臨床眼科 50巻5号 (1996年5月)

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 1995年3月20日,東京地下鉄線内で発生したサリン事件において,3月20日〜3月24日の5日間に,聖路加国際病院眼科外来を受診した314名,および3月20日に入院した112名,合計426名のサリン患者急性期の症状および所見についてまとめた。最も特徴的な他覚的所見は極端な縮瞳であり,その他,充血,浅前房,網膜電図はsubnormal,視野狭窄(求心性20°〜30°),視性誘発電位正常,血清コリンエステラーゼ低下であった。血清コリンエステラーゼ値と眼症状とは特に相関はなかった。網膜電図の異常は縮瞳によるものであった。

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 1994年6月27日に発生した松本の有機リン系ガス(サリン)中毒患者の眼症状について,信州大学眼科や市内各眼科医院の52人の受診者の報告書と診療録を基に,自覚症状,臨床所見について検討した。自覚症状は,暗い,眼球痛,充血,見にくい,ぼやける,縮瞳などで,全身症状は,鼻水,嘔気,頭痛,咽頭痛などであった。眼の臨床症状として,縮瞳,充血,視野狭窄,眼圧低下,角結膜びらんがみられた。視力やフリッカー値はほぼ正常であった。瞳孔径は曝露翌日が1.0〜2.0mmで,3日目から徐々に改善し,1週間後にはほぼ正常になった。充血,視野狭窄は曝露後3日間みられた。

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 アデノウイルス11型は出血性膀胱炎の患者の尿中から分離されることが多いとされている。眼科領域でも流行性角結膜炎,咽頭結膜熱,急性出血性結膜炎などの患者から分離された報告があるが,その臨床像は明確ではない。筆者らはアデノウイルス11型が分離された10例の急性結膜炎患者を対象に,その臨床像を検討した。結膜所見は幼児の1例を除き眼瞼結膜に小出血を伴う急性濾胞性結膜炎であった。咽頭結膜熱や流行性角結膜炎に類似した症例があったが,いずれも典型的ではなく,1〜2週間で軽快した。アデノウイルス11型による結膜炎の臨床像は,初診時には多彩な症状を示すが,いずれも早期に軽快すると考えらた。

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 15年前から治療を受けていた63歳女子の慢性涙嚢炎が急性悪化し,膿からメチシリン耐性ブドウ球菌が分離された。1日1回のミノサイクリンとバンコマイシンの点滴静注を開始した。バンコマイシンの血中濃度を,点滴前,点滴終了2時間後,次回の点滴前に定量し,その値を基準にして投与量を決定するとともに,腎障害を予防することができた。急性炎症は10日後に寛解した。

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 先天上斜筋麻痺患者20名において,顔面写真を用いて顔面の非対称(facial asymmetry)の頻度と程度,およびhead tiltの方向との関係を検討した。20名中9名に有意な顔面の非対称がみられた。手術後2年以上経過を観察しえた症例は12名で,術前に有意な顔面の非対称がみられた5名のうち,術後head tiltが著明に改善した3名では顔面の非対称も正常範囲にまで改善した。手術による頭位改善により,顔面の非対称も改善されていくことが示された。

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 バセドウ病に合併した重症筋無力症24例の眼症状を検討した。初発症状は眼瞼下垂6例,複視15例,眼瞼下垂と複視3例であり,増悪期は複視4例,眼瞼下垂と複視20例であった。バセドウ病に合併した重症筋無力症では眼瞼下垂に比べ,複視が高頻度にみられた。CTでは外眼筋肥大が12例にみられ,4例では眼球運動障害が甲状腺眼症と重症筋無力症の両者によると考えられた。15例では治療経過を2年以上観察し,眼瞼下垂・眼球運動障害ともに消失3例,眼球運動障害のみ残存9例,眼瞼下垂・眼球運動障害ともに残存3例であった。治療の結果,眼球運動障害は眼瞼下垂に比べ残存するが,第1眼位における両眼単一視は13例(87%)に得られた。

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 1993年1月〜1995年4月に長崎大学附属病院で行った緑内障手術151眼について術式と術前後の眼圧,視野について検討した。術前視野は全症例の68%,30歳以下では80%が湖崎分類Ⅲ期以降の進行例であった。術後眼圧で14mmHg以下となった症例は線維柱帯切開術30%,線維柱帯切除術50%であり,進行例に対し線維柱帯切開術の降圧作用は不十分と考えられた。線維柱帯切開術は原発開放隅角緑内障より水晶体嚢性緑内障で有意に術後眼圧が低かったが,線維柱帯切除術には各病型間に差はなかった。白内障との同時手術と単独手術には術後眼圧に有意差はなかった。術後視野が進行した8眼中7眼は進行例であり,早期治療の重要性を示唆していた。

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 わが国で初めて市販され,一般に使用が可能となったアイオプテックス屈折型多焦点眼内レンズの術後成績を検討した。直径1.5mmの中心遠用ゾーンを持つ6.0×6.0mmのPMMA製レンズである。近用加入度数は+4.0Dである。65眼のうち,1.0以上の遠方視力が得られた症例は,裸眼で55%,矯正視力では92%であった。0.7以上の近方視力は,裸眼で79%,矯正視力で100%,遠方矯正下では91%で得られた。83%の症例は,裸眼あるいは単一の矯正で遠方視力0.7以上かつ近方視力0.4以上を得られていたが,実際の近用眼鏡装用状況は,両眼挿入例で17%であったのに対し,片眼挿入例で41%と高かった。コントラスト感度は片眼例と両眼例の間に差はみられず,単焦点レンズの場合と差はなかった。今回の屈折型多焦点眼内レンズは,正確なレンズパワーの設定や術後乱視の軽減によって良好な結果が得られた。片眼挿入例では得られた視力に比べて眼鏡依存性が高く,両眼挿入例のほうが効果的であると考えられた。

