雑誌文献を検索します。書籍を検索する際には「書籍検索」を選択してください。
すべて タイトル 著者 特集名 キーワード 検索
書誌情報 このジャーナル すべてのジャーナル 詳細検索 by 医中誌
Clinical Engineering CLINICAL CALCIUM 細胞工学(一部の論文のみ) 臨床栄養 化学療法の領域 薬局 Medical Technology 検査と技術 臨床検査 CANCER BOARD of the BREAST Cancer Board Square 胆膵Oncology Forum Pharma Medica 医学のあゆみ 医薬ジャーナル 診断と治療 生体の科学 総合診療 JIM 感染制御と予防衛生 感染対策ICTジャーナル 公衆衛生 BeyondER medicina 臨床雑誌内科 治療 J. of Clinical Rehabilitation The Japanese Journal ofRehabilitation Medicine 作業療法 作業療法ジャーナル 総合リハビリテーション 地域リハビリテーション 理学療法ジャーナル 理学療法と作業療法 感染と抗菌薬 アレルギー・免疫 JSES 内視鏡外科 関節外科 基礎と臨床 整形・災害外科 臨床雑誌整形外科 臨床整形外科 呼吸器ジャーナル Heart View 循環器ジャーナル 呼吸と循環 血液フロンティア INTESTINE THE GI FOREFRONT 胃と腸 消化器内視鏡 臨牀消化器内科 臨床泌尿器科 腎と骨代謝 腎と透析 臨牀透析 HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY 糖尿病診療マスター Brain and Nerve 脳と神経 神経研究の進歩 BRAIN and NERVE MD Frontier 脊椎脊髄ジャーナル Neurological Surgery 脳神経外科 言語聴覚研究 精神医学 Frontiers in Alcoholism 臨床放射線 画像診断 肝胆膵画像 消化器画像 臨床画像 JOHNS 形成外科 胸部外科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 手術 小児外科 日本内視鏡外科学会雑誌 臨床外科 臨床雑誌外科 LiSA LiSA別冊 麻酔 別冊整形外科 Fetal & Neonatal Medicine 産科と婦人科 産婦人科の実際 臨床婦人科産科 周産期医学 皮膚科の臨床 皮膚病診療 臨床皮膚科 臨床皮膚泌尿器科 チャイルドヘルス 小児科 小児科診療 小児内科 耳鼻咽喉科 Frontiers in Dry Eye Frontiers in Glaucoma 眼科 臨床眼科 Hospitalist 病院 INTENSIVIST エキスパートナース がん看護 コミュニティケア 看護学雑誌 看護管理 看護教育 看護研究 助産雑誌 助産婦雑誌 精神看護 日本看護協会機関誌「看護」 保健師ジャーナル 保健婦雑誌 訪問看護と介護 社会保険旬報 --------------------- 日本がん看護学会誌 日本看護医療学会雑誌 日本看護科学会誌 日本看護診断学会誌(看護診断) 日本看護倫理学会誌 日本災害看護学会誌 日本腎不全看護学会誌 日本糖尿病教育・看護学会誌 日本母子看護学会誌 日本老年看護学会誌(老年看護学) 検索
フリーワード 詳細検索 by 医中誌
眼不定愁訴患者のなかで機能的障害によるドライアイの存在が注目されてきている。眼心身症の立場からどの程度心理的要因が関与しているかを調べるため,眼心身症の代表といわれる緑内障(POAG, PACG)とドライアイに対して心理テストを施行した。
ドライアイのテスト陽性率が最も高く,PACG,POAGの順であった。ドライアイのなかでもシルマー値が高く,またBUT値が低いほうが,緑内障では視野障害が強いもの,若年者のほうにテスト陽性が多かった。従来心理的要因が深く関与するといわれていた緑内障よりドライアイがその傾向が強くみられ,発症または症状進行の一因として心理的要因ならびに自律神経機能不全の関与が示唆された。
5.5mm no holeレンズ,5.5×6.5mm 2holeレンズ,5×6mm no holeレンズ,2種のスリーピースシリコンレンズ移植群にper—imetric glare testを施行し,コントロール群(正常有水晶体眼)および6mm no hole群と比較してグレア障害の観点から小切開用眼内レンズの評価を行った。グレア障害の程度[degree]はコントロール群,6mm no hole群,シリコン群,5.5mm no hole群,楕円レンズ群の順に高度になり,範囲[extent]はコントロール群が最も狭く6mm no hole群とシリコン群が次に広く,楕円レンズ群,5.5mm no hole群の順にさらに広くなった。自覚的にグレアを訴えた症例はシリコン群ではなかったが,5.5mm no hole群と2種の楕円レンズ群では各1例ずつみられた。
偽水晶体眼に対して行った細隙灯顕微鏡写真撮影にさいして発生した,重篤な網膜光障害の2症例を報告した。両症例とも白内障手術後,良好な視力改善が得られていたが,細隙灯顕微鏡による徹照写真撮影直後より急激な視力障害を訴えた。眼底後極部には検眼鏡的に1乳頭径大の白色円形の変色斑が多数観察され,あたかも網膜光凝固斑のごとき所見を呈していた。症例1の右眼では変色斑が黄斑部領域に集中したため,高度の視力低下をきたした。症例1の左眼および症例2の右眼では変色斑が傍黄斑部領域にとどまり,視力への影響はごく軽微であった。事故が発生した背景には、撮影条件として,照明光を完全同軸で眼内に照射したこと,照射輝度が最大であったこと,しぼりが全開であったことなど,使用方法が必ずしも適正でなかったことが大きいと考えられた。使用したスリットランプの照明系についても検討の余地があると考えられた。
慢性期の片眼性の瘢痕性角結膜上皮疾患3症例(薬物アレルギー性角膜上皮障害,アルカリ化学傷ホルマリン化学傷)に対して健眼より角膜輪部を含めた結膜片を作製し(120°),患眼に移植する輪部自家角膜移植limbal autograft transplantationを施行した。3症例とも約3/4周にわたり角膜輪部が障害されていた。術後早期の7〜10日後に上皮化され,術後1か月から3か月後には炎症,角膜新生血管の消退があり,その後,角膜実質の混濁も軽減した。術後7〜10か月後の現在まで異常結膜の角膜への侵入はなく,移植片を作製した健眼角膜にも,角膜輪部には血管侵入など異常所見はない。本術式はこれらの疾患に有効な治療法と考えられた。
走査レーザー検眼鏡を用い,各種レーザー光により41眼の眼底病変を観察検討した。
セロファン黄斑症ではアルゴンレーザーで網膜前膜が白色に写り,その存在範囲が明瞭に認められた。黄斑円孔ではヘリウムネオンレーザーを使用することによって円孔の輪郭が明瞭となり,円孔周囲の網膜剥離の範囲も観察しえた。中心性漿液性網脈絡膜症においてはアルゴンレーザーで漿液性剥離の範囲が明瞭になり,ヘリウムネオンレーザーで網膜下沈着物が白色に写しだされ,色素上皮剥離部も観察された。
