臨床眼科 50巻6号 (1996年6月)

特集 第49回日本臨床眼科学会講演集(4)

学会原著

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 外転神経麻痺の38歳女性の右眼に,内直筋後転とJensen—稲富変法での手術を行った。その翌日に前眼部虚血が発症し,角膜浮腫,瞳孔散大と鼻側偏位,虹彩色素脱出,角膜内皮細胞の減少が生じた。虹彩の赤外螢光造影で血流量の減少と部分的な血行途絶があった。6週後には視力が回復し,眼位と眼球運動はほぼ正常化したが,びまん性表層角膜炎の再発が続いている。前眼部虚血の原因は,前毛様体動脈が分割縫着した上下直筋と後転した内直筋に含まれていたことと,鼻側の後毛様体動脈の血流が本来不十分であったことにあると推測された。

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 白内障術前に倒乱視のある30眼に対し,上方フラウン切開で4mmの強膜手術創を作成し,超音波水晶体乳化吸引術を行った。角膜乱視が1.0〜1.5Dの17眼には2Dの,そして1.5〜3.0Dの13眼には3Dの円柱眼内レンズを挿入した。術前と術後6か月以上での差をこの術式の乱視矯正効果度とするとき,2D挿入眼では0.88±0.30D,3D挿入眼では1.32±0.59Dであった。この術式は,ばらつきが小さいために予測性に優れ,角膜倒乱視のある白内障手術に有用であると判断された。

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 66歳男子の両眼に虹彩毛様体嚢腫が発症した。のち,左眼の虹彩に黒褐色の腫瘍が生じた。超音波生体顕微鏡(UBM)検査で,嚢腫と腫瘍は明瞭に鑑別された。摘出した腫瘍の病理組織像は,嚢腫に合併した混合型悪性黒色腫で,UBM所見とよく一致した。虹彩毛様体腫瘍の診断にUBMは有効であった。

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 加齢性黄斑変性症の脈絡膜新生血管(CNV)のインドシアニングリーン螢光眼底造影(IA)所見の読影の基礎を得る目的で,黄斑下新生血管切除術を行った7例7眼の摘出標本と術前IA所見とを比較検討した。具体的には,摘出CNVの術中の広がり,位置関係を手術用顕微鏡下で確認し,その所見と,IA像とを直接重ね合わせることを初めて試みた。

 術前IAにてCNVは過螢光斑として描出されたが,その所見とは異なり,実際の摘出標本の大きさは,より広範囲であることが確認された。また過螢光部は,摘出標本の最も肥厚した部位であることが判明した。

 この事実は,IA読影の基礎となるだけでなく,レーザー治療の実施において重大な問題である。

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 急性リンパ性白血病の21歳男性の両眼に,その寛解期に5回にわたり乳頭腫脹と漿液性網膜剥離が,骨髄移植の前後に再発した。ステロイド投与,化学療法,放射線療法が有効であった。3回目の再発時には,眼窩内と副鼻腔内に腫瘤状陰影があり,腫大した鼠径リンパ腺から生検で腫瘍細胞が検出された。眼底病変の再発時には,血液には白血病細胞はなく,髄液検査では5回目の再発時にはじめて腫瘍細胞が検出された。経過中,左眼に壊死性ヘルペス性網膜症が生じた。定期的な眼底検査は,白血病の再発の指標として重要であると考えられた。

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 左下眼瞼腫脹が4週間前から生じている18歳男性が紹介受診した。前医では麦粒腫と診断されていた。左眼の下眼瞼に弾性硬の腫瘤が触知され,MRIで眼窩と上顎洞に腫瘍陰影が発見された。可能な範囲で腫瘍を摘出し,眼球は保存した。腫瘍の病理診断は,胎児型横紋筋肉腫であった。4剤併用による化学療法で残存腫瘍は縮小したが,2か月後に局所に再発した。このとき,化学療法による骨髄抑制が強く,以後播種型血管内凝固症候群が併発し,初診から9か月後に死の転帰をとった。胎児型横紋筋肉腫には全身的な化学療法が有効であるが,副作用が問題となった症例である。

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 Stargardt病・黄色斑眼底群Ⅲ型の2症例の臨床所見と経過の差異について報告した。症例1は初診時37歳で,黄斑部萎縮巣は比較的大きく,4年間の経過で明らかに拡大した。症例2は初診時40歳で,黄斑部萎縮巣は小さく,15年間の経過で拡大傾向が乏しかった。また症例1よりも中心暗点が小さく,周辺部視野もよく保たれていた。黄色斑は症例2のほうが多かった。赤外螢光眼底造影で,症例1には黄斑部萎縮巣の低螢光領域を取り囲む虫食い状の低螢光領域と周辺部の低螢光斑が散在していたが,症例2にはみられなかった。脈絡膜毛細血管板の萎縮の差異が両例の進行の差に関与していると考えられ,同じ病型の中の異なるsubtypeの存在が示唆された。

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 Emery-Little核硬度分類を細分化した新しい核硬度分類法を用いて白内障手術予定眼1,000例を分類し,その有用性を検討した。新しい分類法はEmery-Little分類のグレード1〜5の各段階をさらに4等分し,細分化したものである。Phaco ChopTM法を行うには,従来のEmery-Little分類では分類の程度が不十分と思われた。この新しい細分類法を用いれば,Phaco ChopTM法における適切なフックの深さ,核分割数を事前に予測することができた。また,分割された核片による後嚢破損の危険性を正確に評価できるため,術者の力量に合わせた適切な術式の選択も可能となった。

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 27か月前に,白内障に対してシリコン眼内レンズ挿入術を受けた眼の非裂孔原性網膜剥離に対して硝子体手術を行った。従来のPMMA眼内レンズ挿入眼とは異なる視認性の問題が生じた。一つは眼底周辺部が見にくいことであり,一つは後嚢切開が行われていたために,液空気置換時に眼内レンズの後面に結露が生じ,眼底の視認性が著しく不良なことであった。

