臨床眼科 52巻5号 (1998年5月)

特集 第51回日本臨床眼科学会講演集(3)

学会原著

  • 文献概要を表示

(17-P2-23) 眼球周囲麻酔下の白内障手術術後6日目に高度な眼窩内出血を起こした症例を経験した。糖尿病およびアルコール性肝障害の既往がある64歳の男性に,内科での入院加療ののち,眼球周囲麻酔にて,左眼超音波乳化吸引術および眼内レンズ挿入術を行った。5日後,右眼にも同手術を行った。右眼の術後6日目に右眼窩内出血が起こった。右上下眼瞼から頬部にかけての皮下血腫と眼球下方の眼窩内血腫を生じ,眼球の上方偏位と下転障害を認めた。眼球は血腫のために高度に内陥し,乳頭上出血があった。視力は矯正0.03であった。保存的加療を行い,術後7か月目には血腫は消失した。眼球運動障害はなく,視力は矯正0.7に回復した。

  • 文献概要を表示

(17-レセ1-2) 武蔵野赤十字病院眼科で1995年3月から,近視矯正目的で8本切開minimally invasive radialkeratotomy (mini-RK)を行つた194眼を対象として,矯正精度,コントラスト感度,グレアー・ハローなどの愁訴からmini-RKの手術適応を検討した。矯正精度については術前の近視が−4.5D以内の群では±0.5D以内に80%,±1.0D以内に93%が収まつたのに対し,−4.5Dを超える群では±0.5D以内に37%,±1.0D以内に63%と,−4.5D以内の群で良い結果を得た。コントラスト感度については,3.5mm以上のoptical zone (OZ)ではコントラスト感度低下はなかつたが,3.0mmでは有意に昼間,夜間とも低下していた。また,グレアーやスターバーストなどの訴えは,矯正度数4.5D以上の群では約半数にみられた。以上のことから,mini-RKではOZを3.5mm以上,矯正度数を4.5D以内とするべきであると考えられた。

  • 文献概要を表示

(17-レセ1-12) Mooren角膜潰瘍に対する角膜移植手術の臨床成績を,初回手術後の再発率,患者の年齢,潰瘍の範囲,および術式の関連について比較検討した。対象は角膜移植を行ったMooren潰瘍15名19眼(23〜84歳,平均52.3歳)で,初回手術での治癒が10眼,Mooren潰瘍の再発が9眼あった。最終的に17眼で潰瘍の治癒が得られた。初回手術後の潰瘍再発率は50歳未満の群で有意に高かった。手術時の潰瘍の範囲が3象限以上の群のほうが再発率が高い傾向にあった。表層角膜移植のみを施行した群と角膜上皮形成術を併用した群とでは,術後の再発率に有意差はなかった。

  • 文献概要を表示

(17-D-1) 69歳女性が両眼の網膜色素線条と脈絡膜血管新生で受診した。右眼にはレーザー光凝固を行い,その8か月後に新生血管膜を摘出した。最終視力は0.6であった。左眼には手術による新生血管膜摘出手術のみを行い,視力は0.2から0.4に回復したが,再発のために最終視力は0.08であった。摘出組織を免疫化学的に検索した。血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)はレーザーを行わなかった左眼でより強く現れていた。レーザー光凝固がVEGFの発現を抑制し,手術にも好影響を与えることが推測された。

  • 文献概要を表示

(17-D-11) 黄斑部剥離を伴わない裂孔原性網膜剥離の術後患者15名,15眼(21〜71歳,平均47.9±22.0歳)の黄斑機能を調査した。僚眼と比較した術後視力の差は全例が1段階以内であった。ハンプリー自動視野計で測定した術後の網膜中心窩閾値は,僚眼と比較して15眼中14眼(93%)で低下していた。中心部(2.6°以内)と傍中心部(2.7〜5.4°)から記録した多局所網膜電図の陽性波振幅は,僚眼と比較してそれぞれ12眼(80%)と15眼(100%)で低下していた。強膜全周締結術を行った3眼全例で傍中心部からの振幅の低下が著明であった。これらの結果から,強膜内陥術が黄斑部機能に影響を及ぼすことが推測された。

  • 文献概要を表示

(17-D-16) 広角レーザースペックルフローグラフイを用いて,正常人6例6眼の黄斑部と視神経乳頭周囲の脈絡膜の血流速度の日内変動を測定した。血流速度の相対値としてSBR値(square blur rate)を用いた。測定は4時間おきに6回行った。血圧,眼圧,脈拍を同時に測定し,それら相互の相関を求めた。黄斑部には29.1%,乳頭周囲には19.0%の日内変動があった。各部位でのSBR値は,平均血圧および眼灌流圧と有意な相関があり,相関係数は,黄斑部でそれぞれ0.53と0.56,乳頭周囲で0.44と0.36であつた。各部位でのSBR値と眼圧,脈拍との間には相関はなかった。これらの結果から,脈絡膜循環には日内変動があることが証明された。

  • 文献概要を表示

(17-D501-3) 抗リン脂質抗体症候群による網膜静脈閉塞症と考えられた3例を報告した。1例は両眼性・多発性の網膜静脈分枝閉塞症で,流産の既往と頭部MR1検査にて多発性の脳梗塞を認めた。他の2例は網膜動脈分枝閉塞症を伴った再発性の網膜中心静脈閉塞症と両眼性の網膜中心静脈閉塞症であった。全例に高血圧の既往はなく,凝固系は正常範囲内で,その他の血液検査に異常はなかったが,血中抗力ルジオリピン抗体は高値であった。網膜静脈閉塞症が多発性・再発性・両眼性にみられる場合,抗リン脂質抗体症候群を疑うべきであると考えられた。

