依存性ナトリウムチャネルαサブユニットには,少なくとも10種類の遺伝子が知られているが(表1参照。遺伝子名[SCN1A~SCN11A]と機能的チャネル名[Nav1.1~Nav1.9,Nax]の対応が混乱していることに注意),SCN5Aはこれらの中でももっとも機能的な解析が進んでいる遺伝子の一つである。心筋ナトリウムチャネルは心筋における活動電位の発生と伝播に不可欠な役割を果たしており,SCN5Aの異常により多様な臨床的疾患が生じることが最近の研究で明らかになってきている2)

 SCN5Aはヒト染色体3p21に約80kbの領域を占め,28個のエクソンよりなる3)。SCN5Aタンパク(心筋ナトリウムチャネルαサブユニット)は,約2,000のアミノ酸残基よりなる巨大な膜タンパクであり,また多くの糖鎖がついた糖タンパクでもある。アミノ酸配列の解析,変異を導入したチャネル分子の機能解析,電子顕微鏡による単分子イメージ解析,さらにほかの電位依存性イオンチャネル(カリウムチャネル)のX線結晶解析などのデータから,電位依存性ナトリウムチャネルの立体構造および機能的に重要な部位が,大まかにではあるが推測されている4)。ナトリウムチャネルは,ほぼ対照的な四つのドメインがチャネル孔を囲むように配置している5)。アミノ酸配列からは,各ドメインに六つの膜貫通領域があり,なかでも“S4”と呼ばれる領域が電位センサーとして機能すると考えられてきた。しかしカリウムチャネルのX線結晶解析からはS4の配置に関して異なる結果が示されており6),おそらく従来の膜6回貫通モデルは大幅に修正されることとなると思われる。ナトリウムチャネルには数種類の薬理作用があり,それぞれの作用部位に関してどのアミノ酸残基が関係するかという情報は集積してきている4)。しかし薬剤作用部位の立体構造の解明からはまだ程遠い状況にある。

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 上皮型Naチャネル(ENaC)は各種上皮組織の管腔側膜に発現しており,経上皮Na輸送の流入路という共通の性質をもつ。ENaCは外部環境に面した上皮組織,すなわち外皮,表皮,気道,肺胞,大腸,尿細管,尿管,膀胱,唾液腺・汗腺の導管,舌の味蕾などに発現している。管腔側(粘膜面)に発現し,基底膜にあるNa/K ATPaseと協同で体内にNaを吸収している。腎においては,遠位尿細管や集合管の主細胞の管腔側に大量に発現しており,この部位でのNa再吸収に重要な役割を果たしている。ENaCの活性と発現量はNaの摂取量とアルドステロンなどで制御されている。そして,ENaCの活性化は腎集合管の管内電位の増加から,二次的にKとHの分泌を促進し,低K血症,代謝性アシドーシスをきたす。反対に,K保持性利尿薬であるアミロライドはENaC阻害作用を有し,管内電位を減少させて,二次的にKとHの分泌を抑制し,高K血症,代謝性アルカローシスをきたす。ENaCがアミロライド感受性Naチャネルといわれる所以である。その他,消化器系では,糞便や分泌液中のNa濃度を減少し,Na排泄を減らして体内Naを保持する方向に作用する。

 ENaCの分子構造と作用調節については1990年代半ばより多数の報告がなされ,これらの解明が飛躍的に進んだ。まず,1993年にCanessaら1)によって,ラット大腸の上皮細胞より発現クローニング法を用いてENaCのαサブユニットがクローニングされ,続いて翌年β,γサブユニットもクローニングされた2)。ヒトのENaCについても,1994年に肺よりαサブユニットが3),翌年にはβ,γサブユニットがクローニングされ4),以降ENaCの構造-機能連関の解明が飛躍的に進むこととなった。これら3種のサブユニットは各々約700個のアミノ酸からなり,34-37%の相同性を有し,図1のように,形態上はいずれも細胞内にN末端とC末端を有し,二つの膜貫通領域とループを形成する大きな細胞外領域を有している。これらのサブユニットは多量体を形成していると考えられるが,Kosariら,Firsovらはα:β:γ=2:1:1の四量体,Snyderら,Eskandariらはα:β:γ=3:3:3の九量体で機能すると推測している。

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ATP7B遺伝子

 ATP7Bは染色体13q14.3に存在し,ゲノムDNAは100kb,cDNAは約7.5kbで21のエクソンからなる。ATP7B遺伝子はヒトの肝,脳のプルキンエ細胞1),腎,筋肉,胎盤,マクロファージなどで発現している。一般に上皮細胞では発現していないが,胆管上皮細胞には発現している2)

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ABCA1とその機能

 ABC(ATP binding cassette)輸送体は,ATPをエネルギー源として細胞膜の内側から外側へのさまざまな物質輸送に関与する一種の能動輸送酵素で,ATP結合部分のペプチドドメインに共通配列(Walker A, Walker B)を持つ。ABCファミリーはAからGに分かれ,ABCAのサブファミリーの一つであるABCA1は,6個の膜通過ドメインと2個のヌクレオチド結合ドメインが直列に繰り返した構造を持っており,49のエクソン,2261アミノ酸残基からなる分子量約70kbの蛋白である。細胞膜の内膜に存在する遊離型コレステロールを外膜側に移動する(フリップフロップ)役割を果たしており,細胞内の遊離コレステロール(FC)を細胞外に引き抜く(cholesterol efflux)初期段階に重要な役目を果たす。ABCA1mRNAは肝臓,腎臓,副腎,小腸,中枢神経など広くその発現が認められる。マクロファージでは泡沫化することによってmRNA,タンパク質ともに増加する1)

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 今回われわれは,重篤な角化異常疾患である道化師様魚鱗癬(harlequin ichthyosis;HI)が膜タンパク質であるABCA12の遺伝子異常により引き起こされることを明らかにした1)。ABCA12はATP-binding cassette(ABC)トランスポーターに属し,二つの細胞外ドメインと12ヵ所の膜貫通領域,二つのATP結合領域をもつ。近年,生体内での脂質輸送にABCトランスポーターが重要な役割を果たしていることが明らかにされつつある。皮膚において,角質細胞間に存在する脂質は水分保持やバリア機能の維持に不可欠であるが,その輸送システムについてはいまだ明らかでない。皮膚の細胞間脂質輸送に関して,ABCA12は非常に重要な役割を果たしていると考えられ,今後,その詳しいメカニズムの解明が期待される。