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 同一術者が行った翼状片初回手術後の再発率を検討した。対象は,3か月以上経過が追えた124眼と,同じ方法での術直後にマイトマイシンC (MMC)を局所投与した20眼である。再発率は124眼中25眼20%であり,男性で有意に高く,50歳以上では有意に低かった。再発までの平均期間は術後4か月であり,再発例の90%が術後5か月以内であった。翼状片が角膜の鼻耳両側から侵入している場合には再発率が高かった。MMC投与群での再発は皆無であり,MMCの再発抑制効果が顕著であった。

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 数回再発を繰り返している再発性翼状片の63歳と67歳の2例2眼に手術を行った。両症例とも瞼球癒着と外転障害があった。翼状片と癒着組織を切除した後に,強膜露出部に冷凍保存羊膜を縫着し,さらに患者眼の上方結膜を輪部を含んで採取し,羊膜上に縫着した。羊膜を使った理由は,抗炎症効果と血管新生抑制効果があり,抗原となりにくいことにある。両症例とも術後の再発はなく,眼球運動は正常化した。今回の手術術式は,難治性翼状片の治療に有効であった。

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 最近2年間に経験した抗緑内障点眼薬に起因すると考えられる難治性角膜上皮障害の7症例を報告した。症例の内訳は,偽類天疱瘡3例,角膜上皮障害4例であり,5例ではpalisades of Vogtが消失していた。全症例で主因と考えられる抗緑内障点眼薬を中止したが,上皮障害は長期にわたり遷延した。上皮欠損を認めた2例ではepidermal growth factorの点眼が奏効した。抗緑内障点眼薬は,難治性の角膜上皮障害を生じる場合があるため,眼表面上皮の障害の発症には十分注意しておく必要があると思われる。

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 高眼圧症,正常眼圧緑内障および原発開放隅角緑内障を対象としてイソプロピルウノプロストン単独点眼群17眼,β遮断薬単独点眼群12眼,β遮断薬とイソプロピルウノプロストンとの併用点眼群12眼,無点眼群17眼について,フルオロフォトメトリー法で角膜上皮バリアー機能を測定した。角膜へのフルオレセインの取り込み濃度は,それぞれ47.7±7.6(ng/ml,平均値±標準誤差),54.4±6.3,82.0±10.5,42.3±8.6であり,併用点眼群は無点眼群より有意に高値を示した(p=0.007)。この結果から,角膜上皮バリアー機能はイソプロピルウノプロストンとβ遮断薬の併用点眼で有意に低下すると考えられた。

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 眼部帯状ヘルペス患者117例について,角膜炎の臨床像を検討した。角膜炎は上皮性角膜炎と実質性角膜炎とに分類し,さらに実質性角膜炎を4型に分類した。全経過中,65例(55.6%)に角膜炎を認め,上皮性角膜炎は40例(34.2%),実質性角膜炎は50例(42.7%)であった。実質性角膜炎のうち,上皮下浸潤が42例と最も多く,びまん性実質性角膜炎,円板状角膜炎,限局性実質性角膜炎はそれぞれ7例,6例,8例であった。上皮性角膜炎とびまん性実質性角膜炎は発病初期にのみみられたが,他の実質性角膜炎は経過を経て出現することが多かった。再燃は14例(12%)にみられ,中では上皮下浸潤が多かった。

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 滋賀医科大学で1981年から1995年に行った後天性麻痺性水平斜視34名37眼の手術結果について検討した。判定は麻痺性水平斜視治療効果判定基準(1994年,丸尾)による。動眼神経麻痺に対し前後転術を8眼,筋移動術を4眼に行った。術前眼球運動が正中を超える例には前後転術を行い,87%が整容治癒以上であった。正中を超えて動かない完全麻痺や拘縮が強い例には,筋移動術と前後転術を併用しても整容治癒以上には至らなかった。外転神経麻痺に対し前後転術を9名9眼,筋移動術を13名15眼に行った。前後転術のみを予定していた例では,整容治癒以上は86%であった。術前の眼球運動が正中を超えない場合でも,筋移動術を行えば整容治癒以上は85%で動眼神経麻痺症例よりも良好であった。

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 筆者らは,最近日米で個別に開発された高周波超音波診断装置を用いて,正常眼,原発開放隅角緑内障眼,および原発閉塞隅角緑内障眼の前房の観察と隅角角度の計測を行い,Shaffer分類との比較検討を行った。Shaffer分類2群と3群では,ultrasound biomicroscopy (UBM)による隅角角度の測定結果とほぼ一致したが,4群では計測結果と若干の相違を認めた。これはShaffer分類は,生体眼での隅角角度を数値で明確に表現することが難しく,また隅角鏡による圧迫などの要素が含まれるため,UBMによる隅角角度の計測結果との相違が生じたものと考えられた。UBMは,生体人眼の前房隅角の広狭および深浅を簡易かつ正確に量的計測可能な超音波診断法と考えられた。

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 緑内障,白内障合併例に対し,眼内レンズ挿入・線維柱帯切除同時手術を行った71眼について,Cox比例ハザードモデルによって術後眼圧コントロールに対する影響因子をretrospectiveに解析した。解析因子としては,患者年齢,性別,術前眼圧,線維柱帯切除時の線維芽細胞増殖阻害剤,白内障手術時の切開部位,緑内障病型,虹彩処置の有無,術後フィブリン析出の有無,白内障術式を選択した。解析結果として,白内障術式の中で水晶体嚢外摘出術による同時手術では,ハザード比2.6,p≦0.0042で有意に眼圧コントロールが悪化しやすくなったので,水晶体嚢外摘出術による同時手術は避けるほうが望ましいと考えられた。

