臨床婦人科産科 74巻4号 (2020年4月)

増刊号 産婦人科処方のすべて2020―症例に応じた実践マニュアル

婦人科編 Ⅰ.婦人科感染症・類縁疾患

腟炎 川名 敬
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処方のポイント

◆細菌性腟症は,腟内乳酸菌叢が減少することにより非特異的な細菌が増殖する腟炎であり,性行為感染ではない.乳酸菌叢を殺菌せずに,増殖した病原菌を除菌するため,メトロニダゾールの腟内投与が有効である.

◆トリコモナス腟炎は,主には性行為感染で起こるが,浴槽・風呂などで感染することもあり,感染経路や年齢層は多様である.抗寄生虫薬であるメトロニダゾールの内服と腟内投与の併用が有効である.

◆カンジダ腟炎は,腟内洗浄が有効な治療であり,そのうえで抗真菌薬の腟内投与が必要である.基本は連日6日間投与である.再発を繰り返すなど難治性の場合は,パートナーに外用薬塗布を行う.

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処方のポイント

◆外陰部硬化性苔癬は副腎皮質ステロイド外用治療が第一選択となる.

◆外陰潰瘍は,原因がさまざまであり,各原因に応じた治療が必要となる.

◆Behçet病性外陰部潰瘍は,全身性炎症性疾患の徴候の1つであり,一般に副腎皮質ステロイド外用またはコルヒチンの内服が原則であるが,漢方薬の温清飲の内服も有効である.

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処方のポイント

◆尖圭コンジローマは,5%イミキモドクリームが,現在,最もコンセンサスの得られた治療方法である.しかし,その治癒率は60〜70%であり,痂皮化した陳旧性の病変に対しては,皮下に外用薬が浸透せず無効なことがあるため,外科的治療またはほかの方法の併用が必要な場合がある.

◆外陰毛じらみ症で一番安価で確実な治療方法は,毛じらみの寄生好発部位である陰毛の剃毛である.それが困難な場合には薬剤(殺虫剤)塗布が第一選択となる.卵の孵化期間を見込んで3〜4日ごとに3〜4回繰り返す.

◆疥癬の治療は,ヒゼンダニが検出された患者,特徴的な皮膚症状を認める疥癬患者,その接触者を対象に行う.臨床経過や皮膚症状から疥癬を疑う症例があれば,皮膚科にコンサルトし,診断後は速やかに治療を開始して感染対策を行う必要がある.

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処方のポイント

Chlamydia trachomatisは耐性菌が存在せず,子宮頸管炎であればマクロライド系,キノロン系経口抗菌薬によりほぼ確実に治療が可能である.

◆妊娠症例はキノロン系抗菌薬が禁忌であるため,マクロライド系経口抗菌薬により治療する.

◆腹痛を伴う重症例は,入院管理とし,ミノサイクリン,アジスロマイシン,レボフロキサシンの点滴により治療を行う.

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処方のポイント

◆保険適用を有する蛍光抗体法や免疫クロマト法によるヘルペスウイルスの検出感度は,60〜70%程度である.このため,検査結果より臨床診断を優先して処方を開始する.

◆アシクロビル,バラシクロビル,ファムシクロビルなど抗ウイルス薬の全身投与(経口薬,注射薬)が第一選択となる.外用薬を用いた局所療法は臨床効果が低く,海外では推奨度が低い.

◆頻回に再発を繰り返す場合は,再発抑制療法(バラシクロビル)や早期短期治療(ファムシクロビル)を検討する.

◆分娩時に外陰部に性器ヘルペスの病変を認めた場合は,産道感染の予防として経腟分娩を避け,帝王切開を選択する.

淋菌感染症 川名 敬
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処方のポイント

◆淋菌感染症では,抗菌薬に対する薬剤耐性が大きな問題となる.現在は,セフトリアキソンが最も耐性が少ない抗菌薬であり,第一選択となる.それ以外のセフェム,マクロライド,キノロン系薬剤は耐性菌には無効となる.

◆患者の服薬アドヒアランスが悪いことから単回投与が基本である.

◆性器クラミジアとの混合感染も念頭に置く必要がある.これらの同時検査の結果をもとに治療薬を併用することになる.

◆淋菌感染症では,咽頭感染も想定される.また,パートナーには検査・治療を勧めるべきである.

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処方のポイント

◆セフェム系,βラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン,ニューキノロン系の抗菌薬を主軸に使用する.

Chlamydiaの関与が疑われる場合にはアジスロマイシンなどの投与を併用する.

◆子宮内操作直後など嫌気性菌の関与が強く疑われる場合は,メトロニダゾールを併用する.

婦人科編 Ⅱ.内分泌・不妊

原発性無月経 齊藤 真 , 榊原 秀也
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処方のポイント

◆原発性無月経は,障害部位が視床下部―下垂体―卵巣系であればホルモン補充療法を行う.

◆内外生殖器の解剖学的異常が原因であれば,適切な時期に外科的治療を行う.

◆挙児希望がある場合は,ゴナドトロピンを主とした排卵誘発を行う.

続発性無月経 大場 隆
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処方のポイント

◆続発性無月経の治療方針は,当面の挙児希望の有無,およびエストロゲン内分泌の有無によって異なる.

◆続発性無月経の治療に並行して,原因となった基礎疾患の検索と加療を行う.

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処方のポイント

◆われわれが開発した本処方は卵胞活性化療法ののちに実施するプロトコールである.

◆常に卵巣の血流不全が病態の主因となることを念頭に置き,各処方の投与量を調節する.

◆高LH血症が卵胞発育障害や卵子の質の低下につながると考えられており,その是正が重要である.

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処方のポイント

◆初診時には,妊娠の可能性を念頭に置き治療にあたる必要がある.

◆ホルモン製剤のメリット・デメリット(副作用を含め)をよく説明し,適切に用いる.

機能性子宮出血 尾林 聡
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処方のポイント

◆子宮内腔からの出血を認めた際に機能性子宮出血と診断するためには,悪性腫瘍などの婦人科器質的疾患を除外することが必要であるが,内科的疾患や薬剤性の病態の有無については注意が必要である.

