臨床眼科 53巻3号 (1999年3月)

特集 第52回日本臨床眼科学会講演集(1)

特別講演

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はじめに

 外界に関する視覚情報は,網膜受容器で光情報から神経情報に変換され,視神経を経て外側膝状体でシナプスを変え,視放線を経て,大脳皮質に入る。大脳皮質に入った神経情報はさらにいくつもシナプスを変えつつ,複雑な処理を受ける。こうして処理された神経情報は,最終的には心理表象に変換されて,われわれの経験となる。大脳損傷によるさまざまな視覚症状の研究は,こうした視覚系の情報処理メカニズムの解明に重要な手がかりを与えてくれる。ただ,臨床研究だけでは方法に限界があり,単なる症状記載にとどまってしまう。どうしても,他の分野,特に神経生理学の研究の進歩に学びつつ,臨床研究を進めていかなければならない。この点,近年の視覚神経生理学の研究の進歩には著しいものがあり,臨床症状の理解に大きく貢献している。本講演では,視覚の神経生理学の最近の成果に導かれて,複雑で羅列的であった臨床症状が,どこまで整理できつつあるかをお示ししたい。

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(B2-1-3) 直径2.1mmの中心遠用ゾーンを持つ屈折型多焦点眼内レンズの術後成績を検討した。対象39眼のうち,1.0以上の遠方矯正視力が得られた症例は92%,0.7以上の近方矯正視力が得られた症例は,近方矯正下92%であったのに対し,遠方矯正下33%であった。44%が遠近で眼鏡の使い分けを必要とした。59%が術後成績に満足したが,18%は不満であった。当レンズは,従来の屈折型多焦点眼内レンズと比較して遠方矯正下近方視力が低かったが,50歳未満の症例に関しては,全例が眼鏡を必要とせず,術後成績に満足していた。しかし,加齢により多焦点効果が低下する可能性も示され,長期的な観察が必要と考えられた。

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(B2-3-9) 最近3年間(1995〜1997年)に川崎医科大学附属病院救急部を受診した眼科救急患者1,164例(全救急患者の3.2%)について,救急部開設当初10年間(1976〜1985年)の1,707例と比較検討した。受診者数(約400名/年)は1985年当時とほぼ同数であったが,全救急患者に対する頻度は減少し,1997年には受診者数,頻度がともに減少した。眼科医療機関の増加により救急部での軽症例の割合の減少傾向が認められた。平均年齢は高齢化が認められた。外傷性と非外傷性の疾患の割合が7:3であったことと,外傷では異物,鈍傷が,非外傷では結膜炎が多いことは前回の報告と同様であった。

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(B3-2-6) ELISAによる抗トキソカラ特異抗体測定の有用性を再評価するために血清・眼内液の抗体価を比較・検討した。対象として眼トキソカラ症診断目的で杏林大学熱帯病.寄生虫学教室へ送られてきた検体のうち,血清・眼内液が同時に採取された73症例を用いた。また,索京医科大学病院ぶどう膜炎外来で詳しい臨床経過の観察がなされた31症例を対象として臨床像と抗体価の相関性を検討し,抗体価検査の有効な利用法について考察した。大多数の症例では血清のみの抗体価測定により,診断が可能であったが,眼内液の採取により初めて陽性値を得るケースもあり,眼内液の抗体価測定の有用性が確認された。臨床的には発症後長時間経過していても,抗体価の測定が診断に有用であると考えられた。

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(B5-2-19) Scanning laser polarimetryを用いた黄斑部の緑内障性障害の評価法を検討した。緑内障患者10人15眼(平均58.7±11.2歳,視野障害の平均はMD=−21.83±6.4dB)と正常者15人15眼(平均年齢50.6±21.5歳)に対してLDT社製NFAII®を用い視神経乳頭および黄斑部をそれぞれ3回ずつ撮影し検討した。黄斑部の平均の厚さは正常者群51.9±9.31μm,緑内障患者群52.5±13.3gmで有意差はなく,視神経乳頭も,耳側の厚さは緑内障患者群48.17±15.5μmに対し正常者群46.56±10.1μmで有意差はみられなかった。本装置を用いた黄斑部の評価は現状では難しいと考えられた。