症例は38歳男性,頭部外傷受傷2週間後両眼の視覚異常を自覚した。頭部神経放射線学的検査を繰り返し受けるが異常なく,その後進行性に両眼の視力低下をきたし,両耳側半盲を指摘された。初診時矯正視力は右0.06,左0.5,眼底は両眼視神経乳頭周囲血管の拡張、蛇行,網膜神経線維層の腫脹がみられ,螢光眼底所見では視神経乳頭よりの螢光漏出は認めなかった。家族歴にはみられないものの経過よりレーベル病が疑われ,ミトコンドリアDNA解析よりレーベル病と診断された。頭部外傷による視交叉障害によりレーベル病が誘発されたことが示唆された。
40歳以下で発症し明らかな原因がなく,最終視力が0.1以下の両眼性視神経症25例の,性,発症年齢,家族歴,ゴールドマン定量視野につきretrospectiveに検討を行った。その結果,男性で(80%),明らかな視力低下で発症し(76%),慢性期に中心暗点を認める(72%)症例が多く含まれていた。これらすべてを満たす14例のうち少なくとも10例(71%)はレーベル視神経症であった。レーベル視神経症は全部で11例であり,うち4例は家族歴はなかったが,DNA診断により診断された。40歳以下の男性で急性または亜急性に発症し中心暗点をきたす両眼性の予後不良な視神経症をみた場合,レーベル視神経症を念頭におくべきであると思われた。
無虹彩症には周辺部角膜混濁が生じることがある。今回,その病態解明のため,無虹彩症患者5症例10眼を対象として,角膜病変の臨床的および組織学的検索を施行した。その結果,10眼すべての角膜周辺部に表層性血管新生を伴う上皮性の混濁が認められ,palisades of Vogtが角膜輪部全周にわたって消失していた。また,impres—sion cytologyによって、周辺部角膜上に杯細胞が存在していることが証明された。以上の結果は,無虹彩症の角膜病変が角膜上皮の幹細胞の消失によって生じる可能性を示唆している。
新しい角膜組織観察装置であるtandemscanning confocal microscope (以下TSCM)を使用し,ヒト正常角膜上皮中央部の最表層部と基底膜近傍を観察し,30名30眼の最表層細胞露出部と基底膜近傍の基底細胞の横断面の平均面積を算出した。従来in vivoでは観察のできなかった正常な基底細胞は最表層細胞より明らかに小型で,最表層細胞は624±109μm2,基底細胞は66±25μm2,両者の面積比は11±4.5であった。ヒト正常角膜上皮では基底細胞から最表層上皮への分化過程においてその横断面面積が約11倍に扁平化することが示された。
0.5%フルオレセイン水溶液を1時間浸潤させた高含水(A群),低含水ソフトコンタクトレンズ(B群)およびコラーゲンシールド(C群)を6名の男性に短時間装用させ,角膜,前房内フルオレセイン濃度の時間変化を,点眼(D群)の場合と比較した。3時間後の前房内濃度は,A群425.4±217.0ng/ml,B群193.2±129.3ng/ml,C群81.0±35.2ng/ml,D群3.3±1.7ng/mlでありB, C群間以外の各群で有意差(p<0.05)を認めた。角膜内濃度も同様であった。このように,短時間装用の場合フルオレセインのdrug deliv—ery systemとしては,高含水ソフトコンタクトレンズが最良であった。
全層角膜移植術の術前の母角膜の状態が手術予後に及ぼす影響について検討するため,1985年から1991年の間に当科で施行された全層角膜移植術症例のなかから,同一の提供者から得た2眼のうち1眼は周辺角膜の状態が良好な例(A群)に,他の1眼は角膜の状態が不良な例(B群)に移植された24組48眼を抽出して比較した。透明治癒率,視力改善率はA群がB群より有意に良好であり,拒絶反応の発生率はA群で有意に低かった。術後同時期に観察し得た角膜の内皮細胞数はB群で少ない傾向がみられた。ほぼ同一の状態と推定される同一提供者の角膜が移植された症例の間で術後成績を比較することによって,母角膜の状態が全層角膜移植術の予後に影響を及ぼすことが確認された。
最近4年間に経験した真菌性眼内炎の症例20例35眼を検討し,本症の経過と手術適応について考察した。治療はまず抗真菌剤の全身投与を行い,1〜2週間薬物に対する反応をみて,眼内炎が進行する場合には硝子体手術を行った。薬物治療を開始した時点の進行度により症例を4群に分け,治療効果を検討した。その結果,1期:滲出斑が網膜内に限局していたもの,および2期:羽毛状硝子体混濁があるが軽度で限局性,の症例では22眼中18眼,82%が薬物治療のみで治癒した。4眼は眼内炎が進行したため,硝子体手術を行って全例治癒し,術後視力も良好であった。3期:硝子体混濁が硝子体全体に波及し,眼底透見度が不良,および4期:高度の硝子体混濁のため眼底透見不能,の症例は全例薬物治療が無効であった。3期の症例は6眼全例に硝子体手術を行い,5眼が治癒したが,網膜変性のため術後視力は不良であった。4期では7眼中5眼に手術を行ったが,網膜壊死のため2眼しか治癒しなかった.以上より,本症では2期でさらに進行する場合,および3期の症例では,薬物治療とともに速やかに硝子体手術を行うのがよいと思われた。
経中心静脈高カロリー輸液を受けた49歳男性の両眼に内因性真菌性眼内炎が生じた。フルコナゾールの全身投与を行ったが右眼の硝子体混濁が改善しなかったので,硝子体切除術,水晶体嚢外摘出術および輪状締結術を施行した。手術のさいに採取した前房水,硝子体および水晶体核内のフルコナゾール濃度の血清内濃度に対する比はそれぞれ73.6%,69.5%および38.5%であり,同時に投与したセフトリアキソンに比べ眼内移行は良好であった。白色ウサギでも静注後のフルコナゾールの眼組織内濃度は無処置眼および硝子体切除眼のいずれにおいても高かった。臨床的にも実験的にもフルコナゾールの良好な眼内移行が確かめられた。
1987年1月から1991年12月までの間に行われた増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術のうち,術前から虹彩隅角新生血管のあった83眼について成績を調べた。
1)術前正常眼圧であれば増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術全体の成績と変わらないが,術前高眼圧であれば不良である。
2)術前正常眼圧であればPASがあっても術後眼圧コントロールに影響しない。
3)術前高眼圧でPAS indexが25%以下なら術後の眼圧はコントロールされるが,25%以上あればコントロール不良の可能性が高い。
4)虹彩隅角新生血管の消退を目的に新鮮な硝子体出血に対して行われた硝子体手術,眼内光凝固の成績は良好であった。
虹彩隅角新生血管を伴う増殖糖尿病網膜症に対してはPASが増加しないうちに早く手術を行うほうがよいと考えられる。
若年者で糖尿病網膜症を有し,10年以上の糖尿病罹病歴をもつインスリン依存型糖尿病の3症例に,インドシアニングリーン(ICG)螢光眼底造影を施行し,糖尿病性の変化と考えられる脈絡膜血管障害の所見を得た。症例1は22歳,男性。罹病歴12年。ICG螢光眼底造影では脈絡膜動脈造影開始から動静脈が完全に造影されるまで約5秒を要した。症例2は30歳,女性。罹病歴17年。症例3は22歳,女性。罹病歴12年。症例2,3では,ICG螢光眼底造影で造影後期に明るい螢光部を認めた。しかし,フルオレセイン螢光眼底造影では,同部位に螢光漏出はみられず,脈絡膜内のICG螢光漏出と考えられた。