◆エストロゲンの分泌を認めるとき(破綻出血)はプロゲストーゲン製剤の投与を,エストロゲンとプロゲストーゲンの分泌に由来する消退出血と判断されれば合剤の投与を考慮する.

更年期不正出血 尾林 聡
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処方のポイント

◆更年期前後の不正出血は卵巣機能の変化のためしばしば経験する症状であるが,悪性腫瘍の好発時期でもあるため,その除外診断は原因疾患の鑑別に必須である.

◆不正出血は,クスコ診により出血部位を確認し,その部位に対して適切に検査を行いながら出血原因を探り,出血の原因に対して治療を選択する.

◆閉経後の出血や帯下の原因として萎縮性腟炎が散見されるが,鑑別を行ったうえで,エストロゲン腟剤を使用する.

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処方のポイント

◆機能性高プロラクチン血症やプロラクチノーマに対しては,ドパミンアゴニストによる薬物療法が第一選択となる.

◆薬剤性高プロラクチン血症の場合,原因となっている薬物を処方医に相談することなく休薬や薬剤変更を行うことは避けるべきである.

◆無症候性高プロラクチン血症の場合,マクロプロラクチン血症も念頭に置き,不必要な薬物療法は行わない.

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処方のポイント

◆症状と患者背景(心理的・社会的)に合わせて薬剤を選択する.

◆長期処方が可能である.

◆ホルモン製剤の使用時は副作用と禁忌事項に留意する.

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処方のポイント

◆身体症状主体のPMSにはOC・LEPや漢方などを用いる.

◆中等度以上のPMSおよびPMDDに対しては,上記に加え,SSRIの使用を検討する.ただし,うつ病などの精神疾患の月経前増悪である可能性に留意する.

◆現在,国内でPMSに対しよく使用される薬剤で,保険適用となっているものはない.PMSの治療として処方をする際は,そのことを常に念頭に置く.

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処方のポイント

◆多胎妊娠の発生を少なくするために,排卵誘発薬の投与量を可能な限り少なくして単一排卵を目指す.

◆クロミフェン療法では最小量でも多数の卵胞が発育することがあり,その場合には次の周期から投与日数の短縮などにより治療強度を最適化する工夫が必要である.

◆FSH低用量漸増法の第1周期は至適投与量を探ることを兼ねた治療であり,50単位や62.5単位の投与量で開始し,必要時の増量も12.5単位と従来よりもさらに細かい注意を払うことが望ましい.

◆成熟卵胞が複数個となったときには,多胎発生の可能性と多胎妊娠の周産期リスクについて本人と相談したうえでhCGの投与を行うかキャンセルするかを決める.

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処方のポイント

◆黄体機能不全の病態,診断基準は確立しておらず,排卵障害や高プロラクチン(PRL)血症を伴うもの以外では病的意義や治療効果がはっきりしていない.

◆卵胞発育遅延などの軽度排卵障害を伴う症例では,排卵誘発薬を用いた卵巣刺激により黄体機能が改善する.

◆高PRL血症を伴う症例では,PRL上昇の原因に応じてドパミン作動薬,甲状腺ホルモンなどの投与により黄体機能が改善する.

◆排卵障害や高PRL血症を伴わない黄体機能不全で,黄体期のhCG投与や黄体ホルモンの経口補充が妊娠率を向上させるというデータはない.排卵誘発薬を用いた卵巣刺激は原因不明不妊の場合と同様に妊娠率を向上させると考えられる.

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処方のポイント

◆挙児希望の有無にかかわらずBMI>25kg/m2の肥満がある場合は,まず減量やライフスタイルの見直しを行う.

◆妊娠を希望しない場合は,子宮内膜がん予防目的に黄体ホルモン療法やKaufmann療法を行い,定期的に消退出血を誘導する.

◆妊娠を希望する場合は,排卵誘発法としてクロミフェン療法が第一選択薬であり,クロミフェン抵抗性で肥満,耐糖能異常,インスリン抵抗性などがある場合にはメトホルミンの併用を考慮する.

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処方のポイント

◆血管内脱水の補正と尿量の確保,および血栓塞栓症予防が治療の主体となる.

◆OHSSのほとんどは医原性であり,リスク因子を認識して個別化した排卵誘発法を選択することにより,OHSSを発症させないことが重要である.

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処方のポイント

◆抗リン脂質抗体症候群合併妊娠には低用量アスピリン・ヘパリン療法を行う.

◆低用量アスピリンは妊娠前から開始し,妊娠28週に入る前に終了する.

◆ヘパリンは胎囊確認後から投与を開始し,分娩直前まで投与する.ヘパリンの在宅自己注射療法は保険適用となっている.ヘパリンの副作用には,アナフィラキシーやヘパリン起因性血小板減少症などがあり,特に投与開始直後は厳重な観察が必要である.

◆抗リン脂質抗体症候群の診断基準を満たさない抗リン脂質抗体陽性例,軽度の血栓性素因をもつ症例の取り扱いには一定の見解がないが,低用量アスピリン療法が行われることが多い.

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処方のポイント

◆逆行性射精に対してアモキサピンが有効であることが多い.

◆勃起障害に対して確立された治療は,PDE5阻害薬である.

◆薬剤抵抗性の逆行性射精に対して膀胱内精子回収法や精巣内精子採取術(TESE)を検討する.

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処方のポイント

◆特発性造精機能障害に対する非内分泌療法には確立したエビデンスは存在しない.

◆非内分泌療法としては漢方や抗酸化薬を用いることが多い.

◆低ゴナドトロピン性性腺機能低下症に対する内分泌療法のヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)や組み換え型ヒト卵胞刺激ホルモン(rFSH)は,造精機能を改善する.

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処方のポイント

◆子宮内膜症に対する薬物療法は,症状の改善や術後の再発予防の観点から重要な位置づけとなっている.