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(B5-1-10) 中心性漿液性網脈絡膜症20例に対し,A型傾向判別表を用いてストレス性格としてのタイプA行動パターン(タイプA)を検討した。自我状態を評価するエゴグラム・チェック・リストで,AC順応した子供)が4点以下の低値の男性の再発群10例,非再発群10例である。対照群はACが4点以下の低値の男性の健常者10例である。タイプAの発現率は,再発群は60%であり,非再発群の10%と比較して高い傾向を示し(p<0.1),対照群の0%と比較して有意に高かった(p<0.05)。A型傾向判別表の平均得点は,再発群は非再発群,対照群と比較して有意に高値を示した(p<0.05)。ACが低値の本症の再発性にタイプA傾向が強い特徴がみられた。

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(B5-2-9) 急性濾胞性結膜炎478例のうち単純ヘルペス1型(HSV−1)が分離された23例(4.8%)を対象に,臨床的,ウイルス学的検討を加えた。10歳以下は13%であったが,21歳以上が65%を占め,成人の割合が多かった。片眼性が87%と多く,治癒までは平均8.3日と短かったが,臨床所見から初診時にアデノウイルス結膜炎との鑑別は困難であった。また,結膜擦過材料に対する直接螢光抗体法(Micro Trak HerpesR)では全例が陰性であり,角膜株と結膜株との間に生物学的相違がある可能性が示された。成人における急性結膜炎の病因には,HSVをも考慮することが必要である。

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(C1-2-5) 超音波白内障手術での条件の設定においては前房の安定度の判断が重要であるので,手術中の前房内圧を測定した。観血血圧測定装置に静脈針を接続し,サイドポートを通して前房内圧を測定した。非吸引時の定常圧,吸引時の定常圧,サージ時のトラフ圧について解析を行った。前房内圧は,灌流圧,吸引圧,流量,使用装置などで変化した。サージ現象が明確に把握でき,最適な諸条件の設定に有用であった。前房内圧の監視は,術中の眼内環境を知る上で有用であり,超音波白内障手術装置にフィードバックすることで,より安全な手術が可能になると期待される。

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(B6-1-13) 眼筋麻痺後に両眼の前部虚血性視神経症が出現した側頭動脈炎症例を報告した。症例は86歳の男性で,右眼の軽度の外転制限出現後に発熱し,解熱後激しい頭痛,咀嚼痛,両眼の急激な視力低下が出現した。初診時両眼の視神経乳頭の蒼白浮腫が認められ,前部虚血性視神経症と診断した。赤沈の著明な亢進と浅側頭動脈の腫脹と圧痛から側頭動脈炎を疑い,プレドニゾロン50mgの内服を開始した。同時に施行した浅側頭動脈の生検で,巨細胞性動脈炎の所見が確認された。赤沈の正常化に伴い頭痛も消失し,視力も両眼ともわずかに改善した。高齢者で,特に軽度の眼筋麻痺をみた時は,側頭動脈炎も念頭に置いて注意深い経過観察が必要である.

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(B6-2-18) 片眼先天性上斜筋麻痺患者における下斜筋部分切除術の効果を,全身麻酔下上斜筋牽引試験およびMRIによる上斜筋筋腹との関連から検討した。上斜筋牽引試験が正常,かつMRIで上斜筋筋腹の萎縮がみられない症例の多くで,下斜筋部分切除術単独で良好な結果が得られた。これに対し,上斜筋の筋腹が健側に比べて明らかに萎縮しているものは,一度の下斜筋切除術のみで満足のいく結果が得られることは少なく,初回手術から,より適切な手術方法を考慮するべきと思われた。

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(B9-1-16) 網膜静脈閉塞症の62症例について,内頸動脈の病変の有無をカラードプラ法で検索し,44例の対照群と比較した。1mm以上の隆起性病変(プラーク)があるものを内頸動脈病変ありとした。病変は症例群では55%,対照群では36%にあった。両者間に有意差はなかった。70歳未満では,症例群に有意に多い病変があった(p<0.01)。この結果から,網膜静脈閉塞症では,加齢に加えて,内頸動脈または網膜中心動脈の粥状硬化が関係していることが推定された。

