特集 タンパク・遺伝子からみた分子病―新しく解明されたメカニズム
5.輸送系
Solute carrier family 12 member 3(SLC12A3)
前田 士郎
1
Shiro Maeda
1
1理化学研究所遺伝子多型研究センター糖尿病性腎症関連遺伝子研究チーム
pp.456-457
発行日 2005年10月15日
Published Date 2005/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100469
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Solute Carrier Family 12 member 3(Thiazide sensitive sodium-chloride cotransporter:TSC, NCCT)
SLC12遺伝子ファミリーは電気的中性の陽イオンとClイオン共輸送体で,魚類の遺伝子解析から最初に同定され,その後哺乳動物でも同定が進んできた。現在SLC12のメンバーは9種類同定されており,K+-Cl-共輸送体のメンバーと,Na+-Cl-あるいはNa+-K+-2Cl-のメンバーの二つに大別されている1)。後者は腎臓のヘンレ上行脚の尿細管管腔側に特異的に存在するbumetanide-sensitive Na+-K+-2Cl- cotransporter(SLC12A1)と多くの組織に広く分布するSLC12A2,および遠位尿細管移行部の尿細管管腔側に存在するThiazide-sensitive Na+-Cl- cotransporter(SLC12A3,NCC,TSC)を含んでいる。
サイアザイド利尿薬は降圧利尿薬として古くから広く使用されていたが,長くその作用機序の詳細は不明とされていた。1975年頃よりサイアザイド利尿薬が腎臓の遠位ネフロンに作用してCl-の排泄を増加させることや2),魚類(Pseusopleuronectes americanus)の膀胱のNa+-Cl-コトランスポーターを阻害することなどの報告がなされ3),遠位ネフロンにサイアザイド感受性のNa+-Cl-コトランスポーターが存在することが明らかとなった。
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