臨床外科 36巻4号 (1981年4月)

特集 術後1週間の患者管理

開頭術 上田 聖 , 平川 公義
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 開頭術を施行される原疾患には多くの種類があり,術式,手術侵襲も異なる.したがつて各各に特徴的な注意点が存在するのでその全てを網羅することは不可能であるが,ここでは開頭術後の基本的問題を中心に記述しながら,簡潔にそれらの問題点にも触れたいと思う.

 開頭術後数日間はICU(またはNCU)に収容し,意識レベル,神経学的徴候,vital sign,水分出納と電解質を経時的にチェックする.これにより術後発生する脳浮腫,後出血,尿崩症,電解質異常,脳血管攣縮,水頭症,過高熱,髄膜炎等を早期に予見し,確定診断すると同時にその対策に時期を失しないことが肝要である.収容される期間は通常2〜3日間であるが,患者の意識や全身の状態が悪い場合,またそれらが良好でも外ドレナージ施行中,または尿崩症で水分のコントロールが困難な場合はその期間収容する.

甲状腺癌手術 河西 信勝
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 定型的な甲状腺癌手術における,特異的な合併症として,①反回神経損傷による嗄声,誤嚥,呼吸困難,②上皮小体損傷によるテタニーおよび③甲状腺亜全摘または全摘に伴う機能低下がある,しかし甲状腺癌手術が拡大されるに従つて,さらに種々の合併症を伴つてくる.すなわち,④内頸静脈切除,⑤胸鎖乳突筋切除,⑥副神経切断,⑦頸神経切断,⑧迷走神経切断,⑨リンパ本幹切断,⑩横隔神経切断,⑪交感神経切断,⑫総頸・外頸動脈切断,⑬鎖骨下動脈切断,⑭椎骨動脈切断,⑮舌下神経切断,⑯喉頭・甲状軟骨の部分切除または全摘,⑰気管の部分切除あるいは切除,⑱下咽頭・頸部食道の部分切除あるいは切除,などの問題があり,これら拡大手術の内容は往々にして,耳鼻咽喉科領域にまたがるため,この対応に苦慮することも多い.いずれにしても,これら合併症は時に致命的問題を発生することがあり,術後管理上大切である.

バセドウ病手術 小原 孝男
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 バセドウ病の治療法としては,手術のほかに薬物療法とアイソトープ療法がある.個々の患者の手術適応は,手術のほうが薬物療法を続けるより寛解が早い,あるいはアイソトープ療法より機能低下症の発生率が低いといつた比較の問題で決められる.従つて手術を行なうからには,その欠点である手術合併症をできるだけ起こさないように努めることが重要である.

 ところで,バセドウ病手術の合併症の大部分は,術者の経験不足と未熟な技量に基づいて起こり,経験に富む外科医が行なえばほとんど問題がない.また術後患者管理の優劣に関係して生じるものもほとんどない.しかし,一度発生すると,ごく短時間のうちに直接生命に影響するものが少なくない.そうした面で術後患者の状態に細心の注意を払い,不幸にして合併症が起きた場合には,迅速かつ適切な処置を行なう必要がある.

 手術終了直後から術後2日目くらいまでに起こる可能性があり,緊急処置を要する合併症として,甲状腺クリーゼ,出血,反回神経麻痺,テタニーなどがある.今日では通常,薬物療法によつて甲状腺機能が正常に落着いてから手術を行なうので,甲状腺クリーゼが起こることはまずない.しかし,最近,血中甲状腺ホルモン濃度に無関係に,インデラールだけの前処置で甲状腺ホルモンのβ受容体刺激状態を抑えることにより安全に手術できることが判明しているが,この方法で手術した場合にはやはり甲状腺クリーゼ発生の危険がある.

 その他にバセドウ病手術では,ドレーンをできるだけ早く抜去し,抜糸を術後3日目までに行ない,またテープで創の開大を防ぐなど手術痕の醜形を残さないように配慮することが大切である.

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 食道癌患者の特異点は1)比較的高齢者が多い,2)術前,通過障害のため低栄養状態となつていることが多い,3)術前照射の影響(白血球減少,血小板減少,免疫能低下など)のみられることがある,などである.(胸部)食道癌手術では1)手術部位が頸部,胸部,腹部の三カ所にわたる.2)開胸操作を伴い,術中開胸側の肺は虚脱の状態におかれる時間がながい,3)側臥位のため非開胸側へ痰,分泌物が貯留しやすい,4)長時間の全身麻酔の影響で,肺界面物質活性低下→肺虚脱→喀痰の粘稠度増加による喀出困難がみられる,5)リンパ節郭清,特に気道周囲リンパ節,迷走神経肺枝付近の郭清が行なわれ,術後咳嗽反射低下がみられることがある.術後は呼吸管理,肺合併症の防止が最も重要である.

食道静脈瘤直達手術 出月 康夫
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 食道静脈瘤直達手術の対象となる患者は,慢性肝不全による低アルブミン血症,黄疸,腹水,血液凝固障害,糖代謝異常などをもつものが多く,手術のリスクは悪い.また本術式の重要なポイントである広範な血行遮断は,必然的に食道離断部の循環障害をもたらし,吻合部の創傷治癒には極めて不利な条件が重なつている.したがつて術後管理にはとくに細心の配慮を要する.

 術後1〜2日間はICU管理を行ない麻酔および手術侵襲による循環血液量,水分および電解質平衡,酸塩基平衡などの乱れをできるだけ早く補正して元へ戻すことが重要である.また積極的に酸素療法を実施して組織のアノキシアを防ぎ,新鮮血漿の大量投与により手術侵襲による肝不全の増悪の回復を待つことが大切である.肝硬変患者の予備力は極めて幅が狭いので,合併症の発生は致命的な結果を招くことが多い.

気管支形成術 石原 恒夫
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 気管支形成術後の管理はこの手術に特有なものもあるが,この手術をうけた患者の原病によつても多少異なるので最近広くこの手術が行なわれている肺癌症例を対象に気管支形成術後の管理を述べることにする.

 気管支の再建をともなう肺切除術後の患者と通常の肺切除術後の患者の管理においてもつとも異なるところは術後の呼吸管理である.気管支切断にともなう神経遮断の影響が術後どこまで現われているのかは不明であるが,喀痰の喀出には通常の肺切除術後の症例よりも注意を払う必要がある.特に気管分岐部を切除した症例では術後自力で喀痰を喀出できないものが多い.気道再建をともなわない肺切除術後の患者の経過ともつとも異なる点である.

 術後の喀疾の貯溜は肺合併症の原因となるので,喀疾の排除は気道再建手術における術後管理のポイントである.

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 近年,先天性心疾患の開心例の対象は年齢面でも,疾患面でも著しく拡大され,それに伴つて術後管理も複雑となつて来たが,特に乳幼児ではきめの細かい管理が必要で,そのためには人工呼吸器,モニター類,点滴注入装置等にも最新の設備を要求されると共に,医師,ナースのtrainingも重要である.ICUでの循環と呼吸管理の良否は手術予後に決定的な役割を果すもので,外科手術手技と相俟つて患者の生命を左右する重要な柱である事を念頭において対処すべきである.