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(B6-2-29) 最近16年間に受診したPeters奇形30例を全身異常の有無で分類して検討した。全身異常を合併した群は10例で,成長発育遅延5例,口唇・口蓋裂,心奇形各4例などがみられた。平均年齢は2.0±1.5か月で,男性6例,女性4例,両眼性4例,片眼性6例であった。角膜水晶体癒着9例,他の眼異常を合併した症例は9例で,小眼球5例,前部ぶどう腫,後部胎生環各4例などであった。全身異常を合併しない群は20例で,平均年齢は6.3±22.8か月,男性11例,女性9例,両眼性9例,片眼性11例であった。角膜水晶体癒着4例,他の眼異常を合併した症例は9例で,小眼球7例,後部胎生環,強角膜症各2例などであった。角膜水晶体癒着の症例,他の眼異常を伴った症例は全身異常(+)群に有意に多かった。

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(B9-1-21) 黄斑浮腫を生じた網膜静脈分枝閉塞症8眼の網膜厚を光干渉断層計を用いて測定し,中心窩閾値,視力との関係を調べた。健眼に比べて増加した中心窩網膜厚量と中心窩閾値との間には有意な負の相関をみた(相関係数r=−0.775,p=0.02)。一方,視力との関係では相関係数r=−0.606,p=0.12で,中心窩閾値よりも相関は低かった。光干渉断層計は網膜静脈分枝閉塞症に伴う黄斑浮腫の網膜厚を速やかに測定でき,中心窩網膜厚は視機能を反映すると考えられた。

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(C4-2-3) 白内障術後の後嚢混濁を定量測定するために,前眼部画像解析装置EAS1000の解析プログラムの改良を行った。Densityの基準値設定に関しては,基準値を固定する方法を採用した。測定エリアに関しては,エリア内の16CCT (computer compatible tapes)以上のdensityを持つピクセルを抽出して,その平均値を求める方法に変更した。測定対象は,PMMA,シリコーン,アクリルソフトレンズ挿入症例各30眼で,術後に後嚢混濁が観察されなかった症例である。現在の解析プログラムでは,レンズ内部のdensityはそれぞれ,0.9CCT,5.8CCT,1.7CCTであり,後嚢部位のdensityは9.8CCT,10.6CCT,9.9CCTであった。改良プログラムでは,後嚢部位のdensityは,それぞれ22.4CCT,22.4CCT,22.3CCTであった。解析プログラムの改良によって,前房内の反射やゴーストによる散乱光の影響を受けず,測定エリア内の後嚢部位のみのdensityを選択的に測定することができ,後嚢混濁の正確な測定が可能となった。

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(C2-3-6) 在胎期間36週6日で出生後12時間で死亡した無脳児の角膜を全層角膜移植の2例に使用した。1例は79歳女性の難治性角膜潰瘍に対ずる治療的角膜移植,1例は64歳男性の水疱性角膜症に対する光学的角膜移植である。移植角膜片は,成人のものよりも厚くて可塑性が大きく,縫合がやや困難であったが,特に問題はなかった。第2例では,手術10か月後の角膜曲率半径のK値が54.50Dであり,角膜がsteep化していた。角膜内皮細胞数は2,409/mm2であった。両症例とも病変の再発はなく,手術11か月の時点で移植片は透明である。

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(C4-2-21) 当院で行ったエキシマレーザー屈折矯正手術(photorefractive keratectomy:PRK)後の眼圧評価につき検討した。症例は31名50眼で,年齢28.3±9.5歳,術前等価球面度数−4.2±1.9Dであった。PRK術前,術後の眼圧測定値を比較したところ,術前眼圧14±2mmHg,術後眼圧12±3mmHgと有意に低下していた(p<0.01,Mann-Whitney U検定)。また,矯正度数角膜厚,角膜曲率と眼圧との相関を調べたところ,有意な相関関係を示した。PRK術後は眼圧が過小評価されている可能性があり,角膜形状の変化を伴う屈折矯正手術後の眼圧評価は慎重にすべきと考えた。

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(P1-1-23) 糖尿病黄斑浮腫に対する硝子体手術の浮腫軽減効果を網膜厚解析装置(retinal thickness analyzer:RTA)を用いて検討した。対象は黄斑浮腫軽減を目的として硝子体手術を行い手術前後にRTAによる測定が可能であった14例14眼である。平均網膜厚は1〜13か月(平均5.7+3.6か月)の経過観察期問に術前511±47μm (平均値±SEM)から術後399±53μmまで減少した。視力改善は14眼中7眼にみられたのに対し,網膜厚は14眼中9眼(64%)で減少し,視力と網膜厚の推移に相関がみられた。糖尿病黄斑浮腫に対する硝子体手術は有効であり,黄斑浮腫に対する硝子体手術の評価に網膜厚解析装置が有用であることが示された。