切迫黄斑円孔22例23眼にレーザー光凝固を実施し,高率に円孔化を阻止することができた。黄斑嚢胞(stage 1B)の9眼では,視力改善が4眼,不変が5眼で,全例で0.4以上を維持できた。黄斑嚢胞に裂隙のある14眼(stage 2)では,12眼で不変,2眼で改善した。14眼中8眼では,最終的に0.2以上を維持した。新鮮黄斑円孔(stage3)の11眼では1眼以外,効果がなかった。
光凝固は590または610nmの波長で,嚢胞から200〜300μm離して,豆まき状または輪状に7〜10数発行った。術後1〜2週間で,フジツボ状に隆起した黄斑嚢胞は平坦化し,視力の改善が始まり,1か月後にはほぼ固定した。
以上の成績は,硝子体手術のそれに匹敵し,光凝固が切迫円孔の治療の有力な選択肢たりうることを示している。
厚生省特定疾患網膜脈絡膜萎縮症調査研究班と難病の疫学調査研究班の共同研究として実施された定型網膜色素変性の全国調査成績を示した。調査対象施設は全国の眼科標榜医療施設で,200床以上の病院が1,282施設,200床未満の病院が644施設である。調査方法は1990年4月1日から同年9月30日までに本症受診患者を登録する留置調査である。本症の報告患者数は6,545(男3,077,女3,439,不明29)で,200床以上の病院からの報告数は200床未満の病院からの報告数の約2.2倍であった(回収率37.7%)。男性では50歳台に,女性では60歳台にピークを示した。身体障害者手帳の所持者は報告患者の約1/4であった。年間の本症病院受療患者数は全国で最大約23,000人と推計された。
検眼鏡検査およびフルオレセイン螢光眼底造影にて脈絡膜新生血管の確認された20例23眼の新生血管病巣を,網膜色素上皮の柵機能と増殖組織の線維化の程度により4期に分類し,各期の高解像デジタルカメラによるインドシアニングリーン螢光眼底造影所見を検討した。網膜色素上皮下脈絡膜新生血管は初期には造影されないが,時間経過に伴い明るい螢光を示した。網膜色素上皮を越えて増殖した新生血管は初期に新生血管の輪郭が明瞭に写る場合が多く,後期には全例で色素漏出を伴う明るい螢光を示した。検眼鏡的に増殖組織の線維化が進んだものは螢光が弱くなり,瘢痕化した増殖組織は造影されなかった。この分類は光凝固治療上有用と思われた。
軽症糖尿病網膜症の螢光眼底像にコンピューター画像処理を行い,毛細血管瘤およびその前段階の病変の検出に有用かどうか検討した。IMAGEnet®を使用し,contrast enhancement処理を行い,強調された点状過螢光について検討した。その結果,1)不鮮明な螢光眼底写真では,過半数からオリジナルでは読影困難な毛細血管瘤を検出することが可能であった。2)鮮明な螢光眼底写真では,毛細血管瘤の前段階の病変を観察しやすくできることが確認できた。3)背景螢光の一部が強調されて,毛細血管瘤とまぎらわしい螢光を呈する場合もみられた。本結果について,今後の課題も含めて考察した。
66歳,男性のWeill-Marchesani症候群患者の水晶体を,光学顕微鏡,透過型電子顕微鏡走査型電子顕微鏡を用い組織病理学的に検討した。水晶体は赤道径6.0 mm,前後径4.8mmの小球状で,褐色にびまん性に混濁していた。線維構造はほぼ保持されており,皮質部では円弧状に,胎生核部では楕円状に走行していた。また皮質深層から核上部において硝子様変性が観察され,これは前極部から後極部まで帯状に存在し,赤道部で著明であった。皮質部と核部の線維走行の違いから,球状水晶体の発生は出生後であり,その前後の走行の変化が組織学的に線維に影響を与え,それが後年の皮質深層から核上部における変性の原因となったと考えられた。
20年以上糖尿病歴のある患者で白内障手術を受けた18例26眼について検討した。その結果20年以上糖尿病歴のある患者の白内障のほうが老人性白内障よりも早く手術する傾向があることがわかった。白内障に対し,嚢内摘出術,嚢外摘出術,IOL挿入術併用嚢外摘出術,超音波乳化吸引術などを行った。術後視力をみると,最終診察時まではほとんど変化がなかったのに対し,術後網膜症は術後12か月までは改善傾向を示すが,その後は悪化傾向を示した。視力と網膜症の長期予後は,嚢外摘出術またはIOL挿入術併用嚢外摘出術のほうが嚢内摘出術よりも良好であった。レーザー光凝固は手術前および術後6か月以内に行うのが望ましいと考えられた。
超音波乳化吸引術および眼内レンズ移植術後の角膜乱視の推移を,切開創の長さ7mm,6mmおよび4mmに分けて検討した。7mm群,6mm群,4mm群にはそれぞれ端々縫合を3糸,2糸,1糸おいた。7,6mm群にはPMMAレンズを,4mm群にはシリコンレンズを移植した。角膜乱視はオートケラトメーターを用いて,術前,術後1,2週,1,2,3,6か月に測定し,倍角座標法により解析した。その結果,術後乱視変化量,倍角座標水平成分による直乱視化の程度とも 4mm切開群が最小で,ばらつきも小さく,また術後2週以後乱視が安定していた。4mm切開による眼内レンズ移植術は,術後早期からの乱視軽減に有効な一法と考えられた。
眼科領域に発生したリンパ増殖性疾患28例について,その臨床像,診断について検討した。発生部位は,結膜12例,眼窩11例,涙腺部4例で,結膜から眼窩まで連続してみられたものが1例あり,病理組織学的診断は悪性リンパ腫9例,偽リンパ腫19例であった。さらに,初回に悪性リンパ腫と確診できなかった症例に遺伝子再構成の検索を行った。9例のうち5例が陽性で,すべて結膜病変で免疫グロブリン重鎖遺伝子の再構成を示した。そのうち3例はMALT lymphomaの組織学的特徴を示していた。
落屑症候群の診断は前眼部に灰白色のフケ物質を確認することで容易であるが,他にも前眼部に色素分散徴候をみることが多く,早期診断に利用されている。今回筆者らはこれらの徴候に着目し,7項目に分けスコア化を試み,本症候群82例164眼についてトータルスコアと角膜内皮細胞障害の程度を比較し検討を加えた。本症候群では,落屑物質を認める患眼のみならず,片眼性のその他眼においても正常コントロール群に比して有意に高いスコアを示した(p<0.05)。また両者とも正常コントロール群に比して有意に角膜内皮細胞障害を認めた(p<0.05)。色素分散徴候に注目することで本症候群の角膜内皮細胞障害を早期に検出することが可能と考えた。
45歳男性が左眼の霧視を主訴に来診。左眼に著しい硝子体混濁を認めた。全身的ステロイド療法は無効であった。硝子体吸引と硝子体手術を施行し,細胞診および免疫組織学的検索の結果よりClassV, B細胞型の悪性リンパ腫と診断された。眼底には明らかな異常所見はなかった。全身検索により眼以外には異常はみられず,眼原発悪性リンパ腫と診断した。化学療法と髄腔内投与後に予防的全脳照射を含めた放射線療法を施行し,良好な経過をたどっている。細胞診による早期診断ならびに化学療法と放射線療法の併用が有効と考えられた。
組織プラスミノーゲンアクチベータ(t-PA)は各種体液,臓器に存在し,運動負荷や精神的ストレスなど様々な生理的状況下で変動し,また血栓症などの血管閉塞,ショックや手術侵襲などの病態時にも変動する。筆者らはこれまでt-PAの活性部位を阻害しない部位で結合するモノクローナル抗体SP−322を用いてt-PA活性を測定し,各種疾患における線溶動態の意義を検討してきた。
