総合リハビリテーション 40巻5号 (2012年5月)

増大特集 リハビリテーションQ&A

特集にあたって
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「総合リハビリテーション」誌では,およそ5年に一度増大号を発行しています。前回は,2007年の「リハビリテーション医学2007―最近10年の動向とエビデンス」と題したものでした。今回は,リハビリテーション医学のエビデンスや技術といった視点とは違った立場から,「リハビリテーションQ&A」と題する増大号を企画しました。本書は,リハビリテーションを志すあらゆる医師や専門職を対象とした,リハビリテーションに関する基礎的な知識をQ&A形式でわかりやすく理解するための活用事典と考えています。

 2005年に日本リハビリテーション医学会リハビリテーション科専門医会「リハビリテーション科専門医需給に関するワーキンググループ」からリハビリテーション医需給に関する報告が出されました。これによると,日本リハビリテーション医学会で専門医制度が発足して以来,毎年30~60人の新たな専門医が誕生しています。しかし回復期リハビリテーション病棟の増床など医療制度の変化に伴い,リハビリテーション医療においてリハビリテーション科専門医のニーズは非常に高まっており,現在の専門医数では圧倒的に不足しています。したがって,①臨床急性期・一般病床,②臨床回復期,③臨床維持期・地域支援,④教育・研究などの幅広い分野で,リハビリテーション科専門医を増やして行くことが必要です。またリハビリテーションが扱う疾患は,脳血管疾患,脊髄疾患,整形外科疾患,呼吸・循環器疾患,神経筋疾患,切断,小児疾患などと多岐に亘り,それらに関わるスタッフも,リハビリテーション科専門医同様の知識の整理が望まれます。

Ⅰ リハビリテーションの原点

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Q1 リハビリテーションとは?

 リハビリテーションの本来の意味は,再び(re)能力を持たせる(habilitate)ということにある1).歴史的にさまざまに定義されてきたが(表1)2),実践的な立場からは,「障害を持った人々が,地域において,持てる能力を最大限に発揮し,人権が尊重され,生き甲斐を持った生活を送れるように,障害者やその家族を中心に共通の目標に向かってチームで援助する活動」と捉えることができる.

 この考え方と不可分なのが,1950年代にデンマークで障害者の施設処遇に対する厳しい批判に基づき提唱されたノーマライゼーションの理念である.その意味は,障害のある人たちを一人の市民として地域で普通に生活できるように社会の仕組みを変えていくということであり3),1981年の国際障害者年のテーマであった「完全参加と平等」はこの理念に基づく.

2.リハビリテーション医 正門 由久
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Q1 リハビリテーション医とは?

 リハビリテーション医は,リハビリテーション医療を担う,リハビリテーション医学を専門とする医師のことである.リハビリテーションとは,患者の疾病およびそれによって生じた障害を治療・改善させるとともに,それらに限りがあったとしても,さまざまな手段を講じて,生活を再建し,その質を高めることである.つまりリハビリテーション医とは,疾病を診断・治療するばかりでなく,それによって生じた障害を機能,活動,参加,それぞれのレベルでの問題としても捉え,評価し,適切なリハビリテーション治療とともに,他の治療方法をも講じる医師である.さらに疾病,それぞれのレベルの障害の評価ばかりではなく,それらを総合的に考え,目標を設定し,治療を進めていく.

 疾病そのものを直接的に治療する手段を講じるとともに,それによって生じた障害にも介入・アプローチすることがリハビリテーションの真骨頂である.1996年8月医療法施行令一部改正により,それまでは理学診療科とよばれていた“リハビリテーション科”が「運動機能障害及び精神障害等の障害者を対象として医学的リハビリテーションを実施する診療科」として,『リハビリテーション科』を標榜科とすることができるようになった.またその後,文部省科学研究費補助金の細目に『リハビリテーション科学・福祉工学』が認められ,医療分野としても,科学分野の一領域としても認められるようになった.

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 言うまでもなく,すべての医療はチームワークにより成り立っている1).一般的な病院におけるチーム構成は医師,看護師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,薬剤師,放射線技師,臨床検査技師,栄養士,臨床工学士,医療ソーシャルワーカーなどである.リハビリテーション関連職種は,これに加えて,さらに多くの職種が存在し,福祉職,行政職ともチームを組む必要があるのが特徴と言える2).ここではリハビリテーションチームの特徴,チームをうまく活動させるための知恵,リハビリテーションの処方箋や指示はどう書くのが適切か,リハビリテーション治療の質を高めるにはどうすればよいかに関して述べる.

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Q1 リハビリテーション処方の目的は?

 リハビリテーション処方の目的は大きく3つ考えられる.1つ目の目的は,リハビリテーション処方の最も重要な目的である「なぜその患者にリハビリテーションが必要か」という理由にも直結することで,「診断(問題点の抽出)と治療(リハビリテーション訓練)を結びつける」ということである.国際障害分類(International Classification of Impairments, Disabilities and Handicaps;ICIDH)や国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health;ICF)に基づくリハビリテーション診断については別稿で詳しく述べられているので割愛するが,診断により明らかになった障害に対し予後予測を行い,問題点を抽出し,リハビリテーション訓練を実施することにより何らかの効果が見込まれる場合にリハビリテーション処方はなされるべきである.ここで言う効果とは改善のみでなく悪化予防や機能・能力維持も含まれる.また介護家族の負担軽減も大切なリハビリテーション効果の1つである.予後予測が困難な場合には,数週単位のスパンで効果判定を行う「リハビリテーション・トライアル」を処方する場合もある.

 2つ目の目的は,リハビリテーション訓練を実施するうえでのリスクを把握してセラピストに伝えることである.リスクは大きく分けて,①患者の状態悪化を避けるためのものと,②セラピストやリハビリテーション処方医の安全(感染症予防などの生命的な安全と,訴訟回避などの社会的な安全)にかかわるものに大別される.特に注意すべきリスクとその対応についてはQ5で解説する.

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 昨今,さまざまな疾患の治療ガイドラインや出版物のなかでevidence-based medicine(EBM;エビデンスに基づく医療)という言葉が頻繁に使われている.これは,科学的根拠に基づいて治療方針を決定することである.明らかな根拠に基づき,医療情報の妥当性や信頼性を十分ふまえたうえで確実な臨床判断を行うことを重要視する医療方法を意味する.その推奨の度合いは,研究方法によって決定されるエビデンスレベルと,勧告の強さであるグレードによって総合的に決定される(表1).

 リハビリテーション医療においては,常に機能予後を見据えたうえで患者の最大限の利益と成果を与えるように考えなければならない.ある意味では,成果至上主義とも言える.本稿では,われわれがリハビリテーションの手段として行う運動療法や装具療法,急性期リハビリテーションの効果として,どのような効果が示されているか,エビデンスレベルが高いものを中心に取りあげて解説する.また,われわれが行った研究結果の一部を紹介し,どのようにエビデンスを示すかを述べる.

Ⅱ 脳卒中,その他の脳疾患

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Q1 急性期のリハビリテーションの目的は?

 急性期のリハビリテーションの目的は,現疾患の治療と並行して,廃用性障害を最小限にとどめ,損傷された脳組織の機能回復を引き出し,歩行の獲得,日常生活動作(activities of daily living;ADL)の改善を目指すことにある.

 2009年脳卒中治療ガイドラインにおいても,「発症後早期からの積極的リハビリテーション」はグレードAで推奨されている1).しかし,昨今の医療体制では急性期,回復期と病期別機能分化が進んでいるため,急性期病院では,在院日数の短縮化のために,「脳卒中のリハビリテーションは回復期リハビリテーション病院に任せればよい」,「急性期病院では最低限の廃用症候群予防のリハビリテーションでよい」という考えは,まだまだ多いのではないかと思われる.

7.脳卒中患者の運動機能 長谷 公隆
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Q1 脳卒中の運動機能回復過程でみられる連合反応の病態とは?

 中枢神経障害による運動麻痺では,随意運動ができない時期においても,非麻痺側の随意運動にともなって麻痺側に運動がみられる場合がある.これを連合反応(associated reaction;AR)という(表1).連合反応は,努力性の運動によって麻痺肢に誘発される陽性徴候として捉えられ,両上肢間では同名部位に左右対称性に,両下肢間では内外転については対称性,屈伸については相反性に出やすい特徴がある.両下肢間における内外転の連合反応は,Raimisteの反応1)として知られる.非麻痺肢の随意運動によって麻痺肢に誘発される対側性連合反応と,麻痺肢の運動によって麻痺肢に誘発される同側性連合反応に大別され,脳における機能的距離(functional distance)を反映する.麻痺肢の随意運動が可能になった後でも,例えば,歩行に際して麻痺側下肢の振り出し時に麻痺側上肢が屈曲する同側同時運動(homolateral pattern)などが観察される.多関節に波及することが鏡像運動(mirror movement)との違いであり,また,誘発動作が終了しても連合反応が残存する場合があること,筋電図学的に屈筋と伸筋の同時収縮がみられることが示されている.

 連合反応の標準的な評価基準は確立されていないが,Macfarlaneら2)は立ち上がり動作時に上肢に誘発される連合反応を,持続,関節数,解除の可否,課題への影響の4項目について,0~3の4段階で評価し,その信頼性を検討している(表2).連合反応は複数の関節に及んで誘発され,特有の肢位を誘発して拘縮リスクを高めることから,ボツリヌス毒素療法における治療の標的の1つとなる.

