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上皮型Naチャネル(ENaC)は各種上皮組織の管腔側膜に発現しており,経上皮Na+輸送の流入路という共通の性質をもつ。ENaCは外部環境に面した上皮組織,すなわち外皮,表皮,気道,肺胞,大腸,尿細管,尿管,膀胱,唾液腺・汗腺の導管,舌の味蕾などに発現している。管腔側(粘膜面)に発現し,基底膜にあるNa+/K+ ATPaseと協同で体内にNa+を吸収している。腎においては,遠位尿細管や集合管の主細胞の管腔側に大量に発現しており,この部位でのNa+再吸収に重要な役割を果たしている。ENaCの活性と発現量はNa+の摂取量とアルドステロンなどで制御されている。そして,ENaCの活性化は腎集合管の管内電位の増加から,二次的にK+とH+の分泌を促進し,低K血症,代謝性アシドーシスをきたす。反対に,K保持性利尿薬であるアミロライドはENaC阻害作用を有し,管内電位を減少させて,二次的にK+とH+の分泌を抑制し,高K血症,代謝性アルカローシスをきたす。ENaCがアミロライド感受性Naチャネルといわれる所以である。その他,消化器系では,糞便や分泌液中のNa+濃度を減少し,Na+排泄を減らして体内Na+を保持する方向に作用する。
ENaCの分子構造と作用調節については1990年代半ばより多数の報告がなされ,これらの解明が飛躍的に進んだ。まず,1993年にCanessaら1)によって,ラット大腸の上皮細胞より発現クローニング法を用いてENaCのαサブユニットがクローニングされ,続いて翌年β,γサブユニットもクローニングされた2)。ヒトのENaCについても,1994年に肺よりαサブユニットが3),翌年にはβ,γサブユニットがクローニングされ4),以降ENaCの構造-機能連関の解明が飛躍的に進むこととなった。これら3種のサブユニットは各々約700個のアミノ酸からなり,34-37%の相同性を有し,図1のように,形態上はいずれも細胞内にN末端とC末端を有し,二つの膜貫通領域とループを形成する大きな細胞外領域を有している。これらのサブユニットは多量体を形成していると考えられるが,Kosariら,Firsovらはα:β:γ=2:1:1の四量体,Snyderら,Eskandariらはα:β:γ=3:3:3の九量体で機能すると推測している。
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