今回は原因不明のぶどう膜炎新鮮例を対象に血中t-PA活性,t-PA抗原,PAI−1抗原を測定し,基準値および中心性漿液性網脈絡膜症患者の値と比較検討した。その結果,ぶどう膜炎患者は基準対照に比べ,t-PA活性(P<0.05),t-PA抗原(p<0.005),PAI−1抗原(p<0.001)が有意に高値を示した。また中心性漿液[生網脈絡膜症患者に比べ,t-PA活性(P<0.01)は有意に高値,PAI−1抗原(p<0.05)は有意に低値を示した。このように血管炎を病態とするぶどう膜炎患者の t-PAおよびPAI−1に認められる血中線溶動態はICSC患者とは異なり,凝固線溶系バランスの関連においても異なる疾患群であることが考えられた。
確定診断された眼サルコイドーシス(サ症)患者47例とコントロール50例につき,血清アデノシンディアミナーゼ(ADA)活性,β2マイクログロブリン(β2—MG)とアンジオテンシン変換酵素(ACE)活性を測定した。いずれもコントロールに比べ有意に高値を示した。ADA値は再燃期,発症期に高値を示し,β2—MG値は再燃期に高値を示した。ADA,β2—MGとACE値の間にはおのおの有意な正の相関がみられた。ADA値と眼症状との関係では,前房内浮遊細胞,豚脂様角膜後面沈着物,虹彩結節のみられた症例に有意に高値を示した。
眼サ症の活動性の経過を追うのにはACEだけでなく,ADAやβ2—MGの測定が有用であった。
前眼部と隅角の新しい検査法の開発を目的として,走査型レーザー検眼鏡(SLO)による観察と螢光造影を行った。ローデンシュトック社製のSLOに,前眼部観察用のアタッチメントを取り付け,アルゴンレーザーと赤外レーザーで観察した。隅角の観察にはゴールドマン型隅角鏡を装着した。隅角の血管造影にフルオレセインナトリウムおよびインドシアニングリーンを用い,新生血管の血流動態が観察できた。SLOの特長を隅角撮影に生かすことができ,画角が広い鮮明な画像が得られた。隅角の造影で,肉眼での細隙灯顕微鏡検査ではみえない新生血管が検出でき、ビデオ記録することで動的な観察と解析が容易にできた。フルオレセインナトリウムとインドシアニングリーンでは造影所見が異なり,隅角の新生血管の検出とその血流動態の解析に有用であった。
緒言 今回筆者らは,小児における眼窩腫瘍の診断と経過観察に超音波検査が非常に有用であったのでここに報告する。
緒言 色素性乾皮症(xeroderma pigmentosum,以下XP)は,常染色体劣性遺伝を示す皮膚色素異常症で1),幼児期に身体露出部に日光紅斑を生じ,種々の悪性腫瘍を合併するため,生命予後の悪い疾患といわれている。出生時は正常皮膚を有するが,1〜2年で皮膚日光照射部位に紅斑,水疱を生じ,特に顔面に好発するため,特異な顔貌を呈する。眼科的にも前眼部に多彩な変化が生じ,その他に神経症状の出現する例もあり,症状は多岐にわたる。生命予後が悪いため,本邦での長期生存例はきわめて稀であるが,42歳で当院を初診し,15年間にわたり経過観察を行い,眼瞼周囲に悪性腫瘍を併発した例を経験したので報告する。
緒言 多胎児は低出生体重児として出生することが多く,単胎と比較し周産期死亡率や新生児期の合併症頻度が高い。そして早産のSmall-for-dates (以下SFD)や出生順第2子の予後は必ずしもよくない。一方,多胎児の未熟児網膜症(以下ROP)に関するこれまでの報告1,2)では単胎との間に発症率の差はないとされるが,多数例での検討はまだない。そこで今回筆者らは多胎児80組に対してROP発症状況に関する統計的検討を試みた。また,双胎は2児の在胎週数が一致するという特殊性から,2児間でROPの発症に差がある組を選ぶことにより,在胎週数という最大の発症因子の影響を除外して発症群(進行群)と非発症群(非進行群)における他の発症因子の差を検討した。
緒言 全身性疾患であるサルコイドーシスは高頻度に眼病変を発症することが知られている。しかし,中枢神経系病変を合併することは3.5〜5%と比較的稀である。今回筆者らは両眼のぶどう膜炎で発症し,その後尿崩症を合併したサルコイドーシスの1症例を経験し,約8年間にわたり経過を観察したのでここに報告する。
緒言 Pellucid marginal corneal degeneration(PMCD)は,角膜下方の前方突出と周辺部の菲薄化および強度の不正乱視を特徴とする非炎症性の疾患である1)。筆者らは以前に本疾患ではスペキュラーマイクロスコープで観察される同心円状の皺状陰影が認められないこと,内皮細胞に大小不同を認めることを報告した2)。今回筆者らは本疾患の1例を経験し,角膜内皮の観察を行ったので報告する。
緒言 地図状脈絡膜炎は,何らかの炎症機転に伴う脈絡膜毛細血管板の急性循環障害によるとされており1),その特徴的な検眼鏡的ならびに螢光眼底造影所見から,診断を下すのは比較的容易である。しかし,その病因に関してはいまだ不明な点が多く,有効な治療法も確立されていないのが現状である。今回筆者らは地図状脈絡膜炎の1症例に対し,診断的治療を目的としてイソニアジド,リファンピシンの2剤併用による抗結核剤の投与を行い眼底所見の改善をみたので報告する。
緒言 Human T-lymphotropic virus type Ⅰ(以下HTLV-Ⅰ)はadult T cell leukemia (以下ATL)の原因ウイルスである。近年,HTLV-Ⅰ associated myelopathy (以下HAM)やHTLV-Ⅰキャリアーにもぶどう膜炎がみられることがありHTLV-Ⅰ as—sociated uveitis (以下HAU)とよばれている。今回,感染濃厚地域に居住歴のない北海道在住のキャリアーのHAUを2例経験したので報告する。
緒言 上輪部角結膜炎(以下SLK)は,Theodore1)によって命名された上輪部の慢性角化性病変である。SLKの原因は明らかではないが,上輪部球結膜に限局した肥厚・充血がみられること,また瞬目のさいに病変部と擦れ合う上眼瞼結膜には乳頭肥大・充血がみられることなどから,SLKの増悪には機械的な摩擦が関与していると考えられている。今回,その機械的摩擦の軽減を目的として,ソフトコンタクトレンズ連続装用による治療を試みたので報告する。
緒言 ぶどう膜炎を伴う消化器疾患には,潰瘍性大腸炎,ベーチェット病,クローン病などが報告されている。今回筆者らはぶどう膜炎を合併し,かつステロイド治療に対し抵抗性で,食事療法を併用することにより消化器症状とともに眼症状も消失した症例を経験したので報告する。
緒言 Cornea guttata (滴状角膜)は,Fuchs角膜内皮変性症に特徴的な所見として知られているが,同様の所見が単純ヘルペス,水痘帯状ヘルペスなどのウイルス性角膜炎,前眼部炎症のさいにも認められることが報告され1〜4),pseudoguttataとよばれている。しかし,実質型角膜ヘルペスにおけるpseudoguttataについては報告も少なく,その意義も不明である。今回,筆者らは,本症患者の内皮細胞をスペキュラーマイクロスコープで観察し,多数例にpseudoguttataを認めたので報告する。