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 自己閉鎖創小切開白内障手術を行った22眼につき,手術前後のコントラスト視力と不正乱視の相関を検索した。矯正視力と高コントラスト視力は術後3日で術後3か月の平均値に達していた。中〜低コントラスト視力が術後3か月の平均値に達したのは術後2週間であった。角膜の不正乱視は術後3日と5日の時点で術前よりも有意に増加しており,術後2週間では術前と有意差がなくなった。正乱視度数,SRI (surface regularity index),SAI (surface asymmetry index)については,術前後で有意差はなかった。以上の所見は,自己閉鎖創小切開白内障手術後の中〜低コントラスト視力の回復には不正乱視が関与している可能性を示唆している。

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 視力が0.1以上と比較的良好な増殖糖尿病網膜症に対し行った早期硝子体手術29例32眼の視力予後,術中および術後合併症について検討した。硝子体手術適応理由は光凝固抵抗性の血管新生2眼,黄斑偏位10眼,牽引性切迫黄斑剥離11眼,反復する硝子体出血7眼,黄斑浮腫2眼であった。また他眼が術眼より視力不良なものは12眼(38%)であった。全例で術後視力0.1以上を維持し,0.5以上を維持できたものは69%であった。術中合併症の主なものは医原性裂孔であったが,全例で光凝固とガスタンポナーデで対処できた。術後硝子体再出血をきたしたものは5眼あった。今後は良好な視機能を維持する目的として早期硝子体手術を考慮してよいと考えられた。

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 日本人の眼サルコイドーシス患者66例についてHLAを検索した。男性30例,女性36例であり,138例の健常者を対照とした。患者群全体および全身的因子について,HLAに特定の傾向はなかった。網膜血管周囲炎のある患者群にHLA-DRI4が多い傾向があり,炎症が前眼部に限局している群でHLA—Allが有意に高頻度であり,眼内の炎症発現の部位へのHLAの関与が推定された。男性患者群にHLA—DR2が有意に高頻度であり,女性患者群にはHLA-DR53が多い傾向があった。眼サルコイドーシスへのHLAの関与に性差があることが推定された。

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 超音波生体顕微鏡(ハンフリー社製UBM−840)を用いて,修正週数40週前後の未熟児78眼を対象として毛様体長を生体計測した。その結果鼻側毛様体長は,満期産児(生後1〜5週)で3.01±0.45mm,未熟児網膜症の発症していない未熟児(修正週数36〜53週)で3.11±0.49mm,未熟児網膜症の発症した未熟児(修正週数38〜52週)では2.94±0.38mmであった。網膜症発症児は,非発症児の鼻側毛様体長に比べ有意に短かった。また満期産児の耳側毛様体長は3.38±0.17mmで,鼻側毛様体長の2.97±0.22mmに比べ有意に長かった。その他は,統計学的に有意差はなかった。

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 強度近視に伴うFuchs斑を有する13症例13眼に,フルオレセイン螢光眼底造影(FA)とインドシアニングリーン螢光眼底造影(IA)を施行した。FAとIAによる新生血管網の描出形態は必ずしも一致せず,前者では全症例において過螢光を呈した。一方,IAでは低螢光または脈絡膜背景螢光と同輝度であり,この所見は加齢性黄斑変性症のそれとも異なり,両者における脈絡膜新生血管の性状の違いが推測された。また,Fuchs斑の大きさ,年齢の関係について検討した結果,Fuchs斑は年齢とともに大きくなる傾向が確認されたが,IA所見では加齢性黄斑症との鑑別が必要であることが改めて強調された。

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 片眼性老人性円板状黄斑変性症257眼の対側眼を経過観察し,脈絡膜新生血管年間発生率を予測し,その前段階病変を検討した。

 対側眼の脈絡膜新生血管は257眼中35眼に発生し,1年で0%,3年で6.6%,5年で12.6%が両眼性になると予測された。

 前段階病変には,網膜色素上皮剥離が多くみられた。2乳頭径未満の小型および中型の色素上皮剥離からも新生血管の発生をみた。また,螢光眼底造影ではirregular fillingが多くみられたものの,classical patternを示すものからも新生血管が発生した。

 以上より,老人性円板状黄斑変性症の対側眼に色素上皮剥離をみた時には,注意深い経過観察が必要であると思われた。

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 加齢性黄斑変性のインドシアニングリーン螢光眼底造影(IA)後期に,脈絡膜新生血管のみられない部位に明るい螢光がみられることがある。その螢光の由来に関し,走査型レーザー検眼鏡での単色光観察を行い,新生血管組織やドルーゼン様物質などの反射散乱を生じる物質・病変が網膜色素上皮(RPE)下に存在するかを,8例8眼で検討した。RPE下に新生血管の疑われた4例中3例で,明るい螢光部に相当して輝度の明るい領域が観察された。残りの4例では,window defectの部位に相当して全例に同様に認められた。IA後期の明るい螢光部は,RPE下の新生血管組織やドルーゼン様物質の沈着など,RPE下の病変に起因すると考えられた。

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 加齢性黄斑変性62症例62眼に,インドシアニングリーン螢光眼底造影(IA)を行い,栄養血管の検出および脈絡膜新生血管(CNV)のIA所見について検討した。その結果,栄養血管は62眼中35眼(56%)が検出できた。また,CNVのIA所見は4型に分類された。造影早期に異常過螢光を示し,後期に顕著な色素漏出を示した典型的なIA所見は45眼(72%)に観察され,非典型的IA所見は滲出性変化が軽度な小型病巣や瘢痕期の症例にみられた。IAにおけるCNVの描出様式の相違は,その活動性や網膜下結合織の増殖過程を反映しているものと解釈でき,CNVの診断および治療上,重要な所見と考えられる。