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 後天性心疾患の開心術後患者は,多くの場合に心筋障害を伴い,生体各機能の予備能力が手術侵襲,麻酔の影響,代謝の変動などによつて低下し,術直後が最も危険な状態にあるので,集中管理が必要である.

 術後管理は体外循環を終了した時点から始まり,素早く全身状態をチェックし,各種モニターを駆使して変動する患者の病態を迅速に把握して対処しなければならない.術後数日間はICU管理にて循環,呼吸を中心として異常の補正,予防に細心の配慮を要する.

肺切除術 平田 正信
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 近年肺切除術の対象は,肺癌に代表される腫瘍性疾患が大部分であり,したがつて手術患者の年齢構成は,60歳以上の高年齢層が多くなつている.加齢にともなう肺の器質的変化とともに,循環系,代謝系等の合併疾患をもつていることが多く,術後の管理も,呼吸管理のみならず,血行動態,代謝異常の有無,電解質バランス,栄養状態の把握等,キメ細かい対処が要求される.

 術後は第2病日までICUに収容し,呼吸,循環動態の経時的なチェック,過不足のない輸血,輸液,動脈血ガス測定による適切な酸素投与,必要に応じて電解質,酸塩基平衡の補正を行ない,患者を最良の状態におくように努力する.とくに高齢者においては,術後無気肺に陥いることが多いので,気道の清浄には細心の注意が必要である.また肺切除後には,不整脈の発生がよくみられるので,心電図によるモニタリングが必要となる.

 肺切除後の合併症は,急速に重篤な状態となる可能性があり,術中はもちろん,術後においても,合併症の発生を未然に防止するよう努力することが肝要である.

胃部分切除術 大久保 高明
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 胃部分切除は,現在広くおこなわれており,術後管理といつても,他の消化管手術と根本的な差異はない.術前,緊急症例,合併症の有する症例などかなりpoorな症例もあるので,術前,事情の許す範囲内で,術前病態生理をはつきり把握することが必要である.一般的な合併症を有するものについては,他にゆずるとしても,胃癌では,広範なリンパ節郭清をともなう胃亜全摘,噴門切除,またあるstage以上では積極的に合併切除もおこなわれ,いわゆる過大侵襲例も多い.これらには,術後合併症の発生に十分な配慮が肝要である.他方,胃・十二指腸潰瘍に対しては,迷走神経切離合併例(Pyloroplastyを含む,われわれは別図の如き術前胃液分泌態度により術式を選択)も広くおこなわれるようになり,迷切(選胃迷切)+幽門洞切除術では,残胃運動減弱による術後早期胃内容停滞が,S. P. V(近位選迷切)合併術式には,術後アカラシヤ症状が問題となつている.

胃全摘術 田中 乙雄 , 武藤 輝一
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 胃全摘術の対象となる患者は,癌腫のために貧血,低栄養状態にあり,さらに老人では高血圧,糖尿病等に加え心,肺,肝,腎などの予備能力が減少していることが多い.しかも今日上部胃癌などの進行癌に対しては,積極的に開胸または胸骨正中切開下に広範囲なリンパ節郭清や周囲臓器の合併切除がなされるようになり,その手術侵襲は,はなはだ大きくなつてきた.したがつて術後は綿密な管理が必要である.

 術後管理のチェックポイントは,術直後〜24時間は,ショック,後出血,2〜4日目は肺合併症,4〜7日目は縫合不全となり,これら合併症の発生を予防するため,術後は,麻酔および手術侵襲による循環血液量,水分および電解質平衡,酸塩基平衡の乱れを早めに補正し,十分な酸素療法,吸入療法,肺理学療法を行なうとともに,これら合併症を念頭において管理することが重要である.

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 Appleby手術は胃悪性腫瘍に対する胃全摘術あるいは胃噴門側切除術の際に完全なR2のリンパ節郭清をおこなう術式で,腹腔動脈および総肝動脈を切離し,さらに膵体尾部・脾臓合併切除をおこない,腹腔動脈周囲リンパ節の徹底的郭清をおこなう手術である.従つて通常の胃全摘術あるいは胃噴門側切除術の術後管理に加うるに肝動脈系の血流減少に伴う肝・胆道系への影響,膵断端への注意,脾摘による血小板の増多に留意する必要がある.

 肝動脈血流量の減少による肝機能の異常は術直後から3日目までが著明であり,少なくともこの間は酸素テント内で比較的安静に保つことが望ましい.胆道系および残存膵の虚血性変化によると思われる急性壊疸性胆嚢炎や膵液瘻の発生を認めることもあり,手術時にドレーンの留置部位に留意すると共に術後もドレーンからの流出物に十分注意しなければならない.

乳房切断術 金杉 和男
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 乳癌における乳房切断術は標準術式としての定型的乳房切断術が挙げられるが,大胸筋や小胸筋を保存して本法の縮小を試みる非定型的乳房切断術(Modified radical mastectomy)や胸骨旁郭清や鎖骨上郭清を付加し徹底した郭清を追求する拡大根治術(Extended radical mastectomy)も実施されている.各術式により術後管理は多少異なるが,表在性臓器である乳房の切断による手術侵襲は比較的軽度である.そのため全身管理は他疾患の一般的な管理方法と差異は少ないが,むしろ大きな皮膚弁を縫合したり,植皮を施行したり,血液や滲出液を排出するためのリリアバッグやヘモバックなどと接続したドレーンの管理が大切で,その巧拙が局所の創傷の治癒に大きな影響を与える.また術後の上肢の運動方法は静脈やリンパ液の循環障害による浮腫や肩関節の運動制限の予防に有用であり,術直後より対処する必要がある.

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 イレウス手術の対象となる患者は,術前から脱水,電解質失調,低栄養などの代謝異常を有するものが多い.ひとくちにイレウスといつても,機能的イレウスと機械的イレウスではその成因および病態が異なり,後者はさらに腸管の血行障害を伴わない単純性イレウスと血行障害による腸管壊死の危険性を有し緊急手術を要する複雑性イレウスとに分けられる.そのうえ,手術も排膿・ドレナージまたは癒着剥離や整復だけで終るものから腸吻合や大量腸切除を余儀なくされるものまであり,術後管理も一様でなく症例によつて取扱い方が異なる,また,これらイレウス術後には,術直後から腸麻痺や腸癒着など術後イレウスの発生因子が多く存在しているので,この点とくに注意を払う必要がある.

 術後早期における患者管理のポイントは,術前・術中から続いている循環血液量,水分・電解質バランス,酸・塩基平衡の乱れをできるだけ早期に是正することにある.一方,腹膜炎による麻痺性イレウスの手術後には腸運動の回復が遅延することが多いので,術直後から積極的に腸運動の促進をはかることが重要である.このほか,腸切除例や腸吻合例では,当然縫合不全の危険性があるので,ドレナージ,吸引などの予防対策を講じることとともに早期発見,早期治療を心がける,また,術後長期にわたる経口摂取不能例や大量腸切除例では,IVHなどの積極的栄養法を行ないながら術後消化機能の回復を待つことが大切である.

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 小腸大量切除術が行なわれる対象疾患は,絞扼性イレウス,悪性腫瘍による小腸の広範な浸潤,腸間膜の腫瘍,クローン病,腸間膜動脈血栓症などであるが,いずれにしても腸管通過障害を伴う例が多く,しばしば低蛋白血症,低アルブミン血症,貧血の認められるままで,時に水分および電解質平衡,酸塩基平衡も乱れたまま緊急手術となることもあるので,術後にはこれらの乱れをできるだけ早く補正して,正常に近づける努力を払わねばならない.