緒言 アトピー性皮膚炎は近年増加しつつある疾患であり,網膜剥離合併例の報告も多いが,その裂孔位置は不明かまたは鋸状縁断裂,毛様体扁平部裂孔など網膜最周辺部にあることが一般的で,深部裂孔を有する報告は少ない。今回アトピー性皮膚炎に深部裂孔を有する網膜剥離を手術する機会を得たので報告する。
緒言 水痘—帯状ヘルペスウィルス(varicella-zos—ter virus,以下VZV)による眼合併症として,結膜炎,角膜炎,虹彩毛様体炎が一般的に報告されているが,桐沢型ぶどう膜炎,急性網膜壊死症候群,眼筋麻痺,視神経炎の報告はきわめて少ない。水痘に視神経炎が合併した報告は国外では多数報告されているが1,2),本邦においてはその報告は散見されるのみである3〜5)。今回筆者らは水痘に合併した球後視神経炎を経験し,治療により良好な視力回復を得たのでここに報告する。
緒言 画像処理技術の進歩に伴い,プラチド画像から角膜各部の曲率半径,角膜屈折力を演算し,視覚的に理解しやすいようなカラーマッピングを行う装置が開発され1)普及しつつある。しかし,これらの装置では既存のプラチド写真からの解析は不可能であり,画像情報量がきわめて大きいため,保存する場合に記憶媒体を多量に消費するなどの問題がある。
今回カラーマッピングをより一般的なものとするため,既存のプラチド写真からカラーマッピングを行う画像処理システム(NP−100)を開発し,さらにプラチド写真の画像圧縮伸張プログラムを開発したので報告する。
緒言 ダナゾール(ボンゾール®)は子宮内膜症の治療剤として広く用いられている。今回筆者らは,ダナゾール使用中に脳静脈洞血栓症に伴いうっ血乳頭を示した症例を経験した。本邦における報告は少なく,若干の文献的考察を加え報告する。
緒言 硝子体切除後に生じる水晶体脱臼はきわめて稀な合併症1)といわれている。今回,筆者らは硝子体手術後に発生した亜脱臼水晶体が原因と考えられる鋸状縁断裂による網膜剥離を経験したので報告する。
緒言 脳動脈瘤の多くは,破裂してくも膜下出血を起こすまで無症状である。しかし,稀に非破裂動脈瘤による視神経圧迫症状で発症するものがある。今回筆者らは,視力・視野障害で発症し画像診断にて非破裂脳動脈瘤が発見され,破裂前にクリッピング手術を行い得た2症例を経験したので報告する。
緒言 大量の内境界膜下出血および網膜下出血をきたした網膜細動脈瘤に対し,硝子体手術で内境界膜下血腫除去術を施行し良好な結果を得た症例を報告し,観血的治療の有効性について考察した。
緒言 Graves病に伴う dysthyroid optic neur—opathy (DON)に対する治療としては,第1選択としてsteroidの投与が行われるが,steroidが無効な場合にどのような治療を行うべきかいまだ確立されていない。今回,CT上著明な眼筋の肥大を伴い,視力低下をきたした症例にsteroid pulseが無効であったため,血漿交換を行い,その後,再度,steroid pulseを施行し視力の改善を示した症例を経験したので報告する。
緒言 毛様網膜動脈閉塞症や網膜中心静脈閉塞症の単独発症例は臨床上ときどきみられるが,両者の合併した報告は少なく,その発症機序は明確ではない。今回筆者らは網膜中心静脈閉塞症に毛様網膜動脈閉塞を合併した症例を経験したので,若干の考察を加え報告する。
緒言 小児の穿孔性眼外傷は成人に比べ様々な特殊性が述べられている。視機能が発達途上であるのみならず,受傷後の線維増殖は成人に比べ強い。また,診察や治療に対する非協力性なども問題となることが多い1)。今回,筆者らは,その原因,経過,予後などについて臨床的に検討した。
緒言 サイトメガロウイルス(以下CMV)網膜炎の治療薬であるガンシクロビルは白血球減少などの重篤な副作用のため,長期にわたる投与には限界がある1)。今回,抗CMVヒトモノクローナル抗体(TI−23,帝人,東京)を使用する機会を得たのでその効果について報告する。
投与方法は点滴静注で初期投与を3日間連続200mg/日,維持投与を初期投与初日より1週毎120mg/日×4回とし,その後も必要がある場合は,維持投与を続けた。
緒言 Blow-out fractureの機序は急激な力が眼球に加わり,眼窩内圧が上昇するため眼窩壁の骨折が生じると考えられてきたが,blow-in fractureなどの疾患概念から眼窩自体に力が加わり,歪みを生じるために骨折をきたすという骨座屈説も有力である。今回,歯科診療台という特殊な受傷機転をきたした1例で,眼窩内圧の上昇よりも,骨座屈説が原因と考えられた症例を報告する。
緒言 人間ドックの眼底検査で黄斑部異常を指摘された36歳男性を発端者とし,4歳の次男にも同様の黄斑部領域の異常を認めた特異な眼底所見につき黄斑ジストロフィの鑑別診断の観点から考察を加えたので報告する。
緒言 アトピー性皮膚炎(AD)の眼合併症については,これまで網膜剥離,白内障,虹彩毛様体炎,円錐角膜など数多く報告されている1,2)。なかでも網膜剥離は眼瞼,眼球の掻痒に対する叩打癖が強く影響しているといわれている1)が,その病因や眼局所での病態についてはいまだ十分には解明されていない。今回当科で経験したADに伴う網膜剥離手術症例につき,眼所見,術式,皮膚所見,血清IgE値,特異血清IgE値(RAST)および前房水中IgEを検査し若干の知見を得たので報告する。
緒言 小口病1)は,先天性停止性夜盲と,特異な金箔様眼底を特徴とする遺伝性疾患である。暗順応障害を示すが,明所視機能としての視力,視野,色覚などには異常がない。今回筆者らは,色覚異常を伴う小口病の同胞例を経験したので報告する。
緒言 網膜色素線条はブルッフ膜の離断を本態とし1),新生血管黄斑症を発症することが知られている2〜4)。今回筆者らは,網膜色素線条にみられた新生血管黄斑症3例5眼を経験し,それらに対してレーザー光凝固術を施行した。これまで本症に対する光凝固療法は,ブルッフ膜の脆弱性が基本にあるため賛否両論があり2〜4),結論は出ていない。しかし,放置することによる予後不良,患者の視力低下,変視症の訴えを考慮して,筆者らはレーザー光凝固術を施行した。その結果,予後良好な症例と予後不良な症例がみられた。そこで,その臨床経過を検討し,若干の考察を加え報告する。
緒言 コーツ病は網膜血管の拡張,血管瘤形成と,透過性亢進による網膜下滲出物貯留を特徴とし,若年男子に好発する疾患である。本疾患は,ある種の網膜の病的状態における二次的反応として近年はとらえられており,病因のひとつとして,遺伝性網膜疾患が注目されている。今回筆者らは,両親に網膜細動脈蛇行を認め,黄斑部の網膜分離症を合併した両眼性のコーツ病の1例を経験したので報告する。
緒言 Depivalyl epinephrine (以下,DPE)は,1.25%エピネフリン(以下EP)に比べて副作用が少なく,同等以上の眼圧下降効果を有する薬剤として,その有用性が報告されている1,2)。しかしながら,日常臨床の場での多数例を対象とした両薬剤の比較は十分には行われていない。今回,緑内障患者を対象としEP使用例のEPをDPEに変更し,またEP未使用例にDPEを追加し,EPとDPEの効果比較,ならびにDPE0.04%と0.1%との効果比較を行った。
