臨床婦人科産科 70巻4号 (2016年4月)

増刊号 ─知りたい最新情報がすぐわかる!─不妊・不育症診療パーフェクトガイド

1.悪性腫瘍の妊孕性温存治療

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Point

◉患者が予定している治療の卵巣毒性に応じて,適切な説明を行う.

◉卵巣刺激は月経周期を問わず開始することができる.

◉卵巣凍結の普及には,悪性腫瘍再移植リスクへの対応が不可欠である.

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Point

◉浸潤子宮頸がんに対する妊孕性温存手術は,選択肢の1つであるが標準治療ではなく,がんに対する根治性についてはコンセンサスが得られていない.手術の適応については慎重な判断が必要である.

◉妊孕性温存手術後の分娩については早産率が高いことが指摘されているが,周産期管理についてはコンセンサスがない.分娩時に高度な新生児管理が必要となることがあるため,高次施設での管理が望ましい.

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Point

◉温存療法の適応は,筋層浸潤のない高分化型類内膜腺癌である.

◉治療前,治療中,終了時の組織学的評価は必ず全面掻爬材料で行う.

◉再発率が高く,消失後は早期にIVF-ETの導入を計画する.

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Point

◉IA期非明細胞腺癌高分化型(G1)/中分化型(G2),IA期明細胞腺癌と片側病変IC期非明細胞線癌G1/2には,妊孕性温存手術が選択できる.

◉上皮性境界悪性腫瘍では全病期に妊孕性温存治療が選択可能である.

◉胚細胞腫瘍でも全進行期で妊孕性温存治療が選択可能である.

◉エビデンスに乏しいが,顆粒膜細胞腫では妊孕性温存手術を選択できる可能性が高そうである.

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A エストロゲン受容体陽性乳がんの場合には,タモキシフェンやレトロゾールを併用したプロトコールを選択することが推奨されます.

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A 性周期が未成熟のため,卵巣凍結が唯一の手段です.

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A 術後6か月程度は再発の厳重観察期間と設定し,以降は症例ごとに妊娠を許可しています.不妊症のルーチン検査は,上行性感染のリスクなどを考慮して最小限の実施にとどめます.

 術後の子宮口狭窄の問題や,ゴナドトロピン療法に伴う多胎妊娠のリスクに対応するために,比較的早期から体外受精を推奨し,良好な妊娠率が得られています.

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A 現時点で若年子宮体がんの高用量プロゲステロン療法に高率に血栓塞栓症を発症するというエビデンスはなく,また,抗凝固療法を行うことで血栓塞栓症を予防できるというデータもありません.ただし,MPAが血栓症のリスクを上げることは明らかであり,予防的投与が不要とは言い切れません.血栓症を発症すれば治療継続は困難となるので,十分な説明のうえ,決定すべきでしょう.

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A 抗がん剤の種類により卵巣への毒性は大きく異なり,卵巣機能不全がほぼ発生しない薬剤から,80%以上に発生するとされる薬剤まであります.幸いにして卵巣悪性腫瘍に用いられる抗がん剤には,高度な毒性をもつ薬剤は含まれていません.

2.不妊症の検査・診断

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A 一般的には,①基礎体温の高温相が10日未満,②黄体期中期の血中プロゲステロン値が2,3回連続して10ng/mL未満,③子宮内膜日付診の異常,のいずれか1つ該当すれば黄体機能不全と診断します.

 しかし,これらの検査結果が臨床成績と必ずしも相関せず,周期によって黄体機能は異なることも報告されています(連続して黄体機能不全を呈する頻度は50〜80%).

 子宮内膜日付診の異常と黄体機能不全には関係がみられないとする報告が多く,黄体機能不全のスクリーニング検査とすることには否定的な意見も多くあります.実際には,基礎体温と黄体期中期のプロゲステロン値で総合的に判定します.

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A 静脈注射と頻回の採血が必要な侵襲的検査であるため,スクリーニング検査において必要ではありません.無月経や無排卵の場合,障害部位特定のため,GnRH(gonadotropin releasing hormone)負荷試験を行います.

 また血清プロラクチン基礎値は正常であるものの排卵障害を呈している場合,潜在性高プロラクチン血症を疑い,TRH(thyroid hormone releasing hormone)負荷試験を行うことがあります.

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A AMH値は,卵巣に含まれる卵の量を間接的に表しているマーカーです.妊娠のしやすさは,年齢など他の因子の影響も大きく,測定できないほど低い場合を除けば,AMH値が低いというだけで極端に妊娠しにくいというわけではありません.一方でAMH値が低い場合は,排卵誘発薬に対する反応が悪い場合もあり,妊娠率がやや減少するという報告もありますので,不妊治療の介入時期・治療法の選択,排卵誘発法の選択などを個別に検討する必要があります.

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A 甲状腺機能はスクリーニングにより5%程度で異常が検出されます.その大部分が潜在性甲状腺機能低下症(sub-clinical hypothyroidism : SCH)で,主に排卵障害との関連が報告されています.SCHは甲状腺ホルモン投与により不妊治療成績が改善すると考えられ,必須のスクリーニング項目です.

 スクリーニングにおいては,甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone : TSH),遊離サイロキシン(FT4)を測定し,月経周期を問わず採血可能です.

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A 2007年に,日本産科婦人科学会 生殖・内分泌委員会により設けられた診断基準を用いて診断を行います.

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A 子宮内膜日付診は分泌期の子宮内膜の形態学的変化を観察し,子宮内膜の成熟度の判定や黄体機能の間接的な評価として利用されてきました.しかし近年,子宮内膜日付診を黄体機能不全の診断として使用することに否定的な報告が多くみられ1, 2),内膜組織採取時に痛みを伴うこともあり,不妊症のスクリーニング検査としてルーチン化していない施設も多くあります.

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A 経腟超音波で卵胞が見えない場合,卵巣の位置が偏位していないか,膀胱や腸管のエコーが観察の妨げになっていないか,まず確認する必要があります.続いて子宮内膜エコーも参考に,卵胞がうまく発育していないのか,それとも発育卵胞が排卵してしまったのかを判断します.モニタリング時が排卵直後と推測された場合,その当日に性交や人工授精を試みる価値はあります.

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A 子宮卵管造影検査での異常には偽陽性が含まれている可能性も高いとされており,本検査での異常で必ずしも体外受精の適応となるわけではありません.卵管閉塞の治療として,腹腔鏡や卵管鏡での卵管形成術の治療成績は体外受精と同等との報告もあり,年齢やクラミジア感染の有無,他の不妊原因も考慮し,患者との相談のうえ,不妊治療を進めていく必要があります.