 小腸が大量切除される場合には,しばしば回盲弁および大腸の一部が切除されることがあり,また小腸瘻が造設されることもあつて,術後早期より頻回の水様性下痢をみることが多く,他方,小腸大量切除術後には胃液分泌の亢進がおこることも多いので,水分および電解質の喪失には十分注意しなければならない.

 術直後の経口摂取は,下痢を増悪させるので絶食とし,もつぱら経中心静脈的に栄養を補給せねばならない.

 吻合部の縫合不全は致命的であるので,ドレーンからの滲出液の性状に気をつける.

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 結腸は小腸に比べて腸内容が多く,しかも細菌に富むこと,腸管壁がうすいうえに血流が乏しいことが特徴であつて,そのために縫合不全や感染症をおこしやすい.とくに直腸癌手術は大出血をおこしやすい.したがつて腹部手術一般の術後管理のほか,とくに術後感染,術後出血が最も重要な問題である.術後感染の予防には腸内容の排除や腸内細菌の抑制などの術前と術中の処置が重要である.術後の予防的抗生剤は広域スペクトルのものをやや多い目に投与する.術後は熱型の異常,腹壁・会陰部の創感染の有無に注意し.ドレーンの排出物を詳細に観察する.直腸切断術直後には骨盤内ドレーンよりの出血,3日目以後はドレーンよりの排液に注意する.縫合不全の際には軽度ならば絶食・高カロリー輸液で治癒させうるが,炎症が非限局性ならば吻合部または口側腸管に人工肛門を造設する.結腸・直腸術後の感染症は細菌性ショックにおちいるので,早期に適切な処置を講じなければならない,腸閉塞症,重篤な炎症性腸疾患,広範腸切除術では水分,電解質のバランスに留意し多量出血後には術直後からヘマトクリット値と血清電解質を繰り返し測定し,適正な輸血(液)を行なうべきである.

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 人工肛門造設術の術後1〜2週の管理の要点は,術後2次的に開口させるものについては,24〜48時間後に必要な開口操作を加えることが一つ,次にすべての例について,ストーマの状態を観察し,出血,壊死,陥没その他の合併症の発生を監視すること,それから,適当な集便装具の使用で便の排泄の管理を行ない,同時にストーマ周囲の皮膚のびらんの防止,また一旦発生したらその治療を行なうことが第二,そしてこれは術後2週頃に入ることだが,第三に社会復帰の準備として人工肛門のリハビリテーションに関する指導を行なうことである.

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 潰瘍性大腸炎の外科的治療はその病因論に定説のない今日,まだ確定的なものは存しない.したがつて,どうしても内科治療に頼ることとなり,その結果副腎皮質ステロイド剤の影響を無視しての手術は出来難い.

 本症の手術適応として絶体適応例(大出血,穿孔,腸閉塞,急性中毒症状,急性電撃型など)はそのほとんどが緊急手術となり,相対適応症例(慢性期のものでほかの療法では正常生活に復帰出来にくいと思われるもの,たやすく再発を繰返すものなど)はほぼ待期手術と考えてよい.

 そこで,本症の術後管理は副腎皮質機能不全と術後出血,縫合不全,感染が主体となり,緊急手術例ではpoor risk例が多く,一層の濃厚管理が必要となる.

 とくに本症の根治性を求めた術式は大腸大量切除となるので,手術侵襲も比較的大きく副腎皮質ステロイド剤長期使用例の副腎機能不全問題を含め,水分電解質の管理が人工肛門造設例のその管理を含めポイントとなる.

 術後合併症など異常状態の早期発見の原則は,複雑な臨床検査もさることながら,体温,脈拍数,血圧,尿量比重,呼吸数その他の臨床症状の総合的把握と判断であることを銘記していただきたい.

消化管瘻の手術 小平 進 , 勝又 貴夫
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 消化管瘻には消化管皮膚瘻,消化管内瘻,消化管と他臓器との瘻孔形成などがあり,また消化管の瘻孔の部位により種々の病態を呈し,管理に関しても一律には述べられない.ここでは腹部外科手術後に比較的多くみられ,しばしばその管理に難渋するhigh outputの小腸皮膚瘻の根治手術における術後管理を中心に述べる.小腸瘻の手術に関しては言うまでもなく,瘻孔の発生から手術に到るまでの術前管理が最も重要である.術直後の管理においても術前より存在する可能性のある脱水,電解質異常,低栄養状態に対する考慮が重要であり,また何らかの形で存在する感染に対する配慮などにより,術後の創感染,縫合不全,敗血症の予防,および対処に細心の注意を払い,致命的な合併症を惹起せぬようにすることが大切である.これら以外は通常の小腸切除術の術後管理とかわるところはないと思われる.

肝切除術 川原田 嘉文
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 肝切除の対象となる症例には病巣以外の肝が全く正常なものから,黄疸や慢性肝炎,肝硬変などの肝障害を合併するもの,あるいは外傷など出血ショック下で肝切除が必要となる場合もあり,さらに切除量により残存肝機能がことなつてくるため,肝切除後の術後管理を一律に述べることは容易ではない.一般に肝障害がない場合の1区域切除,例えば外側区域切除などでは,特別の術後管理を必要とせず他の一般腹部外科のそれと異なることはない.

 ここに記載する肝切除術後の一週間の患者管理は,主として二区域以上の肝広範囲切除,肝硬変合併例では1区域以上の切除や黄疸合併例の肝切除などを対象とした,術後管理を十分に行なうには,まず術前の患者の状態,肝機能,肺機能,腎機能,さらに肝予備力,網内系機能や凝固系機能を検索してoperative riskを十分に把握し適切な術式を選択することが大切である.肝広範切除特に肝硬変合併例では術後肝障害のみならず肺腎障害などmultiple organ failureを発生し易く多角的な管理が必要である.すなわち術後1週間はICUで観察し, vital signやintake&outputのチェックのみならず,肝,肺,腎機能や血行動態も十分に把握し,特に呼吸管理や肝機能障害に注意して術後管理を行なうことが必要である.

胆道外瘻術 佐々木 英制 , 円谷 敏彦
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 胆道外瘻術の適応疾患は胆石症から胆道悪性腫瘍にいたるまで多岐にわたり,また黄疸という特殊な病態を伴う場合が多いので,思わぬ術後合併症を惹起することがある.術後管理の要点は,外瘻チューブの保全,胆汁排泄量の確保,水分・電解質バランスの維持,出血・胆道感染および腎障害の予防と処置などを中心に細心の配慮を行なうことにある.

虫垂炎手術 豊島 宏
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 汎発性腹膜炎や膿瘍形成があつても,急性虫垂炎による死亡例はほとんどみられなくなつた.これは抗生剤の開発,術後の呼吸・循環管理や補液法の進歩,肺合併症や静脈血栓症防止のための早期離床などによるところが多い.

