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Transforming growth factor-β induced proteinは,ヒト肺腺癌細胞由来の細胞株をTGFβにより処理した際に誘発される遺伝子beta ig-h3がコードするタンパクであり,1992年,Skonierらにより単離された1)。683アミノ酸から成り,約68KDの細胞外マトリックスのタンパクのひとつである1)。細胞接着を促進させるとか,ケラチノサイトの分化に関与しているとされているが,今日まで詳細なメカニズムは不明のままである2)。しかしながら,beta ig-h3遺伝子の変異により100年以上原因がわからなかった多種類の遺伝性角膜ジストフィがひきおこされることが証明されたため,眼科領域で一躍注目されるようになった3)。
1997年にMunierらは,顆粒状角膜ジストロフィ(GCD),格子状角膜ジストロフィⅠ型(LCD1),Avellino角膜ジストロフィ(ACD),Reis-Bücklers角膜ジストロフィ(RBCD)と臨床診断されていた四つのタイプの角膜ジストロフィが,TGFBI(角膜ではケラトエピセリン;遺伝子はbeta ig-h3)タンパクにおけるアミノ酸配列の変異により発症していることを発見した3)。GCDではTGFBIの555番目のアミノ酸のアルギニンがトリプトファンに変異し(Arg555Trp),このアミノ酸がグルタミンに変異するとRBCDになる(Arg555Gln)。ACDでは124番目のアルギニンがヒスチジンに変異し(Arg124His),LCD1ではやはり124番のアルギニンがシスチン(Arg124Cys)に変異したことが病因であるとされた。これらの知見は世界中で確認され,格子状角膜ジストロフィⅢ型はじめ多くのTGFBI変異による角膜ジストロフィが報告されてきた4)。
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