増刊号 ─知りたい最新情報がすぐわかる!─不妊・不育症診療パーフェクトガイド
8.不育症の検査・診断
Q3 血液凝固因子検査の意義は,どのようにとらえればよいでしょうか?
佐山 晴亮
1
,
永松 健
1
1東京大学医学部産婦人科
pp.351-353
発行日 2016年4月20日
Published Date 2016/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409208758
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A 血液凝固因子検査の異常値を示す疾患のなかで,抗リン脂質抗体症候群(anti-phospholipid syndrome : APS)は反復・習慣流産との関連についてのエビデンスが確立しています.一方でプロテインS欠乏,プロテインC欠乏,アンチトロンビンIII欠乏などの先天性凝固因子欠乏症が流産のリスク因子であるかについては議論の余地があります.
APSに対しては,低用量アスピリン療法(LDA)+ヘパリン療法による流産の抑制効果が示されている一方で,先天性血栓性素因に対しての抗血小板療法,抗凝固療法による流産リスク低減に関する有効性は確認されていません.しかし,それらの血栓性素因を有する妊娠女性に対しては不育症という側面だけではなく,深部静脈血栓症のハイリスク群であるという認識をもって周産期管理を行うことが重要です.また,APS,先天性凝固因子欠乏症のいずれもpreeclampsia(PE)やfetal growth restriction(FGR)などの胎盤形成不全に伴う周産期合併症の原因となる可能性が指摘されていることも知っておく必要があります.
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