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 増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術後に生じた,虹彩新生血管(rubeosis iridis:RI)および血管新生緑内障の症例を検討した。硝子体手術を受けた有水晶体眼116例150眼のうち術前にRIを認めず,術後にRIを生じたものとNVGに移行したものは12例13眼(9%)だった。RIの発生に影響する因子は術前後の網膜剥離の有無(p<0.01),術中タンポナーデ物質としての長期滞留気体(p<0.05)やシリコーンオイルの有無(p<0.01)であることが示された。RIの発生時期は全例で術後6か月以内であった。増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術後に虹彩新生血管を生じる可能性のある症例では,術後管理には特に注意を必要とする。

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 1994年1月〜95年4月に徳島大学眼科を受診したベーチェット病患者66名のうち,シクロスポリン(cyclosporin A:CYA)投与を受けかつ1年間以上眼発作のない4例について,その投与を中止し経過を観察した。いずれもCYA投与でレーザーフレアー値の平均が15フォトン以下に低下した。CYAの投与中止前1年間のCYAトラフレベル平均が50ng/ml以下の2例は投与中止後もフレアー値平均は15フォトン以下であったのに対し,50ng/ml以上の2例は15フォトン以上を示した。CYA投与で1年以上自覚的,他覚的な眼発作が抑制され,かつその1年間のCYAトラフレベル平均が50ng/ml以下であれば,CYA療法からの離脱が可能と思われた。

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 第1B期から第4期までの黄斑円孔32眼に,手術前後に走査レーザー検眼鏡によるフルオレセイン螢光造影と,アルゴン青とヘリウムネオンレーザーによる単色撮影を行った。円孔部では「暗い黄斑」dark maculaが欠損し,強い過螢光を呈した。蓋は暗く写り,暗い黄斑が維持された。円孔周囲には花弁状の淡い過螢光があり,これはヘンレ線維の隆起とパターンが一致した。これらの造影所見は脈絡膜充盈期に出現し,造影の全経過に変化せず,螢光の漏出や貯留はなかった。円孔部の強い過螢光は,キサントフィルの欠損により,花弁状の淡い過螢光は,嚢胞によるキサントフィル密度の低下によると考えられた。手術により円孔が閉鎖した眼では暗い黄斑が復活した。円孔部の欠損組織を充填したと推定されるグリア組織には,キサントフィルが含まれていると解釈された。

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 中心性輪紋状脈絡膜萎縮症と診断した6例12眼を検索した。インドシアニングリーン(indo—cyanine green:ICG)螢光造影の後期像では,黄斑部の萎縮病巣は,全例が低螢光を呈した。この所見はフルオレセイン螢光造影後期の組織染の有無とは無関係であった。フルオレセイン螢光造影でwindow defectがある萎縮病巣周囲の領域は,ICG螢光造影で6眼が境界鮮明な低螢光,6眼が斑状の低螢光を示した。4眼では,フルオレセイン螢光造影でのwindow defectの範囲よりもICG螢光造影での低螢光の範囲が広かった。ICG螢光造影は,本症での脈絡毛細管板レベルでの病巣の拡がりを確定するのに有用であった。

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 脈絡膜腫瘍15例16眼にインドシアニングリーン螢光眼底造影(ICG造影)を行った。脈絡膜悪性黒色腫5例5眼は,メラニン色素がICG螢光をブロックして造影早期から晩期まで強い低螢光を示した。また,腫瘍の浸潤範囲を正確に示した。脈絡膜血管腫8例8眼は造影早期には腫瘍内に拡張した多数の腫瘍血管がみられ,造影中期から晩期にかけて旺盛な血管外漏出と螢光の貯留によって強い過螢光を示した。転移性脈絡膜腫瘍2例3眼は,造影早期から低螢光を示し脈絡膜血管の見え方は不明瞭であり,経過と共に組織染を示した。このように3つの脈絡膜腫瘍はそれぞれ特徴ある所見を示し,ICG造影は脈絡膜腫瘍の鑑別診断に極めて有用であった。

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 患者は52歳女性,やせ型・低身長で19年の糖尿病歴を持つ。内科でミトコンドリア遺伝子異常症を指摘され,tRNA (ロイシン)のコード領域であるmt DNA 3243のアデニンからグアニンへの点変異が証明されている。3年前から難聴を合併している。初診時,両眼に単純糖尿病網膜症を認め,左眼には嚢胞様黄斑浮腫(cystoid macular edema:CME)を伴っていた。左眼CME軽減を目的に網膜局所光凝固が施行され,CMEは1か月後には消失し,現在まで網膜症の悪化はみられない。本症例のCME発症にはミトコンドリア遺伝子異常による網膜色素上皮の機能障害が関わっていた可能性が考えられた。

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 小切開対応foldable intraocular lens (IOL)と小径PMMA IOLの術後視力,乱視,角膜形状変化,コントラスト感度,IOLの偏位,角膜内皮細胞密度および前房フレア値について検討した。

 術後早期の視力はfoldable IOLが良好であった。foldable IOLの乱視は術後早期から安定し,軽度だった。しかし,術後1か月後にはPMMA IOLと差がなくなった。コントラスト感度はシリコーン眼では中・高周波領域で低かった。IOL偏位は術後シリコーン眼で増加した。術翌日の前房フレア値はfoldable IOLがPMMA IOLに比べ少なかった。またフレア値の再上昇はアクリルソフトIOLではなかった。

 アクリルソフトIOLは各種パラメーターが最も安定していた。

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 症例は53歳の男性で,墓参りに行き空を見上げた瞬間に,落ちてきた栗いがのとげにより角膜穿孔に至った1例を報告した。症例は角膜異物除去後,前房水漏出に対し,外科用接着剤塗布と連続装用使い捨てソフトコンタクトレンズを装着し,現在まで良好な経過を得ている。

