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Q1 心臓リハビリテーションでは何をするのか?
心臓リハビリテーションとは,「心疾患患者の身体的,心理的,社会的機能を最適化し,基礎にある動脈硬化の進行を安定化・遅延・退縮させ,それにより罹病率と死亡率を低下させることをめざす協調的多面的介入である」と定義されている1).他の疾患リハビリテーションとの大きな違いは,運動療法を含めたリハビリテーションアプローチ自体が疾患治療効果をもつことである.運動療法を行うには,リハビリテーションスタッフは患者の病態を把握して運動のリスクを層別化する.それにより監視の程度を決定する(表12)).
運動療法の施行には運動処方を作成する.運動療法では,通常ウォーキングやエルゴメータなどの有酸素運動が行われる.運動強度は心肺運動負荷試験(cardio pulmonary exercise test;CPX)から算出された嫌気性代謝閾値(anaerobic threshold;AT)を基準にする.AT以上の運動では交感神経活性が亢進して合併症が増加するため,AT以下の運動が望まれる.CPXが施行できない場合は心拍処方(Karvonen法,図1)3)や自覚的運動強度(Borg指数,表2)を用いて運動療法を行う4).ただし心拍処方では,疾患によって係数を調整する必要がある.たとえば重症心不全ではk=0.2~0.4と低強度に設定する.またβ遮断薬を内服している場合には心拍応答が低下しているので注意が必要である.Borg指数では本人や環境条件にも左右されるので,心拍数と合わせて評価するとよい.通常,運動療法は週に3回から5回程度で,1回30~60分で行う.また併せてレジスタンストレーニングを行うことが推奨されている.レジスタンストレーニングは1セットあたり8~15回とし,1~3セット施行するのが基本である.心血管疾患に対しては1最大重量(1 repetition maximum;1RM)を用いて処方する場合,上肢運動は1RMの30~40%,下肢運動では50~60%の負荷と上肢で軽度の負荷を処方することが薦められる.心臓リハビリテーションにおいて,理学療法士の役割は心疾患患者の運動機能や生活機能を評価し,運動様式の特性を活用して患者の状態に合った運動療法を実施することである.特に低心機能や高齢心疾患患者では,インターバル・トレーニングを用いるなど身体機能に適した運動療法の実施が重要である5).
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