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(P1-2-7) 4世代17名中3世代4名が罹患者であった陰性波網膜電図を示す先天性停止性夜盲(CSNB)の1家系について報告した。罹患者4名中3名は杆体機能が保存され性染色体劣性型CSNBの中の不完全型に類似した特徴を有し,残りの1名は家系調査から杆体機能の欠落した完全型類似の異常が疑われた。第2世代に罹患者が見つかっていないが,これまでの結果から常染色体優性型CSNBの家系であることが強く疑われる。

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(P1-2-25) 前房フレア強度を21例の患者について経時的に検索した。17例は全身に悪性腫瘍があり,他の4例は前房フレア異常を契機として全身の悪性腫瘍が発見された。検索にはレーザーフレアセル計を使った。サルコイドーシス患者21例と,健康人79例を対照とした。悪性腫瘍群での前房フレア強度は,治療前では持続性に軽度に上昇し,その値は,安定期のサルコイドーシス患者と同程度であった。悪性腫瘍の治療開始後には,前房フレア強度は有意に低下し,その値は,赤血球沈降反応と血清尿酸値の低下に相関していた。前房フレア強度の上昇には,腫瘍の存在またはその破壊に関与する生理活性物質,ないしはこれらと関係した起炎因子の関与による血液房水柵の破壊が関連していることが推定された。前房フレアの上昇は,悪性腫瘍の遠隔効果であるparaneoplastic syndromeの1つとして注目される。

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(P1-2-36) 網膜静脈分枝閉塞症発症前の螢光眼底写真についての報告はほとんどない。糖尿病網膜症精査中,螢光眼底造影が行われ,その後に網膜静脈分枝閉塞症が発症した3症例を検討した。螢光眼底造影と発症までの間隔は,それぞれ38か月,29か月,19か月と12か月であった。発症19か月以前の螢光眼底造影所見には異常がなく,発症12か月前の所見に動静脈交叉部の局所性色素漏出,閉塞静脈の支配領域の血管の透過性亢進,毛細血管拡張があった。網膜静脈分枝閉塞症では,発症1年前にすでに閉塞の前段階の変化がある可能性を示す所見である。

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(P1-2-35) 49歳男性が複視と左眼充血で受診した。3か月前に交通外傷があり,左側視神経管骨折に対して視神経管開放術を受けていた。検査所見から外傷性頸動脈海綿青争脈洞瘻と診断した。レーザースペックルフローグラフィーで,視神経乳頭と網脈絡膜循環不全があり,網膜静脈の拍動が増大していた。瘻孔閉塞術後に,眼内循環不全が改善し,静脈の拍動が減少し,視野・視力・中心フリッカー値が改善した。この所見から,本症での視機能の低下に,視神経と網脈絡膜の循環不全が関与していることが推定された。

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(P2-1-17) 23歳女性が精査のため紹介され受診した。5か月前から頸部腫瘤があり,甲状腺腫大が指摘され,多発性内分泌腺腫症2B型と診断された。視力は近視以外は正常であり,唯一の眼科的異常として,輪部から角膜中央部に向かって枝分かれした角膜神経の肥厚が実質内にあった。本例は,角膜所見から本症の早期診断ができる可能性を示している。

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(P1-2-43) 網膜中心静脈閉塞症後の網膜中心静脈の血流動態を調べるため,網膜中心静脈閉塞症の寛解後,視神経乳頭上にループ状血管や拡張した血管のみられた13例16眼に対してインドシアニングリーン眼底造影を行い,視神経乳頭周囲の網膜静脈,脈絡膜静脈の循環を調べた。また,上記13例の非罹患眼も含む26眼に対して超音波カラードップラー法を用いて,網膜中心静脈の血流速度を測定した。全罹患眼に網脈絡膜側副血行路が形成されていた。網膜中心静脈の血流速度は非罹患眼に比べ罹患眼で有意に低下していた。網膜中心静脈閉塞症後には,網膜中心静脈の再疎通と網脈絡膜側副路の形成が網膜中心静脈の血流速度に影響していた。