 しかし,稀ではあるが術後出血,遺残膿瘍,腸瘻,腸閉塞などの術後合併症により困難な経過をとる症例もみられる.これらは術中の操作や手技と関連することが多いが,早期に発見し適切に対応しなければ不幸な結果を招くことにもなりかねない.このためには,包交時に手術創やドレーンの排液の状態を観察し,胸部・腹部を丁寧に診察し,発熱などの変化をとらえることがまず大切である,再開腹については手術時期や術式を慎重に決定する,腸瘻や単なる腸管癒着症などはPolysurgeryのきつかけともなるので,あせらずに対処する必要がある.

膵頭十二指腸切除術 尾崎 秀雄
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 膵頭部癌,膨大部領域癌に対する膵頭十二指腸切除は,とくに前者においては術前一般状態が不良の症例が多く,かつまた,平均余命の延長と共に高齢化している.従つて,術前一般状態の改善をはかるべく,低蛋白血症には蛋白の補給,ketosisにはブドウ糖とインシュリンの点滴注射,高齢者では減黄処置で十分に黄疸をさげておく必要があり,またビタミンK剤の投与,出血傾向に対する処置等が必要である.膵頭十二指腸切除の術後は一般上腹部外科手術と変わるところはないが,あえてその特異な面をあげるならば,手術時間が長くなること,吻合部が多いこと,とくに膵腸吻合部に面倒な問題がおこりやすいことである.

 術後合併症として,縫合不全,消化管出血,肺炎などが多くみられるので,これらに焦点を合わせて経過をみる必要がある.

胆嚢摘出術 中間 輝次 , 中山 文夫
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 胆嚢摘出術の術後管理は特に全身状態の不良や高度黄疸が存在しない限り一般の上腹部手術とほぼ同様である.術後管理は循環系,呼吸系等の全身管理と腹部創管理に分けられる.局所的術後合併症としては術後出血,胆汁漏出,腹膜炎,黄疸出現,胆管炎等があり,その早期発見と対策が重要である.胆嚢摘出術そのものは比較的容易であつても胆道系への副損傷の予防,止血の確認,術中胆管造影による胆道系精査と十二指腸への造影剤の排泄確認,ウインスロー孔周辺へのドレーン挿入等を正確に行なわねばならない.ドレナージが十分作動していれば不測の術後出血や胆汁漏出の早期発見および経過観察が容易に行なえる.ときに再開腹による止血操作,ドレーン再挿入,胆管または乳頭部嵌頓結石の除去,PTC,ERCP,胆汁瘻からの瘻孔造影等による胆管狭窄部や閉塞部の検索,可及的早期の胆道再建術施行等が必要となることがある.

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 膵管空腸吻合術は慢性膵炎,膵石症がその主な適応疾患である,従つて,必然的に膵実質障害に伴う糖代謝障害が高率にみられるためこの方面の術後管理がまず第1に重要となる.血糖,尿糖,ケトン体のチェックを厳重に行ないインスリンによるコントロールをうまく行なうことが肝要である.

 第2には膵実質そのものに侵襲が及ぶため術後の膵炎が問題となる.一旦これが発生すると縫合不全,出血などをひきおこし予後に重大な影響を及ぼす.術中の愛護的操作が何より必要なことであるが,術後は全身状態,血中尿中アミラーゼを追跡しつつ抗生物質による感染予防につとめ,抗トリプシン剤を十分に使用する.

 このほか,大酒家が多いので栄養補給にも注意し,膵尾側切除,摘脾,乳頭形成術などが同時に施行されることがあるので創処置,ドレーンの管理にも細かく気を配る.

膵全摘術 鈴木 敞
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 膵全摘術の術後管理における最大のポイントは糖質管理である.すなわち,インスリン分泌途絶による血糖上限規制因子の障害と,膵グルカゴン分泌途絶による血糖下限規制因子の障害とが同時に共存するという特異なる術後病態に対処せねばならない.かかる糖代謝異常下にあつて,ケトアシドージス以上に留意すべきは低血糖ショックである,そのために,膵全摘後1週間の血糖値として,術後週前半のごく急性期は150〜350mg,週後半は200〜250mg辺にそれぞれ維持するように調整する.具体的には,投与糖液はブドー糖のみとして,その5〜15gにつきレギュラーインスリン1単位の割合で均等に混ぜ,1日200g以上を中心静脈内に持続投与する.

 管理上の第2のポイントは栄養補給である.膵全摘による膵外分泌機能脱落は,広汎郭清による自律神経叢切離後の病態ともあいまつて重篤な消化吸収障害をもたらすので,術後は高カロリー輸液を採用するのがよい.

 上記した糖質管理と栄養補給にさえ留意すれば,あとは後出血,感染,縫合不全など,通常の腹部手術後合併症に対する場合とほぼ同じ要領で,十分に対処しうる.ただこれら合併症発来と共にインスリン必要量も変動(通常は増加)することを知つておく必要がある.

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 脾摘の対象になる疾患には種々なものがある.大別すると①門脈圧亢進症によるもの,②血液疾患,③その他の疾患(腫瘍,外傷など)がある.これらの疾患の特性に基づいて手術計画をたて,術後管理を行なうことが肝要である.

門脈下大静脈系吻合術 磯松 俊夫
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 門脈下大静脈系吻合術(遠位脾腎静脈吻合術)の適応となる患者は,種々の程度の肝障害をもつており疾患別にいえば肝硬変症が最も多い.肝硬変症は代償性であれば,ある程度の侵襲にたえるが,肝予備力が低下しているので,あらゆる術後合併症の予防につとめなければならない.それらを要約するならば術当日および術後1日は,水分電解質バランスを主体に十分な循環血液量・心拍出量の確保と呼吸管理につとめ,組織anoxiaことに肝anoxiaを来たさないようにする.術後2日以降は栄養に主体をおいた輸液管理と腹水に対する処置である.遠位脾腎静脈吻合術は,術後およそ3日で経口摂取可能となるが,経口摂取不足の補充,術後肝機能改善のため補液は術後12.7±2.9(SD)日行なう.腹水,乏尿にはラシックス,エデクリールを使用し,低蛋白血症には新鮮凍結人血漿を1日500ml投与する.術後必要投与期間は11.6±4.5(SD)日であつた.

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 下肢深部静脈の急性血栓症に対しては,

 1) 血栓除去による静脈還流の改善

 2)肺塞栓症の防止

を目的として早期の血栓摘除が行なわれている.静脈血栓摘除の後療法としては血栓再発を予防するために抗凝血薬投与が必須であり,またその合併症としては抗凝血薬投与に伴う出血ないしは血腫形成,術中操作のさい剥離した血栓による肺塞栓症があげられる,以下.この2点を中心に静脈血栓摘除の術後管理について述べる.

腎臓摘出術 遠藤 忠雄
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 近年,日本も長寿国となり,高齢者に対する腎摘出も増え,また医療技術の進歩により腎不全患者に対する腎摘出術も積極的に行なわれている.この腎摘出術も,患者の一般状態,原疾患及び周囲諸臓器との関連によりその手術方法が異なる.また手術方法により手術侵襲も異なるため,術後患者の管理も,これら諸要因により大きく変つてくる.

 腎摘出にあたつて,腎への到達法は種々の変法もあるが,要約するとその頻度の多いものから挙げると経腰的到達法,経腹的到達法,経胸的到達法,経背的到達法に分けられる.

 これらの手術で,患者に対する手術侵襲の最も大きいのは,経腹的腎摘出術と経胸的腎摘出術である.日常最も多く行なわれるのは経腰的腎摘出術,次いで経腹的腎摘出術で,術後管理の要点もこの二者が焦点となる.

