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SCN5Aは心筋型電位依存性ナトリウムチャネルαサブユニットをコードする遺伝子である1)。電位依存性ナトリウムチャネルαサブユニットには,少なくとも10種類の遺伝子が知られているが(表1参照。遺伝子名[SCN1A~SCN11A]と機能的チャネル名[Nav1.1~Nav1.9,Nax]の対応が混乱していることに注意),SCN5Aはこれらの中でももっとも機能的な解析が進んでいる遺伝子の一つである。心筋ナトリウムチャネルは心筋における活動電位の発生と伝播に不可欠な役割を果たしており,SCN5Aの異常により多様な臨床的疾患が生じることが最近の研究で明らかになってきている2)。
SCN5Aはヒト染色体3p21に約80kbの領域を占め,28個のエクソンよりなる3)。SCN5Aタンパク(心筋ナトリウムチャネルαサブユニット)は,約2,000のアミノ酸残基よりなる巨大な膜タンパクであり,また多くの糖鎖がついた糖タンパクでもある。アミノ酸配列の解析,変異を導入したチャネル分子の機能解析,電子顕微鏡による単分子イメージ解析,さらにほかの電位依存性イオンチャネル(カリウムチャネル)のX線結晶解析などのデータから,電位依存性ナトリウムチャネルの立体構造および機能的に重要な部位が,大まかにではあるが推測されている4)。ナトリウムチャネルは,ほぼ対照的な四つのドメインがチャネル孔を囲むように配置している5)。アミノ酸配列からは,各ドメインに六つの膜貫通領域があり,なかでも“S4”と呼ばれる領域が電位センサーとして機能すると考えられてきた。しかしカリウムチャネルのX線結晶解析からはS4の配置に関して異なる結果が示されており6),おそらく従来の膜6回貫通モデルは大幅に修正されることとなると思われる。ナトリウムチャネルには数種類の薬理作用があり,それぞれの作用部位に関してどのアミノ酸残基が関係するかという情報は集積してきている4)。しかし薬剤作用部位の立体構造の解明からはまだ程遠い状況にある。
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