8.脳卒中患者の高次脳機能 原 寛美
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 脳卒中診療・リハビリテーションにおいては,運動機能評価のみではなく,認知機能の評価が必須となる.運動機能障害を呈することなく,病巣によっては認知機能障害(高次脳機能障害)を主症状として呈するために,その評価法としての標準的神経心理検査に習熟することが求められる.本稿では,失語・失行の検査を除き,脳卒中により生じる頻度の高い高次脳機能障害に対する,汎用されている標準的神経心理検査について概説し,典型例の提示を行う.

9.脳卒中患者の嚥下機能 武原 格
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Q1 嚥下障害患者に対する問診と診察のポイントは?

 摂食・嚥下障害の有無を判断する際,問診を含む診察は重要である.問診には,病歴や食事時のむせの有無だけではなく,生活様式や食生活,家族歴も聴取する必要がある.肺炎の既往,栄養状態の変化,口腔期,咽頭期,食道期の障害でみられる徴候などを漏らさず聴取することが大切である.大熊ら1)がまとめた質問紙(表1)は,嚥下障害を疑うポイントを網羅しており有用である.

 身体所見をしっかりとることは,嚥下障害の評価に非常に重要である(表2).

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Q1 脳卒中のリハビリテーションは何をするのか?

 脳卒中は片麻痺,嚥下障害,失語,半側空間無視など多彩な機能障害とそれに伴い日常生活動作(activities of daily living;ADL)障害や歩行障害などを来し,急性期の治療に伴う健側の廃用も引き起こす.リハビリテーションの治療対象は個々の状態に影響されるが,これらすべての問題点が治療対象となる.また脳卒中は急性期から回復するという過程を経ていくため,治療の方法が一様ではない.そこが脳卒中のリハビリテーションのおもしろいところであり,また難しいところでもある.

 機能障害レベルでの治療をみていくと,麻痺に対しては,促通反復療法1)やミラーセラピー2),CI(constraint-induced movement)療法3),HANDS(hybrid assistive neuromuscular dynamic stimulation)療法4)など多くの治療が報告されている.しかし現在までに多くの治療方法が試みられているが,麻痺を改善するものの,その効果は限定的である.一方,能力低下レベルでみていくと,ADLや歩行は麻痺などの機能障害の影響を受けるが,確実に改善する.

11.脳卒中患者のADL 松本 真以子
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Q1 ADLとは?

 ADLとはactivities of daily livingの略称であり,日常生活動作あるいは日常生活活動と訳される.例えば,食事をする,トイレに行く(排尿,排便を行う),着替える,歩くなど,われわれが普段の生活のなかで行っている動作(活動)のことである.

 日本リハビリテーション医学会では1976年に,「ひとりの人間が独立して生活するために行う基本的な,しかも各人ともに共通に毎日繰り返される一連の身体動作群をいう」と定義している.さらに「この動作群は,食事,排泄などの目的をもった各作業(目的動作)に分類され,各作業はさらにその目的を実施するための細目動作に分類される.リハビリテーションの課程や,ゴール設定にあたって,これらの動作は健常者と量的,質的に比較され記録される」と続く1)

12.脳卒中患者の機能予後 小林 一成
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 脳卒中による脳の障害はその部位および程度がさまざまであり,一概にその機能予後を論じることは難しい1).しかし今日,リハビリテーションを必要とする障害の原因のなかで,最も重要な疾患である点について異論はないと思われる.脳の損傷により種々の機能障害が生じ,さらにそれは生活上のさまざまな活動制限をもたらす.リハビリテーションの治療目標は,廃用症候群などの二次的障害を予防しながら,可能な限り残存障害を軽減し,さらにできれば神経機能の回復を促し,次いでできる限り高いレベルの活動能力を再獲得することにある.個々の症例の障害は種類も重症度も多岐にわたり,また背景因子も異なることから,正確にその機能予後を予測することは困難であり,実際には経過をみながら最終到達点を判断することが多い.しかしその際に,少しでも予後予測に役立つ情報があれば,より質の高いリハビリテーションが可能になると考えられる.本稿では脳卒中発症後の機能予後について,上肢機能,下肢機能,失語症,歩行機能,日常生活動作(activities of daily living;ADL)能力の観点から紹介する.

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Q1 CI療法とは?

 CI療法(constraint-induced movement therapy)1)は脳卒中片麻痺患者の上肢機能障害に対するリハビリテーション治療の一つで,非麻痺側上肢をミトンやスリングなどで拘束し,麻痺側上肢を短期集中的に強制使用することで機能改善させる治療法である.

 1980年Taub2)は,求心遮断したサルは健側肢による代償的な運動が主体となり,麻痺肢を使わなくなることを報告した.実際には運動麻痺がないにもかかわらず,麻痺肢を使わなくなることを,運動を抑制するように条件づけられた学習のためと考え,これを学習性不使用(learned non-use)と呼んだ.そしてさらに,健側肢を1~2週間拘束し続けると麻痺肢の機能が改善することを示し,これがCI療法の基礎研究となった.1981年にOstendorfら3)が最初の臨床応用を報告し,その後Wolfら4)により片麻痺の上肢機能訓練として臨床研究が進んだ.その結果,現在欧米の多くの施設で脳損傷による片麻痺患者の上肢機能障害に対する治療法として取り入れられている.

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Q1 脳卒中患者で痙縮の治療が必要となるのはどのような場合か?

 脳血管障害患者ではその程度に差はあるものの,痙縮はほぼ必発する症候である.また,何らかの方法により消滅できるものではなく,むしろ上手に共存することを治療の目的とすることが現実的である.また,痙縮は発症直後には認めず,時間経過とともに徐々に出現し,強くなっていくものであるため,患者のその変化に不安を感じたり,また気づかないうちに不利益を生じている場合も多い.したがって治療者がその変化を把握し,病態や対処方法をきちんと患者に説明していくことが,痙縮の治療の第一歩となる.また,その“不利益”を予防,改善することが痙縮の治療ということになるので,まずは痙縮によりどのような不利益が生じるのかを述べることとする1)

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Q1 脳卒中の装具療法の意義は?

 脳卒中では時期により弛緩性麻痺あるいは痙性麻痺と病態が変わるため,それにより装具療法のアプローチの方法は異なってくる(表1)1).従来は,脳卒中片麻痺に対する装具療法の目的としては,「能力低下(disability)=活動の制限」に対しての使用が主体として考えられており,具体的な目的としては,下肢装具では,①立脚期の安定,②つま先離れを容易にする,③正常歩行パターンに近づける,④変形の予防,上肢装具では,①変形予防,②疼痛予防,③動揺関節の保持などが挙げられていた2).しかし近年,装具療法は,「能力低下(disability)=活動の制限」にとどまらず,「機能障害(impairment)=機能・構造の異常」に対する治療として急性期より積極的に用いられるようになってきており,その意義は拡大してきている.脳卒中治療ガイドライン2009において,急性期リハビリテーションはアルテプラーゼ静注療法(rt-PA)や頸動脈内膜剝離術と同様にグレードAとなっており,廃用症候群を予防し早期の日常生活動作(activities of daily living;ADL)向上と社会復帰を図るために,十分なリスク管理のもとにできるだけ発症早期から積極的なリハビリテーションを行うことが大事であるとされている.その内容には,摂食・嚥下訓練,セルフケア訓練,早期座位・立位の他に,装具を用いた早期歩行訓練が挙げられている.そのなかの装具療法については,「脳卒中片麻痺で内反尖足がある患者に,歩行の改善のために短下肢装具を用いることが勧められる(グレードB)」とされ,そのエビデンスとして,①支柱付き装具の使用により動的にバランスのよい歩行が可能となり,麻痺側立位時間が延長し,振り出しが対称性となり,麻痺足の安定性が増す.麻痺側の前脛骨筋の活動は減少したが,大腿四頭筋の活動は増加した(Ⅱb).②短下肢装具を使用すると,装具なしに比べ,立位バランスの左右対称性,ケイデンス(1分あたりの歩数)および歩行速度が改善し,床,カーペット上での歩行が改善した(Ⅱb).などが示されている3)

 さらに最近では,ボツリヌス治療4)などの薬物療法効果を高めるための併用療法として装具療法が有用であることを述べたものもある5).これは注射後の筋弛緩による筋伸長状態を維持するために装具を利用するもので,場所や時間を選ばない方法として治療上のメリットは大きいと思われる.

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 わが国の高齢化率(総人口に対する65歳以上の高齢者人口の割合)は急速に上昇しており,23.1%(2010年10月1日現在)に達している.今後も総人口が減少する一方で,高齢者が増加し,高齢化率は上昇を続け,2055年には40.5%に達すると推計されている1).認知症の有病率は,わが国の65歳以上の地域住民において3.8~11.0%であり,高齢となるほど増加する2).リハビリテーション医療においても,対象患者の高齢化とともに合併する認知症の存在は無視できないほどに大きな問題を生じてきており,早急な対応が必要である.認知症を合併した患者は,リハビリテーションに参加したり,リハビリテーションの教示に従ったりすることが困難であるだけでなく,いわゆる「問題行動」があることによって,リハビリテーションに難渋することも多い.一方で,認知症を合併した患者であっても日常生活動作(activities of daily living;ADL)介助量が多少なりとも軽減することはしばしば経験する.これまでリハビリテーション医学領域の運動障害に対する介入研究では,その多くが認知症の合併を除外基準に入れているが,Mini-Mental State Examination(MMSE)の点数のみで脳卒中急性期のリハビリテーション医療の対象から除外すべきでないとする報告もされてきている3).今後は,認知症患者のADL障害に対するリハビリテーションの治療戦略が確立していくことが望まれる.

