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筋強直性ジストロフィー(DM)は筋緊張,筋萎縮などの主症状のほかに,白内障,精神遅滞,性腺萎縮,前頭部脱毛などの全身にわたる症状を併発する常染色体優性の遺伝病である。責任遺伝子である筋強直性ジストロフィープロテインキナーゼ(DMPK,EC2.7.1.-)はヒト19番染色体長腕13.3に位置する。DMでみられる遺伝子変異は非常に特異なもので,DMPK遺伝子の3'側非翻訳領域にCTG三塩基からなる繰返し配列(CTGトリプレットリピート)があり,正常対照では繰返し数が5-30であるのに対し,DM患者では100以上,多いものでは数千にまで伸長していることが報告されている。さらに,リピート数と症状に相関関係があり,リピートが長いほど発症年齢が早まり,症状も重篤になることが知られている(表現促進現象と呼ばれる)1)。
ヒトDMPKの場合,セリン/スレオニンキナーゼ部位はN末端から中間部分に位置し,C末端に疎水的領域が存在している。中間にある挿入配列とC末端の違いにより,ヒトDMPKには全部で6種のスプライシング分子があることが知られている2)。C末端側には二種類のスプライシング様式が存在し,その違いにより,DMPKはミトコンドリアと小胞体のそれぞれに局在することが報告されている3)。DMPKは骨格筋,心筋,脳,胃などで発現が確認されているが,骨格筋においてはDMPKは筋小胞体の終末槽に局在することが明らかとなっている4)。培養細胞5)や分裂酵母6),出芽酵母7)にヒトDMPKを強制発現させた場合,細胞の形状が変化することが報告されており,DMPKが細胞骨格の再構成や細胞分裂の一機能を担う可能性が示唆されている。一方で,DMPKの生理的機能については,いまだに不明な点が多く,in vitroにおいてDMPKはミオシンホスファターゼ(MYPT1)をリン酸化するとの報告がある8)が,これが実際の生体内における基質であると確信をもっていうには,今なお詳細な研究を必要としている。
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