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 58歳男性の左下眼瞼マイボーム腺癌を経験した。他院にて霰粒腫として7か月間点眼薬を投与されていたが,治癒しないため来院した。腫瘍は眼瞼結膜面に露出し,大きさ12×9×4mmであったが,単純切除後2週間で大きさ10×8×3mmに再発し,病理組織検査でマイボーム腺由来の脂腺癌と診断した。術中迅速凍結病理検査管理下に,腫瘍を 25×13mm で広範囲に切除,下眼瞼欠損部は内層をHughes flap (tarso-conjunctival flap),表層を左耳介後部からの全層遊離植皮により再建した(Hughes法)。術後20週目にflapを切断し開眼させ,眼瞼縁を形成した。術後11か月,再発や転移を認めず,機能的,美容的にも経過良好である。

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 初回硝子体手術で円孔の閉鎖をみた特発性全層黄斑円孔54例58眼について,術前の屈折および眼軸長と術後視力を検討した。眼軸長は20.94〜26.63(23.06±1.1) mm (平均±標準偏差,以下同様),術前屈折は−9.5〜+3.0(−0.78±2.2) Dであった。術前の屈折と術後最高視力,眼軸長と術後最高視力にはそれぞれ明らかな相関はなかった。

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 軟性ドルーゼン23眼のインドシアニングリーン螢光眼底造影(indocyanine green angiography:IA)所見を4型に分類した。1型:IA所見は早期に造影されず,後期に過螢光を示す。2型:早期から後期まで低螢光も過螢光も示さない。3型:期に低螢光,後期に過螢光を示す。4型:早期から後期まで低螢光を示す。4型のドルーゼンを有する2眼からは経過観察中に脈絡膜新生血管が発生し,4型のドルーゼンを有する眼では注意深い観察が必要であると思われた。

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 網膜中心静脈閉塞症(central retinal vein occsion:CRVO)における網膜中心動脈の循環状態を検索するため,超音波カラードプラ法を用いて,CRVO 55例と正常対照27例を検討した。虚血型CRVO24例では発症からの経過日数にかかわらず,反対眼および正常対照眼と比較して,網膜中心動脈速度は低下しており,末梢血管抵抗指数(resistive index:RI)は上昇していた。発症3か月未満の非虚血型CRVO 16例でも反対眼と比較して,動脈速度は低下しており末梢血管抵抗指数は上昇していた。しかし,発症3か月以上の非虚血型CRVO 15例ではCRVO眼と反対眼との間に差はなかった。非侵襲的な超音波カラードプラ法を用いることで,CRVOにおける網膜中心動脈の循環障害が判明した。またこの循環障害の状態は虚血型と非虚血型では異なっていた。

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 光凝固後に解剖学的な治癒が得られた加齢性黄斑変性39眼について,術後視力に関係する要因を検討した。全眼で黄斑下に新生血管があった。術後観察期間は,6から78か月,平均13か月であった。術前視力が0.2以下の症例には中心窩を含めた新生血管全体を凝固した。この場合,新生血管と中心窩との距離が500μm以内であるときに視力転帰が有意に良好であった。栄養血管が検出できた症例には,これへの選択的光凝固を実施した。発症からの期間が短いときに視力転帰が有意に良好であった。

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 著明な胞状網膜剥離と黄斑上膜を伴った片眼性コーツ病のそれぞれ19歳の2症例を経験した。これらに対して経強膜的網膜下液の排出と輪状締結を併用した硝子体手術を積極的に施行することにより,眼底所見は鎮静化した。本病態を伴う症例には,本法は視機能の改善の面から有効であると考えられた。

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 インスリン抵抗性に高頻度にみられるとされる高トリグリセリド血症に注目し,50歳未満の網膜静脈分枝閉塞症(branch retinal vein occlusion:BRVO)患者26例を対象に,トリグリセリド(triglycer—ide:TG)を含む6項目のBRVO発症との関連について検討した。

 血清TG平均値はBRVO群130 mg/dl,対照群116 mg/dlであり,有意差を認めなかったものの,BRVO群で高頻度に高値を示した。またBRVO群では,75gOGTTにおけるインスリン分泌で全例が何らかの分泌異常を示したほか,73%が3項目以上の異常を合併していた。今回TG単独では,BRVO発症への関与は明らかとならなかったが,インスリン分泌異常を含む多数の因子が関連している可能性が示唆された。

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 初診時すでに前増殖もしくは増殖糖尿病網膜症を呈し,汎網膜光凝固術もしくは硝子体手術の適応とされた38例につき検討し,網膜症の発見,治療開始が遅れた理由につき考察した。糖尿病発見の契機は自覚症状であったものが多く,眼科的自覚症状がその契機となったのは2例のみであった。しかし当科受診時には大多数が不可逆的眼病変を有しており,内科医からのより早期における依頼診が切望された。26例に眼科受診歴があり,24例が網膜症を告知されていたにもかかわらず,網膜光凝固術がなされていなかった。その理由として,螢光眼底造影の未施行による病期誤認の可能性が推察された。網膜症の正確な診断のためには螢光眼底造影を積極的に行うべきと考えられた。

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 後頭葉の出血性脳梗塞による同名水平区画半盲を1例経験した。78歳,男性で,両眼の右方視野欠損を自覚し来院,神経内科にてCT scanを施行され,左後頭葉出血性脳梗塞を認めた。ゴールドマン視野計,ハンフリー視野計により,同名水平区画半盲を認めた。MRIにてもCT scanと同様の所見が得られた。その他の神経放射線学的検査でも,後頭葉以外の視路に異常はみられなかった。視野欠損から予想される障害部位と画像所見は一致していたことから,鳥距動脈の分枝の出血性脳梗塞と診断した。同名水平区画半盲は後頭葉有線領の障害でも引き起こされうるものと考えた。