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A 卵管周囲癒着が広範囲でかつ強固である,卵管の腫大が著明で卵管壁が肥厚・硬化している,または卵管采の内腔ひだの菲薄化や消失などの所見が,両側卵管に認められた場合,体外受精を勧めたほうがよいでしょう.

2.不妊症の検査・診断 《女性因子》

基礎体温の評価法 田村 博史
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Point

◉基礎体温測定は,排卵日の推定や排卵の有無の推定に有用な検査である.排卵後に黄体からプロゲステロンが分泌されると,体温中枢を刺激して高温相となる.

◉高温相の短縮(10日未満)や高温相と低温相の温度差の少ないもの(0.3℃未満)は黄体機能不全を考える.

◉安価,簡便な検査法であるが,睡眠,食事,季節,室温,測定時間などさまざまな因子の影響を受けるため,意義や正確性を理解する必要がある.

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Point

◉スクリーニングとして,FSH,LH,エストラジオール,プロラクチンは月経期に測定.エストラジオール,プロゲステロンは黄体期中期に測定する.適切な時期の測定が重要であり,プロラクチンは食事・運動などによって分泌亢進するので注意が必要である.

◉FSHやLHはエストラジオール値やホルモン剤によって影響を受ける.ホルモン剤使用後1か月は避け,必ずエストラジオールと同時に測定し,エストラジオールが60pg/mL以上の場合には再検が必要である.

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Point

◉インスリン抵抗性評価には種々の方法があるが,産婦人科臨床ではHOMA-Rが頻用されている.

◉HOMA-Rはインスリン分泌の保たれている場合に適した検査法であり,空腹時血糖で140mg/dLを超える症例での使用は適当ではない.

◉多囊胞性卵巣症候群はその病態にインスリン抵抗性が関与していると考えられ,検査のなかでその評価が行われ,これを認めた場合には,排卵誘発時にインスリン抵抗性改善薬の投与も考慮される.

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Point

◉不妊症スクリーニング検査としては,クラミジア血清抗体検査を行い,陽性を示した場合にはパートナーとともに治療を行ったのちに卵管疎通性検査に進むことが望ましい.

◉クラミジア感染症では,卵管性不妊症に至ると腹腔鏡手術や生殖補助医療を必要としうることから,将来の不妊症や異所性妊娠を予防するために早期発見,早期治療が重要である.

◉そのためには不妊症例以外でもクラミジア抗原検査を積極的に行うことによって,無症候性クラミジア感染症の発見に努め,パートナーも同時に治療を行うことが大切である.

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Point

◉女性不妊症において,染色体検査は男性不妊症ほど一般的ではないが,原発性無月経や早発卵巣不全,原因不明の受精障害を高率にきたす場合で考慮される.

◉X染色体異常は早発卵巣不全患者の13%に認められたと報告されており,X染色体異常の主な疾患がTurner症候群である.

◉初期胚の段階では約半数に染色体異常が存在するといわれており,常染色体トリソミーが多く,卵子形成時の染色体不分離が主な原因である.

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Point

◉卵巣予備能とは卵巣における卵の量と質を反映し,女性の生殖機能を規定する要因の1つである.卵巣予備能の評価法はovarian reserve test(ORT)と呼ばれる.

◉ORTのうち抗ミュラー管ホルモン(AMH),胞状卵胞数(AFC)は,卵巣の反応性予測における有用性が高い.妊娠・生産の予測因子として満足できるORTはいまだ確立されていない.

◉AMHは,抗がん剤治療やチョコレート囊胞手術の卵巣予備能への影響評価,多囊胞性卵巣症候群の補助診断などにも有用であることが報告されている.

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Point

◉卵胞発育モニタリングは,経腟超音波断層法による卵胞径計測と尿中LH測定をメインに,基礎体温測定・頸管粘液検査・子宮内膜エコーも交えて総合的に行う.

◉卵胞は1日あたり1.5〜2mmのペースで増大するが,発育速度の個人差も大きい(1〜3mm/日)ため,排卵予定日の数日前より経時的なモニタリングが必要である.

◉主席卵胞が排卵するおおよその目安は,自然周期で20〜24mm径,クロミフェン周期で25mm径以上,ゴナドトロピン刺激周期で18〜20mm径である.

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Point

◉卵管疎通性検査は不妊診療のなかで基本的な検査であり,検査を行わずに度重なるタイミング療法や人工授精などの治療を行うことは,挙児希望患者にとって無意味な時間を費やす場合がある.

◉卵管疎通性検査法としてさまざまな方法があるが,それぞれの検査のメリット,デメリットを理解し,患者に適した検査を行うことが重要である.

◉検査では偽陽性となる場合があり,1回のみの検査で評価を行うべきではない.また,検査で疎通性が確認できた症例でも,不妊治療中に感染などで卵管が閉塞する可能性も考慮しなければならない.

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Point

◉頸管粘液検査は精子の受け入れ能を評価する検査である.分泌量の最も多くなる排卵期に行うことが望ましい.

◉頸管粘液検査は,頸管粘液量,粘性,シダ状結晶形成,牽糸性,細胞濃度から評価する.排卵期には粘液は水様透明となり,0.3mL以上で,9〜10cmの牽糸性があり,乾燥するとシダ状結晶を形成する.

◉性交後試験(フーナーテスト)は頸管粘液と精子の適合性をみる検査であるが,再現性に乏しいという意見もある.

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Point

◉子宮内腔病変による着床障害は生殖補助医療によっても解決できない問題であり,その診断・治療は生児獲得のために不可欠である.

◉子宮鏡検査は低侵襲で多くの有用な情報を獲得でき,また検査のみでも妊娠率の向上が得られることから,優れた検査方法である.

◉子宮鏡検査は無麻酔で施行することが可能ではあるが,そのためには短時間で検査を完遂できるように手技の習得と準備が必要である.

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Point

◉腹腔鏡検査の適応は,HSGで卵管性不妊が疑われる症例や長期にわたる原因不明不妊症例,子宮内膜症が疑われる症例である.

◉腹腔鏡検査は,直視下に骨盤内の状況を正確に把握できるため,その所見から自然妊娠が期待できるか,またはARTに移行すべきかの判断ができ,診断的に有用である.

◉腹腔鏡検査は,異常所見に対して同時に手術することによって,術後の妊娠も期待できるため治療的意義がある.

2.不妊症の検査・診断 《男性因子》

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Point

◉精液採取は,検査施設内の採精室で行うことが望ましい.1回目に精液所見に異常があったとしても,その時点で診断せずに3か月後に再度検査を行い,診断を行う.