緒言 レーベル粟粒血管腫症は,男性の片眼に好発し網膜における毛細血管瘤の多発,周辺部血管の拡張および閉塞,輪状白斑に代表される滲出斑を特徴とする疾患であり,コーツ病の軽症型あるいは初期像と考えるのが一般的である1)。今回筆者らは,レーベル粟粒血管腫症と思われる症例を経験し,ダイレーザーによる網膜光凝固を行ったので,その臨床経過について報告する。
緒言 低眼圧緑内障(以下LTG)は本邦での有病率が2%と報告されており1),その自然経過を解析し,予後に関与する因子を検討することは,発症機序および治療方針決定に関して非常に重要と考えられる。しかし,その進行,予後に関してはいまだ不明な点が多い。視野悪化因子としては様々な要因が考えられ,その解析には多変量解析が必須となる。今回筆者らは,多変量解析型生命表分析(Coxの比例ハザードモデル)2)によりLTGの視野悪化因子に対し検討を行ったので報告する。
緒言 複数回手術後・無(偽)水晶体眼などの難治性閉塞隅角緑内障に対しては,種々の濾過手術が行われているが,前房形成不全や悪性緑内障などの術後合併症や奏効率の低さが問題とされる。最近では隅角の開放を目的とした隅角癒着解離術1,2)(以下GSL)も行われるが,その成績もまだ満足できるものではない。その原因としてGSLによってPASが解離できたとしても線維柱帯には依然としてある程度の器質的病変が存在する可能性があげられる。以上より線維柱帯からシュレム氏管への房水流出路再建を目的とした操作をGSLに加えることでその成績をさらに改善できるのではないかと期待して,筆者らはGSL後に,隅角切開刀による前房内からの線維柱帯切開術(trabeculotomy ab interno,以下TAI)の併用を試み,その術後成績や問題点を検討した。
緒言 鈍的眼外傷による水晶体脱臼については,日常臨床で遭遇する機会は少なくない。今回筆者らは,眼外傷後のMRI検査にて眼内に脱臼水晶体の存在が示唆されたにもかかわらず,硝子体手術時に水晶体は確認されず,受傷時の衝撃により水晶体が眼外に脱出したものと考えられた興味ある症例を経験したので報告する。
緒言 後房レンズ(以下PCL)挿入術後の後嚢混濁は手術によって改善した視機能を再び不良にする重大な合併症であり,混濁の進行に関与する因子について多くの報告1〜3)がされている。今回は後嚢混濁の進行に関与すると思われる因子を患者側と術者側に分け,その影響度について多変量解析を用いて検討した。
緒言 近年自己閉鎖創白内障手術が行われるようになり術後炎症,術後乱視の軽減,術後視力の早期安定などよい結果が報告されているが,他方,角膜内皮障害や,操作性の低下などの問題が残されている。また,術後角膜乱視を左右する因子として,強角膜切開創の位置が考えられる。今回筆者らは1991年Siepserが報告したradial transverse incision1)(以下RTI)を用いて超音波乳化吸引術(以下PEA)によるsilicone lens移植自己閉鎖創白内障手術を行った。その方法を示すとともに,術後3か月までの角膜乱視量およびそのばらつきと角膜形状変化を検討した。
緒言 今日,視覚の質を評価するための新しい技術としてコントラスト感度(以下CSF)が注言されている1)。今回,Vision社製CSV−1000E (以下CSV)を用い,白内障眼におけるランドルト環視力とCSFとの比較および混濁部位別によるCSFの違いを検討したので報告する。
緒言 真菌性眼内炎は,経中心静脈高カロリー輸液(以下IVH)に伴った抗生物質や免疫抑制剤の長期大量投与患者において,近年その報告が増加している1,2)。それらの症例は高齢者や重篤な全身疾患を患った患者に多く発生しており,健康な若年者では稀である。このたび筆者らは交通事故で遷延性意識障害を呈した18歳の男性で,IVHの既往なく,陰部真菌症に関連したと思われる両眼性の真菌性眼内炎症例を経験したのでその臨床像を報告する。
緒言 近年,硝子体手術件数が増えるにつれ,広範囲あるいは強固な増殖膜を伴う症例に遭遇することが多くなってきている。増殖性硝子体網膜症や増殖性糖尿病網膜症の硝子体手術において増殖膜をより容易に除去,摘出する言的で筆者らは酵素を用いての硝子体手術の可能性について検討してきた。有色家兎眼を用いた本酵素の眼内への影響については,第96回日本眼科学会において報告した。今回,筆者らは増殖性硝子体網膜症および増殖性糖尿病網膜症患者より採取した増殖膜に本酵素をin vitroで作用させ,その病理組織学的変化を光顕,電顕的に観察し,若干の知見を得たので報告する。
緒言 硝子体手術施行時の後部硝子体剥離の有無は手術の難易度において重要な要因である。網膜や眼内組織に影響を与えずに硝子体を液化せしめることにより,硝子体手術はより容易になり,手術成績も向上するものと思われる。
筆者らは最終的に臨床応用を目的として,成熟有色家兎の有硝子体腔中に本酵素を注入し,硝子体の液化実験を行い,眼内組織に対する影響,本酵素の安全有効濃度について,光学顕微鏡および電子顕微鏡にて観察し,若干の知見を得たので報告する。
緒言 リポプロテイン(a)[以下Lp (a)]は,1963年Berg1)により低比重リポ蛋白(LDL)の遺伝的変異として発見されて以来,食餌や年齢の影響を受けない動脈硬化の独立した危険因子として注目されてきている。虚血性心疾患,脳血管障害および糖尿病などとの関係については多くの研究が行われているが,眼科領域での報告は非常に少ない。今回,筆者らは動脈硬化が発生に関与するといわれている網脈静脈閉塞症(以下RVO)とLp (a)との相関について検討した。
緒言 成人発症糖尿病に合併する網膜症は,黄斑症を伴って視力低下することが多いとされる。今回筆者らは,経過観察中,黄斑部に融合性硬性白斑を生じその進行に伴い著しい視力低下をきたした糖尿病網膜症例と,観察開始時より認めた黄斑部の融合性硬性白斑が進行した糖尿病網膜症例について,全身所見,眼所見,螢光眼底所見を検討した。
緒言 糖尿病網膜症における網膜静脈の拡張に関しては古くより注目され,進行性で悪性化する網膜症の重要な網膜所見として知られている。筆者らは網膜症の進展,増悪化に伴い静脈の血管径がどのように変化しているのかコンピュターを用いた画像解析法により検討した。
緒言 本邦における糖尿病性黄斑症に対する光凝固はいまだ明確な適応基準はなく,ことに視力が良好な例においても視力維持の目的で積極的に行われてはいない現状である。米国のEarly treatment of diabetic retinopathy study (ETDRS)1)はすでに黄斑症のなかでもclinically significant macular edema (CSME)に対する光凝固は視力の維持に有用であると報告している。しかし本邦では同様な症例を対象とした報告例2,3)は少なく,その結果もまちまちである。今回適応基準を明確にする目的で,CSMEを無作為に対象とした光凝固を行い視力の改善,維持に関する調査,検討を行った。
緒言 近年裂孔原性網膜剥離の治療に気体注入を用いる症例が多く報告されている1,2)。筆者らも,強膜内陥法の術後に生じる残存剥離やバックル上の fish—mouth現象に対し,網膜の進展と裂孔閉鎖不全をなくす目的で気体注入を術中に併用している。しかし術後に高眼圧,硝子体混濁,黄斑上膜形成および新裂孔などの合併症を生じてきている1)。今回筆者らはこの術式および合併症に対し検討を加えた。