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 対応する市松模様のコマが,その色を変えることなく,輝度のみを交換する特殊な刺激(color codedパターン刺激)を発生する刺激装置を開発し,視覚誘発電位(visually evoked cortical potential:VECP)と網膜電図(electroretinogram:ERG)を記録した。色覚の正常な対象において,赤と緑を用いるcolor codedパターン刺激が,黄色のみを用いる刺激では明瞭なVECPを抑制することを示す。用いる2色の組み合わせを変えると,隔たりの大きな色の組み合わせほど抑制効果は強くなる。ERGもVECP同様に赤と緑で抑制されている。これらの現象はパターンVECPや,パターンERGの成因について示唆を与える。色の見分けがつくことが,ある条件では反応の抑制を招く。この抑制は網膜で既に成立していると考えられる。網膜の反応が,視野が色で塗り分けられているか否かで影響されるということは,パターンERGが局所のon-off反応の単なる集積であっては説明できない。網膜はパターン視をしており,パターンEGRはその現れであるということを示している。

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 眼底直視下の視野測定の新しい方法,時間変調闘値分布測定を開発し,網膜疾患における有用性について検討した。中心30度の網膜上の9点で,刺激周波数20Hz,指標サイズ50分,背景および視標の網膜照度はともに200tdの測定条件にて,正弦波時間変調閾値を測定した。今回検討した症例は,うっ血乳頭,早期黄斑円孔,原田病,中心性網膜炎である。筆者らが今回検討した症例では,従来の視機能検査で異常が検出される前に時間変調閾値が上昇し,その回復は遅れていた。眼底直視下時間変調閾値分布測定は,従来の視機能測定より鋭敏かつ精度の高い測定法であり,臨床的有用性が高いと思われた。

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 眼窩内容除去術は生命保持を脅かす悪性腫瘍,感染病巣の根絶,難治性の疼痛や醜形の軽減といった目的で行われる術式である。筆者らは過去6年間に10症例の腫瘍性疾患に対して眼窩内容除去術を行った。男性5例,女性5例で,年齢は2〜79歳,平均48.5歳,術後観察期間は5〜62か月,平均32.6か月である。腫瘍原発部位は眼瞼2例,眼球4例,眼窩内2例,涙嚢および涙道2例であった。最終的な病理診断名は,球結膜悪性黒色腫3例,結膜扁平上皮癌,眼窩横紋筋肉腫,眼瞼エックリン腺癌,網膜芽細胞腫,眼窩炎性偽腫瘍,眼窩動静脈奇形,悪性汗腺腫が各1例であった。今後,眼瞼を保存するなどの縮小手術の可能性を検討するとともにエピテーゼ装用による整容の向上を図る必要がある。

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 左視力低下を主訴とした46歳男性の眼底周辺部に全周にわたって胞状網膜剥離を認め,uvealeffusionと診断した。強膜開窓術が著効を奏し,その際得られた強膜を組織学的に検討をした。光顕では著しい変化はみられなかったが,電顕像では膠原線維間に高電子密度の沈着物を認めた。本症の発症原因として糖タンパクの代謝異常の関与が考えられた。

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 透明角膜に発症した角膜石灰変性の1例を経験した。症例は53歳女性で3年前より右眼の異物感と視力障害を自覚していた。右眼角膜のほぼ中央に氷砂糖様の上皮下沈着物を認めた。周囲の角膜には異常はなかった。その沈着物を除去し組織学的検査を行ったところ石灰沈着と判明した。その周囲に炎症所見はみられず,ほかに眼科的疾患のないことから一次性角膜石灰変性と診断した。筆者らの検索した範囲では本邦ではまだこの報告はない。

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 メドモント(Medmont)静的自動視野計(glaucoma screenプログラム)を用いて緑内障患者20例37眼に視野検査を行い,その有用性をハンフリー静的視野計と比較し検討した。結果がほぼ,致した症例は18眼(49%),ほぼ一致するがメドモント視野計のほうが多くの暗点が検出されたものは8眼(22%),ほぼ一致するがハンフリー視野計のほうが多くの暗点が検出されたものは10眼(27%),両者の結果が全く異なっていたものは1眼(3%)であった。平均検査時間は3分15秒とハンフリー視野計のおよそ半分であり,今後一般臨床に有用な視野計であると思われた。

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 点眼麻酔下小切開白内障手術において,緑内障眼の除外などの症例選択を行わず,予防的眼圧降下治療も行わない場合の術後24時間の眼圧経過をプロスペクティブに調べた。対象は,白内障単独手術施行予定者のうち,術施行3,6,10,24時間後の眼圧測定が業務上可能という点のみで選ばれた69例78眼である。手術施行眼の術前および術施行3,6,10,24時間後の眼圧の平均値は,14.7,18.6,19.4,18.4,15.1mmHgであった。経過中に眼圧が30 mmHgを越えたのは7眼で,いずれも緑内障眼であった。小切開白内障手術においては術後眼圧の上昇は軽度であるが,緑内障眼については術後24時間の眼圧上昇を警戒するべきと考えられた。

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 医療過疎地域(僻地)や発展途上国で新たに白内障手術を始めようとする場合,高額の医療器械を導入して手術を行うことで,自治体などの財政を圧迫しないのか,どのくらいの期間で設備投資の回収が可能なのかなどの検討も重要である。この面に関する検討の第一歩として,現在筆者らが日常行っている白内障手術にかかる費用について検討した。国内の白内障手術件数は頭打ち状態であり,眼科医の増加により,医療機関1か所あたりの手術件数は減少傾向になると思われる。現在,筆者らの施設では,超音波水晶体乳化吸引術(Phaco-emulsification and aspilation:PEA)+眼内レンズ(Intraocular lens:I0L)挿入術1件あたりの収益が約49.000円であり,年平均300件の白内障手術では,設備投資の回収だけでも約4.5年かかると算出された。

