特集 術後1週間の患者管理
腹部大動脈瘤手術
多田 祐輔
1
1東京大学医学部第2外科
pp.601-605
発行日 1981年4月20日
Published Date 1981/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407207672
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腹部大動脈瘤の手術対象者は一部の例外を除いて,高齢者であり,種々の動脈硬化性合併症を潜在的あるいは顕在的に持つている.
また,肺には,気腫や,慢性気管支炎などの合併する事も一般より高い.
従つて術後管理にはこの点の配慮が必要となる.
一方,人工血管使用および大血管吻合にともなう問題として,術後出血や感染防止の問題 長期安静に伴う問題,経口投与開始時期の問題,歩行開始時期の問題などがある.
まず術後1〜3日は,循環動態の把握,尿量の維持につとめ,呼吸管理としては,酸素テント下で,高湿度環境下で,咳疾の排出を積極的にすすめる.輸液は,尿量が維持出来る程度にややdry sideに置く様にする.安静は少なくとも10日間は床上安静とし,この間,拘禁による種々の精神症状の発生に留意する.腹部は術後腸管麻痺の傾向をみることが多く,胃カテよりの胃液の排出量が術後数日より増量する傾向がある.従つて排ガスがあつても,急いで食餌摂取を開始しない方が安全であり,少なくとも術後1週間は待つた方が良い,歩行開始は術後10日目位より許可する.
以上が腹部大動脈瘤術後の一般的な管理であるが,年齢,術前合併症の有無によつて,適宜修飾されるのは当然である
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