特集 術後1週間の患者管理
腸間膜血栓症手術
松本 昭彦
1
1横浜市大医学部第1外科
pp.607-611
発行日 1981年4月20日
Published Date 1981/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407207673
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腸間膜梗塞症(mesenteric infarction)は極めて死亡率の高い疾患である.原因は腸間膜動脈の血栓,塞栓閉塞症,腸間膜静脈の血栓症,腸間膜血管の非閉塞性腸間膜梗塞症など病因は単一ではないが,いずれにせよ疾患は重篤で,保存的治療ではほぼ100%,外科的に治療を行なつても80〜90%の死亡率が報告されている.この死亡率は,血管造影など診断法が格段に進歩した今日といえども,過去40〜50年間ほとんど変つていないことが,この疾患の重篤さを物語つている.このように死亡率が高いのは,この疾患に特有な症状がなく,診断が遅れ,手術治療の時期を失することによる.腸間膜動脈塞栓症では塞栓摘除術の適応になることもあるが,しかし先にのべたいずれの病因であるにせよ,腸管の広範切除術になることが多い.
本症では全身状態不良のまま手術を行なわねばならないことがほとんどであり,汎発性腹膜炎,ショック,敗血症,出血傾向,血液あるいは血漿の大量漏出など全身管理の上でも極めて困難な状態であるのに加えて,広範囲腸管切除など術後の栄養管理に大きな影響を与える要素が加わり術後管理を一層困難にするのである.そこで術後管理は綿密なプログラムで行ない,治療が後手にまわらないようにすることが必要である.治療の中心になるのは感染,ショックの防止,凝固,線溶系を出来るだけ正常状態におくこと,それに栄養管理である.呼吸器合併症もほぼ100%に発生すると考えねばならず,胸部X線写真に異常が現われる前に予防的な治療が要求される.
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