◆低用量エストロゲン・プロゲスチン(LEP)療法は従来の周期投与に加えて,最近は連続投与も可能となった.

◆ジエノゲスト療法は40代以上の患者や血栓性素因のある患者にも用いることができる.

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処方のポイント

◆子宮腺筋症に伴う月経随伴症状には,ジエノゲストやレボノルゲストレル放出子宮内システムなどのホルモン製剤が有効である.

◆閉経時期が近い症例では,リュープロレリン酢酸塩も治療選択肢の1つである.

◆ホルモン製剤の種類により効果や副作用が異なるため,患者ニーズに応じた薬剤を選択すべきである.

子宮筋腫 宮下 真理子 , 甲賀 かをり
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処方のポイント

◆過多月経,疼痛,腫瘤感,圧迫症状などの症状を有する子宮筋腫に対しては治療を考慮する.

◆過多月経の改善のためには,レボノルゲストレル放出子宮内システムやエストロゲン・プロゲスチン配合薬を用いる.

◆閉経前や手術前の保存療法にはGnRH製剤を用いる.

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処方のポイント

◆避妊を必要とする女性には,避妊効果の観点から低用量経口避妊薬あるいは子宮内避妊具を勧める.

◆低用量経口避妊薬の使用に際しては,禁忌や慎重投与に対するスクリーニングが重要である.

◆緊急避妊薬はあくまでも緊急対応であり,その後の適切な避妊を指導する.

月経周期移動法 百枝 幹雄
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処方のポイント

◆月経周期移動法には,プロゲスチン製剤あるいはエストロゲン・プロゲスチン配合薬を用いる.

◆月経周期を短縮する場合と延長する場合では,処方内容とタイミングが異なる.

◆月経周期移動を頻用する必要がある月経随伴症状がある場合には,一時的な月経周期移動ではなく,継続的な治療を勧める.

婦人科編 Ⅲ.更年期・老年期

更年期障害 牧田 和也
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処方のポイント

◆更年期障害の主たる原因は卵巣機能の低下であり,ホットフラッシュ・発汗を中心とした血管運動神経症状,睡眠障害,精神的症状,関節・四肢痛などにはホルモン補充療法(HRT)が有効な治療となりうる.

◆卵巣機能の低下以外にも,加齢に伴う身体的変化,精神・心理的な要因,社会文化的な環境因子などが複合的に影響して症状が出現する場合があり,HRTが有効でない症例,HRTの禁忌症例あるいはHRTを希望しない症例に対しては,漢方療法を選択する.

◆精神的症状や睡眠障害に対しては,向精神薬や睡眠導入薬などを考慮する.

更年期のうつ 安井 敏之 , 松浦 幸恵
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処方のポイント

◆更年期のうつは,うつ病と鑑別を行うことが重要である.

◆ほてりやのぼせなど,他の更年期症状の有無を確認する.

◆1か月以上投与しても症状が改善しないうつ症状の場合には,心療内科あるいは精神神経科に紹介する.

◆希死念慮のある場合や双極性障害が疑われる場合には,心療内科あるいは精神神経科に紹介する.

骨粗鬆症 佐々木 浩
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処方のポイント

◆閉経後の骨粗鬆症で更年期症状を呈する場合は,ホルモン補充療法を考慮する.

◆閉経周辺期で更年期症状を呈さない場合は,選択的エストロゲン受容体モジュレーターであるラロキシフェンやバゼドキシフェンを考慮する.

◆高齢者で大腿骨近位部骨折リスクの高い患者に対しては,ビスホスホネート製剤が第一選択薬である.

◆重症の骨粗鬆症の場合は,デノスマブ,テリパラチド,ロモソズマブを考慮する.

脂質代謝異常 高橋 一広
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処方のポイント

◆脂質異常症の治療目的は動脈硬化性疾患の予防であることを患者に説明する.

◆脂質管理目標値を設定するために絶対的リスク評価を行う.

◆高LDL-C血症ではスタチン,高TG血症ではフィブラート系が第一選択である.

◆治療中はCKの上昇,横紋筋融解症に気をつける.

過活動膀胱・尿失禁 田辺 晃子
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処方のポイント

◆患者の主訴が「頻尿」や「尿失禁」などの個別の症状であっても,女性下部尿路症状(FLUTS)の基本評価を行い,適切な治療法を選択する必要がある.

◆過活動膀胱には抗コリン薬またはβ3アドレナリン受容体作動薬を第一選択薬とする.

◆腹圧性尿失禁や混合性尿失禁には塩酸クレンブテロールを投与し,切迫性尿失禁を伴う場合は過活動膀胱の治療に準じて治療する.

高血圧症 高橋 一広
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処方のポイント

◆治療の第一選択薬はCa拮抗薬,ARB,利尿薬である.

◆少量の単剤から開始し,効果のない場合は増量および他剤と併用する.

◆漫然と処方せず,副作用のある場合,血圧降下が悪い場合は専門医を紹介する.

糖尿病 安井 敏之 , 遠藤 逸朗
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処方のポイント

◆糖尿病治療の基本は食事・運動療法と生活習慣の改善であり,患者個々の病態に合わせた生活指導を行う.

◆欧米ではメトホルミンが第一選択であり,わが国においても同薬の使用量は増加している.

◆わが国においては,単剤では低血糖リスクが低く体重に対する影響の少ないDPP-4阻害薬が第一選択として使用される頻度が高い.

◆インスリン抵抗性増大,インスリン分泌低下といった患者の病態を評価し,病態に合わせた血糖降下薬を選択し使用する.

◆インスリン依存状態および糖尿病性昏睡などインスリン治療の絶対的適応に加え,経口血糖降下薬を複数用いても良好な血糖コントロールが得られない場合ではインスリン導入を行う.

肩こり・腰痛 岩佐 弘一
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処方のポイント

◆肩こりには薬物療法の効果が低い.NSAIDsの内服や外用薬,筋弛緩薬を用い,精神的要因が強い場合は抗不安薬を併用する.

