特集 タンパク・遺伝子からみた分子病―新しく解明されたメカニズム
16.内分泌系
レジスチンresistin(RETN)
大澤 春彦
1
,
大沼 裕
1
,
牧野 英一
1
Haruhiko Ohsawa
1
,
Hiroshi Ohnuma
1
,
Hideichi Makino
1
1愛媛大学医学部臨床検査医学(糖尿病内科)
pp.528-529
発行日 2005年10月15日
Published Date 2005/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100493
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
構造と機能
レジスチン遺伝子は4エクソンからなり,マウスでは第8染色体に,ヒトでは第19染色体に存在する1)。蛋白としては,マウスでは114アミノ酸,ヒトでは108アミノ酸からなり,ともにN端にシグナルペプチドを有する。また,システインに富み,11個中10個がC端の特徴的配列の中に存在する。マウスとヒトのアミノ酸レベルの相同性は53%である。マウスの血中においては,主として六量体となっている一方,より生物学的活性が高い三量体が存在する2)。最近,ヒト血中においても多量体の存在が示唆されているが,詳細は不明である。
レジスチンは脂肪細胞から分泌されインスリン作用に拮抗するホルモンとして報告された3)。名前の由来はresistance to insulinである。その遺伝子発現は3T3-L1脂肪細胞分化により誘導され,インスリン抵抗性改善薬であるperoxisome proliferator-activated receptor γ(PPARγ)リガンドにより抑制される。レジスチンの血中濃度は肥満糖尿病マウスにおいて上昇している一方,PPARγリガンド投与により低下する。in vitroにおいて,レジスチンは脂肪細胞における糖取り込みを抑制する。また,肝臓特異的過剰発現によりインスリン抵抗性が惹起される一方,ノックアウトマウスでは,空腹時血糖が低下する4,5)。in vivoにおいて,レジスチンはおもに肝臓に作用し,インスリン感受性を高めるアディポネクチンとAMP activated protein kinase(AMPK)を介して拮抗することが提唱されている。
Copyright © 2005, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.