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Q1 脳卒中の装具療法の意義は?
脳卒中では時期により弛緩性麻痺あるいは痙性麻痺と病態が変わるため,それにより装具療法のアプローチの方法は異なってくる(表1)1).従来は,脳卒中片麻痺に対する装具療法の目的としては,「能力低下(disability)=活動の制限」に対しての使用が主体として考えられており,具体的な目的としては,下肢装具では,①立脚期の安定,②つま先離れを容易にする,③正常歩行パターンに近づける,④変形の予防,上肢装具では,①変形予防,②疼痛予防,③動揺関節の保持などが挙げられていた2).しかし近年,装具療法は,「能力低下(disability)=活動の制限」にとどまらず,「機能障害(impairment)=機能・構造の異常」に対する治療として急性期より積極的に用いられるようになってきており,その意義は拡大してきている.脳卒中治療ガイドライン2009において,急性期リハビリテーションはアルテプラーゼ静注療法(rt-PA)や頸動脈内膜剝離術と同様にグレードAとなっており,廃用症候群を予防し早期の日常生活動作(activities of daily living;ADL)向上と社会復帰を図るために,十分なリスク管理のもとにできるだけ発症早期から積極的なリハビリテーションを行うことが大事であるとされている.その内容には,摂食・嚥下訓練,セルフケア訓練,早期座位・立位の他に,装具を用いた早期歩行訓練が挙げられている.そのなかの装具療法については,「脳卒中片麻痺で内反尖足がある患者に,歩行の改善のために短下肢装具を用いることが勧められる(グレードB)」とされ,そのエビデンスとして,①支柱付き装具の使用により動的にバランスのよい歩行が可能となり,麻痺側立位時間が延長し,振り出しが対称性となり,麻痺足の安定性が増す.麻痺側の前脛骨筋の活動は減少したが,大腿四頭筋の活動は増加した(Ⅱb).②短下肢装具を使用すると,装具なしに比べ,立位バランスの左右対称性,ケイデンス(1分あたりの歩数)および歩行速度が改善し,床,カーペット上での歩行が改善した(Ⅱb).などが示されている3).
さらに最近では,ボツリヌス治療4)などの薬物療法効果を高めるための併用療法として装具療法が有用であることを述べたものもある5).これは注射後の筋弛緩による筋伸長状態を維持するために装具を利用するもので,場所や時間を選ばない方法として治療上のメリットは大きいと思われる.
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