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Q1 脳外傷の重症度の判断指標は?

 外傷時の意識障害の程度が一つの指標になる.国際的には,表1のようなGlasgow Coma Scale(GCS)が汎用されている.開眼反応,言語反応,運動反応の3項目で採点し,13~15点は軽度,9~12点は中等度,8点以下を重度としている.重度の場合,生命予後も不良である.日本で汎用されているJapan Coma Scale(JCS)では,おおよそ3桁がGCSの重度に相当する.また,外傷後の記憶障害(post traumatic amnesia;PTA)の期間も重症度の指標になると言われ,PTAが長いほど重度である.しかしPTAの期間は厳密に決定することは困難な場合が多く,実際の臨床ではGCSが外傷の重症度の判断指標としてよく使用されている.

Ⅲ 脊髄損傷,その他の脊髄疾患

18.脊髄損傷患者の評価 田中 尚文
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 脊髄損傷者のリハビリテーションでは,傷害された脊髄の高位や麻痺の程度によってリハビリテーションゴールが異なる.症状や障害のわずかな変化が機能予後に大きな影響を及ぼすことにも留意して経時的に診察や評価を行う.その結果に基づいて作成した問題点リストは,脊髄損傷者においても,障害構造を明らかにすることができ,リハビリテーション治療計画を問題点に対応させて立案し,チーム医療を効率よく展開するのに有用である.問題点リストを作成する際には,国際障害分類(International Classification of Impairments,Disabilities and Handicaps;ICIDH)による障害学の概念を取り入れ,患者の抱える問題点を機能障害(impairment),能力低下(disability),社会的不利(handicap)および医学的問題(medical problems)の4つのカテゴリーに分けて,重要な順に挙げるとよい1).脊髄損傷者によくみられる問題点を表1に列挙する.

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Q1 急性期のリハビリテーション処方のポイントは?

 外傷性脊髄損傷の急性期には,損傷脊髄の二次的な損傷を防ぐ必要がある.受傷部位の脊椎の不安定や低血圧,徐脈,貧血,低酸素などによる損傷脊髄の酸素不足が原因となり,脊髄の二次的な損傷が引き起こされやすい.受傷部位の脊椎の安定には外固定や内固定が行われる.特に内固定における脊椎インストゥルメンテーション,早期離床に大きく貢献している.受傷部位の脊椎の安定化と全身状態の安定化が確保されれば,早急にリハビリテーションの介入をベッドサイドより始め,続発する合併症を予防する1)

 損傷の部位やその程度により,さまざまな病態を示すので,リハビリテーションの介入を開始するにあたっては,診察,評価により適切に把握し,状態に合わせたリハビリテーションの内容に決めていく.自動車事故や転落に起因する場合には,多発外傷を伴いやすく,四肢の骨折や内臓の損傷がないかを十分に検索する必要がある.また,脊髄には,運動,感覚の神経のみならず,自律神経(交感神経)を含むため,その損傷に伴い,自律神経に関連した機能の低下を生じ,排尿(尿閉),排便(イレウス),循環(低血圧,徐脈,起立性低血圧,自律神経過反射,皮膚血流障害),発汗(体温調節),呼吸(肺炎,無気肺)など異常を生じることを理解することが重要である.特に第5胸髄以上の損傷では交感神経障害されるため,その症状が出やすくなる.

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Q1 脊髄損傷後の機能障害の予後予測因子には理学的所見に関してどのようなものがあるか?

 外傷性脊髄損傷受傷後早期に神経学的機能回復を予測するのは,患者や家族に的確な情報を提供し,どのようなリハビリテーションのコースがあるのか(例えば,実用歩行の獲得を目指すのか,車いすでの自立を目指すのかなど)を示すのに重要である.

 脊髄損傷受傷早期に機能的予後予測因子として重要なものは,損傷初期の神経学的損傷レベル(Neurological Level of Injury;NLI),損傷初期の残存筋力,神経学的に完全か不全か,といったところが挙げられる1,2)

21.脊髄損傷の合併症 横山 修
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Q1 自律神経過反射のメカニズムと対応方法は?

 目の前の患者が突然,バットで殴られたような激しい頭痛を起こした場合,くも膜下出血などをまず考えるが,頸髄損傷者では自律神経過反射を考える.筆者はX線室でC4完全四肢麻痺の患者が突然激しい頭痛を訴えているといってコールされた.この時,患者はバットで殴られたような激しい頭痛,非麻痺域であるC4レベル以上の領域全体の皮膚紅潮を認めた.血圧は収縮期血圧200台と上昇し,脈拍数は30台であった.隣室の外来看護師を呼ぶとともに,ズボンをゆるめ,バルーンの閉塞の有無の確認,膀胱洗浄を実施したところ,症状は改善した.頭部CT撮影し,くも膜下出血や脳出血などの頭蓋内病変は認めなかった.

 T5レベル以上の脊髄損傷者が突然の激しい頭痛,血圧の異常高値を認めた場合,まず自律神経過反射を疑い,迅速に対応する必要がある.自律神経過反射は膀胱や直腸の充満が原因となることが多く,この有害刺激を除去することで大部分は速やかに症状が改善する.そのため,自律神経過反射の病態を十分に理解し,迅速に対応することが重要である.

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Q1 回復期における排尿管理のスケジュールは?

 間欠導尿の開始は早いほどよい(ただし自己導尿の習得が見込めない症例については,Q4参照のこと).脊髄損傷急性期の排尿は,一般には尿道留置カテーテルによって行われる.しかし留置カテーテルをおけば,全症例で1週間以内に尿路に細菌が侵入してしまう.また,脊髄損傷急性期ではカテーテルによる尿道内損傷も起きやすく,その結果として急性前立腺炎などの合併症が起きやすい.さらには,急性期の尿道カテーテル留置期間が長いほど,回復期に膀胱結石が発見される頻度が高くなる.このような理由から,できるだけ早く留置カテーテルを抜去し,間欠導尿法に切り替えるほうがよい.

 間欠導尿が開始できる時期は,多発外傷や損傷レベルなどの患者の身体的要件や,医療施設の習熟度やマンパワーによって左右される.一般的には,急性期の治療が終了し,リハビリテーションに専念できる時期になったら,患者や家族に間欠導尿についての情報提供を行い,飲水コントロールを開始しつつ,介助者による間欠導尿を開始することが多い.

23.二分脊椎 荻原 英樹 , 師田 信人
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Q1 二分脊椎はどのように分類されるか?

 二分脊椎は,胎生初期の神経管形成不全に由来し,脊椎の癒合不全を認める状態である.脊椎後弓の欠損に加えて,これに合併する種々の脊髄奇形が病態の原因となる.

 二分脊椎は大きく分けて,開放性二分脊椎と潜在性二分脊椎に分類される.開放性二分脊椎とは,脊椎後弓の欠損部から脊髄,くも膜下腔,硬膜が脱出し,皮膚を介さずに直接体表面に露出されているものを言う.開放性二分脊椎はさらにその内容物により以下のように分類される.

Ⅳ 関節リウマチ,その他の骨関節疾患

24.関節リウマチ 桃原 茂樹
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Q1 関節リウマチとはどのような病態か?

 関節リウマチ(rheumatoid arthritis;RA)は遺伝的背景と環境因子が複雑に絡み合って発症すると考えられている.何らかの原因で異常な免疫応答が生じ,関節内の滑膜が増殖して炎症の主座となり,毛細血管周囲に抗原提示細胞とT細胞の浸潤,続いてB細胞が浸潤してくる.それにつれて滑膜表層細胞が多層化し絨毛状に形成される.そしてこれら滑膜や関節軟骨よりTNFαやIL-6などのサイトカインが産生され,さらにマトリックスメタロプロテアーゼなどの蛋白分解酵素が誘導されて,パラクライン(paracrine)とともにオートクライン(autocrine)的に軟骨組織の変性や骨の破壊へと病態が進行する.男女比は1:3~4で女性に多く,すべての年代で発症するが,特に40~50代で発病する割合が多いようである.症状も単(寡)関節から多発性に関節が障害され個人差が非常に大きく,時には血管炎,シェーグレン症候群,リウマチ肺,発熱といった関節外症状も合併する.通常は全身性の関節障害を来し,肩,肘,手関節,手指,股関節,膝,足関節,足趾などさまざまな関節が障害される.また,朝のこわばりが特徴的症状で,RAと診断されれば障害された関節はRA由来と考えて対処するほうがよい.

 治療は全身の炎症を抑えるための薬物治療が基本であるが,近年さまざまな新薬の登場でその治療薬は大きく変化している.特に病勢の強い早期の症例に対する薬物の選択は重要であり,メトトレキサート(MTX)や生物学的製剤を早い時期から考慮する必要があるという多くのエビデンスが報告されている.

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Q1 最近の関節リウマチに対するリハビリテーションの考え方は?