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バーチンとは

 バーチンは2001年にバーター症候群の第4の原因遺伝子として,難聴を伴う患者群での遺伝子解析によりポジショナルクローニングにて単離された1)。その発現部位はClC-Kクロライドチャネルに極めて近かったことから,ClC-Kクロライドチャネル2,3)との関連が予想され,事実免疫染色では腎臓内での共存が証明され4),機能的にも単独ではXenopus卵母細胞でクロライド電流を発現しえないヒトClC-KaとKbがバーチン存在下では非常に大きなクロライド電流を発現させることから(ラットClC-K1はバーチンなしに発現する),バーチンがClC-Kチャネルのβサブユニットとして同定された4)

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Solute Carrier Family 12 member 3(Thiazide sensitive sodium-chloride cotransporter:TSC, NCCT)

 SLC12遺伝子ファミリーは電気的中性の陽イオンとClイオン共輸送体で,魚類の遺伝子解析から最初に同定され,その後哺乳動物でも同定が進んできた。現在SLC12のメンバーは9種類同定されており,K-Cl共輸送体のメンバーと,Na-ClあるいはNa-K-2Clのメンバーの二つに大別されている1)。後者は腎臓のヘンレ上行脚の尿細管管腔側に特異的に存在するbumetanide-sensitive Na-K-2Cl cotransporter(SLC12A1)と多くの組織に広く分布するSLC12A2,および遠位尿細管移行部の尿細管管腔側に存在するThiazide-sensitive Na-Cl cotransporter(SLC12A3,NCC,TSC)を含んでいる。

 サイアザイド利尿薬は降圧利尿薬として古くから広く使用されていたが,長くその作用機序の詳細は不明とされていた。1975年頃よりサイアザイド利尿薬が腎臓の遠位ネフロンに作用してClの排泄を増加させることや2),魚類(Pseusopleuronectes americanus)の膀胱のNa-Clコトランスポーターを阻害することなどの報告がなされ3),遠位ネフロンにサイアザイド感受性のNa-Clコトランスポーターが存在することが明らかとなった。

ニーマン-ピックC1(NPC1) 二宮 治明
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 ニーマン-ピック(Niemann-Pick)病C型(NPC)は小児の遺伝性脂質蓄積症であり,A型,B型と並んでスフィンゴリピドーシスに分類されている。しかし,その生化学的病態はスフィンゴミエリナーゼの欠損であるA型,B型とは全く異なっており,LDL由来コレステロールがエンドゾームからうまく排出されないことが脂質蓄積での原因である1)。ニーマン-ピックC1(NPC1)はNPCの主要な原因遺伝子であり,患児の95%はこの遺伝子に変異を持つ2)。NPC1蛋白質は1,278アミノ酸からなる13の膜貫通部位(TM)を持つ膜蛋白質であり,細胞内ではおもに後期エンドゾームおよび後期エンドゾームと細胞膜の間を行き来する輸送小胞上に存在する3)。一次構造の特徴としてN末端にシグナル配列,C末端にエンドゾームへのターゲッティングモチーフであるdileucineモチーフがある。TM 3-8にいわゆるsterol-sensing domain(SSD)を有しており,これはHMG-CoAレダクターゼ,SCAP,PATCHEDなどに共通する構造である。

 NPC1欠損細胞の最も顕著なフェノタイプは,そのエンドゾームでの遊離型コレステロールの蓄積である。哺乳動物細胞へのコレステロールの供給系は二つに大別され,ひとつは細胞外からの供給系であり,もうひとつは内因性の合成系である。このうち外からの供給は主にLDLによる。LDLに含まれるコレステロールエステルは,クラスリン被覆小胞を介してエンドゾーム系に入り,加水分解されて遊離型コレステロールとなったのち,さらに細胞内のほかの場所(細胞膜,小胞体など)へ輸送されなければならない。NPC細胞ではこの排出に障害があり,後期エンドゾームとライソゾームの両方のマーカーを持つ異常なエンドゾームが生じ,その中に病理学的にmultivesicular body(MVB)と呼ばれる膜構造が蓄積する。このような欠損細胞の表現型からNPC1がエンドゾームからの遊離型コレステロールの排出に必要であることは明らかであるが,この蛋白質が分子レベルで小胞輸送のどのステップにどのように関与するかはいまだ不明である。

6.核膜

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 細胞核の内側は核ラミナとよばれる線維状の網目構造で裏打ちされている。核ラミナは主としてラミンという中間径フィラメントで構成されており,核の形や大きさを決めるとともに,核膜の強化やクロマチンとの結合など,重要な機能を担っているものと考えられている。ラミンにはAタイプ(A,AΔ10,C,C2),とBタイプ(B1,B2,B3)があり,Aタイプラミンはいずれもlamin A/C遺伝子(LMNA)のスプライシングアイソフォームである。LMNAは染色体1q21.2-q21.3に存在し,12エクソンからなる遺伝子である。

 LMNAの変異は当初,常染色体優性遺伝形式をとるEmery-Dreifuss型筋ジストロフィー(EDMD)で見出された1)。EDMDは緩徐進行性の筋ジストロフィー,関節拘縮,心伝導障害を伴う心筋症を3主徴とする遺伝性疾患である。EDMDには,同じLMNA変異による常染色体劣性型2)および染色体Xq28に存在するエメリン遺伝子(EMD)の変異によるX染色体劣性型も知られているが,その臨床症状は遺伝形式によらず共通である。エメリンはC端側に一つの膜貫通ドメインを有し,核内膜に存在する蛋白質で,ラミンAと結合しうることが知られている。

7.ミトコンドリア

ミトフシン2 mitofusin 2(MFN2) 早坂 清
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ミトコンドリアについて

 ミトコンドリアは数ミクロンの大きさの細胞内小器官で様々な役割を有しているが,特に酸化的リン酸化によるATP産生において重要な役割を果たしている。ミトコンドリアの形態や数は臓器や発達段階および外部環境などにより異なり,個々の細胞には百~数千個存在し,また各ミトコンドリア内には環状DNAが数コピー存在している。近年,ミトコンドリア機能の異常と神経筋疾患,糖尿病などの疾患との関連が明らかにされている。