  • 文献概要を表示

(17-G402-10) 肺結核の治療として,エタンブトール,リファンピシン,イソニアジドの内服を始めて19か月後に,視力低下,中心性の両耳側半盲,色覚異常を呈し,エタンブトール中毒性視神経症と思われた52歳男性の1例を経験した。エタンブトールの内服を中止し,亜鉛製剤の内服治療から5か月後に耳側半盲は消失し,視力が右0.07,左0.06から右0.2,左0.1に回復した。エタンブトール内服中に両耳側半盲を認めた場合,これによる中毒性視神経症を疑う必要がある。

  • 文献概要を表示

(17-G409-12) 薬剤感受性は異なるが,いずれも多剤耐性のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による涙嚢炎の2症例を経験した。症例は63歳の男性と82歳の女性であった。1例はバンコマイシンの全身投与で,もう1例は涙嚢摘出で治癒した。両例とも鼻腔内からもMRSAが検出され,ムピロシン軟膏の鼻腔内塗布が有効であった。涙嚢炎の治癒後,再発がなく,結膜の培養ではMRSA陰性であるのに,鼻腔内の培養ではMRSAが検出され再保菌されていることがわかった。涙嚢炎を繰り返す患者では,結膜だけでなく鼻腔内細菌の定期的な検査が必要であると思われた。

  • 文献概要を表示

(17-P2-6) ベーチェット病患者活動期7例,非活動期13例について血清中可溶性Fas (以下,sFas)レベルをサンドイッチELISA法で測定した。ベーチェット病患者では有意に増加していたが,活動期と非活動期では有意差がなかった。健康人および非活動期ではsFasレベルと年齢との相関がみられたが,活動期では相関がなく,ベーチェット病の活動期にはsFasの変動があると思われた。一方,完全型12例について活性化T細胞のFas感受性を検討した。Concanavallin A (以下,ConA)刺激前にすでに健康人と比較して感受性が増加しており,刺激後さらに増加した。白血球数,CRPおよび好中球%を炎症指標として感受性を比較すると,炎症回復期にFas感受性が強くみられた。活性化T細胞は炎症回復に関与する可能性が想定された。

  • 文献概要を表示

(17-P3-11) 本態性眼瞼痙攣に対するボツリヌス毒素治療の効果を検討し,その精神的背景を検討する目的で心理テストを行った。千葉県血清研究所製A型ボツリヌス毒素を1か所0.5単位,1.25単位,2.5単位,5単位から選び,両眼で10か所に注射した。閉瞼筋力およびJankovicスコアを測定し評価した。心理テストはSDS自己評価式抑うつ尺度およびCMI健康調査表を施行した。閉瞼筋力は1.25単位以上で有意な改善が認められ,Jankovicスコアは用量依存性に改善が認められた。治療前のSDS得点は正常群と有意差は認められず,治療前後で有意な変動はなかった。23例中6例に抑うつ傾向が認められ,4例に神経症傾向を認めた。本疾患患者の過半数は正常な精神的背景を持つことが示唆される一方,神経症,抑うつ傾向など異常傾向を示す症例が存在することが認められた。

  • 文献概要を表示

(17-P3-22) 1994年1月〜1996年12月に山口大学眼科を受診した穿孔性眼外傷46例46眼のうち動力式草刈機によるもの16例16眼について検討した。受傷時期は5月〜7月が11眼(69%)と季節的に偏りがあった。穿孔創が小さく縫合を行わなかつたのは7眼(43%)であった。眼内異物を伴っていたのは10眼(63%)で,ほとんどすべての症例で異物の大きさは5mm以下であった。術後2段階以上の視力改善が16眼中11眼(69%)に認められた。

  • 文献概要を表示

(17-P3-24) 失明後に患者が必要とする院外サービスについて,外来待合室で閲覧できるシステムの開発を行った。視覚障害リハビリテーション訓練・補助具・専門施設や友の会などのほか,地域の社会サービスや交流会の情報などを,ホームページを作る言語であるHTML言語を用い電子化した。HTML言語を利用することにより,提示装置の機種や提示ソフトウェアは何にでも対応でき,また既存のインターネット上の情報をそのままの形で利用することができた。またパーソナルコンピュータを使う方法は,カタログなど印刷物を展示する方法よりも,感染の危険性を低くする点と,情報の更新が容易にできる点で優れていた。

  • 文献概要を表示

(18-レセ1-11) Posterior polymorphous dystrophy (PPMD)に急性角膜水腫を合併した症例を経験した。症例は50歳男性。左眼外傷後,難治性角膜潰瘍をきたし,約1か月後に急性角膜水腫の状態となった。両眼の角膜には変性がみられ,病変はデスメ膜から内皮にかけて孤立した灰白色の水疱様の混濁として認められた。これらの所見はPPMDの角膜所見に一致していた。急性角膜水腫は圧迫眼帯のみで白斑を残し,治癒した。視力の改善は得られ,予後は良好であった。

  • 文献概要を表示

(18-レセ1-20) 消毒液の誤用により生じた医原性の角膜化学腐蝕の4症例を報告した。誤用薬剤は,3例が高濃度グルコン酸クロルヘキシジン(ヒビテン®),1例がヒビテンアルコール®であった。受傷直後からの処置にもかかわらず化学腐蝕の重症度はグレード3a(全角膜上皮欠損,輪部上皮残存)が2例,グレード3b(全角膜上皮欠損,全輪部上皮欠損)が2例であった。また,高率に角膜内皮機能不全を引き起こしていることより,洗眼時における消毒液の誤用には十分に注意する必要がある。グレード3aと3bの各1例に対しては全層角膜移植術を施行し,術後経過は良好である。

