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ペルオキシソームとペルオキシソーム病
ヒトの細胞には核以外にミトコンドリア,ペルオキシソーム,小胞体,ゴルジ体,リソソームなどの細胞内小器官(オルガネラ)が存在し,タンパク質はリボソーム上で合成された後に細胞内を直接,または小胞体を介してオルガネラに輸送されてその機能を発揮している。そのうちの一つであるペルオキシソームには50以上のマトリックスタンパクがリボソームより直接輸送されて,脂肪酸β酸化やエーテルリン脂質,胆汁酸の生合成など多くの生理的機能を果たしている。近年,先天性の代謝異常症を細胞内小器官ごとに分類するオルガネラ病という概念が提唱され,ペルオキシソーム病はペルオキシソームの代謝機能に異常をきたして発症する疾患群で,その特筆すべき点として単一のタンパク異常症以外に,これらタンパクのペルオキシソームへの輸送やペルオキシソーム膜形成の異常によりペルオキシソームの生合成そのものが障害されるペルオキシソーム欠損症の存在が挙げられる。
そのペルオキシソーム生合成に関わるタンパクをperoxinと呼び,遺伝子群はPEXと表記される。PEX遺伝子のクローニングにはペルオキシソームの生合成機構が真核細胞に広く保存されていることより,酵母や動物変異細胞(CHO細胞)などを用いて精力的に展開されている。前者は欧米を中心に複数のグループから異なる酵母の系で数多くの変異株が分離され,その異常を相補するPEX遺伝子もクローニングされており,CHO変異細胞の系では国内において藤木らのグループを中心にラットやヒトのcDNAライブラリーを用いてクローニングされている。さらに酵母の系からはヒトDNAデータベースを用いたホモログクローニング(EST法)によりヒトのPEX遺伝子もクローニングされている。各PEX遺伝子産物(peroxin)の機能についても解明されてきており,ペルオキシソームマトリックスタンパクの輸送に関わるperoxinとしては,タンパクのペルオキシソーム輸送シグナル(PTS1とPTS2)を認識するPex5やPex7,膜の透過に関わるPex13,14,RINGファミリー(Pex2,10,12),さらにAAA ATPaseファミリーに属するPex1や6,両者の複合体のリクルート因子であるPex26(次項参照)などが挙げられる。一方,ペルオキシソーム膜形成に関わるperoxinとしてはPex3,16,19がクローニングされている。そしてこれらPEX遺伝子のクローニングにより,次に述べるペルオキシソーム欠損症の各相補性群の病因遺伝子が次々と明らかにされている。
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