 治癒困難と考えられてきた関節リウマチ(reumatoid arthritis;RA)の治療は新しい薬剤の登場により大きく変革した.1999年に導入された抗リウマチ薬のメトトレキサート(MTX)や2003年以降に使用が許可になった生物学的製剤により,RAの関節破壊の進行が抑制できるようになり,寛解導入,治癒も可能になってきた1).RAの治療は,今までの抗炎症剤やステロイド剤による生活の質(quality of life;QOL)の改善を目指す「care」の時代から,適切な抗リウマチ薬や生物学的製剤の使用によって関節破壊を防止して,長期的なQOLの維持を目的とする「cure」の時代へとパラダイムシフトが起こっている2).Emeryら3)はwindows of opportunity(治療機会の窓)というコンセプトを提唱した.RAは発症してから2年間は関節の破壊が最も進みやすい時期であり,生物学的製剤などの薬物療法の早期導入が,関節予後やQOLに大きな影響をもたらすことが認識されるようになった.

 発症早期から積極的な治療と同時に,関節可動域(range of motion;ROM),体力や筋力の維持,変形を予防するためにも早期からのリハビリテーションの介入が重要である.早期RAは新規薬剤の反応性によって3つのタイプに分類され,タイプによって早期リハビリテーションの介入が異なる4).早期関節炎寛解例には過度の関節負担を防止し,局所の安静を保つ指導を行う.症状改善時にはROMの改善,筋力強化,体力増強を目標とした積極的リハビリテーションへ移行する.炎症は改善しているが関節痛,関節拘縮や変形などの機能障害が認められる場合は,従来の温熱療法や筋力維持などの運動療法を行い,関節保護の原則に従った生活指導を行う.治療に抵抗する症例には,障害予防的リハビリテーションに自助具,装具,住宅改造,在宅ケアなどの代償的リハビリテーションを加える.

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Q1 変形性股関節症の重症度はどのように評価すべきか?

 X線学的所見と臨床機能の両面から重症度の評価を行うべきである.日本整形外科学会が提唱しているX線学的な病期分類によると,関節裂隙の状態,骨構造の変化,臼蓋・骨頭の変化により,前関節症,初期関節症,進行期関節症,末期関節症に分類される(表1)1)

 前関節症は,臼蓋形成不全などの形態異常はあるものの関節裂隙は保たれて(軟骨が温存されて)いる時期である.初期関節症では,関節裂隙にわずかな狭小化,荷重部の骨硬化像を認める.進行期関節症では,関節裂隙の広範な狭小化,骨囊胞・骨棘の形成や臼底の増殖性変化もみられる.末期関節症では,関節裂隙は消失し,骨硬化像・骨棘形成が著明となる.これらの病期は一時的にその進行が遅延,停止することはあるが,一般的には加齢とともに慢性的に進行していくものと考えられている(図1).

27.変形性膝関節症 佐藤 克巳
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Q1 変形性膝関節症とはどんな病気か?

 膝関節に腫脹,疼痛,変形(多くは内反変形)を生じ,歩行障害や正座,しゃがみ,胡坐などの動作が障害される疾患である.高齢者に多く発症し,多くは進行性で,軟骨変性と骨増殖がその病態と考えられているが,詳細はいまだ不明である.

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Q1 投球肩障害に対する診断とリハビリテーションはどのように行うか?

 投球動作は,下半身で蓄えた力を体幹を介して上肢に伝え,指先のボールスピードに変換させるという運動連鎖から成り立っている(図1).あらゆる部位の障害が生じてもこの連鎖に破綻を来し,最終段階である肩,肘の負担が増して障害が生じることになる.投球肩障害にはさまざまな肩関節内の病変が挙げられているが,その原因は肩甲帯を含めた肩関節のみならず,他の身体的所見に求められることが多い.すなわち,関節内病変は,他の身体的問題点や非効率的な投球フォームによって,肩関節のインナー,アウターの筋バランスの不均衡を生じ,投球動作の際に骨頭の肩甲骨関節窩への求心性が失われ,不安定性を来すことから生じた二次的所見であることが多い.

 関節内病変には,腱板関節面と上後方関節唇の擦れによるインターナルインピンジメントや上前後関節唇損傷(superior labrum anterior and posterior lesion;SLAP)病変といわれる上方関節唇損傷,関節窩後縁の骨棘形成を生じるベネット病変などがあるが,治療にあたっては,まず前述したように,それを来した原因を究明し,治療することが重要である.これらの関節内病変に対しては内視鏡による手術的治療を要することもあるが,保存療法を少なくとも3か月間行い,その効果を判断しながら手術適応を慎重に決定する必要がある.したがって,投球肩障害患者を診察するには,肩関節所見のみならず,前記の投球動作に必要な要素の評価,さらに実際の投球フォームを観察する必要がある.

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Q1 腰痛を起こす原因にはどのようなものがあるか?

 腰痛は多くの者が経験する症状であり,その原因は多岐にわたっている(表1).明らかな原因が特定できる場合には,その病態に即した各種治療が選択される.腰椎に原因がある疾患として,腰椎椎間板ヘルニア,変形性脊椎症,腰椎分離・すべり症,腰椎変性すべり症,腰部脊柱管狭窄症など,変性疾患の診断名がつくことが多い.また感染による脊椎炎,腫瘍,外傷,内臓疾患も腰痛の原因となるので,注意を要する.

 一方,明らかな原因が特定できない場合の腰痛のほうが多いとも言われ,長期慢性化する患者もみられる.腰痛には多様な因子が関連していることがわかってきており,特に腰痛の増悪や遷延には早期から心理・社会的因子が深く関与していることが指摘されている1)

30.大腿骨頸部骨折 松原 正明
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Q1 大腿骨頸部骨折の診断と分類についてどのようなものがあるか?

1.診断

 大腿骨頸部骨折は高齢者の3大骨折のひとつとされ,高齢者の増加に伴い発症も増加している1).一般的には骨粗鬆症を基盤とし,屋内や屋外での転倒など比較的軽微な外傷で発症する高齢者に多いタイプが多くを占めるが,一方で,交通事故や転落などの高エネルギー外傷により発症するタイプもある.診断は,受傷後の歩行困難といった臨床像,特異な肢位(図1)に加えて股関節正面単純X線画像における大腿骨頸部付近の骨折線の確認,もしくは骨の転位により行える(図2).しかしながら軽微な外力により発症した症例のなかには,鼠径部痛がみられても歩行困難を来さなかったり,単純X線画像では診断不可能な症例も存在する(不顕性骨折).このように転倒の既往があるにもかかわらず単純X線画像で骨折が判明しない場合には,MRI撮影が有効であるという報告が多くみられる2)(図3)ため,骨折が疑われる場合にはMRI撮影を行うとよい.

Ⅴ 脳性麻痺,その他の小児疾患

31.脳性麻痺 落合 幸勝
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Q1 脳性麻痺の歴史とは?

 脳性麻痺の歴史は,1853年英国の外科医William J. Little1)の記念碑的著書に始まったと言える.1861年Littleは,Obstetrical Society of Londonで講演を行い,分娩が新生児の神経筋系に重要な損傷を与える可能性のあることを,多数の症例を挙げて説明した.分娩という過程のなかでも,特に関係する因子は難産,未熟出生,新生児仮死であることを指摘した.1958年にこの論文の全文がCerebral Palsy Bulletin 1巻1号に復刻出版された2).この講演後,脳性麻痺は「リットル病(Little's disease)」と呼ばれるようになった.

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Q1 脳性麻痺における早期介入とは?

 脳性麻痺の定義は,「脳性麻痺とは,発達過程にある,胎児・乳児の脳に起こる非進行性の障害に起因する,活動制限の原因となる運動と姿勢の発達の障害の総称である.脳性麻痺の運動障害には,感覚・認知・コミュニケーション・知覚,および/または行動障害を伴い,加えて/または痙攣を伴う」である.

 医師が診断をつけることは,家族が受容し,前に進むために大切なことである.しかし,子どもにとって大切なことは,診断をつけることではなく,機能的な問題点をしっかりと評価し治療することである.子どもの発達段階に現れる障害や機能的な問題に対して治療や評価を早期に行うことは大切である.

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Q1 四肢の変形をどのように評価するのか?

 脳性麻痺では特徴的な四肢変形を示すことが多い.痙直型両麻痺の下肢では,股関節は屈曲・内転・内旋,膝関節は屈曲,足関節は内反尖足または外反扁平足となる.股関節が内転内旋している状態をはさみ肢位(scissoring posture),股関節と膝関節が屈曲している状態をかがみ肢位(crouching posture)と呼ぶ.痙直型四肢麻痺でも同様であるが,時に片側の股関節が内転内旋し,反対側が外転外旋することがあり,「風に吹かれた」ようにみえることからwindblown deformity(またはwindswept deformity)と呼ぶ(図1).この場合,内転内旋している側の,または両側の股関節が脱臼・亜脱臼していることが多い.上肢では,肩関節内旋,肘関節屈曲,前腕回内,手関節・手指屈曲,母指内転の変形が多い.

 痙直型麻痺に伴う四肢変形は,筋の痙縮や固縮を基盤として生じる.痙縮や固縮により,関節可動域は制限され,やがて関節拘縮につながる.また股関節のような不安定な関節では,痙縮のために関節適合性が悪化し,亜脱臼や脱臼につながることがある.したがって,四肢の変形の評価には,痙縮や拘縮の評価,関節適合性の評価が含まれる.

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Q1 装具の種類は?

 装具=「補装具」とは,障害者自立支援法に規定された法律上の用語である.1994年に制定された「福祉用具の開発及び,普及の促進に関する法律」のなかで,「福祉用具とは心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障のある老人又は心身障害者の日常生活上の便宜を図るための用具,機能訓練のための用具及び補装具をいう」と規定されており,福祉用具の一部に組み込まれている.