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 特発性黄斑円孔30眼の硝子体手術前後における固視点の分布,および手術前後での固視点の変化を検索した。術前に検査した14眼は全例で,術後では23眼中21眼で固視点は中心窩もしくは上方1/2の円孔縁に分布していた。術前後で検査できた6眼では,術前後で固視点の移動はなかった。また,術後の中心窩固視の有無,および円孔底の消失の有無と術後視力との関係を統計学的に検討したところ,中心窩固視例,円孔底消失例では有意に良好な術後視力が得られた。以上のことから,黄斑円孔の固視点は黄斑の上方1/2に分布する傾向にあること,また,術後円孔底が消失すると中心窩固視が可能となり,その場合の視力は良好であることが明らかとなった。

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 網膜細動脈瘤による厚い黄斑下血腫は予後不良とされている。そこで網膜細動脈瘤による黄斑下血腫6眼に対して組織プラスミノーゲンアクチベータおよびパーフルオロカーボンを用い外科的血腫除去術を行った。視力は6眼中4眼で6段階以上改善し(視力0.5以上は3眼),2眼で変化がなかった。変化がなかったもののうち1眼は術前より黄斑円孔を合併し,1眼は血腫が黄斑下で器質化していた。症例を選択すれば網膜細動脈瘤による厚い黄斑下血腫に対して本治療法は有効である可能性が示唆された。

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 徳島大学眼科で1993年から1994年の2年間に手術を行った,特発性黄斑部網膜上膜21例22眼の手術成績について報告した。発症から初診までの期間は平均11か月,発症から手術までの期間は平均13か月であった。手術術式は硝子体手術下に膜剥離を行い,必要に応じて液—空気置換術を追加した。術後6か月以上経過観察できた18眼の術後最高視力は,改善が15眼(83%),不変が3眼(17%)で,悪化例はなかった。術後4か月までに最高視力に達した症例は,18眼中12眼(67%)であった。術後合併症として白内障の進行,再増殖がみられたが,特に白内障は視力低下に大きく影響を及ぼした。

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 過去7年間に受診したレーベル病と原因不明の視神経疾患症例に遺伝子診断を行い,29例にミトコンドリア遺伝子の11778番塩基の変異があった。このうち,経過観察のできた19例でその臨床像を検討した。男子15例女子4例で,母系遺伝は14家系中11家系にあった。すべて両眼発症であった。発症年齢は4歳から53歳,平均25歳であった。最終視力は38眼中29眼が0.1以下であり,視力転帰は不良であった。中心視野異常は38眼中31眼にあった。19例のうち13例に対して副腎皮質ステロイド剤を投与した。経過が不明な1例を除き,効果はなかった。

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 重度妊娠中毒症と右同名半盲が,35歳の妊娠32週の初産婦に発症した。妊娠34週に帝王切開で胎児を娩出し妊娠中毒症が治癒した後にも,閃輝性暗点を伴う片頭痛発作を繰り返し,右同名半盲が残った。再三にわたるCTとMRI検査では明らかな梗塞および出血巣などの異常はなかった。N-isopropyl—p—(123I) iodoamphetamine (IMP)静注によるシングルフォトン断層法(SPECT)で左後頭葉領域の脳血流量の低下が発見された。

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 レーザー・ドップラー法を用いて,結膜の局所血流量および前毛様動脈の血流量を測定した。老人性白内障以外に特に眼疾患を有しない49眼を対象とし,輪部結膜,および強膜穿入部付近の前毛様動脈において測定を行った。さらに,星状神経節ブロックを施行した患者に対して,ブロック施行前と施行後において同様の測定を行った。結膜血流量の平均値は,144.0±59.3perfusion unit (PU)から217.5±83.6PUの範囲にあり,前毛様動脈の平均血流量は617.3±159.5PUであった。星状神経節ブロック施行例では,施行5分後より前毛様動脈の血流量が1.5倍から2倍に上昇した。本法は前眼部各所の血流量を,非侵襲的かつ簡便に測定しうる測定法であると思われた。

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 59歳女性に,急性発症と思われる外眼筋麻痺,腱反射消失,細胞増加のない髄液の蛋白増加が認められた。3か月後には自然寛解し,Fisher症候群と診断された。網膜色素変性があり,血清に乳酸とピルビン酸の増加があるために,Kearns-Sayre症候群が当初疑われた。経過中に矯正視力の低下と調節過剰によると思われる近視化があった。Fisher症候群では輻輳が障害され,網膜色素変性で視野狭窄があるために,注視が困難となり,調節過剰が生じたと解釈された。Fisher症候群で感覚障害があることを示す1例である。

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 原発開放隅角緑内障,正常眼圧緑内障および高眼圧症の患者35例を対象に,0.5%ベタキソロール点眼前と点眼2時間後の眼圧,全身血圧,脈拍数,網膜中心動脈(CRA)および短後毛様動脈(PCA)の血流速度と末梢血管抵抗(Pl)を超音波カラードプラー診断装置を用いて測定した。点眼前後において,全身血圧,脈拍数に変化はなかった。点眼後,眼圧は有意に低下した(p<0.01)。CRA, PCA両血管とも,最高流速,最低流速および平均流速は,有意に上昇した(p<0.05)。CRA, PCA両血管とも,PIは有意な変化ではないが,低下する傾向がみられた。ベタキソロール点眼によって,CRA, PCA両血管とも,循環血液量が増加すると考えられる。

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 Mitomycin C (以下MMC)や5—fluorouracil (以下5—FU)などの線維芽細胞増殖抑制剤を用いて線維柱帯切除術を行い,術後経過を1年間以上観察しえた,28例35眼の治療成績を検討した。術前の平均眼圧は26.9mmHgで,術後1年の平均眼圧は18.1mmHgに低下し,MMCの使用例では20.1mmHg,5—FUの使用例は13.3mmHg,眼圧降下成績は良好であった。しかし,MMC使用例は通常濃度の1/2(0.02%)のMMC溶液を用いたので,眼圧降下作用はやや不良であった。角膜上皮障害と白内障の進行が術後の大きな合併症であった。