 ミトコンドリアは互いに癒合しては分離を繰り返すダイナミックな小器官である1)。林らによる細胞癒合実験では,導入した変異ミトコンドリアDNA(mtDNA)が細胞内のほかのミトコンドリアに速やかに拡散していくこと,異なる二つの変異mtDNAを導入した細胞では,相補作用により呼吸機能が回復することなどが明らかにされており,ミトコンドリアの癒合と分離が裏付けられている2-4)。一方,ミトコンドリアのダイナミックスはアポトーシスにも関与している。

8.ペルオキシソーム・リソソーム

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ペルオキシソームとペルオキシソーム病

 ヒトの細胞には核以外にミトコンドリア,ペルオキシソーム,小胞体,ゴルジ体,リソソームなどの細胞内小器官(オルガネラ)が存在し,タンパク質はリボソーム上で合成された後に細胞内を直接,または小胞体を介してオルガネラに輸送されてその機能を発揮している。そのうちの一つであるペルオキシソームには50以上のマトリックスタンパクがリボソームより直接輸送されて,脂肪酸β酸化やエーテルリン脂質,胆汁酸の生合成など多くの生理的機能を果たしている。近年,先天性の代謝異常症を細胞内小器官ごとに分類するオルガネラ病という概念が提唱され,ペルオキシソーム病はペルオキシソームの代謝機能に異常をきたして発症する疾患群で,その特筆すべき点として単一のタンパク異常症以外に,これらタンパクのペルオキシソームへの輸送やペルオキシソーム膜形成の異常によりペルオキシソームの生合成そのものが障害されるペルオキシソーム欠損症の存在が挙げられる。

 そのペルオキシソーム生合成に関わるタンパクをperoxinと呼び,遺伝子群はPEXと表記される。PEX遺伝子のクローニングにはペルオキシソームの生合成機構が真核細胞に広く保存されていることより,酵母や動物変異細胞(CHO細胞)などを用いて精力的に展開されている。前者は欧米を中心に複数のグループから異なる酵母の系で数多くの変異株が分離され,その異常を相補するPEX遺伝子もクローニングされており,CHO変異細胞の系では国内において藤木らのグループを中心にラットやヒトのcDNAライブラリーを用いてクローニングされている。さらに酵母の系からはヒトDNAデータベースを用いたホモログクローニング(EST法)によりヒトのPEX遺伝子もクローニングされている。各PEX遺伝子産物(peroxin)の機能についても解明されてきており,ペルオキシソームマトリックスタンパクの輸送に関わるperoxinとしては,タンパクのペルオキシソーム輸送シグナル(PTS1とPTS2)を認識するPex5やPex7,膜の透過に関わるPex13,14,RINGファミリー(Pex2,10,12),さらにAAA ATPaseファミリーに属するPex1や6,両者の複合体のリクルート因子であるPex26(次項参照)などが挙げられる。一方,ペルオキシソーム膜形成に関わるperoxinとしてはPex3,16,19がクローニングされている。そしてこれらPEX遺伝子のクローニングにより,次に述べるペルオキシソーム欠損症の各相補性群の病因遺伝子が次々と明らかにされている。

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 極長鎖脂肪酸のβ-酸化やエーテルリン脂質の生合成を担う細胞小器官,ペルオキシソームの形成制御機構と重篤な遺伝性疾患であるペルオキシソーム欠損症(異常症)の病因解明について,最近大きな進展をみせた。

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リソソーム付随膜蛋白質-2

 リソソーム付随膜蛋白質-2(Lysosome-associated membrane protein-2:LAMP-2)はリソソーム膜の主要な糖蛋白質であり,相同体であるLAMP-1とともに,リソソーム膜をほぼ完全に埋め尽くすようにして存在していると考えられている。LAMP-2はリソソーム膜を1回だけ貫通する膜蛋白で,N端→C端の順にリソソーム腔内ドメイン,膜貫通ドメイン,細胞質ドメインの三つの領域からなる。リソソーム腔内ドメインにアミノ酸残基の90%以上が存在し,強力な糖修飾を受けている。このドメインにはシステイン残基間のジスルフィド結合により形成される四つのループが存在する。細胞質ドメインは小さく,C端の11残基のみで構成され,リソソーム移行シグナルと考えられるチロシン残基が存在している1-3)

 相同体のLAMP-1遺伝子が常染色体(13q34)上にあるのに対して,LAMP-2遺伝子はX染色体(Xq24)上にある。オープンリーディングフレームは1,233ヌクレオチドからなり,410アミノ酸をコードする。mRNAは9個のエクソンがスプライシングを受けて作られる。ヒトでは第9エクソンがエクソン9A,9B,9Cの3種類あり,オールタナティブスプライシングにより,LAMP-2A,2B,2Cの三つのアイソフォームが作られる3)。この第9エクソンにのみ膜貫通ドメインと細胞質ドメインがコードされている。LAMP-2A,2B,2Cの各アイソフォームの組織分布は異なっており,骨格筋や心筋ではLAMP-2Bが豊富に存在する3,4)

9.細胞膜関連

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カベオリン-3とは

 カベオリンは分子量21-24kDaの細胞膜内在性のタンパクで,直径50-100nmの細胞膜の丸フラスコ型構造体であるカベオラの主要な構成成分である1)。カベオラはラフトの特殊な一型で,脂質を中心に形成される膜領域である細胞膜マイクロドメインである。カベオラの機能として,細胞内シグナル伝達やエンドサイトーシス,コレステロール輸送などが知られている2)

 カベオリンには,異なる遺伝子によりコードされるカベオリン-1,-2,-3の三つのアイソフォームがある。カベオリン-1,-2は脂肪や血管内皮,平滑筋,線維芽細胞など全身に広く発現している。一方,カベオリン-3は1995年にWayらによりM-カベオリンとして初めてそのcDNAがクローニングされ,骨格筋および心筋細胞に限局して発現することが報告された3)。また,ジストロフィン結合タンパク複合体やβ-ジストログリカンと相互作用を有することも示されている4)

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 ジスフェルリンは筋ジストロフィーの原因遺伝子産物の一つとして同定されたフェルリンファミリーに属する蛋白質である。近年,骨格筋におけるカルシウム依存性膜修復機構に関与することが示唆され,注目を集めている1)

