- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
ニーマン-ピック(Niemann-Pick)病C型(NPC)は小児の遺伝性脂質蓄積症であり,A型,B型と並んでスフィンゴリピドーシスに分類されている。しかし,その生化学的病態はスフィンゴミエリナーゼの欠損であるA型,B型とは全く異なっており,LDL由来コレステロールがエンドゾームからうまく排出されないことが脂質蓄積での原因である1)。ニーマン-ピックC1(NPC1)はNPCの主要な原因遺伝子であり,患児の95%はこの遺伝子に変異を持つ2)。NPC1蛋白質は1,278アミノ酸からなる13の膜貫通部位(TM)を持つ膜蛋白質であり,細胞内ではおもに後期エンドゾームおよび後期エンドゾームと細胞膜の間を行き来する輸送小胞上に存在する3)。一次構造の特徴としてN末端にシグナル配列,C末端にエンドゾームへのターゲッティングモチーフであるdileucineモチーフがある。TM 3-8にいわゆるsterol-sensing domain(SSD)を有しており,これはHMG-CoAレダクターゼ,SCAP,PATCHEDなどに共通する構造である。
NPC1欠損細胞の最も顕著なフェノタイプは,そのエンドゾームでの遊離型コレステロールの蓄積である。哺乳動物細胞へのコレステロールの供給系は二つに大別され,ひとつは細胞外からの供給系であり,もうひとつは内因性の合成系である。このうち外からの供給は主にLDLによる。LDLに含まれるコレステロールエステルは,クラスリン被覆小胞を介してエンドゾーム系に入り,加水分解されて遊離型コレステロールとなったのち,さらに細胞内のほかの場所(細胞膜,小胞体など)へ輸送されなければならない。NPC細胞ではこの排出に障害があり,後期エンドゾームとライソゾームの両方のマーカーを持つ異常なエンドゾームが生じ,その中に病理学的にmultivesicular body(MVB)と呼ばれる膜構造が蓄積する。このような欠損細胞の表現型からNPC1がエンドゾームからの遊離型コレステロールの排出に必要であることは明らかであるが,この蛋白質が分子レベルで小胞輸送のどのステップにどのように関与するかはいまだ不明である。
Copyright © 2005, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.