◉精子濃度,運動率,運動形態観察,精子凝集,精子以外の細胞成分を顕微鏡的に評価する場合は,位相差顕微鏡が適している.特に,運動率測定では37℃の保温ステージ上での検査が望ましい.

◉検査の結果,重度の乏精子症,極少数精子,奇形精子症,無精子症と診断した場合は,男性不妊を専門とするART施設に速やかに紹介することが望ましい.

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Point

◉男性不妊症例においてはLH,FSH,テストステロンの測定は必須であり,午前中の採血が望ましい.

◉テストステロン低値(300ng/dL未満)の場合,内分泌療法により精子形成を刺激可能な場合が多く,100ng/dL未満の場合は低ゴナドトロピン性性腺機能低下症が疑われ,ゴナドトロピン療法の適応となる.

◉FSH値が7〜8IU/L以上の場合は造精機能障害を伴っている場合が多い.薬物療法は無効なことが多く,精索静脈瘤などの基礎疾患の精査が必要である.

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Point

◉無精子症あるいはARTを希望する患者には染色体検査とY染色体微小欠失検査が必須である.

◉Y染色体微小欠失検出キットでZFa,AZFb(P5/proximal P1),AZFb+c(P5/distal P1)の欠失はTESEの適応はない.

◉AZFc部分欠失であるgr/gr欠失は妊孕性に関与しない.

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Point

◉男性不妊症の診断には陰囊超音波検査は必須検査である.

◉最近では,精管造影はあまり行われなくなった.

◉診断を目的とした精巣生検は行わない.

2.不妊症の検査・診断 《共通》

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Point

◉女性側では精子不動化抗体をスクリーニング検査として行うことが望ましいが,二次検査とするならば原因不明不妊症,PCT不良,あるいはAIH反復不成功を適応とする.

◉卵胞液中の精子不動化抗体による受精障害を回避するため,ART前にはその存在の有無を把握しておく.

◉WHOでも精液検査の際に,運動精子上に結合する抗精子抗体の検出法を推奨している.

3.一般不妊治療:薬物療法

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Point

◉第1度無月経,無排卵周期症,PCOSの患者に対し,月経,あるいは消退出血の5日目から5日間投与する.必ず,妊娠の可能性がないことを確認してから投与する.

◉多胎率が約5〜8%と高率であること,特に約0.3%に品胎以上の妊娠も認められるため,十分な注意が必要である.

◉6周期以降では周期あたりの妊娠率が低下するため,6周期の投与をめどに治療法を再考する必要がある.

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Point

◉一般不妊治療におけるゴナドトロピン療法は,FSH作用を有する製剤を用いて卵胞発育を促し,卵胞が成熟した時点でLH作用をもつhCGを投与して排卵誘発する方法である.

◉ゴナドトロピン療法は,強力な排卵誘発効果を有するが,多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)などの副作用に注意が必要である.

◉ゴナドトロピン製剤にはFSH/LH比の異なる製剤があり,より効果的で副作用の少ない排卵誘発を行うために,個々の症例に応じて製剤の使い分けや投与法を工夫する必要がある.

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Point

◉高PRL血症では,特定の原因による場合を除き,ドパミンアゴニスト製剤の内服療法が第一選択となる.

◉高PRL血症を呈する排卵障害に対するドパミンアゴニスト製剤の投与量は,PRL値を継時的に測定しながら漸増する.妊娠が判明した場合は,原則として服用を中止する.

◉ドパミンアゴニスト療法は,体外受精治療におけるOHSS発症高リスク患者に対して,OHSSの予防に有用な可能性がある.

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Point

◉挙児希望のあるPCOS患者の排卵誘発法の第一選択はクロミフェンであり,クロミフェン無効例に対してメトホルミン療法を考慮する.

◉挙児希望のあるPCOS患者に対するメトホルミン療法は,肥満・耐糖能異常またはインスリン抵抗性を有する場合に考慮する.

◉メトホルミンには排卵誘発薬としての保険適用がなく,PCOS患者に用いる際には十分なインフォームド・コンセントと各施設での倫理委員会の承認を得て投与を行うことが推奨される.

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A クロミフェンの抗エストロゲン作用が,頸管粘液の産生低下と子宮内膜の菲薄化をもたらし,このことがクロミフェンによる高い排卵率にもかかわらず妊娠率が低い一因と考えられます.クロミフェンを投与しながら,子宮における抗エストロゲン作用を抑制する効果的な方法は確立されておらず,休薬,あるいは治療方法の変更を考える必要があります.

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A クエン酸クロミフェン,あるいはゴナドトロピン療法による上皮性卵巣悪性腫瘍の発生頻度の上昇が指摘されていました.しかし,2013年に報告されたメタ・アナリシスでは,これらの薬剤を用いた不妊治療と卵巣癌との関連性は認められない,とされています.

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A より効果的で副作用の少ない排卵誘発を行うためには,それぞれの症例の内分泌環境に適したFSH/hMG製剤を選択する必要があります.

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A ゴナドトロピン療法抵抗性の視床下部性第2度無月経の一部に対して,GnRHパルス療法が効果的なことがあります.

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A 低用量FSH療法は必要最少量のFSHで卵胞発育を目指す方法です.FSHの値が閾値を下回ると卵胞発育は抑制され,閾値を著しく越えた状態では過剰な卵胞発育をきたすので,至適なFSH濃度を保つことで,過剰な卵胞の発育を抑制しようとする方法です.

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A 卵胞期初期に空腹で午前中に測定するのが最適です.血清プロラクチン値が正常な症例に対するドパミンアゴニスト療法に関しては,乳汁分泌を認める症例に対して有用性を示した報告があります.

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A インスリン抵抗性のない痩せたPCOS症例や,多囊胞性卵巣のみのhigh responderに対するメトホルミン療法の効果は認められません.

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A アロマターゼ阻害薬であるレトロゾールは,PCOS症例に対して排卵誘発効果を認めます.

4.一般不妊治療:手術療法

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Point

◉卵管病変の原因 : 卵管周囲病変は子宮内膜症でも生じるが,卵管内腔病変の多くは,上行性感染によって生じる.

◉卵管は通過性があればよいのか? : 妊娠成立にとって重要な臓器である卵管は,通過性のみならず内腔癒着による狭窄や,卵管ひだの破壊などの病変が妊孕性に影響を及ぼす可能性がある.

◉卵管病変に対応する治療の選択肢 : 卵管病変の部位と病態によって対応する治療の選択肢は異なる.

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Point

◉不妊以外の症状がない場合,腹腔鏡手術と不妊治療のどちらかを優先する根拠はないが,自然妊娠を希望するならば,無治療よりも腹腔鏡手術を選択したほうがよい.