 以前は,18歳未満は1947年制定の児童福祉法,18歳以上は1949年制定の身体障害者福祉法に則って補装具支給がなされてきたが,2005年10月の特別国会で「障害者自立支援法」が成立し,2つの制度が1本化された.この法律によると,具体的な装具の種類としては,「義肢,装具,車いす,電動車いす,座位保持装置,歩行器,歩行補助つえ,盲人安全つえ,眼鏡,義眼,補聴器,重度障害者用意思伝達装置」となっており,加えて18歳未満の児童に対しては,「座位保持椅子,起立保持具,頭部保持具,排便保助具など」が加えられている(表)1)

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Q1 新生児期からリハビリテーションの対象となる疾患は何か?

 日本で生まれる新生児の約30人に1人はハイリスク因子をもつ児として新生児集中治療室(neonatal intensive care unit;NICU)へ入院する可能性がある1).NICUや新生児病棟に入院し,新生児期からリハビリテーションを必要とする主な新生児疾患を表12)に示す.新生児疾患には神経系疾患,染色体・先天奇形系疾患,呼吸循環器系疾患,早産・低出生体重児などがある.在胎37週以降に生まれた正期産児では,低酸素性虚血性脳症(hypoxic-ischemic encephalopathy;HIE)や先天異常によりリハビリテーションが必要となる児が多い.100人に1人は重症新生児仮死で,13人に1人は先天異常(合併程度の幅は広い)を有して出生し,一生涯医療的ケアを必要とする重症な障害をもつ児も増加している.

 周産期医療において世界最高水準を誇る日本では,新生児死亡率は減少傾向にあり,在胎37週以前に生まれる早産児は増加傾向にある(1980年4.12%→2008年5.8%).早産児は在胎週数に応じた低出生体重を有し,出生体重1,000g未満の超低出生体重児や1,500g未満の極低出生体重児の出生率も増加傾向にある.日本での総出生数は年々減少傾向にあるが,出生体重2,500g未満の低出生体重児の出生は10人に1人になりつつある.早産・低出生体重児は,脳室周囲白質軟化症(periventricular leukomalacia;PVL),脳室内出血(intraventricular hemorrhage;IVH),慢性肺疾患(chronic lung disease;CLD)を発症しやすく,これらの疾患は発達予後に影響を及ぼしやすい3)

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Q1 乳児期における運動発達のチェックの意義は?

 ヒトは他の動物であれば生後すぐに発揮できるような基本的な運動能力(寝ている姿勢から起き上がることから歩行まで)を1歳前後までというかなり長い時間をかけて獲得する.基本的な運動能力の獲得の基盤となっているのが神経系の発達であり,同じ時期に並行してシナプスの形成と退縮,場合によっては細胞死などのダイナミックな変化が脳の中で起こっている.

 乳児期における運動発達のチェックの意義は,主に運動障害を主要症状とする脳性麻痺(cerebral palsy;CP)児を早期にみつけることにある.しかし,運動発達は他の能力の発達に先駆けて最も早く進行するものでもあるので,他の発達障害,特に自閉症スペクトラムでは社会性や言語の異常の前に,運動発達の異常が検出されることが多い.Brysonら1)は後に自閉症の診断を受けることになる9名の児が,6か月の段階で呼びかけなどの言語的な刺激に対する反応での異常さはまったくみられなかったのにもかかわらず,4名で運動発達の遅れがみられ,物をつかんだり,把持したり,さらに物へ手を伸ばしたり,持ち替えたりするのが困難だったと報告している.また最近,Lloydら2)は58名の問題のない児と自閉症児162名の粗大・微細運動の発達を,12~36か月までで定期的に評価して比較し,その差が徐々に大きくなっていくことを報告している.したがって運動発達のチェックは,運動障害の検出にとどまらず,自閉症などの脳の異常を基盤とした発達障害を早期から検出するうえで,大きな意義をもつことになる.

37.精神発達 半澤 直美 , 牛島 智子
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Q1 精神発達の問題を保護者とどのように共有したらよいか?

 なかなか歩かない,麻痺があるなど,運動発達に問題のある子どもは,同時に精神発達に問題があることが多く,適切な時期に知的障害や発達障害の有無を評価して保護者と共有することが重要である.しかし保護者にとっては,精神発達は運動発達に比べて具体的に捉えることが困難であり,さらに発達初期の保護者の関心は運動面に偏るため,精神発達の問題に重心を移していくにはかなり配慮が必要となる.また,精神発達は一般に「個人差」として理解される範囲が広い傾向があり,家族が専門家に相談するタイミングを計りにくい障害でもある.

 発達期の子どもでは,運動と精神の発達を完全に分けて考えることは不可能である.運動発達と精神発達はあらゆる点で相互に影響を与えあっているため,その両方を適切に評価しなければ,子どもを総合的に理解することはできない.ただ,精神発達自体は目に見えないものであるため,実際には「行動」や「言葉」として表れる様子の観察によって評価する.このため,運動が重度に制限されている児の場合は,専門家でも注意深い継続的な観察と,よく工夫された設定がなければ真の精神発達レベルの見極めは困難である.この点で,重い運動障害をもつ児の家族は,児の精神発達を実際以上に低く見積もるか,または逆に高く見積もってしまう.

38.発達障害 原 仁
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Q1 発達障害は医学の概念か?

 1987年から1993年まで,米国精神医学会の診断基準第3版改訂(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 3rd Edition, Revised;DSM-Ⅲ-R)のなかに発達障害(developmental disorders)という第Ⅱ軸のカテゴリーがあった.ここで過去形である点に留意が必要である.つまり,現在の診断基準であるDSM-Ⅳ-TR(2000)にはこのカテゴリーは使用されていない.周知のように,DSMは多軸評定システムを採用しており,第Ⅰ軸は精神疾患の診断,第Ⅱ軸は人格障害の診断に分かれている.なお,第Ⅲ~Ⅴ軸の説明は省略する.

 DSM-Ⅲ-Rの発達障害は,精神遅滞(現在の知的障害),広汎性発達障害(自閉症とその近縁の障害)および特異的発達障害(発達性言語障害,発達性協調運動障害,学習障害)から構成されていた.遅れの性状から,全般的で均一な遅れ,全般的で不均一な遅れ,そして特定領域のみの遅れと整理でき,階層的な障害理解が可能で,大変わかりやすい分類であった(図1).しかし,階層的分類は並列方式のWHOの疾病分類である国際疾病分類(International Classification of Diseases and related conditions;ICD)との整合性がとれないため,後のDSM-Ⅳ(1994)では,精神遅滞のみ第Ⅱ軸に残り,他の障害群は第Ⅰ軸に移行して並列方式となった.

39.小児の高次脳機能障害 栗原 まな
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Q1 小児の高次脳機能障害の特徴は?

1.成人の高次脳機能障害との違い

 小児の高次脳機能障害と成人の高次脳機能障害は基本的に同じであるが,小児では表1に示すような特徴がある.小児では発達や可塑性のため成人以上に症状の変化があり,成人で行われるような神経心理学的検査は一部しか行えず,高次脳機能障害がみえてくるのは就学後が多い.またいじめや叱責などから生じる自信喪失,不登校,心身症などの二次障害の予防が欠かせない.

Ⅵ 神経および筋疾患

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Q1 多発性硬化症のリハビリテーション処方のポイントは?

 多発性硬化症は中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり,再発・寛解を繰り返す時間的に多発する点と,中枢神経に多発病変を認め多彩な神経症状を示す空間的に多発する点を特徴とする疾患である.わが国では全体で約12,000人,人口10万人あたり8~9人程度と推定されている.治療は急性増悪期の治療,再発防止および進行防止の治療,急性期および慢性期の対症療法,リハビリテーションからなる.多発性硬化症の発症時あるいは再発時の急性期にはステロイド療法(パルス療法,経口ステロイド薬による後療法)を行う.再発予防薬にはインターフェロンβ(ベタフェロン®およびアボネックス®)がある.進行性の多発性硬化症にはシクロホスファミドのパルス療法を試みることがある.

 多発性硬化症患者におけるリハビリテーション処方のポイントについては表1に示す.

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 筋ジストロフィーのリハビリテーションは,各疾患による発症年齢,進行速度,筋力低下の分布,呼吸障害や嚥下障害の有無,生命予後に合わせて計画する必要がある.特に,デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy;DMD)は,近年呼吸管理・ケアの進歩により平均寿命も30歳を超え,人工呼吸器を使用しながら生活する期間が延長し,そのリハビリテーションは,二次的障害の防止,補装具や福祉機器の利用による代償,就学や就労などの社会参加,保護者の加齢による問題など多岐にわたるアプローチが必要となってきている.2013年を完成予定に日本神経学会・小児神経学会合同でDMDガイドライン作成の作業が進められている.エビデンスについてはそれを待ち,本稿では自然歴から得られた実際的な対応を主に述べる.

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Q1 ポリオとは何か? またポストポリオ症候群とは何か?