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 従来行われているトラベクレクトミーの手技の簡略,安全化と術後の過度の低眼圧を予防する目的で,従来,時として重篤な副作用を生ずる線維芽細胞増殖抑制剤を使用しないで,同等の効果を期待できる本手術法(太根法)を開発した。対象は過去3年間に聖マリアンナ医科大学で経験された原発性開放隅角緑内障(POAG)の手術症例中から選ばれた13例(男性7例,女性6例,平均年齢59.6±12.9歳)である。なおあらかじめ本手術法の効果を実験的に検討するため,家兎30眼において,本法と現在広く行われているマイトマイシンC (以下MMC)使用法について,術後の眼圧下降作用,ならびに濾過瘢痕部の組織学的所見を比較検討した。本法の手術方法は顕微鏡下で通常の手技で強膜弁を作成し,まずカミソリ刃で輪部から前房へ入り,虹彩根部を幅広く切除し,ついで聖マリアンナ医大式レクトミーパンチの薄い内刃をぶどう膜と強膜の間に平行に挿入し,線維柱帯を含めた強膜片を一気にパンチアウトして切除する。反転してある強膜弁裏面の中間をウェットフィールド焼灼端子で,軽く幅2mmにわたって横一線に焼灼する。

 本法はレクトミーパンチ使用のため,ワルサーパンチ使用に比べても,顕微鏡下での施行が安全,かつ容易であった。術後の眼圧下降も良好で,過度の低眼圧等の術後副作用も格段に少なかった。また家兎眼における実験ではMMCを使用する従来のトラベクレクトミー手術の方法と比べ,緑内障眼での眼圧下降と家兎眼での組織所見に本質的な差異はみられなかった。

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 若年性ぶどう膜炎の9例の治療経過を長期観察した。内訳は,周辺部ぶどう膜炎3名,サルコイドーシス2名,虹彩毛様体炎2名,Vogt—小柳—原田病1名,ベーチェット病1名である。主訴は,15歳未満の6例では他覚的所見に基づく結膜充血が多く,15歳以上の3例では自覚的に発見した視力低下が多かった。全例で両眼に発症した。ステロイド薬の最小限の全,身投与と,ステロイド薬と散瞳薬の点眼を併用することで,転帰は比較的良好であり,経過が不明な1例を除いて全員が社会復帰した。

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 40歳の女性の左眼に漿液性黄斑剥離と黄斑上方に滲出塊が発見され,滲出塊は超音波診断で腫瘍塊であると同定された。CTでは高濃度,造影CTでは軽度にenhanceされ,MRIのT1ではiso〜high intensity,T2ではlow intensityを示した。初期には腫瘍塊が扁平で小さいにもかかわらず色素上皮の障害が強かった。2か月後に網膜全剥離が生じ,悪性腫瘍を疑って眼球摘出が行われた。腫瘍は白色で,病理組織学的にはCallender分類の類上皮型無色素性悪性黒色腫と診断された。

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 当院にて眼内異物摘出を受けた5例5眼について,摘出した眼内異物を走査電子顕微鏡で形態観察した後に,エネルギー分散X線解析器を用いて元素分析を行った。鉄とクロムとの比について考察し,鉄に対するクロムの比が大きいほど視力予後は良いという,従来の報告と一致した結果が得られた。

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 網膜色素変性患者の状態を総合的に把握するための評価票を作成し,調査を行い,QOL (生活・生命・人生の質)の向上の方法について検討した。高度障害者では日常生活や社会的活動に支障を生じ,社会とのつながりを失う傾向にあり,多くのものが憂うつなどの心理状況を有していた。満足度に寄与する項目は,人間関係,趣味の楽しみ,家族の理解,心の支え・生きがい,収入,診断受容,一人歩行などであった。主観的QOLの向上に,周囲の人の理解や,患者自身が趣味の楽しみや心の支え・生きがいを持つこと,家族の理解や患者自身の受容を促進できる医師のサポート,自立性を支えるリハビリテーションケアや環境整備,社会の障害者観の改善などが重要である。

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 中心性漿液性網脈絡膜症67例67眼の罹患時,治癒時および僚眼の屈折を検討した。原田病51例101眼とuveal effusion2例2眼の治癒時の屈折も調べた。その結果,中心性漿液性網脈絡膜症は対照と比較して有意に遠視であったが,原田病は対照との間に有意差がなかった。

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 眼圧上昇時の網膜血流動態の変化について,人眼における経時的な測定を行い定量的に解析した。測定には内視鏡一体型レーザードップラー血流計を用いた。検眼鏡的に明らかな網膜循環障害のみられない硝子体手術適応例15眼において術中に眼圧を29mmHgから52mmHgに変動させて網膜血流量の変動を経時的に観察した。網膜血流量は眼圧を上昇させることにより速やかに減少し,眼圧上昇前に比し,乳頭付近の動脈では平均62.8±13.2%,第2分岐部付近の動脈では平均77.0±14.4%となった。また,血流量を示す波形の変化がみられた。これらの変化は眼圧上昇後,30秒以上持続しその間に回復はみられなかった。

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 網膜下または網膜色素上皮下に発育する脈絡膜新生血管の部位診断は治療方針の決定に重要である。黄斑下新生血管を外科的に除去した加齢性黄斑変性8眼と特発性脈絡膜新生血管2眼について,新生血管の部位をインドシアニングリーン(ICG)螢光眼底造影で検討した。網膜下新生血管は,造影早期から鮮明に造影され,その茎と新生血管全体を囲む領域それぞれが低螢光で縁取りされていた。色素上皮下の新生血管は,造影早期はその領域が低螢光であり,その内部の過螢光の程度と出現時期は,新生血管の活動性により異なっていた。脈絡膜新生血管の部位の診断にICG螢光眼底造影が有用であった。