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(P2-2-37) 白内障手術中に水晶体上皮細胞を採取し,TUNEL法でアポトーシス陽生細胞の頻度を検索した。対象は,合併症のない白内障5眼と,原発閉塞隅角緑内障8眼で,うち1眼に落屑症候群が併発していた。白内障だけの5眼には陽性細胞はなく,緑内障の合併がある8眼中3眼に500細胞中2〜17個の陽性細胞があり,落屑症候群眼で最も顕著であった。隅角の広さ,最高眼圧,眼圧上昇期間は,陽性細胞数と相関しなかった。この結果は,水晶体上皮細胞が眼圧上昇の影響を受けている可能性があることを示している。しかし,眼圧に対する感受性に個人差があり,さらに白内障の程度と皮質の弾性などの因子が関与しているために,眼圧上昇による水晶体上皮細胞のアポトーシスは必発ではないと結論される。

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(P2-2-23) 両眼性の眼瞼痙攣の自覚症状の特徴を明らかにするため,66例にボツリヌス毒素治療前後にアンケート調査を行った。環境,動作,周囲の人間の状況で,痙攣は自覚的に変動した。自覚症状は,治療前には,眼瞼痙攣(100%),差明感(83%),眼乾燥感(44%),流涙(39%),口部不随意運動(29%),耳鳴(26%)であった。眼症状の有症率は,他覚的重症度とは無関係であった。治療後,痙攣が他覚的に軽症化しても,有症率は眼瞼痙攣(67%),着明感(46%),その他(21〜15%)であった。これらの自覚症状や心理状態による痙攣の変動の聴取,診察方法に留意することなどは,眼瞼痙攣の診療上有用であると思われた。

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(P2-2-38) 偽落屑症候群に両眼水晶体亜脱臼を合併した75歳の女性の摘出水晶体を光学顕微鏡(光顕),透過電子顕微鏡(透過電顕),走査電子顕微鏡(走査電顕)にて観察した。光顕では,赤道部前嚢上に毛羽だったような偽落屑物を認めた。透過電顕では偽落屑物が水晶体嚢外側と水晶体上皮細胞の細胞質,水晶体嚢内に観察された。偽落屑物は線維状で,直径は約10nmであった。走査電顕では,赤道部に断裂したチン小帯線維を認め,その太さは不均一で,表面には偽落屑物の集簇を認めた。既報告における偽落屑症候群に合併した水晶体亜脱臼の頻度は低く,本例のように両眼に高度の水晶体亜脱臼を認めた症例はもっと少ない。

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(P2-2-51) 73歳男性の網膜剥離術後眼に超音波乳化吸引術による白内障手術を行い,シリコーン眼内レンズを嚢内固定した。2か月で前憂の著明な収縮を生じ,YAGレーザー前嚢切開術を行い,レンズの偏位なく経過した。2年後,後発白内障にYAGレーザー後嚢切開術を行った。しかし,白内障術後3年以上経過して,水晶体嚢が著明に収縮し,チン小帯断裂を生じ,レンズが亜脱臼した。このため,水晶体嚢ごとシリコーン眼内レンズを摘出し,前部硝子体切除,眼内レンズ毛様溝縫着術を行い,良好な視力を得た。

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(P2-2-40) 調節力のある眼内レンズ作製には,水晶体を再充填する物質が後発白内障を生じないことが必要である。ウシ水晶体上皮細胞を培養し,これに各濃度のポリビニルアルコール(PVA)を添加してその影響を検索した。その結果,PVAは濃度依存的に細胞増殖を抑制し,その細胞増殖抑制効果が細胞間接着に関係する知見が得られた。免疫組織化学法による検索で,PVA濃度と細胞増殖能の間には有意差はなかった。フローサイトメトリー法で,PVAの細胞傷害性はなかった。PVAの生体適合性には未解決の問題があるが,PVAは水晶体再充填物質の候補となりうる。

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(P3-1-22) 過去12年間に経験した真菌性眼内炎の症例14例19眼の視力予後を検討した。14例中12例に中心酵脈高カロリー輸液の留置を認めた。全例に抗真菌薬の投与を行ったが,10眼には効果が認められなかったために,硝子体手術を施行した。手術施行眼の10眼中9眼に2段階以上の視力向上を認めたが,黄斑部に病変の存在する症例は手術後視力不良であった。以上から,本症の早期発見,早期治療が重要であると思われる。