 ポリオ(急性灰白髄炎)は,脊髄前角細胞や脳幹がポリオウイルスによって冒される疾患である.ポリオウイルスは抗原の相違からⅠ~Ⅲ型に分類され,ポリオ罹患者の多くは,Ⅰ型ウイルスが関与している.感染者の糞便などから手指や飲食物を通じての経口感染が主であり,咽頭や腸管内で増殖後,各リンパ節組織内でさらに増殖し血中に侵入する.脊髄前角細胞や脳幹部など神経組織との親和性が強いため,これらの運動神経を侵し,弛緩性麻痺や球麻痺をもたらす.しかし,中枢性の麻痺を生じるのは1~2%であり1),90~95%は何も症状がなく,不顕性感染のみで終わる.弛緩性麻痺は,感染から12~18か月までは回復の可能性がある2).この麻痺の回復機序は,①部分的に障害を受けた前角細胞の機能回復,②前角細胞から分枝した軸索が脱神経筋を再支配,③残存筋線維の肥大と考えられている3-5)

 わが国では現在,野生株ポリオウイルスによる発症は認められないが,経口ポリオワクチンによる罹患例が報告され,不活化ワクチンへの見直しが進められている.日本では昭和35年にポリオの大流行があり,その後ワクチンの普及により患者は激減し,昭和40年代よりほとんどその新たな発症をみなくなった.しかし,昭和20~30年代にポリオに罹患した人々が次第に中高年に近づくにつれて,筋力低下,関節拘縮,四肢体幹の変形,痛み,歩行障害の増悪,日常生活動作(activities of daily living;ADL)の制限などの機能障害や能力障害を生じてきた.この病態がポストポリオ症候群(post-polio syndrome;PPS)である.すなわちPPSでは,通常通り社会生活や日常生活を送っていたポリオ罹患者が,発症から10~50年の安定期の後,新たな筋力低下,筋萎縮,筋・関節痛,易疲労感,歩行障害,嚥下障害などのさまざまな症状を生じる.PPSの診断基準は表1の通りである6).PPSの発症は,ポリオ罹患者の28~64%と言われており7),わが国でのPPSの発症率は,人口10万人あたり18.0人と報告されている8).発症要因としては,加齢,過重労働,廃用,過用,体重増加などが考えられている9).また一般的にポリオ患者は「頑張り気質」が多いと言われ,勤勉家が多く,仕事も熱心であり,手を抜くことができずに無理を強いる傾向にある.これがよりいっそう過用を進行させている3,10).リハビリテーション科医がポリオ罹患者の病態を適切に診断し,生活指導などの介入を適切に行うことにより,PPS発症を防ぎ,あるいは悪化を防止することが重要である.

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Q1 ギランバレー症候群の予後に関連する因子には何があるか?

 ギランバレー症候群(Guillain-Barré syndrome;GBS)は,急性単相性の経過をとる急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(acute inflammatory demyelinating polyneuropathy;AIDP)の代表的な疾患である.一般に,生命予後を含めて機能予後は良好と考えられていたが,症例によっては回復が遅延する場合があることが報告1-4)され,回復の良好な場合と不良な場合との違いが検討され,その予後予測因子として,表にまとめたようなもの5-9)が明らかになってきている.

 なお,表の因子以外にも,性別・先行感染(腹部症状)の有無,発症1か月後と2か月後の起座・起立能力や握力の回復状況などの因子の報告がある.また,前記因子の発症からベッド臥床までの期間や電気生理学的検査の所見は予後と関係がないとの報告もある.特に,筆者らの経験6)では,表のなかの年齢,人工呼吸器使用の有無,極期における重症度,電気生理学的検査の所見が重要と考える.

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Q1 パーキンソン病のリハビリテーションでは何をするのか?

 パーキンソン病は中枢神経変性疾患であり,進行性である.臨床症状は振戦,固縮,無動,姿勢反射障害などの運動症状と自律神経症状,睡眠症状,精神症状などの非運動症状と多岐にわたる.また,病状の進行とともに小歩,すくみ足,前方突進などの歩行障害がみられ,症状が変動するwearing-off現象やon-off現象も出現し,薬物療法のみでは難しくなる時期が出現する.有病率は人口10万人あたり100~150人と言われ,パーキンソン病患者数は増加しているため,決して稀な疾患ではない.治療としては,薬物療法,リハビリテーション,深部電極刺激法などの外科的処置などがある.Montgomeryら1)は,パーキンソン病患者をランダムに生活指導や運動指導を行った群と対照群に分け,6か月間その効果についてアンケート調査を行っている.前者においては訓練時間の増加やoff時間の減少,生活の質(quality of life;QOL)評価改善を有意に認めており,L型dioxyphenylalanine(L-dopa)量の増加は認めなかったが,後者では有意に増加したと報告している.薬物療法とともにリハビリテーションや生活指導をはじめ教育的指導をあわせて行うことで,薬物療法の効果をより引き出すことができると推測される.

 パーキンソン病おける問題点について表1に示した.進行性および症状が多岐にわたることに加え,経過が長いために加齢の影響を受けることを考慮しなくてはいけない.また,抗パーキンソン病薬を長期にわたり服用するために,この影響も受ける.これらのことを踏まえて,現在の症状のなかで何が最も問題となっているのかについて考えながら,訓練処方,生活指導を個別に行う必要がある.

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Q1 針筋電図検査では何がわかるか?

 針筋電図検査を単に「筋電図検査」と呼ぶこともある.針筋電図検査は,運動単位のいずれかの要素の障害の有無を,筋細胞膜に生じた電位変化で評価する検査である.神経伝導検査が主に末梢神経の障害を評価するものであるのに対し,針筋電図検査では,脊髄・前角細胞・筋肉など神経伝導検査では評価できない部分の障害も検出することができる.

Ⅶ 切断

46.義手 陳 隆明
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Q1 義手にはどのような種類があるのか?

 義手の基本構造は殻構造が一般的である.甲殻類のような外見であると同時に,機械的強度をその外側の殻で担い,さらに外観も整えるものである(図1).

 機能的には装飾義手,能動義手,作業用義手,そして電動義手に大別される.装飾義手は見た目だけを補完することのみを目的に作製されたものであると思われがちである.事実,今日では見た目の素晴らしいシリコン製のものが広く普及しており,多くの切断者に好評である(図2).見た目の素晴らしさに加えて,指関節機構を有し,指の形状を他動的に自由に変えられる装飾ハンド「パッシブハンド」も利用可能である.装飾義手は物体を押さえたり,引っ掛けたり,健側手とともに何かを保持したりすることを可能とし,きわめて限定的ではあるが日常生活動作(activities of daily living;ADL)上の一助となりうる.

47.義足 新美 まや
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Q1 義足にはどんな種類があるか.

 義足の分類には,以下のものがある.

 ①本義足作製前に義足パーツを試す目的もある訓練用の仮義足と,その後日常生活で常時使用するための本義足.

 ②農作業など特殊な職場環境で使用する作業用義足と日常生活で使用の一般的な常用義足.

 ③義足の構造による分類として,外装を樹脂で作成し支持部とする殻構造義足と,中心の支持部をチューブ(パイプ)とし外装を柔らかいフォームなどで覆う骨格構造義足.

 一般的には切断部位による分類(図1)が実用的である.

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Q1 上肢切断者のリハビリテーションはどのように行うか?

 上肢切断のリハビリテーションは義手の作製以前から始められる(図1)1)

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Q1 血管原性切断は高齢切断と同義語か?

 血管原性切断はリハビリテーション医学分野で1970年代以前から用いられているDysvascular Amputationの訳語であるが,ステッドマンの医学大辞典にも医学書院の医学大辞典にもこの用語はない.日本リハビリテーション医学会の用語辞典では血管原性切断の対応語にamputation due to peripheral vascular diseasesをあてている.つまり末梢血管疾患による四肢の切断を意味するとしているのであるが,末梢静脈疾患,リンパ管疾患では四肢切断に至ることは稀であるので,ここで言う血管は動脈と理解して問題はなかろう.また末梢動脈狭窄,動脈閉塞による上肢切断は下肢切断に比べはるかに数が少ない.

 下肢の末梢動脈疾患(peripheral arterial diseases;PAD)は慢性の経過で動脈閉塞を起こす慢性動脈閉塞症と同義に用いられるが,末梢動脈疾患には最も多いアテローム硬化に伴う閉塞性動脈硬化症(arteriosclelosis obriterans;ASO)だけでなく,急性動脈閉塞症,Buerger病(thromboangitis obliterans;TAO),膝窩動脈捕捉症候群,膝窩動脈外膜囊腫,遺残坐骨動脈,線維性異形成,膠原病関連の血管病変,肢端紅痛症,blue toe syndromeなどがある1)

Ⅷ 呼吸器・循環器疾患

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Q1 「包括的呼吸リハビリテーション」とは何か?

 呼吸リハビリテーションとは,「呼吸器の病気によって生じた障害をもつ患者に対して,可能な限り機能を回復,維持させ,これにより,患者自身が自立できることを継続的に支援していくための医療である」と定義されている1).呼吸リハビリテーションの要素として,理学・運動療法,患者教育・日常生活指導,薬物療法・酸素療法,栄養管理・指導,作業療法,環境調整,カウンセリング(精神・心理的サポート),などがある(図1)2).すなわち,呼吸リハビリテーションは運動療法だけで成り立つのではなく,きちんとした薬物療法・食事療法・患者教育・カウンセリングなどをセットにした「包括的呼吸リハビリテーション」として行われることでその威力が倍増する.