  • 文献概要を表示

(18-レセ2-27) 後部円錐水晶体をみた4歳男児に白内障手術を行い,その際得られた後嚢組織を病理組織検査に供した。後嚢円錐部には異所性上皮細胞が存在しており,胎生期に水晶体後面に残された上皮細胞による水晶体線維の異常増殖が本症の発生機序に関与していると考えられた。

  • 文献概要を表示

(18-レセ2-31) 従来の眼内レンズのパワー計算法の理論式に問題点がある。特に眼内レンズのデザインがパワーごとに変化することが考慮されていない。この問題点を吸収すべく光線追跡法を用いた術後屈折予測を試みた。ここでは,術後前房深度を前嚢と後嚢の位置から予測する方法を用いた。5種類のレンズで559眼を対象とし,SRK/T式と比較した。全体では同等の成績であったが,眼軸長27mm以上の群では光線追跡法が有意に優れていた。

  • 文献概要を表示

(18-レセ-2-33) 2ポート硝子体切除を併用した眼内レンズ毛様体扁平部縫着術を試み,術後屈折誤差と合併症について従来の毛様溝縫着術と比較検討した。対象は,眼内レンズ毛様体扁平部縫着術偏平部群)5眼,毛様溝縫着術(毛様溝群)5眼,そして合併症なく眼内レンズが嚢内固定された超音波乳化吸引術(嚢内固定群)7眼であった。術後屈折誤差の絶対値の平均は,扁平部群が0.63Dで,毛様溝群の2.06Dに比べて有意に少なく,かつ嚢内固定群0.49Dと同等であった。合併症はほぼ同様であったが,毛様溝群の1眼に瞳孔捕獲がみられた。毛様体扁平部縫着は,従来の毛様溝縫着よりも屈折誤差の少ない術式と考えられる。

  • 文献概要を表示

(18-D-6) Acquired immunodeficiency syndrome (AIDS)に合併したサイトメガロウイルス網膜炎を早期に鎮静化させるために,ガンシクロビルとフォスカーネットの併用療法を試みた。症例は52歳男性で,眼科定期検査時に左眼のサイトメガロウイルス網膜炎が発見された。当初はガンシクロビルの初期導入療法を2週間行ったが,網膜炎は拡大傾向にあつた。そこでガンシクロビルおよびフォスカーネットによる併用維持療法を行ったところ,病変は速やかに消退し,やがて網膜炎は完全に鎮静化した。サイトメガロウイルス網膜炎において,抗ウイルス薬の併用療法は単剤投与よりも鎮静化を早め,かつ副作用を抑える点で有効な治療法であると考えられた。

  • 文献概要を表示

(18-D-8) 47歳男子が10日前からの左眼視力低下で受診した。その1週前に高熱の発症があった。初診時の矯正視力は,右1.2,左0.1であった。右眼に乳頭浮腫と1個の網膜浸潤巣があり,左眼には4個の浸潤巣があって,その1個は中心窩に及んでいた。螢光造影で浸潤巣は初期に低螢光,後期に過螢光を呈した。急性多発性網膜炎と診断し,レボフロキサシン,フルコナゾール,プレドニゾロンの全身投与を行った。左眼矯正視力は4週後に1.0に回復した。眼底の浸潤巣は約6か月後にほぼ消失した。全身検査で原因は特定できなかった。

  • 文献概要を表示

(18-D-17) び漫性糖尿病黄斑浮腫に対する格子状光凝固術の治療成績を調査し,その有効性について検討した。対象は最近10年間に格子状光凝固を行い12か月以上経過観察した43例51眼で,経過観察期間は平均37.4±28.3か月であつた。格子状光凝固術では,浮腫を消退させ視力を安定化させる効果があったが,最高視力において視力改善した症例は51眼中19眼(37%)で,長期的には徐々に視力低下する傾向がみられた。視力悪化の原因として凝固斑の拡大,網膜色素上皮萎縮などがあった。

  • 文献概要を表示

(18-D501-3) 加齢黄斑変性(AMD)のインドシアニングリーン(ICG)螢光眼底造影では,検眼鏡では異常のない領域においても,後期相に脈絡膜内異常過螢光が,そしてICG静注後24時間の超後期相には地図状低螢光巣が観察される。これらの異常螢光部と中心窩から等距離にある正常領域の網膜感度を走査型レーザー検眼鏡スコトメトリーを用いて比較検討した。その結果,過螢光巣の網膜感度は30.2±2.4dB(平均±標準偏差),低螢光巣では30.0±2.0dBで,双方とも対応する正常部の感度に比べ有意に低下していた。この事実は,これらの領域で網膜機能に影響を与える代謝障害の存在を裏付けるものであり,AMDの病態を解釈する上での臨床的な示唆と考えられた。

  • 文献概要を表示

(18-D501-5) 原田病7例のインドシアニングリーン(ICG)螢光造影所見をサブトラクション法により検討した。色素流入期の連続する画像間の秒単位のサブトラクション法では,流入の遅れた脈絡膜静脈が連続して描出された。分単位のサブトラクション法では,血管走行部以外の背景輝度は不整で,脈絡膜内ICG螢光漏出部位が明るい輝度部を呈した。サブトラクション法により,原田病における脈絡膜静脈の流入障害や,脈絡膜内ICG螢光漏出の詳細な検討が可能となった。