腹部大動脈瘤手術 多田 祐輔
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 腹部大動脈瘤の手術対象者は一部の例外を除いて,高齢者であり,種々の動脈硬化性合併症を潜在的あるいは顕在的に持つている.

 また,肺には,気腫や,慢性気管支炎などの合併する事も一般より高い.

 従つて術後管理にはこの点の配慮が必要となる.

 一方,人工血管使用および大血管吻合にともなう問題として,術後出血や感染防止の問題 長期安静に伴う問題,経口投与開始時期の問題,歩行開始時期の問題などがある.

 まず術後1〜3日は,循環動態の把握,尿量の維持につとめ,呼吸管理としては,酸素テント下で,高湿度環境下で,咳疾の排出を積極的にすすめる.輸液は,尿量が維持出来る程度にややdry sideに置く様にする.安静は少なくとも10日間は床上安静とし,この間,拘禁による種々の精神症状の発生に留意する.腹部は術後腸管麻痺の傾向をみることが多く,胃カテよりの胃液の排出量が術後数日より増量する傾向がある.従つて排ガスがあつても,急いで食餌摂取を開始しない方が安全であり,少なくとも術後1週間は待つた方が良い,歩行開始は術後10日目位より許可する.

 以上が腹部大動脈瘤術後の一般的な管理であるが,年齢,術前合併症の有無によつて,適宜修飾されるのは当然である

腸間膜血栓症手術 松本 昭彦
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 腸間膜梗塞症(mesenteric infarction)は極めて死亡率の高い疾患である.原因は腸間膜動脈の血栓,塞栓閉塞症,腸間膜静脈の血栓症,腸間膜血管の非閉塞性腸間膜梗塞症など病因は単一ではないが,いずれにせよ疾患は重篤で,保存的治療ではほぼ100%,外科的に治療を行なつても80〜90%の死亡率が報告されている.この死亡率は,血管造影など診断法が格段に進歩した今日といえども,過去40〜50年間ほとんど変つていないことが,この疾患の重篤さを物語つている.このように死亡率が高いのは,この疾患に特有な症状がなく,診断が遅れ,手術治療の時期を失することによる.腸間膜動脈塞栓症では塞栓摘除術の適応になることもあるが,しかし先にのべたいずれの病因であるにせよ,腸管の広範切除術になることが多い.

 本症では全身状態不良のまま手術を行なわねばならないことがほとんどであり,汎発性腹膜炎,ショック,敗血症,出血傾向,血液あるいは血漿の大量漏出など全身管理の上でも極めて困難な状態であるのに加えて,広範囲腸管切除など術後の栄養管理に大きな影響を与える要素が加わり術後管理を一層困難にするのである.そこで術後管理は綿密なプログラムで行ない,治療が後手にまわらないようにすることが必要である.治療の中心になるのは感染,ショックの防止,凝固,線溶系を出来るだけ正常状態におくこと,それに栄養管理である.呼吸器合併症もほぼ100%に発生すると考えねばならず,胸部X線写真に異常が現われる前に予防的な治療が要求される.

前立腺摘出術 岡本 重禮
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 前立腺摘出術は前立腺肥大症に対する被膜下前立腺腺腫摘除術の総称であり,大別して開放的手術と内視鏡的手術があるが,手技の如何を問わず,対象が高齢者であるため,老人に共通する生理学的特殊性をふまえた術後管理が必要である.

 すなわち全身的には心,肺,腎機能の余備力が予め低下していることを予想し,術後これらの庇護にことさら努め,合併症を防止する.

 局所的には出血および感染のコントロールが最も重要であり,手術さえ成功していればこの両者を手ぎわよく管理することにより,前立腺摘出術は極めて安全な手術となつている.

 最近では手術器具および材料の進歩と相俟つて,この両者の管理も容易になつてきてはいるものの,前立腺摘出術の本質にからむ問題もあり,依然として重視せざるをえない.

尿管結石摘出術 福島 修司
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 尿管結石摘出術が行なわれるのは尿管結石症の中でも1/3程度である.手術の対象となる年齢は青壮年層が多い,合併症は少なく,手術のリスクも少ない.

 手術時の麻酔は上部尿管の結石では吸入麻酔がよいが,下部尿管では脊髄麻酔で十分行なえる.

 手術後尿管切開部より尿の漏出が見られることがあるので創部には必ずドレーンを置く.

 尿漏出は患者に不快な感じを与え,また不安を抱くようになり,創感染にもつながるので,多量かつ持続する場合には低圧持続吸引器を使用して,ドレーンより吸引する.

 手術後7日を過ぎてなお尿漏出が続く時には静脈性腎盂撮影(IVP)を行ない,尿路通過障害の有無を確認する.

子宮摘出術 伊藤 博之
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 子宮摘出法には,腹式と腟式があり,さらに術式としては,広汎性子宮全摘術(腹式):単純性子宮全摘術(腹式,腟式)ならびに子宮腟上部切断術(腹式)などがある.各術式は疾患の種類と程度,患者の年齢,妊孕性などによつて決定される.本稿では,日常最も繁用されている腹式単純子宮全摘術の術後管理を中心に述べることにする.

 本手術の対象となるのは,子宮筋腫,子宮内膜症,子宮頸部癌(0期),子宮体部癌(1期)などであり,比較的mildな症例が多い.しかしながら,婦人科患者,なかでもとくに子宮筋腫の場合には,術前から貧血を認め,術前術中に輸血を必要とすることも多い.また近年,婦人の高齢化が著しく,ことに子宮癌患者では,高齢に加えて,低蛋白血症や心肺合併症を有する,いわゆるhigh risk例症も増加傾向にある.それゆえに手術に際しては,十分な術前検査とそれにもとづく術前準備が必要であろう.

卵巣摘出術 寺島 芳輝 , 安田 允
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 卵巣には腫瘍のhot bedといわれる位,原発,転移性を含め,多種類の良,悪性腫瘍があらゆる年齢層に発生する.したがつて,術式も腫瘍の良,悪性,年齢,妊娠,分娩歴などにより,それぞれ異なり,おのずと管理方式も違つてくる.良性ならば,老年期を除き,できるだけ卵巣の機能保存に努め,嚢腫摘出術を原則とするし,悪性であれば,単純子宮全摘出術+両側付属器摘出術+大網切除術を基本術式とし,さらに進行癌であれば,腸管切除などの外科手術も加わり,転移巣を含めた腫瘍の切除を積極的に行なつている.それゆえ,手術侵襲の程度により,おのずと術後管理も異なつてくるが,vital signsのチェック,術創部からの出血,尿量の測定,感染のチェック,循環器,呼吸器,消化器系の管理など,他の腹部手術と変つた点はないけれども,骨盤内の手術故,血液や滲出液が貯溜し,感染源となりやすいので,術後の死腔炎や尿路感染には特に注意すべきである.

