特集 術後1週間の患者管理
バセドウ病手術
小原 孝男
1
1筑波大学臨床医学系外科
pp.443-447
発行日 1981年4月20日
Published Date 1981/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407207644
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バセドウ病の治療法としては,手術のほかに薬物療法とアイソトープ療法がある.個々の患者の手術適応は,手術のほうが薬物療法を続けるより寛解が早い,あるいはアイソトープ療法より機能低下症の発生率が低いといつた比較の問題で決められる.従つて手術を行なうからには,その欠点である手術合併症をできるだけ起こさないように努めることが重要である.
ところで,バセドウ病手術の合併症の大部分は,術者の経験不足と未熟な技量に基づいて起こり,経験に富む外科医が行なえばほとんど問題がない.また術後患者管理の優劣に関係して生じるものもほとんどない.しかし,一度発生すると,ごく短時間のうちに直接生命に影響するものが少なくない.そうした面で術後患者の状態に細心の注意を払い,不幸にして合併症が起きた場合には,迅速かつ適切な処置を行なう必要がある.
手術終了直後から術後2日目くらいまでに起こる可能性があり,緊急処置を要する合併症として,甲状腺クリーゼ,出血,反回神経麻痺,テタニーなどがある.今日では通常,薬物療法によつて甲状腺機能が正常に落着いてから手術を行なうので,甲状腺クリーゼが起こることはまずない.しかし,最近,血中甲状腺ホルモン濃度に無関係に,インデラールだけの前処置で甲状腺ホルモンのβ受容体刺激状態を抑えることにより安全に手術できることが判明しているが,この方法で手術した場合にはやはり甲状腺クリーゼ発生の危険がある.
その他にバセドウ病手術では,ドレーンをできるだけ早く抜去し,抜糸を術後3日目までに行ない,またテープで創の開大を防ぐなど手術痕の醜形を残さないように配慮することが大切である.
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