 ジスフェルリン遺伝子は染色体2p13に存在し,その遺伝子変異は常染色体劣性の遺伝形式をとる肢帯型筋ジストロフィー2B型(LGMD2B),三好遠位型筋ジストロフィー(MM),ならびに前脛骨筋ミオパチーを引き起こすことが知られている2-4)。ジスフェルリン遺伝子の異常によるこれらの疾患を総称してジスフェルリノパチーと呼んでいる。興味深いことに,たとえ同じ遺伝子変異を有する同胞間であっても,臨床的に近位筋優位の筋萎縮・筋力低下を示すLGMDタイプの症状を示す場合と,下腿後面の筋群が強く障害されるMMとなる場合がある。どのような要因が罹患筋の個体差を規定しているのかは明らかでない。

10.細胞骨格

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 プレクチンは分子量500kDaのプラキンファミリーに属するクロスリンカータンパク質で,上皮,筋,グリアなどを含むさまざまな組織で発現している1)。このタンパク質の分子構造はN末にアクチン結合ドメイン,その後ろにプラキンドメイン,中央にはロッドドメイン,C末に中間径フィラメント結合ドメインを含む六つのプレクチンリピートドメインがみられる2)。プレクチンのアミノ酸配列の解析とロータリーシャドウによる精製されたプレクチン分子の電子顕微鏡観察に基づき,生体内のプレクチン分子はパラレルな二量体がさらにアンチパラレルに結合してできた四量体であると考えられている3,4)。この説はプレクチン分子がその両端で中間径フィラメントに結合することからも支持されている5)。このタンパク質をコードするPLEC1遺伝子は8q24に位置し,33のエクソンからなる6,7)。マウスプレクチンの遺伝子解析によれば16の遺伝子バリアントが存在し,これらはいずれも5'端におけるスプライスバリアントであり,組織によってそのバリアントの種類と発現量が異なる8,9)。このことからアイソフォームによりプレクチンの異なる機能が示唆されている。ちなみに筆者らはラットでマウスとは異なるエクソン1のバリアントを見出した。

 最初のプレクチン遺伝子変異は筋ジストロフィーを伴う単純型先天性表皮水疱症(epidermal bullosa simplex-muscular dystrophy;EBS-MD)の患者で見出された10-12)。その変異の多くはエクソン32,33内にフレームシフトを起こす欠損や挿入であり,その結果プレマチュアストップコドンを生じプレクチンタンパク質の発現がみられない。しかしその他の遺伝子変異もみられ,変異のタイプ(プレマチュアストップコドンvsインフレーム挿入/欠損)により症状の重症度や筋ジストロフィーの発症時期が異なるようだ。具体的な症状としては水疱が指や足にみられ,この部分で表皮が基底層のケラチノサイト内のちょうどヘミデスモゾームの表層よりではく離している。プレクチンが基底層ケラチノサイトのヘミデスモゾームにおいてケラチン中間径フィラメントとインテグリンβ4とをクロスリンクする役割をもっているため13),プレクチンが欠損することによりこの部分が脆弱になりはく離することに矛盾はない。一方,併発する筋ジストロフィーは10歳前後に発症し,進行性の筋力低下を特徴とする。骨格筋において,プレクチン分子は中間径フィラメントネットワークと筋原線維のZ線部分をクロスリンクし全体として並列する筋原線維を束ねている14)。このことからプレクチンは並列する筋原線維の同調収縮を保障するクロスリンカータンパク質と考えられる。したがって,プレクチン欠損により筋原線維がうまく同調収縮できないために筋線維が崩壊し,進行性の筋力低下に陥ると推測される。筋原線維のほかにもプレクチン分子は筋形質膜やミトコンドリアにリンクしているので15,16),このリンクの欠損も筋ジストロフィー発症に関係していると考えられている。

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 ジストログリカン(DG)複合体(DGC)およびサルコグリカン(SG)複合体(SGC)はジストロフィン(dys)を含む大きな複合体中で,それぞれ小複合体をなす1,2)。DGCは1遺伝子産物の切断により生じた2分子,ラミニン受容体α-DG(細胞外蛋白質)とdys結合β-DG(膜貫通蛋白質)よりなる。筋だけでなく様々な組織で発現するが,遺伝子変異による病気は報告されていない。一方,SGCは筋で発現しており,4種のSG(膜貫通蛋白質)よりなる。SGの一つが遺伝子変異により失われると原則SGC全体が消失,サルコグリカノパチー(SGP)と呼ばれるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に似た病気を発症する。

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 グリア線維性酸性蛋白質(Glial fibrillary acidic protein:GFAP)は,1971年に多発性硬化症患者の脳プラークから発見された酸性蛋白であり1),細胞骨格を構成する蛋白質性フィラメントである中間径フィラメント(intermediate filament;IF)蛋白のファミリーに属する。GFAPは基本構造としてN末端側からヘッド・ロッド・テイルの三つのドメインをもつ。ロッドドメインは各種IF蛋白間でサイズおよびアミノ酸配列が似ているのに対して,ヘッドおよびテールドメインはサイズやアミノ酸配列が多様であり,個々のIF蛋白の特性が存在すると考えられている2)

 GFAPの遺伝子はヒトでは第17染色体上に存在する。GFAPのcDNAは1984年にマウスの脳よりクローニングされ,mRNAはヒトでは約3Kbで,このうち蛋白質コード領域は約1.3Kbである。エクソンとイントロンの配列をもち,プロモーター領域には2ヵ所のイニシエーターが存在する3,4)

11.細胞外タンパク

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 β-2-糖タンパクI前駆体(β2GPI)は,分子量42kDaの血漿を循環する326個のアミノ酸よりなる単鎖の糖タンパク質であり,血中では約200μg/mlの濃度で存在する。補体を制御するタンパクの一つであり,血液中では単独に加えリポタンパクの構成成分としても存在することから,アポリポプロテインHとしても知られる。APOH/B2GPI遺伝子は17番染色体q23-qterに位置し,それから転写されるmRNAは約1.5kbの長さとなる。おもなタンパクがつくられる臓器は肝臓であり,シグナルペプチドが切断された成熟タンパクは,大きく5個のドメインに分かれ,N端からの4個の繰り返し領域(各60アミノ酸程度)は,complement control protein module(CCP)またはSushi domainと呼ばれ,それぞれの領域に2個のジスルフィド結合を有する。C端の第Ⅴドメインはこれらと異なり分子の表面に位置し,1個のジスルフィド結合を有する。そしてこの第Ⅴドメインが切断(clip)を受けることにより,APOH/β2GPIの作用が制御されると考えられる。