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 強度近視のある69歳男子の左眼眼底の後極部に,眼球運動や眼球加圧によって位置が移動する血管,いわゆる可動性血管が検眼鏡で観察された。罹患眼の屈折は-23Dであり,後部ぶどう腫と網脈絡膜萎縮があった。フルオレセインとインドシアニングリーン(ICG)による螢光造影の所見から,この可動性血管は脈絡膜血管であり,眼内にあると判断された。ICG螢光眼底造影では,他の2か所に眼球運動とともに動く血管があり,一つは渦静脈,もう一つは後毛様動脈と推定された。

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 急速に網膜下血腫が増大し漏斗状の出血性網膜剥離(以下,漏斗状網膜下血腫)に至った加齢黄斑変性の4症例を経験した。全例,硝子体出血のために眼底が透見不能で,MRIによって漏斗状網膜下血腫が確認された。硝子体手術を行い網膜下血腫の除去を可能な限り行ったが完全に除去することはできなかった。視力は術前が無光覚2眼,光覚2眼で,術後が無光覚1眼,光覚1眼,手動弁1眼,0.02が1眼であった。漏斗状網膜下血腫眼では,手術による視力改善はわずかであり,手術適応は慎重に考慮すべきである。また,加齢黄斑変性で眼底が透見不能な場合は,手術の直前にMRI等による画像診断を行って網膜の状態を確認する必要がある。

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 強度近視(-8D以上)に発生した裂孔原性網膜剥離128眼について検討した。網膜剥離の平均発症年齢は男性が36歳,女性が52歳であり,男性が有意に若く発症した(p<0.001)。男性は50歳までにその83%が発症するのに対し,女性は50歳以降に58%が発症した。裂孔原因病巣別では,黄斑円孔群が41%,赤道部裂隙群が31%,網膜格子状変性円孔群が25%を占めていた。各病巣からの網膜剥離の平均発症年齢は網膜格子状変性円孔群が25歳,赤道部裂隙群が40歳,黄斑円孔群が64歳であった。強度近視における網膜剥離はおおむねこの3つの群から構成され,特に高齢女性の黄斑円孔網膜剥離の存在が大きな特徴であった。

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 網膜下血腫に対する組織型プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)注入にディスポーザブル注射器で作成した網膜増殖膜のviscodelamination用の簡易微量注入器具を用い,良好な結果が得られた。この簡易微量注入器具は,3本のディスポ注射器を用い,注射器の内径の面積比でパスカルの原理により注入量を決めることができる。この器具は,術者が術野から目を離すことなく,介者が安全に決められた少量の薬物を網膜下に注入することができ有用であった。

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 30歳男性が乗用車を運転中に,左眼に異物が当たる感じを受けた。放置していたが,2日後に左眼に視力低下と眼痛が生じて受診した。角膜縁に切創があり,前房蓄膿があった。X線検査で前眼部に異物が同定された。感染症に対する薬物治療の後,受傷8日目に異物除去を行った。異物は鉄片であり,経過は良好であった。

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 網膜細動脈瘤による黄斑下出血の3眼に硝子体切除術を行った。術式として,網膜前出血を吸引したのち,網膜下に組織型プラスミノーゲンアクチベーターを注入し,液体パーフルオロカーボンで網膜下出血塊を圧出した。手術時期は,それぞれ発症後5,8,18日目であった。全例で網膜下出血はほぼ完全に除去され,術中術後の合併症はなかった。全例で視力表4段以上に視力が改善した。

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 片眼にPeters奇形を合併し,他眼はMRIで痕跡状の眼球を確認した臨床的無眼球症の1症例を報告した。症例は16歳,男子。出生時,右眼角膜混濁,左眼瞼裂狭少および左眼無眼球と診断された。現在,右眼は瞳孔領を覆う角膜白斑が存在し,虹彩は角膜混濁部の4時と8時部で前癒着し,Peters奇形が疑われた。左眼は,狭小化した結膜嚢から結膜組織様のものがみられ,MRIでは痕跡状の眼球と4直筋が確認された。右眼眼球の大きさ,形態には著変はなかった。片眼にPeters奇形,他眼に臨床的無眼球症を合併した症例はきわめて稀である。本奇形は神経堤細胞の遊走異常が左右別々に程度を変えて起こったために生じたと推測した。

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 超音波顕微鏡UBMを用いて,瞳孔運動中の隅角と虹彩の形態変化を検索した。散瞳時,中等散瞳時,縮瞳時での同一部位での前眼部断層面像をビデオテープに記録し,これをコンピュータ画像処理で合成して観察した。原発閉塞隅角緑内障では,機能的隅角閉塞時に,相対的瞳孔ブロックによる虹彩面の前方突出と,虹彩周辺部組織の集積に加え,虹彩厚の増加に伴う隅角閉塞,または虹彩根部のみの前方突出による隅角閉塞が観察された。超音波顕微鏡での動画をコンピュータ画像処理して得られる画像合成法は,原発閉塞隅角緑内障での隅角閉塞機序の解明,ならびに虹彩と毛様体の動態の観察と解析に有用であった。

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 14歳女子が右眼の視力低下を主訴として受診した。眼底に朝顔症候群と,下方に薄い非裂孔原性網膜剥離があった。パーフルオロカーボンを併用する硝子体手術により,網膜は復位した。全経過を通じて,乳頭を含む眼底の漏斗状陥凹部が前後方向に移動する現象が観察された。この運動は不随意であり,呼吸と脈拍とは関係がなく,光刺激と頸静脈の圧迫により誘発できなかった。この現象には,眼球後退筋または異所性の強膜内平滑筋の不随意収縮が関与していると推定された。

今月の表紙

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 35歳女子の左眼螢光造影所見。9年前に飛蚊症を主訴として受診。裸眼視力1.5。以後の経過観察期間中,著変はない。眼底の全周に網膜血管の多分岐があり,耳側の再周辺部には幅が約3乳頭径の無血管領域がある。網膜血管はここで終わっていて吻合し,拡張と透過性亢進がある。黄斑偏位ないし新生血管はなく,FEVRとしては中等度の症例である。本症は若年性網膜剥離の基礎疾患のひとつであり,今後も注意が必要。