◉卵巣チョコレート囊胞(チョコレート囊胞)に対して囊胞摘出を行う場合,術後の卵巣予備能低下と再発に留意し,事前に患者に対して情報提供を行う必要がある.

◉不妊以外の症状がない場合,ART前の腹腔鏡手術は推奨されない.

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◉子宮内腔の変形を伴う粘膜下筋腫と筋層内筋腫は,妊孕能低下の原因となる.一方で,子宮内腔の変形を伴わない筋層内筋腫や漿膜下筋腫は,妊孕能に影響する可能性が低いと考えられる.しかし,妊娠時には産科合併症のリスクを増加させるため,筋腫の位置や大きさによっては筋腫の治療を優先することを検討する.

◉治療方法は主に手術療法であり,筋腫核出術や腺筋症核出術が行われる.術後に妊娠した際には子宮破裂や癒着胎盤に注意が必要である.

◉筋腫および腺筋症の手術後には避妊期間を設ける必要性があるため,高年齢の患者では,術後避妊期間中の経年的な妊孕能低下の可能性についてもインフォームド・コンセントを行い,治療方針を検討する必要がある.

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Point

◉挙児希望のあるクロミフェン抵抗性PCOSには,ゴナドトロピン療法もしくは腹腔鏡下卵巣多孔術(laparoscopic ovarian drilling : LOD)を行うことが推奨されている.

◉LOD後の排卵率は30〜90%,術後1年での累積妊娠率は50〜80%と良好で,自然排卵が得られなかった症例でも,術後クロミフェンやFSHに対する感受性が改善することが多い.

◉LODは多胎妊娠率が有意に低く,またOHSSも発生しづらいこと,効果は単一周期にとどまらないことなど多くのメリットを有する.

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A 卵管の遠位端以外の卵管閉塞に対する卵管鏡下卵管形成術は,治療選択として有効です.自然妊娠,人工授精による妊娠を期待しない場合は,体外受精を優先することも選択肢の1つです.ただし,卵管遠位端の病変で特に留水症を伴う場合は,腹腔鏡下手術が第一選択です.卵管留水症では,貯留した卵管液の子宮内流入が着床障害をもたらすため,体外受精での妊娠も期待できないことから,優先して卵管治療を選択すべきです.

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A 卵巣チョコレート囊胞に対して囊胞摘出を行うと,卵巣予備能は低下しますが,これを軽減する方法はあります.

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A 妊孕性改善のみを目的とする場合,卵巣チョコレート囊胞に対して,囊胞摘出と一般不妊治療のどちらかを優先する根拠はありませんが,自然妊娠を図る意向が強ければ,囊胞摘出の先行を考慮します.ART(assisted reproductive technology)の前に囊胞摘出を行っても,妊娠率は変わらず,卵巣刺激に対する反応性が低下する可能性があります.疼痛改善,感染・破裂の予防,悪性腫瘍との鑑別を重視する場合,囊胞摘出を先行することを考慮すべきですが,術後の卵巣予備能低下に留意する必要があります.

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A 子宮内膜ポリープ,粘膜下筋腫は,いずれも着床障害の原因となる可能性があるため,子宮鏡下の病巣摘出は妊孕性の向上に寄与すると考えられます.

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A 子宮内腔に変形のない子宮筋腫は,妊孕能に影響する可能性は低いと考えられます.しかし,筋腫合併妊娠では,流・早産,前期破水,胎位異常,胎盤早期剝離,子宮内胎児発育遅延,微弱陣痛,産道通過障害,弛緩出血などが増加することが知られています.筋腫が不妊の原因でなくとも,産科合併症のリスクが増加すると推測される場合には,不妊治療に先んじて子宮筋腫の治療を行うことも検討する必要があります.

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A 腺筋症病変をできるだけ完全切除に近づけることによって,妊孕能は向上する可能性が高いと考えます.しかし,腺筋症核出術後妊娠では,妊娠中の子宮破裂や,癒着胎盤など胎盤異常の頻度は上昇するため,適切な切除範囲の決定が必要です.

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A PCOSに対して腹腔鏡下卵巣多孔術を行うと約8割の方に自然排卵が起こることが期待できますが,その効果があった患者さんでは自然排卵が1年以上持続することが期待できます.

5.人工授精

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Point

◉最近高齢の不妊患者が増加している.そのため漫然と配偶者間人工授精(AIH)を繰り返している余裕はなく,ベストの方法でAIHを行い,2回,遅くとも3回目までに結論を出さねばならない.

◉そのため,①複数個の卵胞を左右の卵巣から発育させ,②排卵の時期に一致してAIHを行う.③そしてできるだけ多くの良好な夫の精子を子宮腔内に注入する.

◉上記の方法でAIHを行い首尾よく妊娠した場合,多胎や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)に陥ることがある.そのことを前もって夫婦によく説明しておき,いざOHSSになった場合,入院を含め的確な治療を行わねばならない.

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Point

◉提供精子を用いた人工授精は,現在わが国で匿名で行われている.

◉告知をせずに後で子どもが偶然知ったときには心に深い傷を負うため,親子関係を安定させるために子どもへの積極的告知が必要である.

◉出自を知る権利を認めるかどうか,親子関係の法的規定など,今後さまざまな問題を解決する必要がある.

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Point

◉精子凍結保存に際しては事前に十分な説明を行い,文章によるインフォームド・コンセントを必ず行い,取り違えが起こる可能性をなくすための最大限の注意を払うこと.

◉化学療法を必要とする悪性腫瘍患者に対する精子凍結保存においては,日ごろから治療前に来院していただくように周知しておくこと.

◉精巣内精子に対する精子凍結保存においては,仮に顕微授精により妊娠・出産に至っても第2子希望に備えてしっかり凍結保存を継続することを確認すること.

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A 良好な精子を得るためベストの条件で精子の調整を行いましょう.そのため人工授精(AIH)当日は必ず夫に来院してもらい,静かな採精室でリラックスした雰囲気で存分に採取してもらいます.

 夫の精子は1回の射精ですべてが排出されず,約1/3が残っています.そのため2回続けて精液を採取し(できれば30分以内に),2回分を合わせて丁寧に調整して良好な精子を選別して精製します.

 それでも不十分な場合は,あらかじめ別の日に上記の方法で精子を調整して凍結保存しておき,当日の分と合わせてAIHに供します.

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A この治療が特殊であることを夫婦に理解させ,実施施設でよく相談するようにお話しください.また紹介する際には,医学的にAIDの適応であることを証明する書類を添付してください.