 これまでに,APOH/β2GPIは血小板の凝集反応や血液凝固反応に抑制的に作用することが知られている。これは,血小板の細胞膜に存在するホスファチジルリジンが細胞表面上に露呈し,APOH/β2GPIと結合することに起因すると考えられている。第Ⅴドメインはいくつかのリガンドとの結合に重要であり,実際にAPOH/β2GPIは陰性荷電を有するホスファチジルリジン,ヘパリンや第Ⅺ因子などと結合する。このリン脂質や凝固因子との結合が様々な生理的および病的機能を有すると考えられる。

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 mucinは分泌上皮細胞や腺細胞(気道上皮,腸管,唾液腺,耳下腺,膵臓,乳腺,子宮,卵巣,前立腺上皮)などから分泌される高分子糖蛋白であり,現在までに20個のmucin遺伝子(MUC1-2,MUC3(A,B),MUC4,MUC5AC,MUC5B,MUC6-13,MUC15-19)が同定されている。mucinコア蛋白はプロリン,スレオニン,セリンに富んだ縦列の繰り返し配列から構成され,o-linkedの糖鎖が多く結合している。

 mucinは大きく分けて分泌型と膜結合型の二つのカテゴリーに分類される。分泌型の代表はMUC2,MUC5AC,MUC5B,MUC6で,染色体11p15にクラスターを形成し,von Willebrand factor様のドメインを有するなど,構造的に類似性を持つ(図1)。膜結合型にはMUC1,MUC3A,MUC3B,MUC4,MUC11-13などが含まれ,膜貫通ドメインを持ち,さらにMUC3A,MUC3B,MUC4,MUC12はそのC末端に上皮成長因子(EGF)類似のドメインを有している。MUC3A,MUC3B,MUC11,MUC12は染色体7q12,MUC4,MUC13は3q29に存在する。MUC7,MUC8は上記のいずれにも属さず,両者間での共通性も認められない。mucinの役割として,物理的な細胞保護作用のみならず,糖鎖構造に起因した細胞間相互作用(白血球,細菌,ウイルスとの受容体としての働き)の研究が最近,進みつつある。

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 ネクチン細胞接着分子は,イムノグロブリン様ループ3個を有する1回膜貫通型蛋白質で,1型から4型までのサブファミリーを形成している。1型~4型のネクチン分子は,同型間でホモフィリックトランスに結合するだけでなく,異型間でヘテロフィリックトランスにも結合でき,結合の強さは後者が前者より数十倍強い。ネクチン分子のC末端は,細胞質内で足場蛋白質アファジンのPDZドメインと結合し,アファジンはアクチン細胞骨格と結合している。ネクチン分子は普遍的に発現しており,上皮では接着帯に局在し,脳海馬のシナプスではpuncta adherentia junctionに局在している。ネクチン細胞接着分子の生物学的機能としては,上皮細胞間の接着強化および接着解除,シナプスの大きさと位置の制御,軸索のガイダンスに関与していることが証明されている。

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 Intercellular adhesion molecule 1(ICAM-1),CD54は免疫グロブリンスーパーファミリーに属する接着分子である。コア蛋白質の分子量は55kDaであり,糖鎖付加の違いにより76~114kDaを示す糖蛋白質である。通常は単球および血管内皮細胞に発現しているが,IFN-γやTNFなどのサイトカイン刺激,酸化ストレス,虚血,血流によってもたらされるshear stressなどにより発現が増強され,T,Bリンパ球,胸腺細胞,樹状細胞,線維芽細胞,ケラチノサイト,軟骨細胞,上皮細胞,腎メサンギウム細胞など広範囲に発現が誘導される1)

 ICAM-1は炎症反応や免疫応答においてlymphocyte function-associated antigen 1(LFA-1)のおもなリガンドとして重要な役割を果たしている。すなわちICAM-1はT細胞-抗原提示細胞,T細胞-T細胞,T細胞-B細胞間の接着に関与する。この時のICAM-1を介した副刺激の共存がT細胞の活性化のために必須である。また,炎症反応やリンパ球ホーミング現象に先立つ白血球と血管内皮細胞の接着過程に関与する1)

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 Transforming growth factor-β induced proteinは,ヒト肺腺癌細胞由来の細胞株をTGFβにより処理した際に誘発される遺伝子beta ig-h3がコードするタンパクであり,1992年,Skonierらにより単離された1)。683アミノ酸から成り,約68KDの細胞外マトリックスのタンパクのひとつである1)。細胞接着を促進させるとか,ケラチノサイトの分化に関与しているとされているが,今日まで詳細なメカニズムは不明のままである2)。しかしながら,beta ig-h3遺伝子の変異により100年以上原因がわからなかった多種類の遺伝性角膜ジストフィがひきおこされることが証明されたため,眼科領域で一躍注目されるようになった3)

 1997年にMunierらは,顆粒状角膜ジストロフィ(GCD),格子状角膜ジストロフィⅠ型(LCD1),Avellino角膜ジストロフィ(ACD),Reis-Bücklers角膜ジストロフィ(RBCD)と臨床診断されていた四つのタイプの角膜ジストロフィが,TGFBI(角膜ではケラトエピセリン;遺伝子はbeta ig-h3)タンパクにおけるアミノ酸配列の変異により発症していることを発見した3)。GCDではTGFBIの555番目のアミノ酸のアルギニンがトリプトファンに変異し(Arg555Trp),このアミノ酸がグルタミンに変異するとRBCDになる(Arg555Gln)。ACDでは124番目のアルギニンがヒスチジンに変異し(Arg124His),LCD1ではやはり124番のアルギニンがシスチン(Arg124Cys)に変異したことが病因であるとされた。これらの知見は世界中で確認され,格子状角膜ジストロフィⅢ型はじめ多くのTGFBI変異による角膜ジストロフィが報告されてきた4)