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 成人ソケイヘルニア,大腿ヘルニアの予定手術では,創感染と出血に注意すれば術後管理上特に問題点はなく,早期起床と離床,平常どおりの食事摂取で差支えなく,1週間後に抜糸して退院できる.しかし,鼠径部附近の成人ヘルニア患者には高齢者が多く術前から潜在性の腎障害や呼吸障害(慢性閉塞性肺疾患)を持つている例もあるので,体表外科とはいえこれら臓器の術前チェックが必要である.喀痰排出困難な高齢者には術前から喀痰溶解剤,抗生剤を用いたウルトラソニックネブライザー使用による狭義のlung Physiotherapyは咳嗽による術後の腹圧上昇を予防するのに有効である.嵌頓ヘルニアによるイレウス症状,嘔吐などによる水分電解質異常および局所汚染などが予想される場合には,術前・術中・術後一貫した全身管理が必要.絞扼による壊死腸管切除後の管理では十分な患者観察と感染予防が重要である,麻酔法は簡単で安全な腰麻や局麻を選び特殊な状態を除いてできるだけ気管内挿管による全麻を控えると高齢者でも術後管理が容易である.

遊離植皮術 村上 陽太郎
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 全身管理は特殊な症例を除けば一般的手術に準じるが,安静度,補液,食事,発熱,鎮痛剤・抗生剤の投与について若干の注意が必要である.

 局所管理は,採皮部の場合,全層採皮では一期的に縫合閉鎖するか,さもなければ分層植皮で採皮部を覆う.分層採皮では,採皮片の厚さによつて採皮部の上皮形成が完了するのに10日〜3週間位かかるので,その間の処置を誤まると醜い瘢痕を残したり,ケロイドを生じたりする事がある.採皮部に直かに当てた軟膏ガーゼの交換を頻回に行なうと,せつかく,再生しつつある上皮を剥すことになるので包交の時期や方法については慎重を期さねばならない.

 植皮部の処置については,局所の安静固定,うつ血による血行障害の防止,感染の予防,血腫・漿液腫発生の防止及びその対策,抜糸の時期等に十分留意する必要がある.

腸重積症 木村 健
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 発症後長時間(24時間以上)を経た腸重積症例は,高圧院腸による整復が不成功に終ることが多い.また,ポリープ,メッケル憩室など,腸管の器質的病変によつて起こる腸重積においても,高圧浣腸による整復はきわめて困難である.これらの症例が手術適応となる.腸重積症全体の10%程度を占める.手術症例の約半数は観血的整復,残りの半数は腸切除の適応である.術前長時間を経過した重症例では腸瘻が造設される場合もあるがまれである.

 腸瘻造設例を除くと,重積腸管の観血的整復例では,術後24時間以内に経口投与が開始され,術後2〜3日目に退院するが,腸切除例は,術前イレウス状態が長期間継続した症例が多いので,注意深いケアを必要とする.とくに,腸管機能回復機転の判断が重要である.ほとんどの症例で,特に合併症がなければ1週間以内に退院が可能である.

小児のソケイヘルニア 堀 隆
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 小児ソケイヘルニアの手術は日常的な小手術であり,手慣れた術者により行なわれれば,術後管理はほとんど何もすることはないといつてよい位である.しかし本症は卒後間もない若い医師によつて手術されることが多く,初めのうちはどうしても何がしかのtroubleに出会うものである.

 術後のtroubleとしては,手術手技の不手際による出血,局所の浮腫,創感染さらには高位結紮不十分による再発などがある.

 小児外科に慣れた施設では,手術の翌日退院させるところが多く,また外来的な手術として当日帰宅させる施設もあつて,創の治癒するまで,医師の目の届かないところに行つてしまうのがふつうであるが,術後起こり得る合併症とその時期については,十分頭に入れておかなければならない.また術後経過は,患者の年齢によりかなり差があるので,これも考慮に入れておく必要がある.

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副腎外科の対象となる主たる疾患は

 1.褐色細胞腫Pheochromocytoma 2.クッシング症候群Cushing's Syndrome 3.原発性アルドステロン症Primary Aldosteronism(Conn's syndrome) 4.内分泌非活性副腎腫瘍 5.進行乳癌である.一方,副腎の外科において,その到達法には

 1.後腹膜的到達法(extraperitoneal route) 2.経胸腔的到達法transthoracic route) 3.経腹腔的到達法(transperitoneal route)がある1,2).著者等は原発性アルドステロン症の如く片側性で小さい腺腫の場合,部位診断がついていれば,後腹膜的到達法posterior approachをとるが,それ以外は経腹腔的到達法anterior approachで行なつている.体型が肥満型であつたり,腫瘍が大きいことが予測されている時は横切開transverse-elliptical incisionで行ない,進行乳癌に対する如くほぼ正常に近い副腎を摘出する場合,体型がやせていれば上腹部正中切開で行なつている.後腹膜的到達法では副損傷として胸膜損傷があり得るので術後,胸部X線を要する.経腹腔的にしろ後腹膜的到達法にしろ,副腎摘出時の静脈系の処置,止血を確実に行なう必要がある.以上のことを除くと,副腎外科の術後管理のむずかしさは種々のホルモンの病的過剰状態から摘出術という手段をもつてホルモンの欠落状態への急激な移行であり,疾患により変動するホルモンの種類が異なるので,術後管理の方法が異なつている点である.従つて,各疾患を熟知すると共に,術前の検査で患者の状態を十分把握し,摘出後の予想される状態もよく知つておくことと欠落症状の出現以前にあらかじめ対策を講ずることが肝要である.以下,各疾患別に術後管理の要点を述べる.

痔瘻手術 隅越 幸男
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 痔瘻の手術には,そのタイプによつて種々の方法があるが,以前と異なり,肛門括約筋温存ないし保護手術を行なうようになつてから,肛門に加える侵襲は極力少なく,肛門につくる創面はなるべく小さくする方向に向つている.そして原則は開放創であるから,術後の疼痛,糞便の汚染などに関する配慮は次第に少なくなつてきている.

 術後もつとも大切なことは,患者に痛みを与えないこと,排便,排尿を楽にさせること,食事にはあまり気をくばる必要がないこと,手術創を常にドレナージの良い形に保つこと,そして創面の清潔をはかるため,毎日入浴,坐浴をさせること.このようにしていれば,痔瘻の手術創は4〜8週,長くても12週もすればきれいに治癒するものである.

痔核手術 小金澤 滋 , 太田 一朝
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術後管理のポイント

1.術中管理

 痔核手術における麻酔は腰椎麻酔(サドルブロック)が主で,呼吸循環系臓器への影響は軽微である.患者が既往に肝硬変,心筋梗塞,重症高血圧症といつた特別の疾患がない限り,術中モニターは必ずしも必要ではない.

 しかし術前に必ず静脈を確保し,術中は血圧,脈拍数のチェックが行なわれる.腰椎麻酔薬注入後15分は,患者の表情や態度によく注意し,話しかけて異常があれば,直ちに訴えられる状態にしておき,血圧測定を頻回に行なう.それから以後は間隔を延長するが,たとえ短時間に手術が終了しても,腰椎麻酔薬注入後1時間は観察を厳重にする必要がある.最近の知見でも,腰椎麻酔後の注入薬剤の固定は,30〜40分後でも薬剤の移動が認められており,この点に注意しないと,帰室後ショック死をひき起こし,裁判沙汰になつたことがある1).70歳以上の高齢者や肺合併症のある場合は,術前血液ガス分析検査が追加される.

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 骨折修復術後の管理は,全身状態のチェック,局所の問題(神経,血管障害の有無等)の2つに分けられる.