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 硝子体手術を施行した増殖糖尿病網膜症のうち術後3か月以上追跡できた27例を,術前の眼底状態により,1群;硝子体出血,2群;硝子体出血+増殖組織,3群;網膜剥離を伴うものに分け,術後3日,1週間,1か月,3か月後に前房フレアー値を測定し,臨床経過とともに検討した。増殖膜や網膜剥離を伴う硝子体切除群のフレアー値は術後1週間と1か月後には単純硝子体切除群よりも有意に高値を示した。ガス注入眼のフレアー値は術後1週間後にはガス非注入眼に比較して有意に高値を示した。術後硝子体出血,網膜脈絡膜剥離や虹彩ルベオーシス発生眼でのフレアー値は高値を示した。前房フレアー値は各種の硝子体手術における手術侵襲や術後の臨床経過,予後の指標となり得ると考えられた。

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 鈍的外傷後に生じた毛様体解離の2症例に対して超音波生体顕微鏡(ultrasound biomicro—scopy:UBM)により経過観察を行った。症例1では初診時に高度の浅前房と低眼圧があり,UBMで脈絡膜上腔は拡大していた。数日後,前房は深くなり,眼圧も徐々に回復した。UBMでは毛様体解離の残存と隅角部における虹彩前癒着が観察され,自然治癒の過程と思われた。症例2では初診時には軽度の浅前房と低眼圧があり,UBMでは毛様体解離および脈絡膜上腔の拡大がみられた。その後経過観察するも自然治癒はみられず,解離部毛様体直接縫合術を施行した。術後UBMにて解剖学的に復位が確認された。UBMは毛様体解離の診断と経過観察に有用である。

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 超音波生体顕微鏡(ultrasound biomicroscope:UBM)を用いて虹彩毛様体嚢腫を観察した。嚢腫は440眼中22眼(5.0%)で発見され,すべて両眼性であった。部位は,虹彩毛様体境界部が14眼,虹彩後方周辺部が8眼であり,毛様体のほぼ全周にわたって多発性にあった。狭隅角眼での嚢腫の頻度は,120眼中10眼(8.3%)であった。狭隅角眼で観察された嚢腫の中で4眼は,急性緑内障発作後に発見された。レーザー虹彩切開術後も眼圧が下降せず,縮瞳剤点眼後に隅角が開放し,眼圧が正常化し,UBMで嚢腫は伸展,扁平化したことが観察された。生体眼において虹彩毛様体嚢腫は高頻度にあり,閉塞隅角緑内障の一因となることが推定され,UBMは,この嚢腫の発見に非侵襲的で有効な手段であると評価される。

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 未熟児網膜症児の成長後の視機能評価の目的で中心視野を検討した。網膜症が2期以上(厚生省新分類)まで進んだ9歳以上の22例42眼で,Humphrey自動視野計中心30-2プログラムを用いて閾値測定を行った。瘢痕期1度では光凝固施行の有無にかかわらず,良好な視力,中心窩閾値が得られたが,2度弱度以上に進行した症例は,視力,中心窩閾値とも不良であった。また瘢痕期病変が進むほど中心30°以内の視野は障害された。光凝固治療は,中心視野障害からみても痕痕期2度に進行しない適切な時期に行うことが必要である。

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 加齢性黄斑変性において,フルオレセイン螢光造影による境界明瞭な脈絡膜新生血管を光凝固した場合でも再発がみられ,フルオレセイン螢光造影のみでは脈絡膜新生血管のすべてが造影されていない可能性が考えられる。古典的脈絡膜新生血管を有する7例7眼のフルオレセイン螢光造影像の過螢光部位の範囲をインドシアニングリーン螢光造影像の上に投影し,その範囲を比較した。4例ではフルオレセイン螢光造影像とインドシアニングリーン螢光造影像の過螢光部がほぼ一致し,1例ではフルオレセイン螢光造影像のほうがインドシアニングリーン螢光造影像の過螢光部位より範囲が大きく観察された。2例ではインドシアニングリーン螢光造影像のほうがフルオレセイン螢光造影像より範囲が大きく,時間経過により螢光が増強する部位がみられた。この部位にフルオレセイン螢光造影像では検出されない脈絡膜新生血管が存在する可能性があると考えられた。

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 加齢性黄斑変性において,インドシアニングリーン螢光造影の造影後期に明るい螢光を呈する部位がみられることがある。この本態は,網膜色素上皮下の潜在性脈絡膜新生血管や,ドルーゼン様物質の沈着である可能性が示唆される。このような網膜色素上皮下の病変部位では,視細胞の機能障害がもたらされることが推測されることから,同部位の視機能への影響を評価するため,局所の網膜感度測定が可能な走査レーザー検眼鏡のmicroperimetryを用いて網膜感度を測定した。対象となった10例10眼中,4例4眼で比較暗点,2例2眼で絶対暗点がみられた。潜在性脈絡膜新生血管の存在が疑われた部位で網膜感度低下がみられることが確認された。

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 糖尿病網膜症の血管障害に対し硝子体フルオロフォトメトリーと螢光眼底造影の画像解析から局在的影響を検討した。対象は健常人7例10眼,糖尿病患者の福田分類0期6例12眼,B1期6例12眼である。検査から,(1)1時間あたりの螢光濃度,(2)60°画角の眼底撮影面積,(3)毛細血管瘤,網膜血管面積,(4)硝子体内漏出量を算出した。健常群,AO群では過螢光領域と硝子体漏出は低かった。これに対しB1群では過螢光領域と硝子体漏出量は高値を示し,正の相関を認めた。以上から,著しい硝子体漏出の原因となった血管障害は血管床レベルに局在し,そこでの内皮障害の発現が大きく関与していると考えられた。

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 家族性滲出性硝子体網膜症と診断された1歳の男児の左眼に異常血管を発見した。下耳側静脈が黄斑の耳側で硝子体腔内に浮遊し,体位の変動により,この血管の位置は移動した。眼底周辺部に線維組織と滲出斑を伴う無血管領域があり,浮遊血管はこの線維組織に連結していた。硝子体内の線維増殖組織が瘢痕化するのに伴って後部硝子体剥離が生じ,増殖膜に癒着していた網膜血管が牽引されたと推定された。