緒言 近年,老人性白内障のほとんどに眼内レンズ(IOL)が挿入されるようになった。その結果,眼内レンズ挿入眼の網膜剥離(IOL-RD)が増加している1)。近年の白内障手術法の進歩は言をみはるものがあるが,はたして白内障手術後の網膜剥離は減少しているのであろうか。このたびIOL-RDの発生率,臨床的特徴,予防・治療上の問題点を明らかにすべく,当科で経験したIOL-RDの症例をretrospectiveに調査検討した。
緒言 筆者らは,間接性脈絡膜破裂(以下IDCR)の4例4眼に対して,インドシアニングリーン赤外螢光眼底造影法(以下IA)と,フルオレセイン螢光眼底造影法(以下FA)の比較検討を行い,4つの特徴,すなわち,1) IDCRのFAとIAは両者とも低螢光を示したが,病巣はFAで推定される範囲よりIAのほうが長さ,幅ともに大きいことが多い,2) FAとIAでは過螢光部位は異なる所見としてみられた,3) IAでは脈絡膜新生血管の早期発見の可能性がある,4)FAとIAの比較により,病態を立体的にとらえることができる,と報告した1)。
今回筆者らは,眼部鈍的外傷後にIDCRを生じた46歳の男性に,受傷後296日目と462日目にIAおよびFAを施行し,FA所見と同様にIA所見においても低螢光部位の中央に過螢光部位がみられた症例を経験したので報告する。
緒言 脈絡膜破裂は,外傷によって生じる脈絡膜,ブルッフ膜そして網膜色素上皮の断裂であるとして,1854年von Graefeにより初めて報告された1)。脈絡膜破裂は直接性と間接性とに分けられ,前者の病変は鋸状縁付近の外力の加わった部位に,後者の病変は眼球後部に多くみられる。今回筆者らは,間接性脈絡膜破裂に対し,螢光眼底造影(以下FA)およびインドシアニングリーンを用いた赤外螢光眼底造影(以下IA)を施行し,比較検討したので報告する。
緒言 中心性滲出性脈絡網膜炎(Rieger型)は,黄斑部に1乳頭径以下の,脈絡膜由来の新生血管と滲出性変化を伴う,網膜下の隆起性病変を認める疾患とされている1)。その発症原因に関しては,従来より脈絡膜局所の循環障害説2),炎症説3)がいわれているが確定されていない。そこで脈絡膜血管造影に有用なインドシアニングリーン(以下ICG)螢光眼底造影検査を用いて,中心性滲出性脈絡網膜炎における病巣の所見と病勢につき検討を行った。
緒言 Acute macular neuroretinopathy (以下AMN)は1975年,BosおよびDeutmanにより初めて報告され1),今日に至るまでの報告は28例,本邦では3例という稀な疾患である。本疾患は,突然の傍中心暗点の出現,軽度の視力障害で発症し,検眼鏡的には傍中心暗点に対応した赤褐色病変が認められるが螢光眼底像に異常を認めないことを特徴とする。
今回筆者らは,本症の1例を経験し,そのelectro—retinogram (ERG)所見より網膜の障害が従来考えられていたよりも広範囲に存在する結果が得られたので,ここに報告する。
緒言 老人性円板状黄斑変性症の,いわゆる網膜下血腫型は,硝子体出血を伴って増悪することがある。当教室では,このような症例には,適応を選んで硝子体手術を施行している1,2)。さらに,術中,網膜下血腫除去後に,網膜下に明らかな塊状の線維血管病巣を認めた場合には,病巣部の剥離網膜を完全に復位させ出血の再発を防止する言的で,これを除去している1,2)。本稿では,手術時に得られた,本疾患の網膜下線維血管病巣の病理組織学的検索の結果について報告する。
緒言 新生血管黄斑症は,黄斑部に脈絡膜由来の新生血管を生じ視力低下を起こす一群の疾患である1〜3)。今回筆者らは,当科における新生血管黄斑症について検討を行ったのでその結果を報告する。
緒言 瘢痕期未熟児網膜症(cicatricial retinopa—thy of prematurity, CROP)の周辺部螢光眼底所見として,無血管帯,血管の多分枝のほか,網膜血管から螢光色素が漏出する症例の報告があるが,多数例についての報告はない。今回筆者らは,CROPの多数例に螢光眼底検査を行い,周辺部網膜血管の透過性亢進について検討した。
緒言 未熟児網膜症に対する光凝固は,アルゴンレーザーの利用により格段の進歩を遂げたが,なお一般臨床家が容易に施行できるものではない。さきに筆者らは双眼倒像鏡アタッチメント付き半導体レーザー網膜光凝固装置を用い,未熟児においても比較的安全にかつ容易に網膜を光凝固でき,良好な結果が得られたことを報告した。今回,さらに双眼倒像鏡アタッチメント付きの半導体レーザー光凝固装置とアルゴンレーザー光凝固装置を未熟児網膜症の治療に応用する機会を得ることができ,その結果を比較検討した。
緒言 コーツ病は一般に若年者に好発し,その80%以上が片眼性と報告されている1,2)。筆者らは成人男性の両眼に隆起性病変を有していたコーツ病を経験した。その臨床所見と治療経過を報告する。
緒言 クリプトコッカスは,菌糸をもたない酵母様の真菌であり,ハトの糞など外界にひろく存在する。病原性は低いが,免疫機能の低下した人に日和見的に呼吸器に感染することがある1)。中枢神経系に親和性が強く,真菌性髄膜炎の原因として最も多いとされる。髄膜炎に眼内感染が続発することがあるが,わが国での報告は少ない2,3)。
筆者らは,紅斑性狼瘡(SLE)に髄膜炎が合併し,さらに,両眼の乳頭浮腫と網脈絡膜炎を伴う典型的な眼クリプトコッカス症を経験した。
結膜の異形成dysplasiaとは,結膜上皮細胞が局部的に異常増殖し,細胞の形態や配列が乱れ,極性が不明瞭になるなどの異型像を示すものをいう。この状態が上皮の全層に及んだものを上皮内癌carcinoma in situと呼ぶ。異形成と上皮内癌は一括して結膜上皮内新形成conjunctival intraepithelial neoplasia (CIN)とも呼ばれ,扁平上皮癌の前癌状態とされている。
臨床的には,CINは中高齢者の角膜縁結膜,とくに瞼裂に一致した部位に隆起性の斑点として観察される(図1)。ときには角膜表面に及ぶ。外観はゼラチン様,あるいは乳頭腫様で,斑点の中に分岐し蛇行した多数の小血管がみられることがある(図2)。斑点に異角化dyskeratosisを伴う場合には,表面が白色に混濁するので,結膜の白斑leukoplakiaと呼ばれる。
近年,眼底カメラの光学系を利用して,人眼における網膜血流を測定しようという試みが,特に緑内障治療薬の影響などの面から注目を集めており,新たな技術の応用も盛んである。しかし,それぞれの手法には未だその測定原理上および測定技術上の問題があり,その結果をどの程度の信頼性をもって解釈してよいのか難しい一面がある。さらに,眼底カメラの光学系から得られた網膜血管内の血流量ないし網膜および脈絡膜毛細血管系の血流量の臨床的評価をどのようにすべきかという問題もあり,結果の解釈には,さらにいっそうの慎重を要するものと考えられる。
視路のうち,視索・外側膝状体・視放線・後頭葉視中枢を障害する疾患はそれぞれ特徴的な同名半盲を示し,周辺組織の障害による神経・内分泌症状を伴うなど神経眼科的にも全身的にも重要な意味をもつことが多い。しかしその疾患の原因,病巣,病態を明確に描出することは近年のCT・MRIの画像検査により初めて可能となった。