 全身管理は,fat embolism syndrome以外,特に整形外科特有のものは無いが,老齢化が進んでいる現在,時に重篤な結果をもたらすショック,DICなど念頭におく必要がある.

 局所の状態はまず,機能回復が困難な神経,血管障害の合併に注意する.疑わしいようなら迅速な対処が必要である.

 次にphlebothrombosis防止,早期離床のための自動運動を早くから行なわせ,また関節不良肢位拘縮の予防に努める.

 骨折手術後は,特に感染に注意する,一旦合併すると難治性である.このため抗生剤投与,局所の観察,処置を適切に行なう.

合併症を有する場合の患者管理

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 外科糖尿病患者の術後管理上最も注意すべき点は代謝の変動に伴う栄養補給の問題である.非糖尿病患者でも術後早期には,手術侵襲に伴う内分泌変動によりsurgical diabetesと呼ばれる状態が出現し,糖同化能の低下から高血糖,尿糖の出現をみることがある.糖尿病合併例では術後の糖代謝異常がさらに助長される.一般に糖尿病に対する臨床面からのcontrolは高血糖と尿糖の抑制として捉えられている.しかし手術直後は血糖を正常値近くまで下げるのではなく,安定した状態に保つことを目標とし,血糖は250mg/dl以下,尿糖は摂取糖質量の10%以下にするよう心掛けるべきである.またketoacidosisを予防するため十分な量のカロリー補給と,これに見合つたインスリンの使用が必要である.したがつて糖質補給はglucoseを中心とし,150〜300g/日を経静脈的に投与し,尿糖・尿ケトン体をチェックし,sliding scaleによりレギュラーインスリン(RI)にてcontrolするのを原則とする.

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 心疾患を合併症としてもつ患者の術後管理のポイントとして,1)術前にできるかぎり正確に心臓の器質的および機能的病態を把握しておく.2)術後の循環機能モニタリングを,疾患に応じてうまく組合わせる.3)水分の出納,電解質及び酸塩基平衡のバランスをくずさないように注意する.4)利尿剤・強心剤・カテコールアミンなどの薬剤を必要に応じうまく使用する.5)積極的な呼吸管理,鎮痛などにより循環動態の安定をはかることなどに要約することができる.

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 術後の不整脈発生は,術前の患者の病態や不整脈の存在,麻酔薬と麻酔法,および手術術式などに大きく影響される.特に術前の患者の病態は最も重要な因子である.したがつて,病歴,臨床所見,心電図,電解質検査,呼吸機能検査などにより,術前に不整脈発生因子を十分に評価して治療を行なつた後に,患者を手術に持つて行く配慮が必須である.

 術後は,連続的心電図モニター,種々のバイタルサイン,臨床症状と所見,その他により患者を綿密に管理して不整脈の発生を予防する.不整脈が発生したら,その原因の追求と対処は迅速かつ適切に行なうことが肝要である.術後の綿密な管理により,患者の多くは,重篤な不整脈への移行もなく順調な回復過程を辿る.

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 高血圧症治療の原則は,血圧を持続的に適切なレベルまで下げ,それを維持し,脳,心臓,腎臓等の高血圧症のtarget organの障害の進展を抑え,合併症の発生を予防し,快適な日常生活を営ませながら,患者の長寿をまつとうさせる事にある.したがつて高血圧症患者における術後管理もあくまでこの基本方針の延長上にある事をまず念頭に置いておくべきである.

 すなわち術前より降圧剤を服用していた患者は術前夜までそれを服用させ,また術後も可及的に早く降圧剤の投与を再開すべきである.手術という侵襲を契機にtarget organの障害の程度が増悪するような事がないようくれぐれも留意すべきである.以前はレセルピン等降圧剤を服用している患者は,麻酔中に徐服及び低血圧が高頻度に発生するとの理由で,これら降圧剤を術前1週間から10日にて中止する事が推奨されていた.しかし最近レセルピンの投与を予め術前に中止しておいても麻酔中の低血圧症,その他の合併症の発生頻度は低下しない事,降圧剤投与中止によつて最大血圧が上昇すると腎機能障害が発生する事もあるし,また脳や心臓の血管への負荷の増大をもたらす事がある等の理由により上記のごとく降圧剤を服用中だつた患者は術前夜までそれを服用させ続ける事が一般に行なわれている.さらに高血圧症患者の術中術後の管理に関しては,降圧剤とくに交感神経抑制剤を服用し続けていた患者は,通常の患者に比較し,体液の喪失に対し予備力が小さいということを念頭に置くべきである.

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 肝障害患者ではその原因と病態を知悉し肝不全にいたらぬよう濃厚な術後管理を行なわねばならない.肝障害を推定する指標はS-GOT,プロトロンビン時間,総ビリルビン値が臨床検査室からの情報としては重要でこれらの数値の推移と臨床所見を勘案して肝障害の実態を把握するよう努める.循環動態は中心静脈圧の変動に従い判定し,呼吸障害は動脈血PaO2,PaCO2などを参考とし早目に対処する.低アルブミン血症,低血量,出血傾向に対しては新鮮血輸血血漿輸注により不足因子を補給し,肝細胞の活性をたかめるためインスリンの補充療法を行ない,腎機能を保護するほか感染の防止に努める.

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 腎不全を伴つた患者の手術に当つては,まず腎不全の程度をクレアチニンクリアランス(Ccr)などにより正確に把握することが大切であり,Ccrが30 ml/min以下の患者については術前,術後の管理に十分注意を払わなければならない.

 腎不全の場合は他臓器の機能不全と相違して人工腎臓を用いて大幅に状態を改善できるので必要に応じてこれを活用すべきである.

 術直後の問題は麻酔薬の排泄障害による覚醒,換気不全であり,術後2〜3日で特に問題となるのは高K血症である.

 そのほか抗生剤の投与は腎よりの排泄を十分に考慮し,腎毒性のあるアミノ糖類抗生剤などは避けなければならない.

 透析は手術創の止血が完了した時点であれば何時から開始してもよいが,通常,術後1〜3日くらいで行なわれることが多い.

 輸液は腎機能障害が軽度ないし中等度であれば多量に与えて腎機能を賦活し,高度の障害例や透析例では液量を減少させて高カロリー輸液とするとよい.

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 アレルギー性喘息を有する患者では,術後手術侵襲により内因,心因あるいは感染が引き金になつて,しばしば重篤な発作が出現する.この発作は気道に対し,気管支平滑筋攣縮,粘膜浮腫,気道分泌物の増加の3病態をおこし,二次的に循環動態の変化,低酸素状態をおこす.ステロイド等の治療薬剤の副作用を相伴つて術後の創治癒の遷延,感染の増悪といつた,時には致死的な合併症の発現に連なる.

 発作に対する治療法は,①02吸入療法,②aerosolの吸入療法,③静脈的薬剤療法,④抗生剤の投与で,発作の24時間以上の持続,上記療法に抵抗する場合(すなわちStatus asthma—ticus)では,挿管による人工呼吸管理が必要となる.喘息発作の既往を有する患者では術後の一般管理と共に症状の発現に留意し,予防及び早期症状の発見につとめ,治療をすみやかに行ない,発作による合併症の発現を防止しなければならない.