 例えば,長時間作用型の気管支拡張剤の出現により,1秒量の改善が可能な障害者が現れ,運動時の息切れの改善がもたらされることや,運動療法と気管支拡張剤の併用による運動耐容能改善に対しての相加作用も報告されている.また,運動療法だけでは禁煙効果はほとんどないため,教育が必要である.教育は呼吸リハビリテーションの必須要素とすべきであり,教育内容には自己管理や病状悪化の予防と治療に関する情報を含めるべきであると指摘されている3).さらに,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease;COPD)患者は,食事の際の息切れなどによる食欲減退,低酸素状態による栄養吸収障害,呼吸に使用するエネルギー消費量の増加,基礎代謝量の亢進などによる栄養障害を伴うことが多いため,食事療法も呼吸リハビリテーションの重要な因子となっている.また,運動時の息切れなどによりうつ状態になるため,心理的ケアが必要となることが少なくない.このように,呼吸リハビリテーションでは運動療法のみならず,多要素的に包括的リハビリテーションとして行われる必要がある4)

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Q1 ICUで人工呼吸器を装着した患者のリハビリテーションで重要なことは?

 集中治療室(intensive care unit;ICU)では人工呼吸器を装着したままリハビリテーションを行う機会も多い.患者は重篤な病態に陥ってはいるが,呼吸機能に関しては人工呼吸器により保障されており,むしろ安心して,リハビリテーションに取り組める.重要なのは多職種による連携がうまくとれるかであり,主治医,ICU管理医師,看護師,臨床工学技士などとの情報共有が鍵となるので,カンファレンスやICUミーティングに努めて参加したい.

 人工呼吸の基本戦略は,人工呼吸による肺障害を回避するための肺保護換気と,温存した自発呼吸を活用するために必要十分な補助を行うことである1).過鎮静による機械換気に頼るのではなく,極力自発呼吸を温存し横隔膜運動を維持することにより,背側無気肺の予防と換気,血流のマッチングを確保するのが望ましい.そのためにも換気モードとして気道内圧緩和換気(airway pressure release ventilation;APRV)が推奨されている2).高いcontinuous positive airway pressure(CPAP)レベル(20~30cmH2O)で自発呼吸を行わせ酸素化を改善させ,生じた換気障害に対してリリースと呼ばれる換気補助〔0cmH2Oまで一気にPEEP(positive end-expiratory pressure)を抜く〕を行うものである.リリースは0.5~1秒以内と短いため,肺胞の虚脱を起さずに平均気道内圧を下げることができる画期的な人工呼吸法である.また最近は新生児向けであった高頻度振動換気法(high frequency oscillatory ventilation;HFOV)に高齢者にも使える成人仕様も登場しており3),従来の同期式間欠的強制換気(synchronized intermittent mandatory ventilation;SIMV)と圧支持換気(pressure support ventilation;PSV)とともに理解しておく必要がある.

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Q1 心臓リハビリテーションでは何をするのか?

 心臓リハビリテーションとは,「心疾患患者の身体的,心理的,社会的機能を最適化し,基礎にある動脈硬化の進行を安定化・遅延・退縮させ,それにより罹病率と死亡率を低下させることをめざす協調的多面的介入である」と定義されている1).他の疾患リハビリテーションとの大きな違いは,運動療法を含めたリハビリテーションアプローチ自体が疾患治療効果をもつことである.運動療法を行うには,リハビリテーションスタッフは患者の病態を把握して運動のリスクを層別化する.それにより監視の程度を決定する(表12)).

 運動療法の施行には運動処方を作成する.運動療法では,通常ウォーキングやエルゴメータなどの有酸素運動が行われる.運動強度は心肺運動負荷試験(cardio pulmonary exercise test;CPX)から算出された嫌気性代謝閾値(anaerobic threshold;AT)を基準にする.AT以上の運動では交感神経活性が亢進して合併症が増加するため,AT以下の運動が望まれる.CPXが施行できない場合は心拍処方(Karvonen法,図1)3)や自覚的運動強度(Borg指数,表2)を用いて運動療法を行う4).ただし心拍処方では,疾患によって係数を調整する必要がある.たとえば重症心不全ではk=0.2~0.4と低強度に設定する.またβ遮断薬を内服している場合には心拍応答が低下しているので注意が必要である.Borg指数では本人や環境条件にも左右されるので,心拍数と合わせて評価するとよい.通常,運動療法は週に3回から5回程度で,1回30~60分で行う.また併せてレジスタンストレーニングを行うことが推奨されている.レジスタンストレーニングは1セットあたり8~15回とし,1~3セット施行するのが基本である.心血管疾患に対しては1最大重量(1 repetition maximum;1RM)を用いて処方する場合,上肢運動は1RMの30~40%,下肢運動では50~60%の負荷と上肢で軽度の負荷を処方することが薦められる.心臓リハビリテーションにおいて,理学療法士の役割は心疾患患者の運動機能や生活機能を評価し,運動様式の特性を活用して患者の状態に合った運動療法を実施することである.特に低心機能や高齢心疾患患者では,インターバル・トレーニングを用いるなど身体機能に適した運動療法の実施が重要である5)

53.循環器疾患の薬剤 松元 秀次
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Q1 高血圧診療の最近の話題は?

 日本での高血圧治療の現状としては,aliskirenに代表される新しい降圧薬と,併用療法を推進するための合剤が多数出てきていることがある.高血圧の治療というのは,単に血圧をコントロールするだけでなく,臓器保護という点にも焦点が置かれているため,臓器障害を早期に発見して確実に治療するという目的で,日本高血圧学会(Japanese Society of Hypertension;JSH)2009などのガイドラインが作られている.米国のJoint National Committee(JNC)ガイドライン8が2003年発行のJNC 7以来発行されるが,臓器障害の予防にも重点が置かれているといわれる.

 レニン阻害薬(direct renin inhibitor;DRI)であるAliskirenの最大のメリットは,レニン-アンジオテンシン(renin-angiotensin;RA)系を最上流のステップでブロックできること(図1)と,レニンの阻害作用が強く長いことである.組織への移行性が高く,特に組織内でのRA系を十分に抑制できる特徴をもつため,降圧作用に加えて,心臓保護作用や腎臓保護作用を今まで以上に期待できる薬剤といえる.欧米でのAliskiren Observation of Heart Failure Treatment(ALOFT)研究1)やAliskiren in the Evaluation of Proteinurea Diabetes(AVOID)研究2)ではそれぞれ心臓,腎臓保護作用が示されており,国内研究でも同様の多面的作用(pleiotropic effect)をもつかが焦点となっている.まだ非常に新しい薬剤であるため,長期のエビデンスという意味では十分でないが,併用療法を行ううえでも非常に重要であると考えられる.RA系を十分抑制するという意味では,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(angiotensin Ⅱ receptor blockers;ARB)とDRIの併用は代償性レニン上昇を抑えるという点でよい結果が得られる可能性があるが,もう少しエビデンスが必要といえる.

Ⅸ その他

54.物理療法 渡部 一郎
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Q1 物理療法の種類と適応は?

 物理療法(physical therapy, physical agents)は,治療に適用されるさまざまな形式のエネルギーや物質・手段を指す.温熱療法として,ホットパック,アイスパック,赤外線や超音波があり,また機械的療法として,牽引,圧迫,水,超音波がある.電磁気療法としては,レーザー,赤外線,紫外線,各種電磁波,電気治療が挙げられる.

 適応は,炎症と治癒,疼痛軽減,可動域拡大や,筋トーヌス変化などで,リハビリテーション診療の多くにさまざまな形式の物理療法が単独または運動療法と併用して効果を発揮する.

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Q1 ベル麻痺やハント症候群の病態は何か?

 顔面神経麻痺の原因のなかで,最も頻度が高いのはベル麻痺で,次いでハント症候群であり,この2つで70%を占めている1)

 ベル麻痺では膝神経節における単純ヘルペスウイルスタイプ1の再活性化であり2),ハント症候群では水疱瘡帯状疱疹ウイルスの再活性化である.再活性化とはいったん感染したウイルスが病原性を発揮せず常在しており,免疫力低下や局所刺激などによって膝神経節で神経炎を起こすことである.さらにこの部位の顔面神経管は直径1mmほどの骨性空間であることから,炎症腫脹によってさらに顔面神経や栄養血管は絞扼障害される(図1)3,4).栄養血管閉鎖による血行不全はさらに腫脹を増悪し,絞扼障害はますます進行し悪循環が成立する.臨床的には発症1日目の顔面神経麻痺症状は軽症であるが,2,3日目と症状は増悪していく.

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Q1 がん患者になぜリハビリテーションが必要なのか?

 がんは日本人の死亡原因の第1位であり,年々増加傾向にある.わが国では疾病対策上の最重要課題として対策が進められ,現在では集学的がん治療により,少なくともがん患者の半数以上が治るようになった.がんの治療を終えた,あるいは治療を受けつつあるがん生存者は2003年には298万人であったが,2015年には533万人に達すると予測されており(いわゆる“2015年問題”)1),がんが“不治の病”であった時代から“がんと共存”する時代になってきている.しかし,“がん難民”という言葉に代表されるように,治癒を目指した治療から生活の質(quality of life;QOL)を重視したサポーティブケアまで,切れ目のない支援をするといった点で,日本のがん医療はいまだ不十分なのが現状である.