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 近年の分子遺伝学的研究の進展に伴い,眼科学もまた多大な影響を受けた。特に眼科診療におけるめざましい成果として,ポジショナルクローニングの眼疾患への応用があり,眼遺伝子病の疾患原因遺伝子が解明された。また眼遺伝性疾患やウイルス感染症に対する遺伝子診断が臨床応用されつつあり,増殖性硝子体網膜症や角膜創傷治癒などの病態も分子レベルでの解明が可能となった。また,眼科領域における遺伝子治療研究の現状についてもまとめた。

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緒言

 黄斑部における網膜前出血は,加齢性黄斑変性症などの網膜下新生血管に由来するもの以外に網膜細動脈瘤や糖尿病網膜症などの網膜血管の脆弱性によるもの,また白血病などの血液疾患によるもの,Valsalva maneuverなどのように外傷によるものなどがある。黄斑部網膜前出血は突然の視力障害を引き起こし,出血が自然に消退するまでには約3〜6か月かかり,黄斑部に長期間出血が貯留するため網膜変性や増殖性変化などにより,視力予後不良となることもある。

 最近の治療法としてNd-YAGレーザーを使用し,網膜前出血を硝子体腔中に拡散させる方法がある1〜3)。今回筆者らは網膜前出血の症例に対してNd-YAGレーザーを使用し,レーザーによって穿孔した内境界膜創を走査レーザー検眼鏡(scan—ning laser ophthalmoscope,以下SLOと略す)で観察し,その経過を追うことができたので報告する。

連載 眼の組織・病理アトラス・116

先天性虹彩嚢胞 坂本 泰二 , 猪俣 孟
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 虹彩嚢胞iris cystsは虹彩に発生する嚢胞で,先天性と後天性に分けられる。後天性虹彩嚢胞は,外傷や長期間の抗コリンエステラーゼ薬の使用などで発症する。先天性虹彩嚢胞congenital iris cystsは,特定の誘因なしに,生下時から虹彩に嚢胞が存在するもので,女児に多い。

 虹彩嚢胞は,嚢胞の発生部位により,上皮内嚢胞epithelial cystsと実質嚢胞stromal cystsに区別される。上皮内嚢胞とは,嚢胞が虹彩色素上皮内にあり,有色素性の上皮細胞で覆われるものをいう。実質嚢胞とは,嚢胞が虹彩の実質にあり,無色素性の上皮細胞で覆われるものをいう。いずれも嚢胞の発症機序は不明である。

連載 眼科手術のテクニック・90

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はじめに

 ヌンチャクNunchaku (図1)は中国の武術に用いられ,2個の棒が鎖で連絡されている。ヌンチャクのように両側が硬く,中央部がしなやかなチューブ,すなわちヌンチャク型シリコーンチューブ(Nunchaku-style silicone tubing, N—ST)(図2)は筆者により開発されたものであるが1〜3),1994年10月よりカネカメディックス社から発売されて以来,全国的に普及し,1996年6月までにわが国だけですでに1万本以上使用されている。かつては難症例とされて放置されていた多くの患者がN-STにより簡単に治癒するようになった。本稿においてはN-STについて概説する。

連載 新しい抗菌薬の上手な使い方・2

2.経口セフェム系薬 大石 正夫
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1)セフロキシム アキセチル

 cefuroxime axetil (CXM-AX),商品名:オラセフ眼科適応:眼瞼炎,麦粒腫,瞼板腺炎

特長:CXM-AX自体にはほとんど抗菌作用がなく,内服して腸管壁内で脱エステル化されてCXMとなり抗菌作用をあらわす。注射薬セフロキシムのプロドラッグである。

眼科の控室

直像鏡
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 道具には器具と器械とがあるといいます。英語ならapparatusとinstrumentです。簡単なのが器具,複雑なのが器械ですが,具体的な境界線を決めるのは容易ではありません。「手の延長が器具」と考えれば,メスや鑷子は器具になり,聴診器や耳鏡・鼻鏡も器具となります。直像鏡も器具だと思いたいのですが,これには異論もありそうです。

 この話題を持ち出したのは,直像鏡も倒像鏡も最近ではかなり複雑な構造のが出てきたからです。直像鏡では,ジオプトリー表示が老眼の医師には読めないので,スイッチを押すと眼底を覗いている視野の中にポンと数字が出るものがあります。また,眼底を照らす光の大きさに2種類あって,中心窩や乳頭だけを観察するときには,その範囲だけを小さく照らす装置があったりします。

 もっと凝っているのが,Aと・・の切り替えができる装置です。Aオート,○・は無限大の意味です。Aを選択しますと,ジオプトリーの度を変えても,これに合わせて眼底に投影する光のピントが変化し,境界がシャープなのです。。・ですと正視以外の範囲では照明光が当然ボケることになります。

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 1994年6月〜1995年6月に超音波白内障手術を行った115例118眼の老人性白内障患者に対して,超音波乳化吸引法による手術侵襲を少なくする目的で,粘弾性物質を用いた水晶体核切開一分割を試みた。前嚢切開創から挿入した佐藤角膜刀により水晶体核の2/3の深さに達するように水晶体を線状に切開し,粘弾性物質を注入して水晶体核を分割した。水晶体核の硬さに応じて,平行切開,十字切開を行った。水晶体核切開一分割法は,核分割法やphaco chop法などの超音波手法にも応用可能であり,水晶体核の超音波処理が短縮され,安全に施行しえた。水晶体核切開—分割法は,現状では唯一の簡易な補助的水晶体核分離法であり,術者の心理的負担が軽減された。