◆日常生活に留意するほうが効果的である.睡眠時間や休憩・休息の確保などの疲労回復に向けた対応や,僧帽筋が持続的に収縮・牽引されないように姿勢の指導を行う.

◆腰痛の急性期には,NSAIDsの内服や外用薬,筋弛緩薬を用いて速やかな除痛を図り,痛みがあっても仕事を含め普段の活動を維持させる.

◆慢性化の治療および再発予防に運動療法を推奨する.NSAIDsの効果が乏しい場合には,痛覚過敏に有効な薬物を併用する.

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処方のポイント

◆萎縮性腟炎症状のみの場合は局所的ホルモン療法を選択する.

◆更年期症状を合併する症例で局所投与困難な場合は,全身的ホルモン療法を行う.

◆性交痛にはゼリーなどの潤滑剤を用いる.

皮膚瘙痒症・脱毛 牧田 和也
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処方のポイント

◆皮膚瘙痒症とは,瘙痒感のみで明らかな発疹を認めない疾患群であり,瘙痒感を呈する部位により,汎発性と限局性に大別される.

◆産婦人科で診る皮膚瘙痒症は,外陰部周囲のものが主であり,治療としては副腎皮質ホルモン外用薬や抗ヒスタミン外用薬が中心となる.

◆脱毛に関して女性ホルモンとの関連は明確ではなく,婦人科外来においては副腎皮質ホルモン外用薬の処方で改善しないようなものは皮膚科にコンサルテーションするのが望ましい.

冷え症 岡村 麻子
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処方のポイント

◆西洋薬に特効薬はなく,温め補う作用と自律神経を含めたバランスを整える作用をもつ漢方薬が役立つ.

◆漢方薬は「冷えのタイプ」に分けて選択すると役立つ.

◆生活習慣の確認や指導が必要である.

不眠 西尾 永司
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処方のポイント

◆不眠障害は睡眠衛生指導が基本で,睡眠薬は補助的に使用する.

◆ただし,睡眠薬を使用して実際に眠れたという体験は重要で,これにより過覚醒状態が改善し,不眠への過剰な不安がなくなることがある.

◆睡眠薬を服用して安定した睡眠が得られたら,睡眠薬は漸減中止して生活指導を主体とした治療になる.

片頭痛 江川 美保
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処方のポイント

◆プライマリケアにおいて十分な問診により適切に診断し,アセトアミノフェンやNSAIDsが無効な症例にはトリプタンを処方する.

◆トリプタンの服用タイミング(頭痛発作開始後できるだけ早期)を指導することが重要である.

◆いずれの治療薬も薬剤乱用頭痛を誘発しうることに十分に留意する.その予防のために漢方薬も有用な治療選択肢になる.

甲状腺機能異常 澤田 健二郎
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処方のポイント

◆Basedow病など甲状腺機能亢進症の第一選択薬はチアマゾールである.ただし,近い将来に妊娠を希望する場合,妊娠第1三半期にはプロピルチオウラシルを選択する.

◆チアマゾール,プロピルチオウラシルともに無顆粒球症,重症肝機能障害などの重篤な副作用が報告されており,服用中には常に副作用に注意する.

◆甲状腺機能低下症の場合,妊娠中あるいは妊娠希望の女性では速やかに甲状腺ホルモン製剤による補充療法を開始する.

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処方のポイント

◆子宮頸がん術後のHRTは,扁平上皮癌であった症例に対しては問題ないと考えられるが,腺癌に関してはエビデンスが乏しいため十分なインフォームド・コンセントが必要である.

◆子宮体がん術後のHRTは,初期症例に対しては許容されるが,Ⅲ期以上の進行症例には推奨されていない.

◆卵巣がん術後のHRTは,進行期・組織型にかかわらず可能と考えるが,血栓症などの副作用には注意が必要である.

婦人科編 Ⅳ.腫瘍

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術前全身化学療法

処方のポイント

◆子宮頸がんに対する術前化学療法は,一定の効果が報告されているものの,予後改善効果は証明されておらず,適応は慎重に決定すべきである.

◆術前化学療法として安全性・有効性が確実に検証されたレジメンはないが,パクリタキセル+プラチナ製剤併用化学療法が最も汎用されているレジメンである.これらは進行・再発症例への標準治療であり,合理的な選択と考えられる.

◆有害事象(特に骨髄抑制)と手術待機期間とを考慮し,サイクル数を検討する.

子宮頸がん―進行・再発 武隈 宗孝
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処方のポイント

◆進行・再発子宮頸がんに対する全身化学療法は「緩和的化学療法」の位置づけにある.治療を検討する際には治療目標を明確にし,患者と相談しながら方針決定することが望ましい.

◆近年の臨床試験では,徐々に全生存期間(OS)の延長が認められており,全身状態が良好な若年かつ合併症を有さない症例に対して,全身化学療法は推奨すべき治療選択である.

◆レジメン決定の際には,全身状態,病状,既治療歴,レジメンごとの有害事象プロファイルおよび治療の利便性などの条件をもとに検討すべきである.

◆各レジメンのサイクル数はあくまで目安に過ぎない.QOLの向上が第一の治療目標であり,治療継続にあたって神経毒性などの蓄積毒性には注意が必要である.

子宮筋腫 田中 良道
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処方のポイント

◆子宮筋腫は女性ホルモン依存性疾患であり,薬物療法としてはホルモン療法が主体となるが,漢方薬なども広く使用される.

◆ホルモン療法の主体はGnRHアンタゴニスト/アゴニスト製剤であり,近年はレボノルゲストレル放出子宮内システム(LNG-IUS)も使用される.

◆今後は経口選択的プロゲステロン受容体修飾薬(SPRM)の導入も期待される.

子宮肉腫 田中 良道
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処方のポイント

◆子宮肉腫は婦人科悪性腫瘍の中でも特に予後不良で,標準治療が確立していない.

◆化学療法としてはアドリアマイシン単剤,ドセタキセル+ゲムシタビン療法が選択されることが多い.低異型度子宮内膜間質肉腫ではホルモン療法が考慮される.

