特集 術後1週間の患者管理
肝切除術
川原田 嘉文
1
1三重大学医学部第1外科
pp.539-545
発行日 1981年4月20日
Published Date 1981/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407207661
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肝切除の対象となる症例には病巣以外の肝が全く正常なものから,黄疸や慢性肝炎,肝硬変などの肝障害を合併するもの,あるいは外傷など出血ショック下で肝切除が必要となる場合もあり,さらに切除量により残存肝機能がことなつてくるため,肝切除後の術後管理を一律に述べることは容易ではない.一般に肝障害がない場合の1区域切除,例えば外側区域切除などでは,特別の術後管理を必要とせず他の一般腹部外科のそれと異なることはない.
ここに記載する肝切除術後の一週間の患者管理は,主として二区域以上の肝広範囲切除,肝硬変合併例では1区域以上の切除や黄疸合併例の肝切除などを対象とした,術後管理を十分に行なうには,まず術前の患者の状態,肝機能,肺機能,腎機能,さらに肝予備力,網内系機能や凝固系機能を検索してoperative riskを十分に把握し適切な術式を選択することが大切である.肝広範切除特に肝硬変合併例では術後肝障害のみならず肺腎障害などmultiple organ failureを発生し易く多角的な管理が必要である.すなわち術後1週間はICUで観察し, vital signやintake&outputのチェックのみならず,肝,肺,腎機能や血行動態も十分に把握し,特に呼吸管理や肝機能障害に注意して術後管理を行なうことが必要である.
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