特集 タンパク・遺伝子からみた分子病―新しく解明されたメカニズム
11.細胞外タンパク
ムチン5B mucin 5 subtype B, tracheobronchial(MUC5B)
松下 育美
1
,
神尾 孝一郎
1
,
慶長 直人
1
Ikumi Matsushita
1
,
Koichiro Kamio
1
,
Naoto Keicho
1
1国立国際医療センター研究所呼吸器疾患研究部
pp.494-495
発行日 2005年10月15日
Published Date 2005/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100482
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mucinは分泌上皮細胞や腺細胞(気道上皮,腸管,唾液腺,耳下腺,膵臓,乳腺,子宮,卵巣,前立腺上皮)などから分泌される高分子糖蛋白であり,現在までに20個のmucin遺伝子(MUC1-2,MUC3(A,B),MUC4,MUC5AC,MUC5B,MUC6-13,MUC15-19)が同定されている。mucinコア蛋白はプロリン,スレオニン,セリンに富んだ縦列の繰り返し配列から構成され,o-linkedの糖鎖が多く結合している。
mucinは大きく分けて分泌型と膜結合型の二つのカテゴリーに分類される。分泌型の代表はMUC2,MUC5AC,MUC5B,MUC6で,染色体11p15にクラスターを形成し,von Willebrand factor様のドメインを有するなど,構造的に類似性を持つ(図1)。膜結合型にはMUC1,MUC3A,MUC3B,MUC4,MUC11-13などが含まれ,膜貫通ドメインを持ち,さらにMUC3A,MUC3B,MUC4,MUC12はそのC末端に上皮成長因子(EGF)類似のドメインを有している。MUC3A,MUC3B,MUC11,MUC12は染色体7q12,MUC4,MUC13は3q29に存在する。MUC7,MUC8は上記のいずれにも属さず,両者間での共通性も認められない。mucinの役割として,物理的な細胞保護作用のみならず,糖鎖構造に起因した細胞間相互作用(白血球,細菌,ウイルスとの受容体としての働き)の研究が最近,進みつつある。
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