◆悪性軟部腫瘍に対する薬剤として承認されたパゾパニブ,トラベクテジン,エリブリンも候補薬となる.

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処方のポイント

◆妊孕性温存療法を考慮できるのは,子宮内膜異型増殖症と子宮内膜に限局する類内膜癌Grade 1相当である.

◆妊孕性温存療法を考慮する場合は,妊孕性温存療法の選択基準を満たすことを確認し,子宮内膜がんに対する標準治療でない点について十分な説明と同意を得る必要がある.

◆妊孕性温存療法としては黄体ホルモン療法が有用だが,比較的高い再発率や禁忌を含む患者特異的な因子を踏まえて,本療法の限界や問題点を熟知する必要がある.

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処方のポイント

◆子宮体がんで再発の高リスク群に対してはAP療法を勧める.

◆子宮体がんで再発の高リスク群に対してはTC療法も提案できる.

◆子宮体がんで再発の中リスク群に対しては術後化学療法を提案し,再発の高リスク群と同様の薬剤を使用する.

子宮体がん―進行・再発 太田 剛
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処方のポイント

◆子宮体がんの進行症例に対してはAP療法が標準治療であるが,進行症例では有効性・安全性からTAP療法やTC療法も考慮できる.

◆再発症例に対しては,患者の全身状態および前治療で使用された薬剤を考慮してAP療法,TC療法あるいは単剤療法を行う.

◆化学療法後に増悪した進行・再発症例に対してはマイクロサテライト不安定性(MSI)検査を行い,陽性であればぺムブロリズマブを投与する.

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処方のポイント

◆術前化学療法の対象となるのは,初回手術で完全切除困難と考えられる進行上皮性卵巣がん(主にⅢC/Ⅳ期)で,レジメンは術後化学療法と同様に,TC療法が最も推奨される.

◆dose-dense TC療法やDC療法は選択肢の1つである.

◆3サイクル後を目安に腫瘍減量術を検討する.術後も含めて計6サイクル実施する.

◆ベバシズマブの併用は完全切除率の向上に寄与する可能性があるが,現時点では慎重に使用すべきである.

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処方のポイント

◆術後アジュバントではTC療法もしくはdose dense TC療法が第一選択となる.

◆PARP阻害薬は,高異型度漿液性癌と高異型度類内膜癌でBRCA変異を有する症例には,化学療法が奏効した症例の維持療法に用いることでPFSを延長する.

◆ベバシズマブはTC療法と併用し,その後の維持療法として用いることで,PFSを延長する.

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処方のポイント

◆2017年の日本産科婦人科学会腫瘍登録では明細胞癌は24.4%,粘液性癌は9.1%であり,日本では明細胞癌が多いのが特徴である1)

◆漿液性癌と比較して化学療法の治療は奏効しにくく,予後不良である1, 2)

◆ほとんどの欧米のランダム化比較試験でこれらの組織型は全対象患者の10%以下であり,組織型ごとのサブグループ解析が行われること自体が少ない.また,報告されているサブグループ解析でも本組織型に有効な治療は示されていない.

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処方のポイント

◆プラチナ併用の化学療法として,パクリタキセル・カルボプラチン(TC)療法,ゲムシタビン・カルボプラチン(GC)療法,リポソーマル化ドキソルビシン・カルボプラチン(PLD-C)療法を検討する.

◆BRCA遺伝子変異にかかわらず,プラチナ製剤に奏効がみられた場合はオラパリブの維持療法を行う.その際のプラチナ製剤併用化学療法にはベバシズマブの併用は行わない.

◆胸腹水の貯留による症状が強い場合は,プラチナ製剤併用化学療法にベバシズマブを加えることを検討する.奏効がみられた場合には,ベバシズマブの維持療法を行う.

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処方のポイント

◆基本的には,前治療レジメンと交叉耐性のない単剤を選択する.

◆単剤療法にベバシズマブを併用することで無増悪生存期間の延長が報告されている.

◆単剤のレジメンをどの順序で用いるかのエビデンスは得られていない.

悪性胚細胞性腫瘍 本橋 卓
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処方のポイント

◆BEP療法の3〜4サイクルが基本レジメンで,基本的に減量・延期は行わない.

◆再発症例ではTIP療法,VIP療法,VelP療法を考慮する.

◆卵黄囊腫瘍や混合型胚細胞性腫瘍は予後不良となることがある.

悪性性索間質性腫瘍 本橋 卓
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処方のポイント

◆プラチナ製剤を含む化学療法が有効であり,BEP療法もしくはTC療法が基本レジメンである.

◆臨床進行期Ⅰ期の再発高リスク群およびⅡ期以上の症例,腫瘍残存症例が術後治療対象となる.

◆顆粒膜細胞腫では晩期再発の報告も多く,10年以上の長期経過観察を要す.

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処方のポイント

◆侵入奇胎と絨毛癌は化学療法が著効する腫瘍であり,適切な化学療法を適切に行えば寛解率は高く,妊孕性温存も可能である.

◆治療中はhCG値の推移を慎重に判断して化学療法の効果を見極め,セカンドラインに切り替えることが重要である.また,hCG正常値化後の追加化学療法は必須である.

◆絨毛癌は増殖スピードが非常に速い腫瘍であり,休薬期間の延長はできるだけ避けるべきである.治療のコツが寛解への鍵となるため,経験豊富な施設での治療が望まれる.

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処方のポイント

◆過敏性反応(HSR)は,婦人科がん治療のなかではパクリタキセル(初回投与時)・カルボプラチン(反復投与時)に比較的多い.

◆パクリタキセル投与時には,HSR予防の前投薬が必須である.

◆パクリタキセルによるHSRは,前投薬の強化により再投与可能な場合が多いが,カルボプラチンのHSRに対しては原則的に薬剤変更を検討する.

◆重篤なHSR(アナフィラキシー)に遭遇したら,まずは薬剤の投与中止,人員の確保,救急カートを揃え,アドレナリン(ボスミン®注)投与に備える.