13.細胞増殖

ネクディンnecdin(NDN) 吉川 和明
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 necdin(neurally differentiated embryonal carcinoma-derived protein)は,マウス胚性ガン細胞を神経分化させた際に発現する遺伝子産物として発見された1)。マウスとヒトのnecdinは,それぞれ325個と321個のアミノ酸残基からなる2)。necdin mRNAは中枢および末梢神経系の大部分のニューロンで発現しているが,神経幹細胞,ニューロン前駆細胞,グリア細胞には発現が認められない。necdinはニューロン以外にも筋細胞や脂肪細胞などが最終分化する際にも発現する。necdin cDNAを増殖性細胞に導入すると,細胞分裂が強く抑制される3-5)。また,培養した知覚神経節ニューロンにおいて内在性necdinの発現を抑制すると,分化できずにアポトーシスを起こす6)。したがって,necdinはニューロンの細胞増殖抑制とともに,分化状態の安定化にも関わるものと推定される。

 necdinは細胞増殖に関連するタンパク質,たとえば,ガンウイルス由来のSV40 large T抗原やアデノウイルスE1A,あるいは転写因子E2F1やE2F4と結合する4,7)。この結合特性はガン抑制遺伝子産物レチノブラストーマタンパク質の特性と一致する。また,necdinはガン抑制遺伝子産物p53とも結合して転写活性を抑制する5)。E2F1やp53は分化ニューロンに対しては死(アポトーシス)を誘発するため,necdinは両者を抑制することによりニューロン死を防ぐ役割を果たすものと推定される。さらに,necdinはニューロンにおいて神経栄養因子受容体を介する生存と死の細胞内シグナルを制御しているものと考えられる8)。また,necdinはMsx/Dlxホメオドメインタンパク質とも複合体をつくり,ニューロンや筋細胞などの最終分化を制御している可能性もある9)

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VEGFとは

 VEGF(vascular endothelial growth factor)は,1989年に血管内皮細胞に特異的に働く増殖因子として単離されたが,ほぼ同時期に別のグループにより同定された血管透過性因子(vascular permeability factor;VPF)と同一であることが判明した。ヒトVEGF遺伝子は第6番染色体短腕のHLA遺伝子領域に近接して存在し(6p12),8個のエクソンで構成されている1)。VEGFは安定した二量体を形成する糖タンパクで,シグナルペプチドを持ち,細胞外に分泌される。スプライシングの違いによりアイソフォーム(VEGF121,VEGF145,VEGF165,VEGF189,VEGF206)が存在し,VEGF165が最も豊富に発現する。

 VEGFは上皮系細胞から間葉系細胞までさまざまな種類の細胞に発現し,基本的にはパラクリンで血管内皮細胞に作用する。VEGFは特異的受容体として,VEGFR-1(Flt-1),VEGFR-2(KDR/Flk-1)を利用する。VEGFの発現は種々の増殖因子(TGF-β,インスリン,IGF-1など),エストロゲン,低グルコースなどによって誘導されるが,特に低酸素に反応して発現が誘導されるのが特徴である。VEGF遺伝子の上流には,低酸素反応エレメント(hypoxia-response element;HRE)という配列があり,低酸素の時は転写因子HIF-1(hypoxia-inducible factor-1)が結合する2)

15.神経系

フクチンfukutin(FCMD) 戸田 達史
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 フクチンは福山型先天性筋ジストロフィー(FCMD)の原因遺伝子産物であり,FCMDは1960年福山らにより発見された常染色体性劣性遺伝性疾患である。わが国の小児期筋ジストロフィー中Duchenne型の次に多く,日本人の約90人に1人が保因者と計算され,日本に1,000~2,000人位の患者が存在すると推定されるが,海外からの症例はないに等しく,日本人特有の疾患である。本症は重度の筋ジストロフィー病変とともに,高度の脳奇形(敷石(2型)滑脳症)が共存し,さらに最近は近視,白内障,視神経低形成,網膜はく離などの眼症状も注目されている。すなわち本症は遺伝子異常により骨格筋-眼-脳を中心に侵す一系統疾患である1)

 われわれはポジショナルクローニングにより原因遺伝子を同定した2,3)。患者染色体のほぼ90%には同一の変異がみられ,原因遺伝子の3'非翻訳領域内に約3kbのDNA挿入があり,mRNAの発現が検出できない。この挿入配列は,今から約100世代前の一人の祖先から今日の患者の大部分へと受け継がれたものと推定され,動く遺伝因子である「レトロトランスポゾン」である。正常遺伝子の産物蛋白質はフクチンと名付けられ,461個のアミノ酸からなる分子量53.7kDの蛋白であり,細胞内ではゴルジ体に局在し,相同性を示す既知の蛋白やモチーフ検索から,糖鎖修飾に関係する蛋白である可能性が示唆されている。

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 Nasal embryonic LHRH factorNelf)は,マウス胎仔の嗅覚神経細胞およびGnRH神経細胞より新規遺伝子として単離された1,2)。とくに,GnRH神経細胞におけるNelfの発現は神経遊走中にのみ認められ,出生後にはその発現は認められない。また,Nelfノックダウンマウスでは,嗅覚神経細胞の遊走阻害およびGnRH神経細胞の遊走異常を認めることから,NELFは少なくとも嗅覚およびGnRH神経細胞における共通の誘導分子と考えられる。

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 神経細胞の細胞骨格は細胞骨格蛋白とよばれる微小管(microtubule),ニューロフィラメント,アクチンなどから成り立っている。微小管はαおよびβチューブリン(tubulin)とよばれる球状の蛋白質を基本の骨格単位としており,タウはチューブリンを重合し微小管の形成を促進させる微小管関連蛋白(microtubule-associated protein)である。タウよりも分子量の大きな微小管関連蛋白も存在し,タウを含めこれらはすべてチューブリンの重合促進作用という糊のような働きをし,微小管との間に架橋を形成する。タウは末梢神経と中枢神経に存在し,中枢神経では皮質よりも白質に多く,軸索や樹状突起などの神経突起の進展を行っていると考えられている。正常組織のタウ蛋白ではリン酸化と脱リン酸化が繰り返されていて,チューブリンの重合による微小管形成が調節され,細胞骨格を安定させ,軸索輸送や細胞の極性を維持している1)

 タウの遺伝子は17番染色体短腕21にあり,16のエクソンからなる。その発現はmRNAの選択的スプライシングにより発達段階で変化する。成人では6種類の分子種(isoform)(図1)が発現する。すなわち,エクソン2(2+),3(3+),10(10+)の組み合わせから6種類が形成され,352から441個のアミノ酸連鎖で構成される。また末梢神経系ではエクソン4A,6,8があり,もっとも長いアミノ酸連鎖を持ち,ビックタウとして知られる。分子種は六つあることから,65-50kDaの六つの異なったペプタイドが発生し,SDS-PAGEゲルで区別され,リン酸化に伴いSDS-PAGE上でのタウの運動性は低下する。上記の6種類の分子種において,エクソン10の有無により,タンデムリピートが三つのもの(3-repeat:3R)と四つのもの(4-repeat:4R)が区別される。微小管結合部位はC末端側のドメインにあり(図2),エクソン10は四つの微小管結合部位の2番目に位置しており,エクソン10を含む分子種は4R,含まない分子種は3Rとなる。ウエスタンブロットでタウの分子量とリピート数の関連が調べられ,55kDは3R,74kDは4R,69kDと64kDは3Rと4Rのハイブリッドであることがわかっている。タウはリン酸化を受けやすく,リン酸化を受けたタウはチューブリンをつなぐ働きをせず,ほかの微小管付随蛋白を微小管からはがし,またタウ蛋白同士で重合し,細胞骨格蛋白としての働きを失う。リン酸化にはMAPK,GSK3b,PKAなどのカイネース(kinase)が働き,リン酸化部位が同定されている。

