連載 眼の組織・病理アトラス・78
結膜異形成と上皮内癌
猪俣 孟
1
1九州大学
pp.582-583
発行日 1993年4月15日
Published Date 1993/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410908512
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結膜の異形成dysplasiaとは,結膜上皮細胞が局部的に異常増殖し,細胞の形態や配列が乱れ,極性が不明瞭になるなどの異型像を示すものをいう。この状態が上皮の全層に及んだものを上皮内癌carcinoma in situと呼ぶ。異形成と上皮内癌は一括して結膜上皮内新形成conjunctival intraepithelial neoplasia (CIN)とも呼ばれ,扁平上皮癌の前癌状態とされている。
臨床的には,CINは中高齢者の角膜縁結膜,とくに瞼裂に一致した部位に隆起性の斑点として観察される(図1)。ときには角膜表面に及ぶ。外観はゼラチン様,あるいは乳頭腫様で,斑点の中に分岐し蛇行した多数の小血管がみられることがある(図2)。斑点に異角化dyskeratosisを伴う場合には,表面が白色に混濁するので,結膜の白斑leukoplakiaと呼ばれる。
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