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処方のポイント

◆発熱性好中球減少症(FN)は,がん化学療法による治療関連死の最大の原因である.

◆高リスク例に対しては,緑膿菌をカバーした抗菌薬の単剤経静脈投与を行う.

◆低リスク例に対しては,抗菌薬内服による外来管理が可能な場合もあるが,有事に速やかに来院・入院できる体制が担保されている場合にのみ考慮されうる.

◆FNに対して,G-CSF製剤のルーチン投与を勧めるエビデンスはない.

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処方のポイント

◆各レジメンの悪心の重症度を知る.

◆各レジメンの悪心の重症度により推奨される制吐薬を予防的に使用する.

◆合併症の有無により使用できない薬剤,副作用を知って管理する.

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処方のポイント

◆タキサン系薬剤,白金製剤を使用する際には末梢神経障害に留意し,患者の訴えによく耳を傾け,重症度を評価する必要がある.

◆長期的な副作用という観点をもち,末梢神経障害が重篤化しないよう,治療薬を適宜,減量・中止する必要がある.

◆末梢神経障害に対して確実に有効な治療薬はないが,デュロキセチン塩酸塩カプセル,プレガバリンなどの薬剤を効果と副作用を評価しながら使用する.

がん疼痛対策 池永 昌之
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処方のポイント

◆疼痛の評価を医師と看護師と薬剤師が協力して行う.内臓痛,体性痛,神経障害性疼痛,突出痛の性質を理解し,適切な鎮痛薬を選択する.

◆オピオイドを使用する場合には副作用(便秘,悪心・嘔吐,眠気,せん妄など)の監視を行い,適切な副作用対策を行う.

◆神経障害性疼痛の性質を理解し,その場合には鎮痛補助薬の使用を考慮する.

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処方のポイント

◆リンパ浮腫の予防のためには,皮膚のスキンケアに対する保湿剤を用いる.

◆リンパ浮腫の合併症である蜂窩織炎に対しては抗菌薬を用いる.

◆リンパ浮腫に対する薬物療法はベンゾピロン類,利尿薬,漢方薬などが使用されることがあるが,効果については明らかでない.

婦人科がんへの漢方療法 後山 尚久
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処方のポイント

◆がん医療における漢方の立ち位置は,化学療法の際の副作用の緩和と術後の体力回復や社会復帰に向けての支持,そして緩和ケアへの応用の3大領域であろう.

◆がん医療における漢方の役割は,腫瘍縮小効果や進展抑制,再発予防を期待する治療法としてのエビデンスはいまだ十分ではないことから,現段階ではがん治療の補完的,支持的役割を担っているといえる.

◆漢方医療のターゲットは疾患ではなく病者であるため,婦人科がんへの漢方療法の焦点はがん治療中や治療後のADLやQOLの低下防止や改善にある.

婦人科編 Ⅴ.婦人科手術

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処方のポイント

◆悪性腫瘍手術を除く婦人科手術におけるSSI予防では,第1および第2セファロスポリン系薬剤の単回投与が推奨される.

◆患者の体重や腎機能により投与量および再投与の間隔を調整する.

◆以下の処方例の目的はあくまでもSSIの予防であり,すでに判明している感染創の対処は,その部位から検出される細菌に感受性のある薬剤を選択すること.

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処方のポイント

◆婦人科手術後の静脈血栓予防法としては,低〜中リスクでは理学的療法を行う.

◆高リスク〜最高リスクでは薬物療法を併用するが,硬膜外麻酔を併用する場合は下半身麻痺などが現れることがあるため,出血のリスクを十分に評価したのちにその施行を決定する.

産科編 Ⅰ.異常妊娠

妊娠悪阻 兵藤 博信
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処方のポイント

◆妊娠悪阻の原因は不明だが,理学所見や症状を呈するようなら輸液などの医療介入を考慮する.

◆Wernicke脳症はビタミンB1の不足で生じるため,高カロリー輸液の際はより注意を要する.

◆妊娠期の服薬にきわめて慎重な妊婦も少なくないので,制吐薬や症状緩和薬は,有効性と安全性,一部は保険適用外であることなども十分理解してもらってから使用する.

妊娠高血圧症候群 成瀬 勝彦
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処方のポイント

◆疾患を治療する薬物療法はなく,対症療法が中心となる.根本的な治療は妊娠の終結のほかにない.

◆高血圧による合併症の予防,降圧による妊娠期間の延長と,子癇発作の予防が治療の目的となる.

◆使用できる降圧薬の種類が限られ,妊娠週数に制限があるものがある.

HELLP症候群 森川 守
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処方のポイント

◆HELLP症候群から脱する唯一の治療法は,早期の妊娠終了のみである.

◆HELLP症候群に行われている対症療法(ミシシッピ・プロトコル ; 硫酸マグネシウム投与,降圧療法,ステロイド投与による積極的管理)を中心に述べる.

◆HELLP症候群に研究レベルで行われているヒト化抗C5モノクローナル抗体製剤(エクリズマブ ; ソリリス®)については,保険適用外でもあり,本項では割愛する.

◆HELLP症候群に伴う妊娠高血圧腎症,子癇,産科DICに対する治療薬については別項目に譲る.

子癇 鈴木 研資 , 入山 高行
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処方のポイント

◆子癇発作時には硫酸マグネシウム水和物,ジアゼパムの投与による鎮痙が急務である.

◆高血圧を呈している際には降圧薬による血圧コントロールを行う.

◆子癇発作の再発予防に,24時間程度の硫酸マグネシウム水和物の持続静脈投与を行う.

切迫早産 塩﨑 有宏
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処方のポイント

◆切迫早産は,妊娠22週0日から妊娠36週6日までの妊娠中に,規則的な子宮収縮が認められ,かつ子宮頸管の開大度・展退度に進行が認められる場合,あるいは初回の診察で子宮頸管の開大が2cm以上となっているなど,早産となる危険性が高いと考えられる状態をいう.

◆子宮頸管短縮は,経腟超音波断層法により,通常よりも子宮頸管が短縮している状態をいう.