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 切迫型網膜静脈分枝閉塞症の5例を報告した。出血型に移行して,視力障害を残したものは2例他の2例は軽快し視力障害を伴わなかった。1例は経過観察中である。螢光眼底撮影の可能であった症例において,閉塞部の局所的静脈壁螢光漏出のみられたものは出血型に進行したが,螢光漏出をみなかった症例は軽快した。局所的静脈壁螢光漏出の有無が本症の予後に関与していることが再確認された。網膜静脈分枝閉塞症が完成する前段階と思われる切迫型網膜静脈分枝閉塞症の時期で診断できた場合,視力障害,変視症を残さないように,今後は同時期の薬物療法によって出血型への進行が阻止できるかどうか,治療面での検討が必要になると思われた。

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 当科での糖尿病網膜症患者の外来受診状況ならびに10年間の長期経過予後を検討した。1984年までの3年間に糖尿病網膜症と診断されたインスリン非依存性糖尿病253例506眼を対象とし,網膜症の経過などをカルテから調査した。初診時福田分類は,O群43眼,A群139眼,B群313眼とB群が多かった。半数は観察期間が2年以内と短く,紹介患者であること,専門外来がなかったことが要因と考えられた。10年間継続して当科を受診したのは23例46眼であった。初診時B群中,10年後にA群へ改善した25眼の全例に光凝固,2眼に硝子体切除が施行されており,両者の有用性が確認された。

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 原因不明と思われた片眼性乳頭浮腫を初発症状とし,経過中に黄斑部星芒状白斑を伴い自然寛解傾向を示したLeber特発性星芒状視神経網膜炎と考えられる61歳男子例を経験した。多くは,自然寛解するとされているが,限局性網脈絡膜炎や前部虚血性視神経症が合併し,炎症のみならず,網脈絡膜循環障害が伴うものと考えられる。本症例では,経過中,網膜中心動脈分枝閉塞症を併発し,幸いにも視力は1.0を保つことができたが,下水平半盲の視野欠損を起こした。本症例の経過を通じて,Leber特発性星芒状視神経網膜炎のような疾患単位を念頭におきつつ,さらなる注意深い経過観察が必要であると思われた。

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 1995年9月までの1年6か月にカプスロレキシス鑷子をcontinuous curvilinear capsulorhexis(CCC)に利用した白内障手術症例891眼のうち,CCCが不成功に終わった症例16眼のその原因を検討した。カプスロレキシス鑷子をもちいた場合,前房から粘弾性物質の漏出が起きやすく,このためCCCが途中で赤道部方向に流れることが多かった。粘弾性物質の漏出が多いという欠点を補うため新型のカプスロレキシス鑷子を考案した。この鑷子はクロスアクション構造でその支点部分が強角膜トンネル部分にくるようになっている。挿入部分が広がらないため粘弾性物質の漏出が少なくなり,安定したCCCが可能である。

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 眼底白点症は,眼底に無数の白点をみる停止性の夜盲である。夜盲を訴え,眼底に多数の白点を認めた19歳女性(症例1),37歳男性(症例2),54歳男性(症例3)について,黄斑部所見を中心に臨床像の差異について検討した。3症例の暗順応は遅延していたが,2〜3時間後の閾値は症例1と2は正常,症例3はほぼ正常近くまで回復した。黄斑部は,症例2ではパターンジストロフィ様の色素上皮の異常所見が,症例3では標的黄斑病巣がみられた。網膜電図でflickerの振幅は年齢が高いほど減弱していた。これらの3症例は,本症の加齢に伴う進行の可能性を示唆した。

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 前部型第一次硝子体過形成遺残の1例を経験し,その手術手技の要点を報告した。症例は生後2週,男児。角膜は透明だが小眼球であり,浅前房,毛様体突起の延長を伴う水晶体後面の線維性血管膜,および膜に接する部位の水晶体混濁がみられた。眼底は透見不能であり生後4週に経角膜輪部法にて手術を施行した。

 手術手技の要点は,(1)粘弾性物質の使用による前房形成や角膜内皮保護,(2)水晶体皮質の硝子体内落下防止のため,後嚢をできるだけ維持,(3)線維性血管膜と延長した毛様体突起との間を360度にわたり切断,(4)硝子体出血防止のため,硝子体動脈を凝固後に切断,(5)前部硝子体切除と水晶体嚢の完全切除,であった。

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 生後21日の前部型第一次硝子体過形成遺残の症例に対し,内視鏡を用いて経角膜輪部アプローチ法にて手術を行った。水晶体吸引後,水晶体後部膜状組織に切開を入れ,内視鏡にて硝子体索状組織,黄斑部の状態について観察し,その後,索状組織の止血,切離操作を内視鏡下で行った。経角膜輪部アプローチ法における内視鏡の利用は,本法の弱点である術中の眼底観察や硝子体腔内での直視下の手術操作に有用と思われた。

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 近年の分子遺伝学的研究の進展に伴い,眼科学もまた多大な影響を受けた。われわれは臨床面からのアプローチとともに基礎研究面からも,緑内障眼における房水流出路再建を重要な研究課題として取り組んでいる。特に最近の遺伝子治療研究の進展を背景にして,われわれが「緑内障の分子レベルでの病態解明と遺伝子治療開発」を目指して現在進めている一連の研究についてのデータも含めて,緑内障に対する分子遺伝学的アプローチについて記載した。

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緒言

 脈絡膜骨腫に黄斑下新生血管が高率に発症する1,2)。この黄斑下新生血管の診断にはフルオレセイン螢光眼底造影法(fluorescein angiography:FA)が有用とされているが,腫瘍新生血管と脈絡膜新生血管の鑑別が困難である。さらに,加齢性黄斑変性症において指摘されているように,FAで脈絡膜新生血管の確認はできない,いわゆるoccult新生血管3)の存在があり,脈絡膜骨腫における新生血管においては治療上,より重要な問題となる。

