特集 術後1週間の患者管理
注意すべき状態の患者管理
肥満
水野 茂
1
,
近藤 達平
1
1名古屋大学医学部第2外科
pp.716-717
発行日 1981年4月20日
Published Date 1981/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407207699
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肥満は一見健康らしくみえるが実際にはいろいろの代謝障害を伴つた病的状態である.一方手術侵襲もアルカロージス・仮性糖尿病などの代謝障害を必発する.従つて肥満者の術後は複雑な代謝異常を来ししかも代謝上の予備能が小さいため細かな特有の配慮が必要となつてくる.肥満は高脂血症・高アミノ酸血症のほか糖処理能も低下して血糖曲線上遅延反応型を示すことが多く3大栄養素のいずれにも異常を示す.またこれらの代謝調節に重要なインシュリンは高値であるが,末梢細胞レベルでのインシュリン感受性が低くその効果が発現しにくい.これらの代謝効率の低下は組織でのエネルギー産生障害や脂肪貯溜を来し,糖尿病・動脈硬化症・微小血管障害・高血圧・心疾患・腎機能障害などを合併しやすく正常者の10倍近い死亡率の主因となつている.一方,副腎・甲状腺・下垂体などの手術侵襲に重要なホルモン系はほぼ正常と考えてよい.
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