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 特発性脳偽腫瘍は本邦では比較的稀な疾患であり,また肥満の中年女性に多いとされている。筆者らは軽度肥満の男性に発症した症例を経験した。症例は51歳男性で,左眼の霧視を主訴に受診。視力は右1.2,左0.8。両眼視神経は慢性うっ血乳頭の所見を示し,視野にはマリオット盲点の拡大がみられた。CT, MRIにて異常所見はなく,脳脊髄液圧は初圧430mmH2Oと充進していたが性状に異常はなかった。また眼球運動,全身的な神経学的異常をみなかった。これらの臨床的特徴により特発性脳偽腫瘍と診断し,炭酸脱水酵素阻害剤内服,シャント術を施行,現在経過観察中である。

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 サルコイドーシスによる視神経乳頭肉芽腫の1例を経験した。症例は25歳男性のサルコイドーシスで,ステロイドの漸減投与後,左乳頭面上に肉芽腫が出現した。ステロイドを再投与したところ肉芽腫は縮小したが,乳頭周囲の網膜上に新生血管が出現した。その後ステロイドの漸減投与を6か月行い肉芽腫と新生血管は消失した。本症例の新生血管の発生には,不十分なステロイド投与が関与している可能性があり,ステロイドの全身投与は長期にゆっくり漸減すべきであると考えられる。

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 潰瘍性大腸炎患者に発症した視神経炎の1例を報告する。症例は50歳男性で,12年来,潰瘍性大腸炎にて副腎皮質ステロイド(ステロイド)治療中であり,内視鏡的には慢性持続型であった.視神経炎の発症前後を通して,全身状態の増悪はみられなかった。視神経炎の発症機序は不明であったが,ステロイド療法が奏効した。潰瘍性大腸炎症例に合併した視神経炎の報告は非常に稀であるが,原因不明の視神経炎をみた場合,潰瘍性大腸炎の存在も考慮すべきと考えられた。

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 前部ぶどう腫を呈し生後25日に摘出したPeters奇形男児の眼球を病理組織学的に検索した。角膜中央部で内皮・デスメ膜・実質が欠損し,角膜実質内および水晶体前極部に水晶体茎に由来すると考えられる水晶体組織塊がみられた。虹彩が角膜後面に癒着しており,角膜と虹彩の実質は連続的に移行して両者の識別は不能であり,隅角・毛様体形成不全がみられた。以上の所見から,水晶体胞分離不全により成立したPeters奇形と診断した。他眼の虹彩実質過形成をはじめ低位耳介,高口蓋,先天歯牙,左心低形成症候群および停留睾丸などの異常が合併していた。Peters奇形では,全身の神経堤細胞由来の組織に発生する異常に注意を払うべきである。

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 角膜上皮形成術が有効であったStevens-Johnson syndromeの1例を経験した。症例は7歳女児で,発熱・全身皮膚粘膜の多形性滲出性紅斑・偽膜性結膜炎で発症した。急性期に,毎日の偽膜除去,特製の有窓義眼の装着等を行うことにより瞼球癒着を防止できた。1年後の瘢痕期には結膜嚢が良く保たれていたため,角膜瘢痕組織に対して角膜上皮形成術を行い,良好な視力を得た。本症の治療では,発症早期から結膜嚢の形成を試みることが重要であると思われた。手術前のEBV関連血清抗体価では,VCA-lgGの異常高値やEA-lgG陽性などがあり,EBVの活性化が推定された。

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 15例(22眼)の正常者について,冠状断CTスキャンにより3つの異なる断面で眼窩および内容の局所解剖学的計測を行った。(1)眼窩の縦径,横径,面積:眼窩では前方2断面で縦径が横径よりも大であった。眼窩面積は眼窩の前方から後方へ向かい,直線的に減少した。(2)各外眼筋の厚さ:各筋群とも球後のスライスで最大値を示し,上斜筋が直筋群に比べて小であった。(3)視神経の縦径,横径:全ての断面において横径が縦径よりも有意に大きかった。

 眼窩器官の定量的分析は,精度の高い客観的評価や早期病変の検出に有用であると思われた。

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 血管腫は眼窩腫瘍としては比較的よくみられるが,眼窩壁骨に発生することは極めて稀であり報告例も少ない。筆者らは,55歳女性の眼窩縁内下側に発生した骨血管腫を経験した。主訴は徐々に増大する左涙嚢部腫瘤で,初診時左涙嚢部に骨様硬の可動性のない腫瘤を触れた。CTでは左舗骨洞から眼窩内に突出する直径2.5cmの境界明瞭な腫瘤像とその内部に石灰化によると思われる高吸収域がみられた。三次元CTでは正面像で左眼窩内下側縁に風船状に膨隆した腫瘤,水平断像で左篩骨洞から眼窩にかけて骨皮質が菲薄膨隆したと考えられる腫瘤と,内部に骨梁様構造物がみられた。腫瘍摘出術を行い,病理組織検査の結果,上顎骨海綿状血管腫と診断された。

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 脳動脈瘤手術後に著明な網脈絡膜循環不全を伴った眼窩先端症候群を呈し,失明に至った2症例を経験した。1例では,術後の脳血管造影にて海綿静脈洞血栓症の合併が確認された。いずれの症例も,手術中に眼窩外部からうけた圧迫による眼窩内圧の上昇が発症の原因と推察した。長時間の圧迫による眼窩内虚血が,眼窩内軟部組織の腫脹を招き,また眼窩内の血流うっ滞は2次的に海綿静脈洞血栓症等の眼窩draining veinの血栓形成をきたしうると思われる。その結果眼窩内圧はさらに上昇し眼窩先端部を通過する神経,動静脈群を絞扼し眼窩先端症候群と著明な網脈絡膜循環不全を呈したものと考えた。脳外科手術時の眼球保護の重要性を強調したい。

米国の眼科レジデントプログラム

10.総括とまとめ 綾木 雅彦
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 これまでに13施設のレジデントプログラムを調査した。今回はそれらを総括するために各項目ごとに要約を行い,同時に筆者のコメントも付け加える。

基本情報

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臨床眼科
50巻6号 (1996年6月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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