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A 最も重要なことは患者精子の取り違えを決して起こさないことです.そのためには,凍結の際に複数の人間によるダブルチェック,トリプルチェックをすることはもちろんですが,その後の管理の際に困らないように患者さんの情報を可能な限り残すことです.もちろん個人情報の保護にも十分に留意します.

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A 当院では最初に1年ごとの更新の手続きを行う必要を説明しています.また更新の際には液体窒素代金として年間3,000円をいただいています.

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A そんなことはありません.通常,化学療法直後は無精子症になる場合がほとんどですが,治療終了後3か月以降に精液中に精子が認められる患者さんもいらっしゃいます.

6.生殖補助医療

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Point

◉ARTにおける調節卵巣刺激法は大別して,自然周期,クロミフェン(CC)周期,FSH(hMG含む)周期,CC+FSH周期,FSH+GnRHアゴニスト周期,FSH+GnRHアンタゴニスト周期,その他がある.

◉採卵数7個程度以上を目標とする標準的調節卵巣刺激法では,FSH製剤の連日投与が必要であり,ほとんどの周期で,刺激中の早発LHサージを抑制するためにGnRHアゴニストまたはGnRHアンタゴニストが併用される.

◉低刺激法にはCC,アロマターゼ阻害薬,FSH製剤とGnRHアンタゴニストを組み合わせた多様な方法があり,症例ごとに適切に選択する必要がある.

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Point

◉自然周期採卵や低刺激周期採卵の欠点は,キャンセル率が高いことである.その原因は採卵率の低さにもあるので,確実な採卵が求められる.

◉腟洗に用いる消毒液などの吸引卵胞液内への混入は,直接卵子発育に影響することから,腟洗は消毒液の影響が残らないように行う必要がある.

◉採卵時の血管損傷は,重大な事故につながる可能性がある.事故防止の観点から,採卵後の経過観察を十分に行うことと,採卵時の誤穿刺を避けるために血管との鑑別診断にカラードプラを併用することが有効である.

胚培養の方法とコツ 橋本 周
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Point

◉手を洗い,清潔操作を行う.

◉手順書(マニュアル)にしたがって操作する.

◉記録を残す.

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Point

◉体外受精や凍結融解処理により胚の透明帯は硬化して,ハッチング障害が惹起される1, 2).このためアシストハッチング(AH)法により透明帯を処理して移植胚の孵化を補助する.

◉繊細な操作が要求されるので,トレーニングを十分行ったうえで慎重に実施する.施設の事情により方法はさまざまでよいが,胚に対して安全かつ低侵襲に行う.透明帯処理は広範囲に施行する方が効果的である.

◉従来,機械的AH法や化学的AH法が行われてきたが,最近はレーザーによるLAH法が広く行われるようになった.LAH法は安全性が高く簡単に行うことができる.

顕微授精の方法とコツ 中山 貴弘
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Point

◉治療成績を左右するのは優れた顕微授精操作であるが,そのためには使用機器と機材の選別および入念なセッティングなどの前準備が重要である.

◉卵子および精子の外部環境への被曝を絶えず念頭におき,できるだけ短時間で授精操作が終了するようにこころがける.

◉顕微授精の胚培養効率がconventional IVFのものと比較して劣る場合は,さらなる改善点があるものと考えられる.

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Point

◉胚移植前に,着床障害の原因になる事項〔子宮内膜の厚さ,ホルモン(E2,P4,LH),卵管水腫の有無,子宮内小病変の有無,子宮内腔pooling(帝王切開瘢痕症候群)など〕をチェックし適切に対応する.

◉カテーテルの外筒を用いて胚移植を行う場合,超音波にて子宮頸部の長さ・屈曲度を目測してから,外筒に付いているストッパーの位置を頸管の長さに合わせて変更するとともに,頸管の屈曲度に合わせて外筒を曲げ,頸管の的確な位置に留置してから移植カテーテルを挿入する.

◉移植に伴う子宮内出血の有無は胚の着床に大きく影響する.移植カテーテルの外筒は頸管内に流し込むように挿入する.カテーテルの外筒が挿入困難な場合は,頸管の屈曲度にカテーテル外筒の曲がり具合が合っていないことが原因であるので,決してカテーテル外筒を強引に押し込むような操作は行わない.

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Point

◉ARTにおいては,黄体機能が損なわれるかあるいは内因性の黄体機能が全く存在しないため,黄体補充療法は必須である.

◉黄体補充療法に用いるエストロゲンやプロゲステロンは天然型が好ましい.

◉黄体補充療法に用いるプロゲステロンは安全性・有効性・利便性の面から,天然型プロゲステロン腟剤が推奨される.

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Point

◉胚や配偶子の凍結方法は,徐々に温度を低下させて液体窒素内で保存する緩慢凍結法と,一気に液体窒素内の温度である−196℃に低下させるガラス化法があり,現在は生存性や臨床成績の高さからガラス化法が主流である.

◉凍結胚移植のための子宮内膜の調整方法には,内因性ホルモン分泌による内膜作成方法(自然排卵周期)と,外因性ホルモン投与による内膜作成法があり,成績の差はみられない.

◉日本の生殖補助医療による出生児全体の75%は,凍結胚移植による妊娠からであり,それは新鮮胚移植と比較して有意に妊娠率・着床率が高いためである.

IVM-IVFの実施法と成績 福田 愛作
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Point

◉IVM-IVFはARTとしては比較的新しい選択肢であるが,PCO/PCOS患者にとってはOHSSリスクの全くない,経済的/精神的負担の少ない,そして妥当な妊娠率の得られる治療法である.

◉IVM-IVFは臨床医にとっても,胚培養士にとっても,決して困難な治療法ではない.採卵もIVM専用針(市販)を用いれば通常IVFと大差はなく,培養液も通常IVFと同様に市販されている.

◉IVM-IVFからすでに多くの児が出生しており,現時点では通常IVFに比べて出生児に対するリスクは高くない.それ以上にPCOの患者ではOHSSのリスクがないため,第一子をIVMで得た母親は第二子もIVMで望む傾向が強い.

◉IVM-IVFの採卵が困難という理由で臨床医に避けられがちであるが,小卵胞からの採卵は通常IVFと大差ない.データ集積の観点からも積極的なIVM-IVFの臨床応用の拡大を推進したい.

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Point

◉日本での着床前診断の適応は,重篤な遺伝性疾患に限られる.

◉日本産科婦人科学会からの会告(1998年)を遵守し,個別の倫理審査ののち認定施設で臨床研究として行われる.

◉希望するカップルには遺伝カウンセリングを行い,現状やカップルの抱える問題を整理し,自律的決定ができるようサポートする.