  • 文献概要を表示

(18-D501-27) 硝子体手術後の水晶体混濁度の変化を,103眼について前眼部画像解析装置で測定した。年齢は17歳から76歳,平均58歳であった。術後6か月での水晶体混濁度は,年齢よりも術前の混濁度に強く相関していた。混濁の進行は,性別(女性)とガスタンポナーデの使用に関連し,手術時間とは相関しなかった。増殖糖尿病網膜症では,特発性黄斑円孔やその他の疾患よりも水晶体混濁の進行が少なかった。以上の所見から,増殖糖尿病網膜症では硝子体手術時に白内障進行を予見しての水晶体摘出を同時に行う必要がないこと,術前の水晶体混濁値が90以上の場合には水晶体摘出の適応があると結論される。

  • 文献概要を表示

(18-レセ2-14) 光学的干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)で,正常眼での角膜・隅角・強膜・球結膜の断層像を検索した。正面からの観察で,角膜・水晶体前嚢・虹彩・強膜・球結膜・角膜輪部などの断層像が観察できた。毛様体・強膜岬・シュレム管など深部組織の画像化と同定は困難であった。OCTでの前眼部断層像の定量性を検索するために,角膜中央部と,上下と水平の4方向での角膜輪部の厚さを測定した結果,全体の変動係数は3.0%と良好であつた。緑内障手術後の濾過法や裂隙についても,臨床的に有意義な断層像が得られた。

  • 文献概要を表示

(18-D501-15) 17歳男性が10日前からの右眼視野障害で受診した。視力は両眼とも正常であった。前眼部,中間透光体,眼底は正常所見を呈した。右眼に耳側の視野欠損があり,多局所網膜電図で視野欠損に一致した網膜応答密度が低下していた。螢光眼底造影では造影初期に乳頭周囲の背景螢光の遅延があった。眼球電図では明上昇L/D比率と高浸透圧応答変化率の低下があつた。以上から,acute zonal occultouter retinopathy (AZOOR)と診断した。発症7か月後に,無治療で視野と網膜電図はほぼ正常に回復した。本症例はGassの分類で眼底に異常所見がない1群に属し,網膜色素上皮と脈絡膜に障害がある事例と考えられた。

  • 文献概要を表示

(18-G409-7) 前眼部撮影解析装置EAS 1000を用いて白内障術後の後嚢混濁の定量的評価を試みた。対象は術後に後嚢混濁を認めなかった37眼と線維性混濁またはElschnig型混濁を認めた34眼である。測定は0°から165°までを15°ごとに12方向からスリット撮影し,densitometry解析により平均density値を求め,これを細隙灯顕微鏡所見による混濁の程度分類と対比させた。線維性混濁,Elschnig型混濁ともに細隙灯顕微鏡所見による混濁度分類とdensity値はよく相関し,術後後嚢混濁の定量的測定にEAS 1000によるdensitometry解析は有用と考えられた。

  • 文献概要を表示

(18-D501-33) 1993年6月〜1997年2月に福岡大学病院眼科で硝子体手術を行った偽水晶体眼の増殖糖尿病細膜症(PDR)17例20眼において,最終的に眼内レンズ(IOL)を保存した14眼とIOLを摘出した6眼を比較した。両群ともに網膜復位,病変鎮静化,眼圧のコントロールが得られた。その結果から,偽水晶体眼の増殖糖尿病網膜症の硝子体手術においては虹彩ルベオーシス,血管新生緑内障の眼球前半部の十分な処置が必要な場合,高度の後発白内障により眼底の透見が困難な場合,手術施行時にIOLが脱落する可能性がある場合にはIOLを摘出するのがよいと考えた。

  • 文献概要を表示

(18-D501-34) 1992〜1996年の5年間に,当大学病院新生児集中治療室で管理した低出生体重児における未熟児網膜症の発症・進行と,未熟児早期貧血の治療との関連について検討した。出生体重2,500g未満の低出生体重児全体,1,000g以上1,500g未満の児,1,000g未満の児いずれにおいても,濃厚赤血球輸血を受けた輸血群33例は,非輸血群30例に対し有意に未熟児網膜症の発症・進行がみられた。この結果には児の未熟性に起因する輸血が必要な全身状態に加え,輸血による全身状態の急激な変化が関与していると考えられた。

  • 文献概要を表示

(18-G402-14) 眼病変の治療経過中に中枢神経症状を発症したベーチェット病患者の治療および転帰について検討した。対象は眼病変を有するベーチェット病患者99例で,このうちシクロスポリン(CyA)投与群は22例,非投与群は77例であり,中枢神経症状は前者の4例,後者の1例に発症した。CyA投与群と非投与群では中枢神経症状の発症率に有意差があり,CyA投与による中枢神経症状の誘発の可能性が推定された。中枢神経症状を発症した5例には,全例に対してステロイド薬の全身療法が行われ,すべての症例で神経症状は改善し,炎症発作頻度は低下傾向を示したが,視力の向上が得られたのはわずか1眼であった。

  • 文献概要を表示

(18-G409-13) 耳側角膜切開無縫合による超音波白内障手術後の角膜乱視につき,視軸と角膜切開縁間の長さとの関連を検索した。術後3か月で,3.0mm切開228眼では約0.15D,3.8mm切開116眼では,約0.4Dの乱視の変化があった。視軸が角膜を通る点と角膜切開縁との距離は,惹起角膜乱視量との間に有意な相関を示さなかった。視軸と切開縁との距離は角膜径と密な関係にあるので,角膜径が術後の角膜乱視の主要な原因でないと結論される。