◆子宮頸管無力症は,外出血や子宮収縮などの切迫流早産徴候を自覚しないにもかかわらず子宮口が開大し,胎胞が形成されてくる状態をいう.

胎児不整脈 三好 剛一
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処方のポイント

◆胎児頻脈性不整脈と徐脈性不整脈が治療の対象となりうるが,いずれの薬剤も胎児治療に対しては適応外使用となるため,十分な説明および慎重な対応が必要である.

◆胎児頻脈性不整脈の胎児治療に関しては,その有効性はコンセンサスが得られているが,母体への副作用が少なくなく,胎児に時に重篤な副作用が生じうる.

◆胎児徐脈性不整脈の胎児治療に関しては,治療効果はきわめて限定的である一方,母児への副作用は明らかであることから,胎児治療をしないという選択も尊重される.

産科編 Ⅱ.妊娠関連疾患

感染性心内膜炎(予防) 兵藤 博信
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処方のポイント

◆感染性心内膜炎は妊娠期には稀であるが,発症すると重篤であり,抗菌薬の予防投与は,母体リスクにより考慮される.

◆産科処置だけでなく,歯科治療などが感染の機会となる.

◆人工弁や左右短絡路,チアノーゼなどのある心疾患を合併していると,リスクが高い.

周産期心筋症 神谷 千津子 , 吉松 淳
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処方のポイント

◆周産期心筋症における心不全治療は,急性左心不全に対する治療に準ずる.

◆心内血栓の合併リスクが高いため,低心機能例では抗凝固療法を行う.

◆ヨーロッパ・アフリカでは,プロラクチン分泌抑制薬による治療の試みが始まっている.

深部静脈血栓症 永松 健
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処方のポイント

◆深部静脈血栓症は妊娠後期や産褥期のみならず,妊娠初期にも発症することに留意して,妊娠初診時から血栓症リスク評価を行う.

◆妊娠中の抗凝固療法では,胎児への安全性と保険適用の観点から未分画ヘパリンが第一選択である.

◆深部静脈血栓症のハイリスク妊産婦では,理学的予防法に加えて予防的抗凝固療法の実施が重要である.

梅毒 笹 秀典 , 高崎 和樹 , 高野 政志
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処方のポイント

◆経口合成ペニシリン剤(アモキシシリン水和物など)を4週間投与する.

◆ペニシリンアレルギーの場合,スピラマイシン酢酸エステルを使用する.

◆治療の始めの頃の発熱(ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー現象)について説明しておく.

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処方のポイント

◆先天性トキソプラズマ症は,妊娠中のトキソプラズマへの初感染により起こる.

◆妊娠中の初感染が疑われた場合には,胎児の先天性トキソプラズマ感染を予防する目的で経母体薬物治療を行う.

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処方のポイント

◆すべてのHIV感染妊婦に対して,抗レトロウイルス療法(cART)を実施すべきである.

◆核酸系逆転写酵素阻害薬2剤とプロテアーゼ阻害薬またはインテグラーゼ阻害薬1剤の組み合わせが推奨される.

◆母子感染予防対策を適切に施行すれば,HIV母子感染はほぼ防止できる.

細菌性腟症 鈴木 大輔 , 西郡 秀和
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処方のポイント

◆妊娠初期の細菌性腟症には,メトロニダゾール腟錠を使用する.

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処方のポイント

◆B群β溶血性レンサ球菌(GBS)保菌妊婦には,分娩4時間以上前から抗菌薬投与を開始し,抗菌薬の血中濃度を維持することが,早発型新生児GBS感染症予防に有効である.

◆抗菌薬はベンジルペニシリンカリウムやアンピシリンナトリウムが推奨される.

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処方のポイント

◆溶連菌感染症に対してはペニシリン系抗菌薬が第一選択である.

◆妊産婦において「持続する下腹部痛」「性器出血」「子宮内胎児死亡」の所見がある場合は,劇症型A群溶連菌感染症へ移行するリスクが高いと考える.

◆初期対応時のquick SOFAで敗血症が疑われた場合は,早期に抗菌薬の全身投与を行う.

産科編 Ⅲ.妊婦のコモンディジーズ

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処方のポイント

◆かぜ症候群の鑑別には,積極的な治療を要するインフルエンザや喘息などが含まれる.

◆インフルエンザワクチンは妊娠全期間において接種が推奨される.

◆妊婦はインフルエンザ治療薬の積極的な投与対象である.

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処方のポイント

◆無症候性細菌尿・膀胱炎では,ペニシリン系・βラクタム系抗菌薬を用いて治療をする.

◆急性腎盂腎炎では,抗菌薬の経静脈的投与により速やかに治療を開始する.

◆尿路感染症では,治療終了から1週間後を目安に,尿定性検査・尿培養検査を行い,治療効果を判定する.

片頭痛 山下 隆博
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処方のポイント

◆妊婦が頭痛を訴えた場合,妊娠高血圧症候群,子癇,脳出血など妊娠に関連した重要疾患を鑑別する.

◆片頭痛の診断,治療方針・薬物の選択は頭痛の専門医と相談しつつ行う.

◆妊娠中は胎児への影響を考慮し,アセトアミノフェンが第一選択となる.効果が不十分な場合,妊娠末期以外はNSAIDsを必要最小限使用できる.最重症例ではトリプタン系を用いる.妊娠中のトリプタン系の使用に明らかな有害事象は報告されていないが,安全性の観点から最も使用経験が長いスマトリプタンの使用を考慮する.

便秘・痔核 山下 隆博
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処方のポイント

◆妊婦の便秘に対しては,まず便を軟化させる酸化マグネシウムを用いる.大腸刺激性の薬剤は子宮収縮を誘発する可能性があるため原則避けるが,ピコスルファートナトリウム水和物は妊娠中も安全に使用できる.効果が不十分な場合はマクロゴール4000も選択肢となる.

◆痔核は妊娠中は軟膏で保存的に経過観察する.便秘があれば治療する.

