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神経細胞の細胞骨格は細胞骨格蛋白とよばれる微小管(microtubule),ニューロフィラメント,アクチンなどから成り立っている。微小管はαおよびβチューブリン(tubulin)とよばれる球状の蛋白質を基本の骨格単位としており,タウはチューブリンを重合し微小管の形成を促進させる微小管関連蛋白(microtubule-associated protein)である。タウよりも分子量の大きな微小管関連蛋白も存在し,タウを含めこれらはすべてチューブリンの重合促進作用という糊のような働きをし,微小管との間に架橋を形成する。タウは末梢神経と中枢神経に存在し,中枢神経では皮質よりも白質に多く,軸索や樹状突起などの神経突起の進展を行っていると考えられている。正常組織のタウ蛋白ではリン酸化と脱リン酸化が繰り返されていて,チューブリンの重合による微小管形成が調節され,細胞骨格を安定させ,軸索輸送や細胞の極性を維持している1)。
タウの遺伝子は17番染色体短腕21にあり,16のエクソンからなる。その発現はmRNAの選択的スプライシングにより発達段階で変化する。成人では6種類の分子種(isoform)(図1)が発現する。すなわち,エクソン2(2+),3(3+),10(10+)の組み合わせから6種類が形成され,352から441個のアミノ酸連鎖で構成される。また末梢神経系ではエクソン4A,6,8があり,もっとも長いアミノ酸連鎖を持ち,ビックタウとして知られる。分子種は六つあることから,65-50kDaの六つの異なったペプタイドが発生し,SDS-PAGEゲルで区別され,リン酸化に伴いSDS-PAGE上でのタウの運動性は低下する。上記の6種類の分子種において,エクソン10の有無により,タンデムリピートが三つのもの(3-repeat:3R)と四つのもの(4-repeat:4R)が区別される。微小管結合部位はC末端側のドメインにあり(図2),エクソン10は四つの微小管結合部位の2番目に位置しており,エクソン10を含む分子種は4R,含まない分子種は3Rとなる。ウエスタンブロットでタウの分子量とリピート数の関連が調べられ,55kDは3R,74kDは4R,69kDと64kDは3Rと4Rのハイブリッドであることがわかっている。タウはリン酸化を受けやすく,リン酸化を受けたタウはチューブリンをつなぐ働きをせず,ほかの微小管付随蛋白を微小管からはがし,またタウ蛋白同士で重合し,細胞骨格蛋白としての働きを失う。リン酸化にはMAPK,GSK3b,PKAなどのカイネース(kinase)が働き,リン酸化部位が同定されている。
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