  • 文献概要を表示

(18-G409-9) 筆者らは,白内障手術中に内視鏡により水晶体嚢および眼内レンズの固定位置を観察し,同時に毛様体の観察も行うことができた。それにより,毛様体の加齢による知見を得られたので報告した。対象は当院で白内障手術を行った症例36眼である。方法は,白内障手術の術中に水晶体核および皮質を取り除いた後,眼内レンズ挿入前後に,内視鏡で毛様体の形態を観察した。その結果,年齢が上昇するにつれ毛様体の数は減少し,形態は細くなり,色素は減少する傾向がみられた。このような変化は水晶体嚢,チン小帯にも何らかの変化を及ぼしていると考えられる。

  • 文献概要を表示

(18-P1-4) 52歳男子が2年前からの夜盲で受診した。過去12年前から腹部腫瘍と肝嚢結石のために複数回の腹部手術を受けていた。眼底には両眼とも点状の黄白色斑がび漫性に分布していた。ERGで,杆体系の著明な減弱と錐体系の中等度の減弱があった。血中のビタミンA値は30ng/dl未満と著しく低下し,これが夜盲の原因であると推定された。ビタミンAの投与により,5週後にはその血中値が233ng/dlに上昇し,夜盲も消失した。本症例は,腹部手術の既往があるとき,ビタミンA欠乏による夜盲が生じうることを示している。

  • 文献概要を表示

(18-P1-29) 特発性黄斑円孔再開例4例すべてに再手術を行い,黄斑円孔再開例の臨床的特徴,再手術法について検討した。黄斑円孔再開率は5%(81眼中4眼)であり,術中所見から黄斑円孔再開の原因は網膜上膜の再増殖により黄斑部に新たに接線方向の牽引がかかるためと考えられた。網膜上膜の再増殖をきたした一因として初回黄斑円孔硝子体手術後の核白内障に対する白内障手術が考えられた。再増殖膜の徹底的な剥離除去およびC3F8ガスタンポナーデを行う硝子体手術により,すべて再閉鎖が得られた。黄斑円孔再開例に対しても硝子体手術により再閉鎖が十分に期待できると考えられた。

  • 文献概要を表示

(18-P1-5) 走査型レーザー検眼鏡を用いて家族性大腸腺腫症の5症例の眼底所見を解析した。その結果,5例中3例に種々のタイプの網膜色素上皮肥大が,すべての症例に後極部から周辺部にかけて眼底色素のむらが検出された。網膜色素上皮肥大部はアルゴンレーザー(514nm)での観察により高信号と低信号の混在,ダイオードレーザー(780nm)の観察で高信号であった。フルオレセイン螢光眼底造影,インドシアニングリーン螢光眼底造影で一部の網膜色素肥大部位では脈絡膜毛細血管の閉塞が認められた。眼底色素のむらは,従来ほとんど報告されていなかったが,全例でダイオードレーザーの観察により明瞭に認められ,本症に特徴的な病変である可能性が示唆された。

  • 文献概要を表示

(18-P1-12) 17歳女性が左眼の網膜剥離で受診した。矯正視力は右0.1,左0.06で,それぞれ−6Dと−8Dの近視があつた。左眼底には鼻側を除き扁平な網膜剥離があり,後極部に黄斑上膜,牽引乳頭,網膜血管の走行異常,周辺部に広範な無血管野と新生血管があった。螢光眼底造影で,後極部に網膜血管の直線化と多分岐があり,鼻側以外の赤道部に新生血管からの色素漏出があった。硝子体手術で左眼網膜剥離は復位し,矯正視力は1.0になり,視野も改善した。

  • 文献概要を表示

(18-P1-31) 当院における網膜中心静脈閉塞症(CRVO)患者で,線維素溶解薬,血管強化薬,循環改善薬を用いた薬物療法および光凝固療法を行つた11例と,これらの治療に加え60日以内にプロスタグランジンE1(PGE1)点滴と星状神経節ブロック(SGB)を行つた11例とに分け,その有効性について比較検討した。PGE1およびSGBによる有効性なく,黄斑浮腫のあるものや出血型網膜症に関しては,むしろ悪化する傾向を認めた。以上から,PGE1とSGBの併用療法は見直す必要があると思われた。

  • 文献概要を表示

(18-P1-48) 過去20年間の乳児内斜視で,初回手術を2歳以降に行つたのち5年以上(5〜17年)経過観察できた12例の最終診療時の斜視角,両眼視機能をレトロスペクティブに検討した。治療結果をvonNoordenの報告に準拠して4段階に分類したところ両眼視機能軽度異常4例,微小内斜視4例,小角度の内・外斜視3例,大角度の内・外斜視1例であつた。両眼視機能では5例で周辺立体視,2例で黄斑立体視が得られた。症例数は少ないが,非早期手術例においても比較的良好な結果が得られた。早期手術を逸した症例にも積極的な治療が必要であることが確認された。

  • 文献概要を表示

(18-P2-13) 1997年までの10年間に病理学的に診断が確定した眼瞼腫瘍31例を検討した。悪性腫瘍19例,良性腫瘍12例で,脂腺癌9例が最も多かった。平均年齢は全症例で56.4歳であり,悪性腫瘍群では69.7歳,良性腫瘍群では35.4歳であった。治療は腫瘍全摘出を原則とし,眼瞼形成術を併用した。脂腺癌9例のうち6例に再発があった。全例に再手術を行い,4例では放射線療法を併用し,すべてに治癒が得られた。扁平上皮癌と基底細胞癌では,初回の腫瘍切除で治癒した。

