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グルメの時代も30年を経て,今日では,過食に伴う肥満,高血圧,糖尿病,高脂血症など生活習慣病の増加という負の局面が強調されるようになってきた。このような時代の要請に沿って3-hydroxy-methylglutaryl Co-enzyme A(HMG-CoA)reductase阻害薬による高コレステロール血症の治療やPPAR-αのリガンドであるフィブラート系薬剤による高中性脂肪血症の治療が行われた結果,動脈硬化や脳血管障害の予防に著効が得られた。しかし,一部症例では依然,治療目標値までコレステロールや中性脂肪の値を十分に低下させることができないため,より高いQOLを求めて新薬の開発が続けられている。ミクロソームトリグリセライド運搬タンパク(microsomal triglyceride transfer protein;以下MTP)阻害薬もその一つである。
アポリポ蛋白Bを含むリポ蛋白に中性脂肪を付加する機能を持つMTPは,同一分子が腸管の上皮と肝細胞のミクロソームに主に局在する1)。腸管から吸収された中性脂肪は,アポリポ蛋白Bと腸管上皮細胞内で結合してカイロミクロンとなり,胸管を経て血中に放出される。他方,腸管から吸収された糖は門脈を経て肝臓に至り,一部はグリコーゲンとして肝細胞に貯蔵される。残りの大部分の糖は肝細胞内で脂肪酸や中性脂肪に変換される。細胞内で過剰となった中性脂肪は,オレイン酸などの刺激によりさらに発現が高まったMTPの働きで効率よくアポリポ蛋白Bに結合し,VLDL(very low density lipoprotein)として肝静脈に放出される2)(図1)。過食や高脂肪食が続くとこの二つの経路の働きが亢進し,食後高中性脂肪血症やインスリン抵抗性が誘発される。肥満とインスリン抵抗性はメタボリックシンドロームの重要な誘因なので,過食や高脂肪食が身に付いた当今,高中性脂肪血症に対するMTP阻害薬の活躍が期待される。
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