胞状に網膜が剥離するときの裂孔のタイプは,比較的大きめの弁状裂孔で赤道部かそれよりやや深い位置にあることが多い。したがって剥離が胞状でなくても網膜剥離手術としてはやさしくはなく,まして胞状に剥離したままでは困難である。経強膜的網膜剥離手術をするつもりなら胞状剥離をなるべく扁平にする工夫がいる。3つの方法を示してそれぞれ適応を考える。
医療関係者が患者さんの前で口にしてはいけない言葉があります。
外来ですと,「この病気は珍しい」という表現がまず該当します。患者心理として,興味本位で診られることを極端に嫌うからです。
網膜中心静脈閉塞に網膜中心動脈閉塞を併発した61歳の女性に対し,発症後6時間以内にニトログリセリン1mgとウロキナーゼ48万単位を内頸動脈へ動注した。翌日には螢光眼底造影により網膜循環の改善が認められ,視力も回復した。出血型網膜症への進行は認められなかった。本治療法は,頭蓋内血管の構築を確認したうえで、目的とする血管を選択的に再疎通させることが期待できるため,効果的な治療法であると考えた。
片眼にひょうたん型眼球を呈したAicardi症候群の1例を報告した。症例は生後6日の女児。右眼は小眼球で瞳孔膜遺残を伴っており、眼底は全網膜剥離の状態であった。左眼眼底には乳頭の拡大と陥凹が認められ,後極部に斑状の網脈絡膜病変が散在し,螢光眼底撮影ではwin—dow defectによる過螢光を呈した。MRI検査にて脳梁欠損を認め,右眼はひょうたん型を呈していた。これは乳頭周囲ぶどう腫によるものと考えられた。
自験例20例40眼および文献的考察を基に内因性真菌性眼内炎の病期分類を行った。従来いわれていた典型的な後極部の円形白色病変が出現する前に,前房内および硝子体中に微細な炎症性細胞の遊出がみられることがあり,これをⅠ期として分類することが早期発見にも大変有用と思われた。また硝子体中に限局性の混濁がみられる時期をⅢ期とし,これをaおよびbに分けたが,これは手術時期を考えるうえでこの時期が重要と考えたためである。
したがって本症は,Ⅰ期:前房内と硝子体中に炎症性細胞の遊出する時期
Ⅱ期:後極部に円形白色病変をみる時期
Ⅲ期a:上記に加えて硝子体中に軽度の限局性の混濁をみる時期
Ⅲ期b:限局性の硝子体混濁が中等度以上になる時期
Ⅳ期:上記に加えて網膜剥離がある,または高度の硝子体混濁のため眼底が透見できない時期と分類するのがよいと考えた。
眼内レンズ(IOL)挿入術後の細菌性眼内炎6例の臨床経過を報告した。水晶体嚢外摘出術およびIOL挿入術術後の症例が5例,超音波水晶体吸引術術後の症例が1例であった。6例中起炎菌が検出されたのは2例で,そのうち1例の前房水からStaphylococcus epidermidisが,1例より硝子体切除術の硝子体サンプルから Sta—phylococcus aureusが培養された。発症時期が術後4日から7日で比較的急性の経過をとった3例のうち早期に硝子体切除術を行った2例は,視力予後良好であった。晩期に硝子体切除術を行った1例は視力予後不良であった。発症時期が術後10日から18日で比較的亜急性の経過をとった3例のうち弱毒菌が検出された症例では晩期に硝子体切除術を行ったが,視力予後良好であった。術後の炎症を無菌性眼内炎と考えステロイドを投与した症例では,視力予後が不良であった。IOL挿入術後の眼内炎では,臨床症状に加え発症時期をも考慮し,治療方針を選択すべきであると考えられた。
1980年から1991年9月までの11年9か月の間に,京大病院眼科黄斑外来にて観察されていた特発性黄斑円孔の患者11例12眼に対し,黄斑円孔周囲のhaloの全周およびその一部に対しダイレーザー光凝固を施行し、その後の視力変化を経過観察した。施行後8〜15か月経過観察したが,この間に2段階以上の視力改善を示したのは1眼,悪化1眼,変化なしが10眼であった。視力改善率は8.3%であり,レーザー光凝固は進行した黄斑円孔での視力改善に対し有効な治療方法とは考えられなかった。
球状角膜と白内障を合併した36歳のDown症候群の1例を報告した。両角膜は半球状に高度突出,菲薄化しており,右眼には角膜中央部の実質混濁と成熟白内障を認めた。右眼に対しtriple procedureを施行した結果,行動様式が著しく改善した。切除角膜の組織切片では一部にBowman膜の断列像と直下の実質に膠原線維の配列の乱れが認められた。
Down症候群は眼合併症の頻度が高いにもかかわらず,眼科受診の機会は少ない。Down症候群の高齢化が進む現在,今後このような症例に対しても積極的な治療を行っていくことが必要であると考えられた。
糖尿病網膜症で網膜血管床閉塞部位を追跡すると,血行が再開し修復が行われる事例があり,不規則に屈曲したコイル状血管をみることがある。73例93眼の糖尿病網膜症眼を対象とし,螢光眼底造影を用いて血管床閉塞部位を経時的に観察した。その結果,64眼69%に部分的な血行再開が観察され,5眼に広範囲にわたる血行再開がみられた。血行再開の様式は再疎通と再構築に大別され,再構築はさらに網膜内新生血管と血管再形成に分けられた。血行再開の時期は血管閉塞が極期を過ぎた時期であった。再疎通の一部および再構築の経過を追うとコイル状血管に変化した。コイル状血管の多くは,血管床修復部位に現れ,ほとんどは静脈系血管からなり,糖尿病網膜症の過去の病歴を反映するものであると結論された。
初回手術として4.5〜14mmの上斜筋縫縮術を施行した上斜筋麻痺の24例について,シノプトメータで眼位検査をおこない,医原性ブラウン症候群の頻度,経過,因子を調べた。術直後,22例(92%)に術眼の内転時の上転障害を認め,その大きさは10.6±6.6°(平均±標準偏差)であった。2次手術をおこなわなかった18例では,5〜65か月間に,15例(79%)で術眼の内転時の上転障害が改善した。40歳以上で,KnappのクラスⅡかⅤに分類され,内下転位と内上転位で上下偏位の差が8°を超える症例に対して,8mmを超える上斜筋縫縮術をおこなった場合,強いブラウン症候群を生じる傾向があった。
19歳の全身性エリテマトーデス(SLE)の女性に,両眼の眼瞼浮腫と球結膜浮腫,5Dの近視,浅前房,30mmHgの高眼圧が生じた。超音波Aモード法で,浅前房と水晶体の前方移動が確認された。全身浮腫があり,内科でネフローゼ症候群によるSLEの急性増悪状態と診断され,プレドニゾロンの全身投与が開始された。内科の治療によく反応し,SLEは沈静し,全身浮腫は消失した。それとともに両眼の5Dの近視は正視となり、前房の深さと眼圧も正常化した。本例は全身浮腫のさいに毛様体の浮腫を生じ,それによって水晶体の前方移動と膨隆を生じ,一過性の浅前房と近視化を生じたと考えられた
12回目となった視野のグループディスカッションであったが,先に京都で第10回の国際視野学会が開催され,演題の集まり具合が心配されたが,その不安をふきとばす盛況ぶりであった。演題数18題で活発な討論が行われ,時間も若干超過するほどであった。座長は可児一孝教授(滋賀医大),北原健二教授(慈恵医大),溝上國義助教授(神戸大)の三先生にお願いした。視野の基礎,検査法から臨床,神経眼科,緑内障の順に演題をならべた。