  • 文献概要を表示

(18-P2-4) 全身異常が全くない両眼性水晶体偏位の2症例を経験した。それぞれ31歳男性と36歳女性で,第1症例には網膜色素変性と硝子体中への水晶体脱臼があった。第2症例は単純水晶体偏位であり,右眼への超音波乳化吸引術中の水晶体前嚢切開時に毛様小帯が次々に断裂した。毛様小帯が脆弱であるためと解釈された。

  • 文献概要を表示

(18-P2-14) 58歳女性が右結膜の腫瘤を主訴として受診した。摘出した腫瘤は,組織学的にび漫性中細胞型悪性リンパ腫と診断された。免疫組織化学的には抗モノクローナル抗体陽性で,サザンプロツティング法による分子生物学的検索で,免疫グロブリン遺伝子の再構成がJHプローブで認められ,単クロール性増殖が確認された。全身的には異常がなかった。中細胞型び漫性B細胞性の結膜に原発した悪性リンパ腫と診断が確定した。放射線照射と化学療法で腫瘍は縮小し,以後の1年間に局所再発と転移はない。

  • 文献概要を表示

(18-P2-18) ヌンチャク型シリコンチューブ(以下,N-ST)による涙道形成術の治療成績を考察した。涙道閉塞症または狭窄症の68例を対象とし,抜去後,細隙灯顕微鏡所見,涙嚢洗浄により評価を行った。有効例は41例(60%)で,そのうち鼻涙管閉塞は有効率66%(29例中19例)を示したが,慢性涙嚢炎では36%(14例中5例)とその成績に有意差を示した。涙点狭窄,涙小管断裂は全例治癒したが,涙小管閉塞ではN-ST留置中に涙小管の狭窄をきたし,慢性涙嚢炎とともに抜去困難な傾向がみられた。N-STによる涙道形成術は有効例も多く,治療の第一選択として試みられるべき方法であるが,適応の選択,術前後の経過観察に十分な注意が必要である。

  • 文献概要を表示

(18-P2-38) 5年前から強皮症のある70歳女性の右眼に点眼瓶の先端が接触し,角膜欠損が生じ,その7日後に穿孔した。約2×4mmの角膜潰瘍の中央に穿孔創があった。治療用ソフトコンタクトレンズの装着,抗生物質の点眼,ステロイド薬の点眼と内服で角膜実質が再生し,1週後に穿孔創は閉鎖した。角膜穿孔は外傷を契機とし,上皮修復に伴って炎症性メディエー夕が過剰に放出された結果である可能性が推定された。

  • 文献概要を表示

(18-P3-10) 線維柱帯切除術後の前房消失に対し,前房内に粘弾性物質を注入して前房形成をはかった群(5例)と圧迫眼帯を行った群(10例)について,その効果と合併症を比較した。粘弾性物質注入群では前房形成に要した日数は平均2.2日で,60%が1回の注入で前房が形成された。一方,圧迫眼帯群は前房形成まで平均3.5日を要した。術後眼圧は両群間に差はみられなかった。角膜内皮細胞数を術前と術後で比較すると,注入群では変化がみられなかったが,圧迫群では術後の内皮細胞数は有意に減少していた(p<0.05)。以上から,線維柱帯切除術後の前房消失例に対する粘弾性物質注入療法は有用な方法と考えられた。

  • 文献概要を表示

(18-P3-18) β1選択性遮断薬であるべタキソロール点眼液を高眼圧症と各種緑内障患者に投与し,52例で眼圧下降効果,21例で呼吸機能を評価した。投与開始1か月後の眼圧下降度は,第一選択薬として単独投与した35例では3.6±2.7mmHg,追加投与した11例では1.6±2.0mmHg,前治療薬を本剤に変更した6例では0.5±1.0mmHgであった。6か月後に3mmHg以上の眼圧下降を示した例は,単独投与群で75%,追加投与群で50%であった。投与開始から1,3,6か月後の時点では,単独投与群だけに各時点で有意な眼圧下降があった。呼吸機能の指標としてのピークフロー値は,投与前と3か月後で変化率に有意差はなく,年齢と性別にも無関係であった。本剤は高齢者にも安全であると推定された。

  • 文献概要を表示

(18-P3-23) 正常眼圧緑内障(NTG)26眼にメコバラミンを2年間内服投与し,同程度の視野障害を持つ非投与NTG症例57例を対照として視野障害進行を比較検討した。視野障害進行の評価は,ハンブリー視野中心program 30-2測定結果を6セクターに分画し,各セクターの網膜感度変化量を測定した。投与群は観察開始時と比較し,網膜感度低下を示すセクターはなく,非投与群は観察開始時と比較し,上半黄斑乳頭領域(p<0.02)および下鼻側領域(p<0.05)のセクターにおいて,有意な網膜感度低下を認めた。メコバラミン長期内服はNTGの視機能維持に対し有効であることが示唆された。

  • 文献概要を表示

(19-レセ1-7) Schwannomaは良性の末梢神経腫瘍で眼球内に発生することは極めて稀である。症例は41歳,男性で,右眼の視力障害を主訴とし,虹彩後癒着,併発白内障がみられ,眼底は透見不能であった。超音波検査,磁気共鳴画像により眼底に腫瘍を認めた。白内障嚢外摘出術を行ったが,硝子体混濁のため眼底は透見不良であった。腫瘍は増大傾向を示し,臨床的に悪性黒色腫の可能性が否定できなかったため,眼球摘出術を行った。組織学的には脈絡膜schwannomaで,免疫組織化学的検索の結果も組織学的診断を支持するものであった。

