特集 タンパク・遺伝子からみた分子病―新しく解明されたメカニズム
2.酵素および酵素制御
5,10メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ(MTHFR)
沼口 靖
1
,
室原 豊明
2
Yasushi Numaguchi
1
,
Toyoaki Murohara
2
1名古屋大学医学部プロテアーゼ臨床応用学
2名古屋大学大学院医学系研究科器官制御内科学
pp.394-395
発行日 2005年10月15日
Published Date 2005/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100441
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5,10メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ(methylene tetrahydrofolic reductase, MTHFR:EC2.1.1.13,別名Cobalamin-dependent methionine synthase)はビタミンB12関連酵素群の一つで,5-10メチレンテトラヒドロ葉酸を5-メチルテトラヒドロ葉酸へ変換する140.3kDの酵素であり,ヒト染色体1p36.3に位置する(図1)。MTHFR酵素の活性低下によりmethyl folate trapと呼ばれるほかの葉酸関連酵素の欠乏をきたし,最終的には血中ホモシステイン(homocysteine:HCY)濃度の上昇を介してDNA合成能の低下や悪性貧血発症などの原因となる。
MTHFR酵素の活性低下以外に,高HCY血症をきたす原因としてホモシステイン尿症,腎不全,甲状腺機能低下症,葉酸代謝拮抗剤(ナイアシン,メトトレキセート,イソニアジド,フェニトインなど)の長期内服などがあり,遷延する高HCY血症により心血管系疾患や脳血管障害,末梢血管動脈硬化性疾患などの発症率が上昇することが知られている。すでに糖尿病,高脂血症,喫煙,高血圧などは動脈硬化促進因子,あるいは冠動脈危険因子として確立されているが,高HCY血症は食後の一時的高血糖や少ない運動習慣などと並んで新興動脈硬化危険因子の一つとして認知されつつある。
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