 筆者らは急激な視力低下をきたした脈絡膜骨腫の1症例にインドシアニングリーン螢光眼底造影法(indocyanine green angiography:IA)を実施し,その所見を指標にレーザー治療を行い,診断と治療におけるIAの有用性を確認した。さらにFA所見と比較検討することにより,腫瘍新生血管について興味ある知見を得たので併せ報告する。

連載 眼の組織・病理アトラス・115

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 眼球の組織構築は糖尿病網膜症の三大基本病態のいずれに対しても弱点をもっている。第1に,網膜は血管透過性亢進に弱い。第2に,網膜は血管閉塞に弱い。第3に,眼球は血管新生に弱い。以下にその理由を説明する。

 網膜には血液—網膜関門が存在する。これは,裏返していえば,そのような装置が必要なほど網膜は血管透過性亢進に弱いことを意味している。黄斑をもつ倒立網膜という特殊な組織構築はとくに弱い。黄斑およびその周囲は各網状層が著しく厚く,浮腫や硬性白斑が生じやすい。黄斑における浮腫は直ちに視力低下の原因になり,糖尿病黄斑症と呼ばれる。外網状層は網膜血管からも脈絡膜血管からも最も遠位にある(図1)。網膜実質内に漏出した血液成分は外網状層に貯留蓄積する(図2)。これが硬性白斑である。

連載 眼科手術のテクニック・89

涙点形成術 矢部 比呂夫
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涙点と涙液排出システム

 涙点から鼻涙管開口部までに至る涙液排出システムが正しく機能する前提として涙点,特に下涙点が適当な大きさで開存し,涙湖に浸っている必要があるが,涙点が閉鎖していたり,開存していても涙点が適切な位置で涙湖に接していないと流涙の原因となる。これらの涙点の異常は比較的簡単な涙点形成術で対処できることが多いにもかかわらず,意外に放置されている例が少なくない。本稿では基本的な涙点形成術について述べる。

連載 新しい抗菌薬の上手な使い方・1

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 この10年ぐらいの間に新しい抗菌薬が続々と開発されてきている。このうち,いくつかの抗菌薬が眼科領域の適応となっているが,実際臨床に用いるのに眼科での資料,情報が十分でないため,折角すぐれた薬剤であっても適正に使用され難いことになる。

 そこで筆者が新潟大学在職中に眼科領域の臨床治験の世話人として,全国の眼科施設のグループスタディにより得られた基礎的実験ならびに臨床成績をもとに,いくつかの薬剤の特長と眼科的臨床応用について逐次紹介していきたい。

今月の表紙

高安病の螢光眼底 清水 弘一
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 44歳女子で,2年前は網膜の大血管が拡張し,毛細血管瘤が多発しているだけの眼底であったが,急速に最小血管を含む血管閉塞が進行した。現在3種類の動静脈吻合がある。その1は動静脈主要枝がその交叉部で内腔が交通してできるもの。その2は生理的に存在する動静脈間の最小血管が選択的に拡張したもの。その3は乳頭周囲でこれと同心円状にできた花環状の血管である。まさに古典的な脈なし病眼底と見なすべきである。

眼科の控室

問診
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 診察は問診,すなわち病歴を聞くことではじまります。

 眼科の病気は,特に眼底疾患などでは,「黙ってすわればピタリと当たる」という事例がかなり多いものですが,問診に手を抜いてはいけません。

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 両眼性のtonic pupil (瞳孔緊張症)を合併したぶどう膜炎の1例を経験した。症例は37歳の女性で,左眼のlight-near dissociation, tonic reaction,副交感神経作動薬に対する過敏性などを特徴とするtonic pupilと漿液性網膜剥離を伴うぶどう膜炎がみられた。約1か月後,右眼にも同様の所見が出現した。ステロイド剤の点眼のみで眼底病変は消失したが,tonic pupilは残存した。約1年後に両眼とも夕焼け状眼底となった。全身検索では髄液細胞増多や感音性難聴はなかった。

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 角膜屈折矯正手術のひとつである放射状角膜切開術(radial keratotomy:RK)を施行された眼に何らかの疾患を併発し,眼内手術を行わなければならない場合,その手術侵襲が角膜や眼球にどのような影響を与えるかについての報告は少ない。今回,筆者らはRK施行8か月後に両眼に鈍的外傷を受け,巨大裂孔による網膜剥離をきたした症例に対し,一眼は硝子体手術を,他眼は強膜インプラントを施行し,良好な結果を得た。しかし,術中角膜切開創による術野の視認性の悪化と術後の角膜内皮細胞数の有意な減少,および角膜形状解析で角膜形状の扁平化が見られた。RK施行に際しては術前に十分な眼底検査が必要であると考えた。

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 角膜移植術後感染症の発症頻度と予後に及ぼす影響についてレトロスペクティブに検討した。対象は1971年1月から1995年3月までに東京大学で行った角膜移植症例のべ1,008眼である。角膜移植術後感染症は1,008眼中36眼(3.6%)にみられ,角膜潰瘍型が22眼(2.2%),眼内炎型が3眼(0.3%),角膜ヘルペス再発型が11眼(1.1%)であった。角膜ヘルペス症例での術後再発率は130眼中11眼(8.5%)であった。検出菌では真菌が最も多く,ついで表皮ブドウ球菌,黄色ブドウ球菌であった。術後感染症をきたした60%の症例で移植片が混濁し,76%の症例では感染症発症前に比較して視力が低下した。