 がん患者では,がん自体に対する不安は当然大きいが,がん自体による直接的な影響や手術・化学療法・放射線治療などの治療の過程において生じうる身体障害(表1)2)に対する不安も同じくらい大きいものである.がんの進行もしくは治療の過程で,認知障害,嚥下障害,発声障害,運動麻痺,筋力低下,拘縮,しびれや神経障害性疼痛,四肢長管骨や脊椎の病的骨折,上肢や下肢の浮腫などさまざまな機能障害が生じ,それらの障害によって基本動作や歩行,日常生活動作(activities of daily living;ADL)に制限を生じQOLの低下を来してしまう.これらの問題に対して,二次的障害を予防し,機能や生活能力の維持・改善を目的としてリハビリテーションを行うことは重要である.

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Q1 糖尿病患者のリハビリテーションは何をするのか?

 糖尿病患者をリハビリテーション科で診る場合には,大きく,①糖尿病に対する運動療法(インスリン感受性の改善など),②運動習慣の確立のための指導,③合併症対策,について,その症例に必要かどうか検討する(図1).

 本来は①の運動療法の効果を得るまでには6~8週間を要するが,②のためには,口頭指導のみでなく,運動強度などを体感するために短期間でも実際の運動療法(①)を実施したほうが継続率は高い1)

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Q1 腎臓(透析)リハビリテーションとは?

 腎臓(透析)リハビリテーションという分野はまだ新しい概念であり,十分な普及には至っていない.ところが,現在,毎年約1万人ずつ透析患者は増え続けており総計30万人弱の患者が透析を受けている.そのなかでリハビリテーションを受けたことのある患者は少なく,自立している患者は約45%であり,大きな社会問題となっている.透析患者のほとんどが全身にわたる廃用症候群に陥っていると言っても過言ではない.また,日本全体がそうであるように透析患者も高齢化(導入患者も高齢化)してきており,加齢による変化だけではなく,重複障害をもった患者も増加の一途を辿っている.そのうえ,透析患者特有の病態もあり,完全なリハビリテーションの体系が確立されているわけではない.

 腎臓リハビリテーションは運動療法や物理療法などだけではなく,栄養指導,食事指導,疾患指導なども同時に行う総合的な概念である.そこでは,患者側も十分な理解と行動を示さないと成功しない.いわゆる,インフォームド・コオペレーションである.

59.高齢者の転倒予防 大高 洋平
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Q1 高齢者における転倒・骨折の実態とは?

 本邦において,地域在住高齢者は,1年間に20%前後が転倒を経験するとされ,女性のほうが男性より若干高率である(表1)1,2).一方,海外の高齢者が年間に転倒を経験する割合は20~80%3)と報告によりばらつきがあるが,一般には,65歳以上の高齢者の3人に1人が1年間に1回以上転倒するとされる4,5).したがって,わが国は,海外に比べて転倒率が若干低いが,その理由は定かになっていない.このように人種や生活様式の違い,もしくは対象者の母集団,年齢層,転倒定義,前向きに精緻に調査しているか否かなどの調査法の違いなどにより,転倒発生率は若干異なるが,高齢者においてはおおむね20~50%程度が年間に転倒を経験していると考えられる.

 転倒からどの程度,外傷や骨折が発生するかについては調査の困難さから正確なデータは不足しているが,わが国でも海外においても5~10%程度に骨折は発生するとされる4,6-9).そのうち,問題となることが多い大腿骨近位部骨折を生じるのは,全転倒のうち1~2%とされる4,6,9)

Ⅹ 社会制度など

60.ICF 堺 裕
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Q1 ICFは何を分類しているのか?

 ICFの正式名称は,International Classification of Functioning,Disability and Healthである.直訳すれば,生活機能(functioning),障害(disability)および健康(health)に関する国際分類となる.本邦では,国際生活機能分類と訳されている.ICFは,ある健康状態との関連において,健康状況と健康関連状況を分類するものである.健康状態とは,病気や傷害,さらに妊娠,加齢,ストレスなどの状況を包括する用語である.健康状況を分類する健康領域には,見ること,聞くこと,歩行,学習,記憶などが含まれ,健康関連状況を分類する健康関連領域には,交通,教育,社会的相互関係などが含まれている.ただし,ICFでは,健康領域と健康関連領域との間の明確な線引きはなされていない.これらの領域を網羅しているICFは,4つの構成要素からなる.すなわち,心身機能・身体構造,活動・参加,環境因子および個人因子である.

 心身機能・身体構造は,心身機能と身体構造の2つに分けて,別々に分類されている.心身機能は,人間の生体全体についての生理的機能のことであり,精神的または心理的機能も含まれている.身体構造とは,身体の解剖学的部分のことである.ICFでは,器官別の考え方はとられておらず,身体構造は器官とはみなされていない.心身機能と身体構造の分類は,対応させて使用できるようになっている.たとえば,「音声と発話の機能」には,「音声と発話の構造」が対応する.

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Q1 障害児者や高齢者のリハビリテーションに関連する法制度にはどんなものがあるか?

 直接的に関連する法制度としては,保険制度として,①医療保険,②介護保険,そのほかに,③労災保険や自賠責保険があり,社会福祉制度として,①障害者基本法,②発達障害者支援法,③障害者自立支援法などがある.また,間接的に関連する法制度としては,社会福祉事業法,成年後見制度,身体障害者補助犬法,バリアフリー新法などがある.

 わが国の社会保障制度は戦後50年,「救命・救貧」を旗印とした「保護」の枠組みのなかで展開されてきたが,その後の経済成長による生活水準の向上を背景に,社会連帯による「自立支援」を枠組みとする制度へと移行しつつある.すなわち,施設中心のサービスから地域・在宅サービスへ,障害種別によるパックサービスからケアマネージメントによる個別サービスへ,サービスの選択と受益者負担の拡大によるサービス水準の向上,少子高齢化社会でも継続可能なシステムの構築という方向である.これに伴って法制度の整備も進み,過去10年間をみても中央集権から地方分権への流れが加速,リハビリテーション関連法制度もまた,社会ニーズに対応した新法の施行とともに旧法の改正・統合が頻繁に行われてきた(表1).

62.障害者手帳 船越 政範
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Q1 障害者手帳にはどのような種類があるか?

 障害者手帳とは,広義には障害者に公的機関から発行される3種類の手帳(身体障害者手帳,療育手帳,精神障害者保健福祉手帳)の総称である.狭義には身体障害者手帳の身体を省略して障害者手帳と呼ばれることがある.また精神障害者保健福祉手帳の表紙に「障害者手帳」とのみ記載され,表紙を見ただけでは精神障害の手帳であることがわからないよう被交付者に配慮したものであることから,精神障害者保健福祉手帳を指す場合もある.

 公的機関から発行される障害者手帳であるが,身体障害者手帳については身体障害者福祉法に,精神障害者保健福祉手帳については精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に,それぞれ手帳発行に関する記述があるが,療育手帳に関しては知的障害者福祉法にその記述はない.

63.障害者の自立支援 生方 克之
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 近年の障害者福祉思想や当事者諸氏の運動などにより障害者を取り巻く社会環境は大きく変化してきた.地域で暮らすことを選択し,人生や生活を主体的に営む人たちが増えてきている.しかし,居住地の選択や暮らし方,働き方を自分の意思で決めるという健常者では当たり前のことを重度身体障害者が地域のなかで実現させるには依然多くのハードルがある.一方,地域で暮らすことを選択し,人生や生活を主体的に営む人たちが増えてきている.

 ここでは,20歳まで機能障害による活動や参加の制限を受けることなく人生を歩んできたAさんが,頸髄損傷による完全四肢麻痺となった後にアパートで一人暮らしを行いながら在宅就労をしている例から障害者の自立について解説する.

64.障害者の復職支援 松田 啓一
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Q1 前提とすべき法制度などにはどのようなものがあるか?

1.留意点

 ここでは,復職に関わる法令や制度を支援者と企業のコミュニケーションを媒介する手段の一つとして捉え,そこにどのような問題(誤解や混乱)が潜在しているかという視点から整理を行う.「媒介」のはずが「障壁」になっている場合も少なくないという認識からである.判例の動向なども含めた本来の法制度解説は法曹家に委ねられるべきなのは言うまでもないことであろう.

お知らせ

第139回国治研セミナー

全壊・流出の43施設は再開できず

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投稿規定

投稿および著作財産権譲渡承諾書

次号予告

編集後記
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 蜘蛛の糸からバイオリンの弦を作ることに成功したというニュースをみました.よく目を凝らしてみないと近眼の私には見えないようなあんな細い細い蜘蛛の糸を一万本以上より合わせて1本の弦を作ったとのことで,そのためになんと300匹以上もの蜘蛛を飼って,糸を集めたそうです.考えるだけで気の遠くなるような作業です.そうやってできた蜘蛛の糸の弦はナイロン製の弦の2倍の強度を持ち,そして最高級のガット弦よりも,さらに柔らかく,深い美しい音を出すそうです.

 さて,今月号は5年に一度の増大号です.今回の増大号ではリハビリテーション分野のすべてを網羅した64にわたる項目についてQ&A方式で解説しています.各項目の著者の先生方に挙げていただいたQの数はざっと300以上になります.そしてそれぞれ丁寧にかつとても分かりやすく解説いただいた64項目を,一冊の増大号としてまとめました.通常号よりずいぶん分厚く,蜘蛛の糸の弦のように丈夫な作りとなっております.そして,その中身は……蜘蛛の糸の弦の音色のように,満足していただけるものになっているのではないかと思っています.ぜひご堪能ください.

基本情報

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総合リハビリテーション
40巻5号 (2012年5月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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