特集 タンパク・遺伝子からみた分子病―新しく解明されたメカニズム
2.酵素および酵素制御
ニューロシンneurosin(KLK6)
岩田 淳
1
Atsushi Iwata
1
1東京大学大学院21世紀COE「脳神経医学の融合的研究拠点」
pp.398-399
発行日 2005年10月15日
Published Date 2005/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100443
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ニューロシンとは
ニューロシン(neurosin)はKallikrein-6(KLK-6),myelencephalon-specific protease,zyme1-3)などともいわれる223アミノ酸よりなる25kDaのセリンプロテアーゼである。組織特異性では脳,および脾臓に非常に多く発現しており,中枢神経内の分布では黒質,大脳基底核,脊髄,海馬,小脳に多いとされる1,3,4)。
当初は,アミロイド前駆体蛋白(APP)の切断酵素として発見されたが2),その生理的役割は不明である。正常組織以外では卵巣癌,子宮癌細胞に多く発現するといわれ,これらの癌患者血液中での濃度上昇が報告されている5,6)。アルツハイマー病に関係する研究では,Mitsuiらが脳脊髄液中のニューロシン濃度は加齢とともに増加するが,アルツハイマー病患者ではその濃度が著明に低下している場合があると報告しており7),異常蛋白質の分解に関わっていることが推察される。神経細胞のほかに乏突起神経膠細胞での発現も認められ,実験的アレルギー脳炎では脱髄に伴い乏突起神経膠細胞での発現は増加する8,9)。さらに,Ogawaらはアルツハイマー病の老人斑,パーキンソン病患者の神経細胞内にニューロシンが高発現することを見出しており,これら神経疾患との関わりが注目される10)。
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