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 過去2年間に硝子体手術を行った特発性黄斑円孔46例54眼について走査レーザー検眼鏡を使用して術後の網膜上膜の観察を行い,網膜上膜の有無と術前術後の条件および手術手技との相関を検討した。術後に網膜上膜があった36眼中29眼が0.5以上の視力を得ているのに対し,網膜上膜形成がなかった18眼中,0.5以上のものは9眼で,両者間に有意差があった(p=0.0194)。また膜のあった症例のほうが術後観察期間が有意(p<0.0178)に長かったことから,少なくとも膜の一部は術後経過中に形成されたものと考えた。年齢,手術までの期間,術前視力,円孔の径,術中の自己血清使用の有無については相関がなかった。以上の結果から,一般に網膜上膜は円孔の縮小と閉鎖に有利に働いていると考えた。

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 79歳の男性の左眼に,3×4乳頭径大の網膜色素上皮剥離を認めた。胞状の網膜剥離を伴っていた。フルオレセイン螢光眼底造影では脈絡膜新生血管を同定できなかったが,走査型レーザー検眼鏡によるインドシアニングリーン赤外螢光眼底造影(IA)では色素上皮下の大きな脈絡膜新生血管網をとらえることができた。さらに,この新生血管網の一部において流入血管,毛細血管網そして流出血管を区別することができた。IAを用いた8か月の経過観察中に,毛細血管網からの螢光漏出の減少や,新生血管網の形の変化がみられたことから,脈絡膜新生血管網内での血流変化が推測された。

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 眼窩内から頭蓋内におよぶ巨大眼窩内海綿状血管腫で,ステロイドの局注が著効を示した1症例を経験した。症例は4か月女児で,眼科所見では右眼の著明な眼球突出がみられ,画像上眼窩筋円錐外から頭蓋内に広がる血管腫であった。最初の1年間は経過観察して自然退縮を待ったが,腫瘍の大きさに変化がなかったため,ステロイドの局所注射を行った。その後腫瘍は著明に縮小した。

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 網膜細動脈瘤24眼にインドシアニングリーン(ICG)赤外螢光造影とフルオレセイン螢光眼底造影を施行し,細動脈瘤の検出率・拍動・螢光漏出について比較検討した。細動脈瘤が造影されたものは,フルオレセイン螢光造影で67%,ICG螢光造影では88%であった。細動脈瘤の拍動が観察できたものは,フルオレセイン螢光造影42%,ICG螢光造影88%であった。細動脈瘤からのICG螢光漏出は,フルオレセイン漏出よりも弱く,漏出に時間を要した。ICG螢光造影で,細動脈瘤が造影初期から造影されたものや視神経乳頭から細動脈瘤までの距離が短いものでは,拍動や螢光漏出が強かった。このことは細動脈瘤の活動性の評価にとって重要であると考えられた。ICG螢光造影は,フルオレセイン螢光造影よりも網膜細動脈瘤の検出率が高く,レーザー治療の立案や治療効果の評価にも有効であると結論される。

臨床報告 カラー臨床報告

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 従来文献に記載のない中心窩の変化を発見した。中心窩の表面またはその縁に白色の顆粒が多数分布することがこの状態の中軸所見であり,これを仮に中心窩白色顆粒症と命名した。過去4年間に偽黄斑円孔として検索した症例のうち,48眼25症例にこれが観察された。年齢は53〜73歳,平均64歳であり,男子9例17眼,女子16例31眼であった。中心窩白色顆粒症は,ときに黄斑円孔に似た所見を呈するが,変視症や視力障害などの自覚症状が皆無であることと,他覚的にも顆粒以外には著変がなく,無害であることがその特徴であった。顆粒の数は100〜300個の範囲であり,その大きさは直径約5μmであった。以前に行った剖検眼の網膜表面の走査電顕による検索で,中心窩白色顆粒に相当すると推定される所見が,30眼中5眼に観察された。走査電顕での顆粒は,数が100〜200個であり,その大きさは5〜20μmであった。部位は内境界膜よりも内方にあり,その形態から,グリア由来であると判断された。臨床的に観察された白色顆粒と走査電顕での顆粒の大きさの違いは,これが半透明であるために,検眼鏡または走査レーザー検眼鏡による検索では,実際よりも小さく見えることがその原因であると考えられた。中心窩白色顆粒症は,乳頭付近の網膜に生じるGunn斑と似た性質であると推定された。本症は偶発的に発見されるのが通例であり,実際の頻度はかなり高いこと,そして,特発性黄斑円孔の鑑別診断で考慮されるべき一つの状態であることが強調される。

第49回日本臨床眼科学会専門別研究会1995.11.10宇都宮

眼窩 井上 洋一
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 49回臨床眼科学会がこれまでの慣習を見直して,事前登録費1万円という破格の費用で運営され,学会運営に一石が投じられた。しかも,従来と変わらない形で多彩な企画が実施され,学術的な成果も高く評価されている。専門別研究会については,本学会が大きくなり過ぎていることから,いろいろ論議がすすめられている。

 眼窩の部門は発足後8回となり,着々とその実を挙げており,今回も3座長のもと,内容豊かな講演と活発な討議が円滑にすすめられた。

米国の眼科レジデントプログラム

9.スタンフォード大学 綾木 雅彦
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レジデントプログラム

 スタンフォード大学では学術的環境の中で充実した研修を3年間受けるプログラムになっている。講義は,スタンフォード大学病院での2か月間の基礎講座と,随時カンファレンスが組まれている。臨床研修は3つの関連病院で行われ,網膜,角膜,眼病理,緑内障,斜視,神経眼科,形成の専門外来を回ったり,一般ならびに専門的手術の経験を多く積むことができる。眼科臨床フェローが少ないため,レジデントがすべての患者の診療にたずさわる。講義はグランドラウンド,専門外来の臨床カンファレンス,特別講義の形で行われる。レジデントは研究課題に取り組んだり,フェローを目指すことが望ましいが,研修の第一目標は高度の知識と技術を身につけることにある。

基本情報

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臨床眼科
50巻5号 (1996年5月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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