特集 タンパク・遺伝子からみた分子病―新しく解明されたメカニズム
16.内分泌系
脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)
荻野 和秀
1
Kazuhide Ogino
1
1鳥取大学医学部病態情報内科学
pp.526-527
発行日 2005年10月15日
Published Date 2005/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100492
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ナトリウム利尿ペプチドには心房の分泌顆粒に存在する心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP),主に心室から分泌される脳性(またはB型)ナトリウム利尿ペプチド(BNP),中枢神経系や血管内皮に存在するC型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)の3種類があり,それぞれ28残基,32残基,22残基のアミノ酸からなるペプチドホルモンである(図1)。これらの利尿ペプチドは,すべて松尾壽之博士の研究グループによって発見された,日本から世界に向けて発信されたホルモンである1-3)。利尿ペプチドの受容体は3種類のグアニル酸シクラーゼ受容体が同定されており4),cGMPをセカンドメッセンジャーとして作用する。利尿ペプチドの主な薬理作用は利尿・ナトリウム利尿作用,血管拡張作用,ホルモン(レニン,アルドステロン,ADH)分泌抑制作用,降圧作用などで,血圧・体液の調節に重要な役割を果たし,心血管系にも様々な作用を有していることが明らかになってきた。
ANPが心房から分泌されるのに対し,BNPは心室から有意に分泌され5,6),その分泌もANPが一旦分泌顆粒に貯留され,刺激の応じて分泌されるregulated pathwayであるのに対し,BNPは様々な刺激による細胞内のペプチド合成亢進とともに貯蔵されずにただちに分泌されるconstitutive pathwayに則る。血中BNP濃度は心室からの分泌に大きく依存しているため,心室に対する血行力学的な負荷によってBNP合成が亢進し,心不全や心肥大において著明に増加する。現在,血中BNP濃度は心不全のスクリーニング,重症度判定,治療効果判定など広く臨床に応用されている。
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