  • 文献概要を表示

(19-レセ2-5) 前房内麻酔を点眼麻酔と併用し,その有効性と安全性について検討した。対象は片眼を点眼麻酔のみで施行し,僚眼を点眼麻酔に前房内麻酔を併用した19例38眼である。術後のアンケート結果から,前房内麻酔併用群のほうが,鎮痛効果が得られることが示唆された。また,術後の細隙灯顕微鏡所見,眼圧、前房内炎症,角膜内皮減少率などの他覚的所見は有意差がなかった。以上から,点眼麻酔と前房内麻酔の併用は,その麻酔法の簡便さと有効性で今後期待される麻酔法と思われた。

  • 文献概要を表示

(19-レセ2-7) 全身または眼に合併症のある23例33眼に日帰り白内障手術を行った。全身合併症は,高血圧24眼,糖尿病11眼,喘息3眼であり,眼合併症は開放隅角緑内障4眼と硝子体手術後の1眼であった。術後の視力,眼圧,前房フレア,角膜内皮細胞数について,各合併症による特徴はなく,結果は良好であった。術後に全身合併症が増悪した症例があった。日帰り白内障手術では,このような事態に対応できるシステムが必要と結論される。

  • 文献概要を表示

(19-B-3) エキシマレーザー屈折矯正手術前の角膜上皮剥離で,エタノールを用いると平滑な剥離面が得られ,術後早期に視力が回復することが期待される。9人の両眼に同じ日に手術を行い,1眼は25%エタノール,他眼にはレーザーとスパーテルによる上皮剥離を行った。両群の間に,上皮剥離時間,術後1か月での視力,屈折,上皮下混濁について有意差はなかった。エタノール使用眼では術後の疼痛が強い傾向があつた。

  • 文献概要を表示

 顆粒状角膜変性症,アベリノ角膜変性症,ライス-バックラー角膜変性症,そして格子状角膜変性症の4つの常染色体優性角膜変性症は,ケラトエピテリンという1つの遺伝子の異常により生じることが明らかになった。本邦で今まで顆粒状角膜変性症と思われていた症例の多くは,遺伝子変異からみるとアベリノ角膜変性症に相当する。

連載 眼の組織・病理アトラス・139

結膜の後天メラノーシス 猪俣 孟
  • 文献概要を表示

 結膜の色素性病変は,先天性のもの,後天性のものがあるが,常に悪性化が危惧される重要な疾患である。先天性のものは母斑であり,後天性のものはメラノーシスである。母斑は青少年期から起こり,黒色の腫瘤を形成する。稀に悪性化することもある。後天メラノーシスacquired melanosisは中年以降に起こる。結膜の表面に黄粉をふり播いたようなまだらな色素沈着である(図1)。結膜の悪性黒色腫malignant melanomaの約半数はもともと色素沈着がないところからde novoに発生し,残りの半数は後天メラノーシスから発生する(図2)。後天メラノーシスは病理組織学的には接合部母斑junctional nevusに類似し,異形のメラノサイトが上皮と上皮下組織の接合部に存在し,しばしば接合部活性junctional activityを示す。後天メラノーシスのメラノサイトの形状は,樹枝状で正常にみられるものと区別できないもの(Grade 1),樹枝状形態は保持しているが,核も胞体も正常より大きいもの(Grade 2),樹枝状の形態が失われて類上皮細胞の形態をとるもの(Grade 3)に分けられる。生検標本では,類上皮細胞の形態をもつメラノサイトが存在するか否かが,良性か悪性の有力な手掛かりになる。臨床的には,色素量の増加,色素病変部の隆起,炎症所見の出現は悪性の兆候として注意すべきである。

 Zimmermanは後天メラノーシスを良性後天メラノーシスbenign acquired melanosisと癌性後天メラノーシスcancerous acquired melanosisに分類している。

連載 眼科手術のテクニック・102

  • 文献概要を表示

 今月はトラベクロトーム(以下,ロトーム)の回転に伴う併発症について2回に分けて解説する。その1は,放置しても構わない程度の併発症について解説する。

 ロトームの回転は,虹彩にも角膜後面にも触れない方向に回転させねばならないが,そのためには前回に解説したように,2段階に分けて回転させることをお勧めする。

  • 文献概要を表示

 症例は複雑心臓奇形と脳炎のため養護院に入院中の1歳8か月の女児。両眼瞼結膜の濾胞と眼脂に母親が気づいたが,眼脂は小児科で処方された抗菌薬で1日で消失し,濾胞が残存するため眼科を受診した。

 写真は眼科初診時の右結膜所見であり,上下の眼瞼結膜に粟粒大のサイズの揃った著明な濾胞が多数みられた。眼球結膜の充血はなく,角膜も正常であった。左眼も同様の所見であった。眼瞼結膜ぬぐい液のクラミジアDNA PCR法,一般細菌培養検査で病原体は証明されなかった。

  • 文献概要を表示

 再発性アフタ性潰瘍と皮膚が化膿しやすい既往のある28歳男性が,2日前からの霧視と頭重感で受診した。両眼に虹彩炎と視神経乳頭の発赤があり,左眼には乳頭から黄斑部に及ぶ網膜剥離があった。螢光眼底造影で脈絡膜からの斑状の螢光漏出があり,後期には境界鮮明な色素貯留があった。脳脊髄液に細胞数増加があり,針反応が陽性であった。1週間後から網膜剥離は消退しはじめ,視力は当初の0.1から0.6に改善した。これに続いて網膜血管炎が両眼に出現した。Vogt—小柳—原田病ではなく,ベーチェット病の不全型と診断した。