産科編 Ⅳ.分娩の異常と処置

微弱陣痛 竹田 純 , 牧野 真太郎
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処方のポイント

◆微弱陣痛への対応として,待機的管理と積極的管理がある.

◆潜伏期では待機的管理を選択し,定期的な母体のバイタル測定や胎児心拍数モニタリングを行いつつ,適切な輸液を行う.

◆積極的に介入する方法としては,人工破膜や,オキシトシンやプロスタグランジン製剤による陣痛促進がある.

過強陣痛 牧野 真太郎
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処方のポイント

◆過強陣痛により胎児徐脈や子宮破裂をきたすことがあるが,それらの多くはこれらの症状が先行して発生し,原因検索の結果として過強陣痛と診断されることが多い.

◆過強陣痛によって起こった症状が疑われる場合には速やかに対応を行うことが重要である.

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処方のポイント

◆局所麻酔薬にフェンタニルを添加し,局所麻酔薬の用量を最小限にとどめる.

◆ボーラス投与をする際には,高位脊髄クモ膜下麻酔や局所麻酔薬中毒を予防するために少量分割投与を行う.

◆硬膜外麻酔の効果はいつも一定ではない.鎮痛効果の得にくい硬膜外カテーテルであれば入れ替える.

◆産婦の痛みの訴えだけでなく,脊髄神経ブロック範囲を確認しながら麻酔薬の用量を調節する.

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処方のポイント

◆妊娠34週未満の前期破水における広域スペクトラムの予防的抗菌薬投与は,妊娠期間を延長し母児の感染を減らす.

◆妊娠34〜36週の前期破水の管理は,妊娠37週以降の前期破水の管理に準じる.

◆GBS陽性例では,アンピシリンの点滴静注によって新生児のGBS感染を予防する.

弛緩出血 松永 茂剛
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処方のポイント

◆弛緩出血の第一選択薬はオキシトシンであり,早期から適切な薬剤濃度に調節して投与を行う.

◆オキシトシンが使用できない,あるいは投与しても十分な効果が得られない場合には,メチルエルゴメトリンやプロスタグランジンF製剤の投与も考慮される.

◆上記2製剤は投与における副作用もあるため,母体合併症を確認したうえで投与することが必要である.

産科DIC 松永 茂剛
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処方のポイント

◆凝固障害とそれに伴う線溶亢進に対する治療が主な治療対象となる.

◆止血が達成される血中フィブリノゲン値(150〜200mg/dL)を治療指標にして,凝固因子の補充を行う.

◆トラネキサム酸の投与は,産後出血過多発症後3時間以内に行うことが望ましい.

産科編 Ⅴ.産褥期の異常

子宮復古不全 香川 秀之
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処方のポイント

◆子宮内感染の徴候がある子宮復古不全症例に対しては,抗菌薬を投与する.

◆胎盤や卵膜の遺残(RPOC)が疑われる場合は,原則的に子宮内容除去を優先し,抗菌薬および子宮収縮薬を併用する.

◆子宮内感染徴候や胎盤・卵膜遺残のない子宮復古不全症例に対しては,メチルエルゴメトリンマレイン酸塩錠を第一選択薬とする子宮収縮薬を,禁忌症例の存在に十分留意して投与する.

産褥熱 香川 秀之
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処方のポイント

◆産褥熱(産褥子宮内膜炎)に対しては細菌培養検査の結果を待つことなく,早期に抗菌薬治療を開始する必要がある(empiric therapy).

◆産褥熱(産褥子宮内膜炎)の起炎菌は嫌気性菌を含む複数菌感染であることが多いため,嫌気性菌を想定して広域抗菌スペクトラムを有する薬剤を選択する.

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処方のポイント

◆マタニティブルーズは2週間以内に自然に消退し,薬物治療は要しない.

◆軽症の産後うつ病へは対症的な薬物療法にとどめる.中等症以上の産後うつ病については,一般のうつ病治療に準じてSSRIなどの抗うつ薬治療を,十分量・十分期間試みる.

◆双極性感情障害に伴ううつ病や産褥精神病については非定型抗精神病薬や気分安定薬を用いるが,専門医による薬剤調整が望ましい.

乳頭びらん・乳頭亀裂 坂巻 健
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処方のポイント

◆乳頭びらん・乳頭亀裂は,妊娠中・産褥早期の指導により,予防することが重要である.

◆局所の安静を第一とし,皮膚保護の目的で,ワセリンやオリーブオイル,ラノリンなどの塗布を行う.

◆これらで改善しない場合は,ビタミン含有軟膏,ステロイド外用剤の塗布を検討する.

乳腺炎・乳汁分泌抑制 坂巻 健
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処方のポイント

◆うっ滞性乳腺炎は,薬物療法は不要なことが多いが,葛根湯が有効との報告がある.

◆化膿性乳腺炎と診断されたら,速やかに広域ペニシリン系抗菌薬や第1・第2世代のセフェム系抗菌薬の投与を行う.

◆何らかの理由で乳汁分泌を止める場合,カベルゴリンやブロモクリプチンを投与する.

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処方のポイント

◆創部の強い疼痛を訴える場合,血腫・感染の可能性も考え,創部の観察を十分に行う.

◆急性期の帝王切開術後痛を放置すると,慢性疼痛や産後うつにつながる可能性がある1)

◆ペンタゾシンに関して,15mg製剤の鎮痛目的での使用は,筋注あるいは皮下注に限られ,静注は適応外である.30mg製剤の鎮痛目的での使用は,すべて適応外である.

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処方のポイント

◆鑑別疾患に注意する.尿閉・尿失禁ともに薬物療法は補助的な位置づけである.

◆産褥期の排尿障害は女性下部尿路症状(FLUTS)の端緒となりうるため,遷延する場合は専門医との連携を検討する.

◆添付文書上は授乳婦には使用できない薬剤も多いので,処方に際しては注意を要する.

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目次

奥付

基本情報

03869865.74.4.jpg
臨床婦人科産科
74巻4号 (2020年4月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

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