特集 術後1週間の患者管理
イレウス手術
三隅 厚信
1
,
松田 正和
1
,
稲森 洋平
1
,
山根 隆明
1
,
赤木 正信
1
1熊本大学医学部第2外科
pp.505-510
発行日 1981年4月20日
Published Date 1981/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407207655
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イレウス手術の対象となる患者は,術前から脱水,電解質失調,低栄養などの代謝異常を有するものが多い.ひとくちにイレウスといつても,機能的イレウスと機械的イレウスではその成因および病態が異なり,後者はさらに腸管の血行障害を伴わない単純性イレウスと血行障害による腸管壊死の危険性を有し緊急手術を要する複雑性イレウスとに分けられる.そのうえ,手術も排膿・ドレナージまたは癒着剥離や整復だけで終るものから腸吻合や大量腸切除を余儀なくされるものまであり,術後管理も一様でなく症例によつて取扱い方が異なる,また,これらイレウス術後には,術直後から腸麻痺や腸癒着など術後イレウスの発生因子が多く存在しているので,この点とくに注意を払う必要がある.
術後早期における患者管理のポイントは,術前・術中から続いている循環血液量,水分・電解質バランス,酸・塩基平衡の乱れをできるだけ早期に是正することにある.一方,腹膜炎による麻痺性イレウスの手術後には腸運動の回復が遅延することが多いので,術直後から積極的に腸運動の促進をはかることが重要である.このほか,腸切除例や腸吻合例では,当然縫合不全の危険性があるので,ドレナージ,吸引などの予防対策を講じることとともに早期発見,早期治療を心がける,また,術後長期にわたる経口摂取不能例や大量腸切除例では,IVHなどの積極的栄養法を行ないながら術後消化機能の回復を待つことが大切である.
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