  • 文献概要を表示

 手術的に摘出された4眼での脈絡膜新生血管膜を免疫組織化学的に検索した。原因病変は,加齢黄斑変性症,特発性黄斑変性症,網膜色素線条,強度近視の各1眼である。すべての摘出標本に,血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)を発現する細胞があり,これらは主としてcytokeratin18陽性であった。GFAP (glial fibriaily acidic protein)に対する陽性細胞は観察されなかった。これらの所見は,脈絡膜新生血管の形成に網膜色素上皮由来のVEGFが関与していると解釈された。

  • 文献概要を表示

 加齢黄斑変性(AMD)には検眼鏡的に出血や漿液性網膜剥離があり,脈絡膜新生血管(CNV)の存在が疑われるにもかかわらず,フルオレセイン螢光造影で,点状の過螢光に始まり徐々にび漫性の過螢光(oozing)を呈するだけでCNVの同定が困難な群がある。筆者らはこのような所見を示すAMD28眼に対して,走査レーザー検眼鏡によるインドシアニングリーン(ICG)螢光造影を実施した。ICG所見として,新生血管,後期の過螢光,初期からの低螢光が観察された。その結果24眼,86%でoozingの範囲全体にCNVがあることが推定された。このようなAMDに対してレーザー光凝固を実施する際に,その所見を考慮する必要があると結論される。

  • 文献概要を表示

 全層角膜移植を受けた111眼について,0.05%シクロスポリン点眼と0.1%ペタメタゾン点眼の効果を比較検討した。40眼には早期からシクロスポリン点眼のみを行い,他の71眼にはベタメタゾン点眼のみを行った。移植片の拒絶反応は,前者で17.5%,後者で9.9%に生じた。術後緑内障は,前者で15.0%,後者で19.7%に生じたが,有意差はなかった。111眼全体について,拒絶反応発生率は12.6%,角膜透明治癒率は93.7%,術後緑内障の発生率は18.0%であった。以上の結果から,シクロスポリン点眼がベタメタゾン点眼よりも優れているとはいえないことが結論された。両者の組み合わせで,成績を向上させる可能性がある。

  • 文献概要を表示

 左眼に強角膜症,後部円錐角膜,緑内障を合併した59歳の女性を報告した。右眼は血管新生緑内障のために54歳時に近医で眼球摘出術を受け,このとき初めて左眼の高眼圧を指摘された。左眼の周辺部強角膜症,および実質混濁を伴う後部円錐角膜は下鼻側に限局していた。他の部位の角膜にも軽微な実質混濁があり,スペキュラーマイクロスコピーで内皮細胞は多形性を示し,細胞の境界は不鮮明で,dark areaが観察された。開放隅角であるが,隅角底に毛様体帯は見えなかった。強角膜部には遺残色素が付着していた。線維柱帯切除片の組織学的検査では,シュレム管は大きな管腔を形成しており,線維柱帯の層構造は保たれていた。内皮網には細網線維無定型物質,gitter collagenなどが充満していた。本症例の左眼は,軽度の隅角形成不全があり,加齢変化が加わつて眼圧上昇をきたしたとするのが妥当と考えられた。

  • 文献概要を表示

 ぶどう膜炎として半年前から治療されていた69歳の女性が受診した。矯正視力は両眼とも0.5であった。前房の混濁と細胞が両眼にあり,右眼には網膜血管に沿う滲出斑が散発していた。左眼には同様の滲出斑が耳側周辺のみにあった。螢光眼底造影で網膜血管の透過性亢進と乳頭の螢光染があった。諸検査の結果サルコイドーシスは否定され,原因不明の全ぶどう膜炎と診断した。4年後の受診時の視力は,右0.04,左0.7であつた。右眼には強い硝子体混濁があった。両眼の眼底周辺部に打ち抜き萎縮斑と新鮮な滲出斑が散在していた。以上の所見から,発症から数年を経ても新鮮および陳旧化した限局性病巣が併発することを特徴とする多発性脈絡膜炎と全ぶどう膜炎multifocal choroiditis and pan-uveitisと診断した。

第51回日本臨床眼科学会専門別研究会1997.10.17東京

眼窩 井上 洋一
  • 文献概要を表示

 杉山らは,甲状腺眼症の上眼瞼後退に対するαブロッカー(5%guanethidine)の点眼(2回/日)の効果に関して報告した。点眼前と点眼後1〜3か月の瞼裂幅を比較して効果を判定した。有効と判定された症例の割合は以前の報告と比較してかなり高率であり,効果は,甲状腺のコントロールの状態とは関係なく,また罹病期間との関係もみられないとの結果となった。また副作用に関してはあまり強いものはみられなかった。この種の薬剤に関しては使用している施設がいくつかあり,有効例の多いことに関して,また上眼瞼だけではなく下眼瞼に対する効果などを中心にいくつか質問があった。効果に関しては症状の軽い症例のほうが効果が高いようであった。また反復使用による効果の低下などについても論議されたが,はっきりした結論は得られなかった。

 実際に甲状腺眼症の上眼瞼後退に対する治療は,なかなか苦労することが多く,その病因に関しても単純ではない。αプロッカーの点眼のみでこれほど効果が高く,副作用も少なければ,今後もっと一般に普及する可能性があると思われた。また演者らは,現在βブロッカーの効果に関しても検討中とのことである。入手がより容易な点眼薬であるためその結果にも注目したい。

基本情報

03705579.52.5.jpg
臨床眼科
52巻5号 (1998年5月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

文献閲覧数ランキング(
9月21日~9月27日
)