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 肺気腫は慢性閉塞性疾患の1つとして高齢者に多く,近年手術年齢の高齢化に伴い肺気腫合併症例の手術も増加し,胸部のみならず腹部および一般外科でも術後の呼吸不全が患者管理の上で重要な課題となつている.手術術式についての術後管理や高齢者の管理については別項があるので本項では主として肺気腫の呼吸管理について記載する.肺気腫の著しいものでは術前の胸部X線写真に透過度の増加や肺野の拡大,横隔膜の低位などの所見があるが軽度のものではほとんど変化がみられない.術前の呼吸機能検査により1秒率が65%以下で,最大換気量が60 l/min以下では閉塞性障害が強いと考えられる.このような症例では特に呼吸困難の訴えがなくともPaO2の低下やPaCO2の上昇,さらには肺高血圧を認めることがあり,術後は呼吸不全からPaCO2の上昇をきたしCO2ナルコーシスを起こすなど状態が悪化するので細心の呼吸管理が必要となる.また,水分の過剰投与および低蛋白血症などは肺水腫の原因となり,さらに感染症を併発すると重篤な状態となる.

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 外科領域において出血性素因を見逃がすことは患者の致命傷にもなりかねない.そこでわれわれ外科医は術前後を通じて出血傾向の有無に注意し絶えず患者の全身状態を観察しなければならない.

 出血性素因をおこす成因は大別して血管異常・血小板異常・血液凝固異常(低下)・血液線溶異常(亢進)の4つに分けられる.ゆえに出血傾向有りと診断した場合には,その出血傾向がどの因子により発現したかを明らかにし直ちに原因療法ないし対症療法を行なう.症例によつては複数の成因が関与し診断に困ることがある.その代表的な疾患が肝硬変症および血管内凝固症候群(DIC)である.

 出血傾向はその対策が遅れるとさらに増悪しやがては止血困難な状態に陥り失血死する.そこで何よりも早期発見,適正治療が強く望まれる.

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 手術後急性期に問題となる精神障害には,発生因子として,術前からのものと,術中,術後に発生するものとにわけられる.

 術前から真性精神病がある場合は,向精神薬の大量・長期投与による各種臓器障害をチェックし,術後合併症の発生に注意すべきである.

 その他,高齢,救急手術,心理的不安,アルコールなどの慢性薬物中毒が誘発因子としてあげられる.

 予防のため,既往歴の詳細なチェック,全身状態の改善,患者への十分なオリエンテーションが大切である.

 手術直後からの意識障害は,全身状態の悪化を物語ることが多く原因究明に努める,しかし術後2〜3日の意識清明期(lucid interval)を経ておきる,いわゆる"術後せん妄"は,高齢者,開心術,救急手術の際に多く,脳動脈硬化症,不眠,術後合併症,心理的要因などが加わり発生すると考えられる.

 合併症の発生がなければ,通常は一過性で術後1週間以内に消失することが多い。患者管理上支障をきたす場合には,四肢抑制,睡眠・鎮静剤による持続睡眠が必要となる.ときに薬剤の全面的中止で軽快することもある.

 抗不安薬・向精神薬は,種類・量共個人差が大きいので,現状では各種の薬剤の中から経験的に種類・量を変えて適合させてゆく柔軟な姿勢が必要である.

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 既存に脳血管障害を有する患者の術後管理上肝要な事は,脳血管障害患者のrisk factorを上手に管理することである.すなわち,すでに全般的に循環,代謝の低下を来たしている脳組織であると考えて,更に機能の低下を招かないように血圧の急激な変動を避けること,低血糖を来たさないよう十分な配慮をしつつ糖代謝を是正しておくこと,不整脈,心筋機能低下はできるだけ正常化しておくこと,差支えない限り術後早期に離床させ,リハビリ再開を心がけることが大切である.

注意すべき状態の患者管理

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 副腎皮質ステロイド剤の薬効はすばらしく,その適応も広いだけに,副作用,とくに大量,長期連用例における副腎皮質機能の低下,萎縮の招来には常に留意していなければならず,またこのような状態下におかれた患者が手術を受けることも稀でない点を注意していたい.一般の社会生活では破錠をきたさない潜在性副腎皮質機能低下症の患者が大きな手術を受けた場合,急性副腎不全を招き,その出現に気がつかないと,すこぶる危険な状態となる反面,副腎皮質機能の補償によつて,驚異的な効果を現わすもので,その点を留意した術後1週間の管理のポイントを述べる.

肥満 水野 茂 , 近藤 達平
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 肥満は一見健康らしくみえるが実際にはいろいろの代謝障害を伴つた病的状態である.一方手術侵襲もアルカロージス・仮性糖尿病などの代謝障害を必発する.従つて肥満者の術後は複雑な代謝異常を来ししかも代謝上の予備能が小さいため細かな特有の配慮が必要となつてくる.肥満は高脂血症・高アミノ酸血症のほか糖処理能も低下して血糖曲線上遅延反応型を示すことが多く3大栄養素のいずれにも異常を示す.またこれらの代謝調節に重要なインシュリンは高値であるが,末梢細胞レベルでのインシュリン感受性が低くその効果が発現しにくい.これらの代謝効率の低下は組織でのエネルギー産生障害や脂肪貯溜を来し,糖尿病・動脈硬化症・微小血管障害・高血圧・心疾患・腎機能障害などを合併しやすく正常者の10倍近い死亡率の主因となつている.一方,副腎・甲状腺・下垂体などの手術侵襲に重要なホルモン系はほぼ正常と考えてよい.

高齢者(75歳以上) 橋本 肇
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 老年者は各器官の機能が低下し,予備力が減退し,調節域が狭くなつており,一旦異常を生ずると不可逆性となり易いので,術後管理にあたつては異常所見の早期発見,早期治療が重要となる.

 老年者では呼吸,循環器系の異常は死に直結するので注意深い管理が必要であるが,ここではより良い治療を行なう上で重要と思われる1) Htを30〜35に保つこと,2)酸塩基平衡を正常に保つこと,3)術後の栄養補給を早期に始めることなどを強調した.

妊娠 小山 真
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 妊娠中の婦人が手術を必要とする疾患に侵されることは必ずしも多くないが,その90%以上が処理の容易な虫垂炎であるのは幸いである.しかし,如何なる疾患にせよ術前・術中のみならず術後においても(1)母体の管理,(2)流・早産の防止,(3)胎児の生命,発育に対する障害の除去の3点に留意した適切な処置が要求されるところに特色がある.

 いずれにせよ術後管理上最も重要なことは術後早期の安静であるが,その他,(1)についてはショックの防止,腎尿路系の障害に対する処置(高血圧の治療,尿路感染の防止),(2)については胎盤血流量減少の防止,子宮弛緩剤の投与や初期における黄体ホルモン投与,(3)に関しては催奇性薬剤を用いないことや抗生物質としては胎児に影響の少ない合成ペニシリンかセファロスポリン系薬剤の投与が望ましい等の幾つかの管理上の要点がある.

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雑誌「SURGERY」最新号目次
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SURGERY—Contents, March 1981 Vol.89, No.3 ©By The C. V. Mosby Company

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基本情報

03869857.36.4.jpg
臨床外科
36巻4号 (1981年4月)
電子版ISSN:1882-1278 印刷版ISSN:0386-9857 医学書院

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