特集 タンパク・遺伝子からみた分子病―新しく解明されたメカニズム
5.輸送系
kidney Na+/HCO3- cotransporter(SLC4A4)
五十嵐 隆
1
Takashi Igarashi
1
1東京大学大学院医学系研究科生殖発達加齢医学専攻小児医学講座
pp.442-443
発行日 2005年10月15日
Published Date 2005/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100462
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
Na+/HCO3- cotransporter(NBC)はNa1分子と重炭酸イオンHCO3- 1分子を運搬する膜蛋白である。NBCは10個の膜貫通部位を持ち,N末端とC末端はともに細胞質内に位置する1)。NBC蛋白は種々の組織に発現して細胞内pHを調節する。腎型NBC(kNBC)蛋白はおもに腎近位尿細管基底膜側に,わずかにHenle上行脚基底膜側に発現する。さらに,kNBC蛋白は角膜の血管内皮細胞と角膜上皮細胞にも発現する。
kNBC蛋白は膵臓型NBC蛋白(pNBC)遺伝子(SLC4A4)(遺伝子座4q21)から由来する1)。すなわち,SLC4A4のイントロン3の3'側にオールタネィブスプライシングを起こすプロモータが存在し,SLC4A4のイントロン3に由来する41個のアミノ酸がkNBC蛋白(1,035個のアミノ酸)の5'部を構成する。従って,pNBC蛋白(1,079個のアミノ酸)の5'部の85個のアミノ酸はpNBC蛋白に固有であり,kNBC蛋白の5'部の41個のアミノ酸はkNBC蛋白に固有である。そして,pNBC蛋白とkNBC蛋白はともに共通した994個のアミノ酸を3'部に持つ。pNBC蛋白は膵臓に大量に発現し,脳,脊髄,腎,大腸,甲状腺,前立腺にも少量発現が見られる。kNBC蛋白もpNBC蛋白もNBC蛋白族の一員であり,いずれもanion exchangerとアミノ酸レベルで30-35%の相同性がある。kNBC蛋白は代謝性アシドース,K欠乏状態,副腎皮質ホルモンの過剰分泌状態で発現が増強する。
Copyright © 2005, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.