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A 2〜3個は採卵できたが,思ったより少ない場合,ゴナドトロピン増量が第一選択です.加えて,FSH単独よりhMGを用いることで反応が改善することもあります.刺激前周期の月経調整のためのOC内服を避け,なるべく月経周期早期(可能であれば月経初日)から刺激し,GnRHアンタゴニスト併用(GnRHaロング法を避ける)など,細かな工夫で採卵数を増やすことが可能な症例は多いと考えられます.

 工夫をして,再度トライしても採卵数0〜1個が続く症例では,もはや調節卵巣刺激は期待薄です.年齢にかかわらず,焦らずに自然周期,CC法などで丁寧に,1〜2個の採卵を気長に心がけましょう.

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A GnRHアゴニストを用いた調節卵巣刺激法(特にGnRHaロング法)に比べて,調整性が高く,薬剤投与日数が短いなど,機動性が高いことが特徴です.一般排卵誘発治療中の経験がそのまま活用でき,薬剤の効果も即効性で単純ですから,治療がシンプルで理解しやすいことも特徴となります.これからART専門医を目指す医師が最初にマスターするべき基本的治療法といえます.

 採卵数は比較的多くて安定していますし,妊娠率も高いので,すべての患者さんに第一選択として提案できる治療法といえます.1日1回の投与でよく,治療日数も短いので,患者さんにとっても便利な方法です.

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A 採卵時の出血は,場合によっては急性腹症として対応しなければならない場合があります.特に無床クリニックでの採卵は,その判断を的確に下し上位医療器関と速やかに連携できる体制を普段から整えておく必要があります.もちろん,採卵時の出血に対する予防も重要です.

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A 採卵後に付属器膿瘍をきたした既往のある患者に行う採卵法は,付属器膿瘍の原因となる原疾患があったのか,なかったのか,付属器膿瘍が外科治療によって完治しているのか,内科的(保存的)に治療し付属器膿瘍が腫瘍として残っているのかによって,それぞれ対応が異なります.

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A 経時的に胚の形態変化を培養器内で記録できるシステム(タイムラプスシステム法)を使って,正常なタイミングで正常に分裂した胚を選んでください.タイムラプスシステム法を使用できない場合は,受精後28時間までに正常分裂して2細胞(異常分割胚を含まない)になっている胚を選別してください(第一選抜).受精後3日目に移植する場合は第一選抜された胚の中で6〜9割球に分裂した胚を選択してください(第二選抜).第二選抜では8細胞期胚が優先されます.胚盤胞期胚を移植する場合は第一選抜された胚の中でGardner分類1)に基づき評価してください.第一選抜で漏れた胚が胚盤胞となりGardner分類で良好胚と評価された場合でも,異常分割胚を移植することは好ましくないと考えます.

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A 【適応症例の設定】rescue ICSIの施行意義そのものが常に議論されているところであり,実際の方法よりも,診療においてどのように同法を取り入れていくのか,各施設における基準作りがまず大切です.ポイントとしては,①取り入れるか全く行わないか,②全例を対象とするか適応症例を限定するか,③適応とする受精率の設定(0%,30%,50%など),④split ICSIとどう使い分けるか,などが挙げられます.

【実際の方法】媒精6時間後(最短で5時間後,最長で7時間後)に卵丘細胞を除去し,倒立顕微鏡を用いて200倍の倍率で受精兆候の有無を観察します.この際,誤判定を予防するために卵丘細胞は残さず,すべて除去します.受精兆候の指標としては第二極体放出,fertilization cone出現,cytoplasmic flareの出現,早期に形成される前核,細胞質内の紡錘体の確認などがあり1),できるだけ多くの指標を組み合わせて多方向より胚を観察し判定することが大切です.判断に迷うようであれば1時間後に再判定を行い,最終的に未受精と評価された卵子にICSIを施行します.得られた胚の発生は内膜の日齢と同期していると考えてよく,採卵周期に移植が可能です.

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A 薄い子宮内膜による着床不全を改善する薬物療法として,以下のものが提唱されています.しかし,いずれも決定的な治療効果を示すことはできておらず,確立された方法はないのが現状です.

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A アシストハッチング(AH)法はすべての症例に有効というわけではありません.また,AH法による一卵性双胎や先天性奇形の発生リスクや胚にダメージを与えるリスクがあります.

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A 顕微授精適応患者の精液所見は,ほぼ正常域にあるものから入念な探索が必要なTESE精子までかなりの幅があり,それに合わせて調整方法も若干変える必要があります.ただ,あまり多くの方法を設定することは意味がなく,むしろ業務の妨げになると思われます.当院では主に運動精子数を基準にして3種類の密度勾配遠心法を用いた精子選別法を行っており(表1),良好な成績が得られています.

 円滑な顕微授精操作を可能にするためには,選別時にできる限り精子以外の成分の除去を行うことが重要です.そして処理後の精子はDNAの断片化を防ぐため,気相や温度変化など外部環境への被曝に十分注意し,速やかにICSIに供します.最終的に注入精子を決定するのはICSI用ディッシュ上であるので,スポットのレイアウトの作成方法も成績に影響を及ぼします(別項記載).また,運動精子数が極端に少ない場合では,可及的に多くの胚培養士を動員して良質の精子を時間が許す限り根気強く探し出すことが成績向上につながります.当院では,1症例につき3台のシステムを同時使用して運動精子を検索し,ICSIの効率化を図っています.

 なお,後述するIMSI(intracytoplasmic morphological selected sperm injection)1)とhyaluronic binding assay2)については現時点で治療成績が大きく左右される結果は報告されていないため,われわれは両法ともまだ研究段階との見解であり,一般診療への導入を保留しています.

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A ホルモン補充周期による妊娠で絨毛膜下血腫が発症する割合が,他の移植法と比べて高いことが示されています.

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A 先天異常が増加するとのデータはなく,IVM-IVF法において児に対する先天異常などの危険性が高まるとは考えられないでしょう.

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A 遺伝カウンセリングを受けることを提案しましょう.日本産科婦人科学会のホームページにある,「生殖医療に関する遺伝カウンセリング受入れ可能な臨床遺伝専門医」を参考に紹介しましょう.

7.男性不妊症の治療

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Point

◉低ゴナドトロピン性性腺機能低下症に伴う精子形成障害には,ホルモン補充療法が推奨される.

◉特発性男性不妊症に対してホルモン剤,抗酸化剤は一定の効果を認めるが,エビデンスに基づいた明確な結論は出ていない.

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Point

◉精索静脈瘤(特に高度な静脈瘤)治療により,約60〜70%の患者で精液所見の改善が,約30〜50%の患者でパートナーの自然妊娠が得られ,男性不妊症の重要な原因の1つである.