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 正常な第二次性徴の発現や生殖機能の維持には黄体化ホルモン(luteinizing hormone;LH)の正確な合成,分泌が必須である。LHは視床下部より分泌されるGnRH(gonadotropin-releasing hormone)の制御のもと,下垂体前葉のゴナドトロピン分泌細胞(gonadotrope)より分泌される糖蛋白質ホルモンである。卵胞刺激ホルモン(FSH),甲状腺刺激ホルモン(TSH)および絨毛性ゴナドトロピン(CG)と同様に,これらに共通のαサブユニットと固有のβサブユニットとともにヘテロダイマーを形成する。LHは精巣のLeydig細胞および卵巣の顆粒膜細胞,莢膜細胞膜上のLHレセプターを介しコレステロールからテストステロンへの合成などを促進する。

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 ナトリウム利尿ペプチドには心房の分泌顆粒に存在する心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP),主に心室から分泌される脳性(またはB型)ナトリウム利尿ペプチド(BNP),中枢神経系や血管内皮に存在するC型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)の3種類があり,それぞれ28残基,32残基,22残基のアミノ酸からなるペプチドホルモンである(図1)。これらの利尿ペプチドは,すべて松尾壽之博士の研究グループによって発見された,日本から世界に向けて発信されたホルモンである1-3)。利尿ペプチドの受容体は3種類のグアニル酸シクラーゼ受容体が同定されており4),cGMPをセカンドメッセンジャーとして作用する。利尿ペプチドの主な薬理作用は利尿・ナトリウム利尿作用,血管拡張作用,ホルモン(レニン,アルドステロン,ADH)分泌抑制作用,降圧作用などで,血圧・体液の調節に重要な役割を果たし,心血管系にも様々な作用を有していることが明らかになってきた。

 ANPが心房から分泌されるのに対し,BNPは心室から有意に分泌され5,6),その分泌もANPが一旦分泌顆粒に貯留され,刺激の応じて分泌されるregulated pathwayであるのに対し,BNPは様々な刺激による細胞内のペプチド合成亢進とともに貯蔵されずにただちに分泌されるconstitutive pathwayに則る。血中BNP濃度は心室からの分泌に大きく依存しているため,心室に対する血行力学的な負荷によってBNP合成が亢進し,心不全や心肥大において著明に増加する。現在,血中BNP濃度は心不全のスクリーニング,重症度判定,治療効果判定など広く臨床に応用されている。

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構造と機能

 レジスチン遺伝子は4エクソンからなり,マウスでは第8染色体に,ヒトでは第19染色体に存在する1)。蛋白としては,マウスでは114アミノ酸,ヒトでは108アミノ酸からなり,ともにN端にシグナルペプチドを有する。また,システインに富み,11個中10個がC端の特徴的配列の中に存在する。マウスとヒトのアミノ酸レベルの相同性は53%である。マウスの血中においては,主として六量体となっている一方,より生物学的活性が高い三量体が存在する2)。最近,ヒト血中においても多量体の存在が示唆されているが,詳細は不明である。

 レジスチンは脂肪細胞から分泌されインスリン作用に拮抗するホルモンとして報告された3)。名前の由来はresistance to insulinである。その遺伝子発現は3T3-L1脂肪細胞分化により誘導され,インスリン抵抗性改善薬であるperoxisome proliferator-activated receptor γ(PPARγ)リガンドにより抑制される。レジスチンの血中濃度は肥満糖尿病マウスにおいて上昇している一方,PPARγリガンド投与により低下する。in vitroにおいて,レジスチンは脂肪細胞における糖取り込みを抑制する。また,肝臓特異的過剰発現によりインスリン抵抗性が惹起される一方,ノックアウトマウスでは,空腹時血糖が低下する4,5)in vivoにおいて,レジスチンはおもに肝臓に作用し,インスリン感受性を高めるアディポネクチンとAMP activated protein kinase(AMPK)を介して拮抗することが提唱されている。

17.免疫系

CD40抗原(CD40) 川口 鎮司 , 鎌谷 直之
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CD40分子とそのリガンド分子の発見

 CD40は1980年代にB細胞上の抗原として同定された45-50kDaのタイプⅠ膜貫通型蛋白質p50で,当初より受容体の機能を有することが推測されていた1)。TNF受容体と高い相同性を有することより,TNF受容体のスーパーファミリーに属している(TNFRSF5)。当初はB細胞上にのみ発現していると考えられていたが,免疫系の細胞(単球,樹状細胞,マクロファージ)ばかりでなく,間葉系細胞(線維芽細胞,滑膜細胞,筋芽細胞),血管内皮細胞,上皮系細胞にも発現することがわかってきた。その後,そのリガンドが活性化T細胞上に発現するCD40L(CD154)であることがわかり,活性化T細胞との接触によりCD154からの刺激がB細胞に加わり,B細胞は増殖分化することが明らかとなってきた2)。また,T細胞上のCD154は活性化T細胞の細胞表面に発現後,プロテアーゼの作用によりシェデイングされ,血中に放出され,可溶性CD154となる。この可溶性CD154は生理学的活性体であり,標的細胞上のCD40を刺激することができる3)

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HLA遺伝子領域とIκBL遺伝子

 ヒト染色体6番短腕には,個体の免疫応答に重要な役割を担うヒト組織適合抗原複合体(major histocompatibility complex:MHC;ヒトではhuman leukocyte antigen:HLA)の遺伝子群が存在する。3.6Mbに及ぶこの領域は三つの領域に分けられ,セントロメア側からクラスⅡ,クラスⅢ,クラスⅠの順番に並び,本来のHLA遺伝子のほか,100個以上の非HLA遺伝子を含んでいる1)。特にクラスⅢ領域には,補体やTNFの遺伝子のほか,機能が未知の遺伝子が多く存在している。IκBL(inhibitor of κB-like;NFKBIL1)遺伝子もそのような遺伝子の一つであり,LTA遺伝子とATG6遺伝子に挟まれて存在し,近傍にはTNFA遺伝子,BAT1遺伝子,MICB遺伝子などがある2-4)

