特集 タンパク・遺伝子からみた分子病―新しく解明されたメカニズム
17.免疫系
ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド12/間質細胞由来因子-1(CXCL12)
井手 茜
1
,
川崎 英二
2
,
江口 勝美
1
Akane Ide
1
,
Eiji Kawasaki
2
,
Katsumi Eguchi
1
1長崎大学医学部・歯学部附属病院第一内科
2長崎大学医学部・歯学部附属病院生活習慣病予防診療部
pp.538-539
発行日 2005年10月15日
Published Date 2005/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100497
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
CXCL12の発見は相互分泌ファミリーに属するⅠ型膜貫通型タンパクで,マウス骨髄由来ストローマ細胞株から同定された新規分泌タンパク質SDF-1(stromal cell-derived factor 1)が端緒となった1)。また,これは前駆B細胞の増殖を促進する因子であるpre-B cell growth stimulatory factor(PBSF)と同一物質であることが証明され,CXCL12,SDF-1,PBSFは同義語として用いられている2)。
相互分泌ファミリーは,構造上二つのシステイン残基を持つCCサブファミリーと,四つのシステイン残基を有しN末端側の二つのシステイン残基がCXCモチーフを示すCXCサブファミリーとの二つのサブファミリーに分類されるが,CXCL12は後者に属する。CXCL12はほかの相互分泌ファミリーと異なり,その遺伝子はヒト染色体10q11.1に存在し,全鎖長は約10kbに及ぶ。5末端はTATAが少なくGCリッチであることから,この遺伝子がユビキタスなものであることを示唆し,事実CXCL12はほぼ全ての臓器に発現している1)。CXCL12はリンパ球の遊走・活性だけでなく,胎児期における骨髄での造血幹細胞,中枢,心臓,消化器などの分化・発達や,そのほか血管形成,癌やウイルス感染においても重要な役割を果たすことが知られている。
Copyright © 2005, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.