◉近年のメタアナリシスにおいて,精索静脈瘤手術は自然妊娠率を改善する確固たるエビデンスはないものの,精液所見や精子を取り囲む環境が有意に改善することが証明された.

◉精索静脈瘤治療においては,不妊期間,妻の年齢,治療効果を考慮し,補助生殖医療(人工授精,体外受精など)の併用のタイミングを図ることも重要である.

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Point

◉非閉塞性無精子症に適応がある.

◉AZF欠失検査が,精子回収予測には有用である.

◉精巣に優しい治療法である.

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A 少数の精巣精子の保存には,少量(数μL〜数十μL)の凍結保存液中に保存できる方法がよいでしょう.

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A

非侵襲的方法

1)夫に対しては事前に5日間の禁欲を依頼します.

2)ART施行3日前より重曹6g/日を服用.尿のpHを7〜8程度(低いpHは精子運動率に悪影響)にします.

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A conventional TESEは精子形成があることが確実な閉塞性無精子症が対象であるのに対して,microdissection TESEは非閉塞性無精子症が対象です.

8.不育症の検査・診断

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Point

◉不育症患者は抑うつ・不安・喪失感などのさまざまな精神症状を呈する.精神的支援(tender loving care)を行うことで流産率を下げるとの報告もあるため,患者の言葉に傾聴することが肝要である.

◉加齢と流産回数の増加は次回妊娠成功率を低下させる.

◉不育症の原因特定には不育症リスク因子精査を行う.50%以上の症例では原因を特定できないが,原因が特定できなくても既往流産回数が3〜4回の場合には,60〜70%の確率で次回妊娠が無治療で継続できる.

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Point

◉染色体均衡型転座は約5%の頻度であり,着床前診断によって流産率は減少するが,出産率は変わらない.

◉胎児染色体数的異常が最も高頻度な原因であり,その場合の次回妊娠予後は良好である.着床前スクリーニングによって出産可能になるかどうかは証明されていない.

◉原因不明不育症に関しては不育症易罹患性遺伝子が120個報告されているが,個々のrisk alleleの次回妊娠への影響は小さく,臨床的に調べる意義は確立されていない.

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Point

◉抗リン脂質抗体は歴史的に梅毒反応偽陽性として発見されたため,抗カルジオリピン(CL)抗体が最も有名である.

◉抗リン脂質抗体といってもその目標抗原の多くはリン脂質ではなく,さまざまなリン脂質結合蛋白であり,それぞれの病原性およびその病態は異なると考えられる.

◉血栓症や妊娠中・後期子宮内胎児死亡のリスクが高いのは,抗CL-β2GPI複合体抗体と希釈ラッセル蛇毒時間で測定したループスアンチコアグラント(LA)が両者とも陽性の場合であるといわれている.

◉妊娠初期流産を繰り返すタイプの不育症患者は,抗リン脂質抗体症候群の診断基準にある抗CL抗体やLAが陽性のことは少なく,むしろ抗ホスファチジルエタノールアミン(PE)抗体をもつことが多い.

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Point

◉子宮奇形は不育症のリスク因子となる.特に,中隔子宮,双角子宮は初期流産や中期の流早産の原因となる.

◉最近,欧州生殖医学会と欧州婦人科内視鏡学会が新しい分類を提案した.弓状子宮がなくなり,双角中隔子宮などこれまでの分類にないカテゴリーが追加された.

◉子宮奇形の診断は,超音波検査,HSG,子宮鏡,MRIなどの画像診断に,内診所見を加味して総合的に行う.

子宮頸管無力症の診断法 板倉 敦夫
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Point

◉子宮頸管無力症は,さまざまな病因によって頸管の保持力が低下することにより発生し,妊娠中期の流早産の原因となる.

◉その病因は頸管組織の器質的異常のみならず,感染などに起因する機能的異常も含まれる.

◉既往歴とともに経腟超音波による頸管長計測が,診断の判断材料となる.

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Point

◉まずは基礎体温測定と高温期黄体ホルモン検査を行い,下垂体機能(プロラクチン,LH,FSH,TRH負荷テスト),および甲状腺機能(freeT3,freeT4,TSH)と抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体の検査も行う.

◉糖尿病検査(空腹時血糖,HbA1c,糖負荷テスト)と卵巣予備能は追加項目である.

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Point

◉流産は患者夫婦にとって子どもを失うのと同様の心的外傷体験になりうる.

◉流産という喪失(loss)に対する患者夫婦の悲嘆反応(grief reaction)を認識したうえで,適切な情報提供を行う.

◉患者夫婦の精神面に配慮することにより,反復・習慣流産を原因とする夫婦関係の悪化や妊娠回避の長期化を防ぐ.

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A 検査の前 : 均衡型転座が判明した場合,家族にも転座保因者が存在する可能性があります.兄弟姉妹が妊娠に関して悩むことになるかもしれません.明確な原因を突き付けられて夫婦もしくは両家の紛争に発展する恐れがあるかもしれないので,どちらに転座があるかを伏せてお話しすることもできます.

転座が判明したら : 転座が原因の場合,他の原因と比較して出産率は低い傾向にありますが,出産可能です.習慣流産を発端として転座が判明した場合,多くは流産となり,不均衡型転座のお子さんが妊娠継続する確率は2.9%程度です.ご心配であれば羊水検査の機会があります.

 着床前診断を実施した場合,流産は減少しますが,出産率が上がることはありません.出産に至るまでの期間も変わりません.

 着床前診断を選択した場合,流産しない代わりに体外受精を行っても妊娠しない経験をします.体外受精の侵襲,費用負担もあります.

流産したとき : 最も頻度の高い原因がはっきりするので,流産絨毛の染色体検査をお奨めします.16番,22番,21番染色体のトリソミーが見つかることが多いです.16番トリソミーのお子さんは生まれることができないので,寿命をまっとうすることができたのだと思います.異常の場合,お子さんが正常の場合よりも次回の妊娠が成功する確率が高いと思われます.健康保険の適用になりませんが,異常があれば他の検査を割愛することもできます.お子さんの検査から転座もわかります.結局費用がお安くなるかもしれません.

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A 着床する前の胚から細胞を取り出し,遺伝学的診断を行う検査を広義の着床前診断(preimplantation genetic diagnosis : PGD)と呼んでいます.このうち,単一遺伝子異常,または特定の染色体異常の有無を診断するものを狭義のPGDと呼び,胚の染色体数的異常の有無を検出する検査を着床前スクリーニング(preimplantation genetic screening : PGS)と呼んでいます.