Interleukin 1 beta protein(IL1B) 堤 明人
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 IL-1α(Interleukin-1α),IL-1β(Interleukin-1β),IL-1ra(IL-1 receptor antagonist)は同一のレセプターILIRと結合し,IL-1α,IL-1βはほぼ同じ活性を示すがIL-1raはレセプターと結合するのみで活性を示さず,生理的なインヒビターとしての役割を果たす。

 IL-1はT細胞へのマクロファージによる抗原提示にともない活性化されたマクロファージから産生され,T細胞のIL-2産生やIL-2レセプター発現を促し,T細胞の活性化や増殖に重要な機能を果たすなど免疫反応の過程において重要な役割を果たしているが,最近では代表的な炎症性サイトカインとしての役割が注目されている。IL1はTumor necrosis factor(TNF)αと相乗的に作用し,Phospholipase A2(PLA2),cyclooxygenase 2(COX2),inducible NO synthase(iNOS),各種ケモカインや接着分子など炎症惹起物質を産生させる。これらがさらに炎症惹起物質の産生や好中球の誘導や活性化を引き起こし,炎症や組織破壊の原因となる。このような急性期の病態には特にIL-1β が重要である。また,IL-1はTNF-induced receptor activator NF-κB ligand(RANKL)遺伝子の発現を増強させる1)。従って破骨細胞の分化,骨破壊にも大きく関与していると考えられる。最近,TNFαによるRANKLの産生増強はIL-1を介していることも報告された2)

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 CXCL12の発見は相互分泌ファミリーに属するⅠ型膜貫通型タンパクで,マウス骨髄由来ストローマ細胞株から同定された新規分泌タンパク質SDF-1(stromal cell-derived factor 1)が端緒となった1)。また,これは前駆B細胞の増殖を促進する因子であるpre-B cell growth stimulatory factor(PBSF)と同一物質であることが証明され,CXCL12,SDF-1,PBSFは同義語として用いられている2)

 相互分泌ファミリーは,構造上二つのシステイン残基を持つCCサブファミリーと,四つのシステイン残基を有しN末端側の二つのシステイン残基がCXCモチーフを示すCXCサブファミリーとの二つのサブファミリーに分類されるが,CXCL12は後者に属する。CXCL12はほかの相互分泌ファミリーと異なり,その遺伝子はヒト染色体10q11.1に存在し,全鎖長は約10kbに及ぶ。5末端はTATAが少なくGCリッチであることから,この遺伝子がユビキタスなものであることを示唆し,事実CXCL12はほぼ全ての臓器に発現している1)。CXCL12はリンパ球の遊走・活性だけでなく,胎児期における骨髄での造血幹細胞,中枢,心臓,消化器などの分化・発達や,そのほか血管形成,癌やウイルス感染においても重要な役割を果たすことが知られている。

18.その他

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Shwachman-Bodian-Diamond症候群

 Shwachman-Bodian-Diamond症候群(以下,Shwachman症候群;MIM260400)は,常染色体劣性の遺伝形式をとる単一遺伝子病である。膵外分泌機能不全,骨髄機能不全,骨格異常,低身長など,多臓器の多彩な症状を特徴とする。膵外分泌機能不全により,膵酵素産生量,血清アミラーゼ,トリプシノーゲンの低下をきたし,膵臓は小さく,脂肪化する。骨髄機能不全は好中球減少が特徴的であるが,貧血,血小板減少もしばしばみられる。骨髄所見では骨髄低形成,再生不良性貧血がみられる。骨格異常は個人差が大きいが,骨幹端異形成(成長板の発達異常),肋骨・胸郭の異常が主で,それ以外には骨年齢の低下,骨量減少,脊椎の異形成,圧迫骨折などがみられる。わが国での報告例は少ないが,欧米では多くの報告があり,先天性の膵外分泌機能低下の原因としては,囊胞性線維症(cystic fibrosis)についで2番目に多い疾患とされている。

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腎臓形成遺伝子Sall1の単離とその機能

 腎臓は中間中胚葉から発生し,前腎,中腎,後腎の3段階を経て形成される。前腎,中腎のほとんどは後に退行変性し,哺乳類成体において機能する腎臓は後腎である。腎臓に特異的に発現する遺伝子を同定するために,アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の前腎で発現しているXsal-3遺伝子1)を指標にマウス後腎から新たな遺伝子を探索したところ,10個のジンクフィンガーモチーフをもつSall1が発見された。Sall1は尿管芽が後腎間葉に進入する以前(胎生10.5日)から後腎間葉付近で発現しはじめ,侵入時(胎生11.5日)には後腎の尿管芽を取り囲む,腎臓前駆細胞集団であると考えられる後腎間葉に強く発現していた。さらに,中枢神経系では脳室周囲の神経幹細胞が存在する領域,肢芽ではprogress zoneという未分化細胞が増殖する部分で発現が認められ,腎臓に限らずほかの未分化細胞でも何らかの役割を持つ可能性が示唆された2)。そこでSall1を欠失するマウスを作製したところ,すべてのノックアウトマウスが生直後に死亡した。開腹してみると,腎臓が完全に欠損しているか,非常に小さい痕跡的な腎臓が認められるのみであったため,Sall1は腎臓の発生に必須であることが証明された。さらにノックアウトマウスでは,尿管芽は後腎間葉に侵入していないか,あるいはしてもその後の分岐は著明に障害されていた。つまり,Sall1が後腎発生のもっとも初期段階の重要なステップである尿管芽の侵入に必須であることが判明した。

 Sall1はショウジョウバエにおいて領域特異的ホメオ遺伝子であるspalt(sal)遺伝子のマウスホモログである。spaltは特徴的な複数の二重ジンクフィンガーモチーフをもち3),ヒトから線虫に至るまで広く保存されたタンパク質でもある。

基本情報

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生体の科学
56巻5号 (2005年10月)
電子版ISSN:1883-5503 印刷版ISSN:0370-9531 金原一郎記念医学医療振興財団

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