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A 血液凝固因子検査の異常値を示す疾患のなかで,抗リン脂質抗体症候群(anti-phospholipid syndrome : APS)は反復・習慣流産との関連についてのエビデンスが確立しています.一方でプロテインS欠乏,プロテインC欠乏,アンチトロンビンIII欠乏などの先天性凝固因子欠乏症が流産のリスク因子であるかについては議論の余地があります.

 APSに対しては,低用量アスピリン療法(LDA)+ヘパリン療法による流産の抑制効果が示されている一方で,先天性血栓性素因に対しての抗血小板療法,抗凝固療法による流産リスク低減に関する有効性は確認されていません.しかし,それらの血栓性素因を有する妊娠女性に対しては不育症という側面だけではなく,深部静脈血栓症のハイリスク群であるという認識をもって周産期管理を行うことが重要です.また,APS,先天性凝固因子欠乏症のいずれもpreeclampsia(PE)やfetal growth restriction(FGR)などの胎盤形成不全に伴う周産期合併症の原因となる可能性が指摘されていることも知っておく必要があります.

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A 抗ホスファチジルエタノールアミン(PE)抗体のみ陽性で流産歴3回以上の不育症患者においては,治療により生児獲得率が有意に上昇します.また,抗PE抗体陽性で第XII因子活性低下を伴う場合,過去の流産の原因である可能性が高いと考えられます.

 抗ホスファチジルセリン・プロトロンビン(PS/PT)抗体と流産との関連については相反する報告が多数あり,現時点では科学的エビデンスに乏しく,今後さらなるデータの蓄積が必要です.

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A 免疫異常は,約65%を占める原因不明不育症患者のなかで,約3割を占めるとされています.特に末梢血NK細胞活性の高値は流産と関連するという報告もあるため,NK活性を正常化することが流産率を減少させる可能性がありますが,確固たるエビデンスとはなっていません.また,NK活性高値と流産率は関連性がないとする報告もあります.

9.不育症の治療

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Point

◉頸管縫縮術の目的は流産・早産の防止であり,少なくとも児の未熟性による合併症が少なくなる時期まで妊娠を延長することである.頸管縫縮術を行ったことによって,かえって破水を生じたり,抑制困難な子宮収縮が生じることは避けなければならない.

◉適応については,手術のリスクも含め,保存的管理(縫縮術を実施しない場合)の予後とよく比較し,症例ごとに十分に検討する必要がある.

◉習慣流産の症例に対して実施する頸管縫縮術の予後に関して,頸管縫縮術の実施が有用であるという明らかなエビデンスは示されておらず,現時点では個々の症例に応じて対応している.

◉慎重な妊娠管理にもかかわらず,妊娠中期に超音波上の頸管長短縮や胎胞を視認することがある.このような症例に対する治療的頸管縫縮術は,症例によっては有用なことがある.

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Point

◉アスピリンやヘパリンの使用は,適応を十分検討し,出血・肝障害そしてヘパリン起因性血小板減少症(HIT)などの副作用に十分注意する.

◉在宅自己注射には,注射方法,器材の処理などの指導を十分に行う.その指導や医療材料は,保険が適用される場合,指導管理料に含まれる.

◉自己注射は,細い針を用い,穿刺方法を工夫することで,痛みをかなり軽減できる.不安を取り除くことが指導の最も重要なポイントである.

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Point

◉流死産は,「何か悪いことをしたから」「恥ずかしいこと」など,スティグマ(負の烙印)と捉えられており,適切な情報提供や啓発が必要である.

◉妊娠中のtender loving care(TLC)/supportive care(支持療法)の妊娠継続への有効性は証明されていないが,精神支援として施行すべきである.

◉TLC/支持療法の内容は多岐にわたるが,すべての不育症女性に適した支援は存在せず,個別の対応が必要である.

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Point

◉不育症の原因について,続発性不育症に比べて原発性不育症では,子宮奇形が多く,その他の原因頻度は変わらない.

◉抗リン脂質抗体陽性を認めた34歳以下の原発性不育症患者では,ヘパリン/アスピリン併用療法が非常に有効である.

◉抗リン脂質抗体陽性の続発性不育症症例や35歳以上の原発性不育症症例と,凝固異常症例では,ヘパリン/アスピリン併用療法とアスピリン単独療法で妊娠維持率に差がなかった.

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A 適応を十分に吟味し,適切な方法であれば,夫リンパ球免疫療法の有効性を否定することはできません.ポイントは適応と方法です.実施する場合には,有効性以上に安全性の確保が必須ですから,エイズを含めた各種ウイルス感染の予防対策と,免疫病予防のための放射線照射した夫リンパ球の使用が絶対条件です.

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A ・原因・リスク因子が不明の習慣流産に対して,母体静脈内免疫グロブリン療法(IVIg)の有効性を認めた二重盲検試験(RCT)は,これまでに1研究しかありません.続発性習慣流産に対するIVIgの有効性を報告した近年のシステマティック・レビューと,それを否定するレビューが存在します.したがって,習慣流産に対するIVIgの有効性は,いまだ未確定であるといえます.その理由は,これまでのIVIgのRCTにおいては,投与量と期間がまちまちで,対象の流産回数が少なく(軽症),絨毛染色体の検査もされていない(効果判定が不正確)など,問題点が多いからです.

・妊娠初期大量免疫グロブリン療法(HIVIg)は,世界で初めて日本で実施された治療法で,インタクト型Ig 20gを5日間連続して投与(総投与量100g)します.RCTではありませんが,4回以上の流産歴をもつ難治性習慣流産に対して有用であるとする報告があります.この治療を行う場合には,自費診療となり,かつ倫理委員会などの承認と患者同意が必要です.IgA欠損やIgに対するアレルギーがないことをあらかじめ確認しておかなければなりません.

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A 漢方薬の使用は古くからの歴史があり,一般的に副作用が少なく,主として西洋薬で十分な効果が得られない場合の代替薬,西洋薬の効果増強などを目的に用いられています.この状況は,不育症の治療においても同様であり,漢方療法は効果があるといえます.漢方療法に関する原典とされている「金匱要略」の記述から,切迫流・早産に対する当帰芍薬散の有用性および性器出血が認められる症例に対する芎帰膠艾湯の有効性などが示されています.

 最近では漢方薬の薬理作用に基づき,自己免疫異常,特に抗リン脂質抗体が関与する不育症に対する柴苓湯(副腎皮質ステロイドホルモン類似の薬理作用を有する薬剤です)の有効性が指摘されています.

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奥付

基本情報

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臨床婦人科産科
70巻4号 (2016年4月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

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