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(P3-1-13) 28歳男性が右眼の霧視で受診した。右眼にフィブリン析出,前房蓄膿,前房出血,虹彩後癒着を認めた。原因検索より,HLA-B27陽性ぶどう膜炎で強直性脊椎炎を合併していた。副腎皮質ステロイド薬(ステロイド)の内服および結膜下注射.点眼で炎症は軽快し,視力も改善した。しかしその後,右眼底に乳頭新生血管を生じていた。ステロイドの局所治療で新生血管は消退した。HLA-B27陽性ぶどう膜炎では後部病変にも十分な経過観察が必要である。

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(P3-1-23) 17歳女性が2日前からの左眼視力障害で受診した。矯正視力は右1.2,左0.5であり,前房に炎症所見はなかった。左眼のみに黄斑浮腫があり,フルオレセイン螢光眼底造影で色素の漏出と網膜下の貯留があり,原田病と診断した。右眼底は検眼鏡的に正常所見を呈した。インドシアニングリーン螢光造影で,両眼の脈絡膜血管の透過性異常があった。ステロイドの全身投与を3週後に開始したが,全経過を通じて右眼眼底には検眼鏡的な異常はなかった。本症例は,原田病には臨床的には片眼のみの罹患がありうるが,両眼に網脈絡膜炎が潜在していることを示している。

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(P3-2-11) 涙液分泌能が正常で,マイボーム腺機能不全に関する自覚症状のない症例22例35眼と自覚症状のある症例28例48眼について,下眼瞼だけではなく,上眼瞼についても全例にビデオマイボグラフィーを施行した。さらに上下の眼瞼のマイボーム腺の障害の程度と自覚症状および涙液層破壊時間(BUT)との関連について検討した。その結果,マイボーム腺障害の程度は,上下の眼瞼で一致する症例が多かった。しかし下眼瞼の障害の程度が軽度の症例では,上眼瞼の障害に関係なく,BUTも正常で自覚症状のない症例も多くみられた。一方,下眼瞼に著明な障害があるにもかかわらず,上眼瞼がほぼ正常な症例のなかには,BUTが正常で自覚症状もない症例も多くみられた。したがってマイボグラフィーは,下眼瞼だけではなく上眼瞼についても必ず施行しなければならない。

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(P3-2-21) 一般にcompromised hostではメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin resistant staphylococcusaureus:MRSA)保菌者が多いとされている。筆者らは当院入院中の65歳以上の眼感染症のない高齢者で,結膜嚢内MRSA保菌者58例と非保菌者58例の全身的な背景因子を比較検討した。悪性腫瘍,慢性肝炎,貧血などを有する症例は,結膜嚢内MRSA保菌者では58%,非保菌者では31%であった。また結膜嚢内MRSA保菌者では,長期臥床,痴呆,カテーテル留置症例および眼以外の部位からMRSAが検出された症例が多かった。高齢者のcompromised host症例は結膜嚢内MRSA保菌者である可能性が高いことが明らかになった。

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(P3-2-12) 巨大な菌塊を呈した涙小管涙嚢瘻の1例(54歳,女性)を経験した。難治性の左眼眼脂で当科を紹介された。左眼下眼瞼結膜内眼角部の発赤,腫脹,下涙小管に一致した皮膚の発赤,硬結があり,涙道通水検査では下涙点は通水不能,逆流,排膿がみられ,涙道造影,エコー検査で涙小管憩室を疑われ,摘出術を行った。術中,涙嚢に及ぶ巨大なmassが摘出され,ブジーにて涙小管から涙嚢への交通が確認された。本症例では,病理学的に確信はできなかったが,おそらく放線菌による涙小管炎から,菌塊を形成しながら涙小管瘻となり,涙嚢と交通したのではないかと考えられ,難治性結膜炎の症例では,放線菌による涙小管炎も念頭におくことが大切と思われた。

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(P3-3-2) 最近6年間に眼科から脳神経外科へ紹介した患者72例を検討した。脳神経外科への紹介理由は眼球運動障害,視力障害,眼痛.頭痛,視野異常の順に多く,全体の病因発見率は72例中22例,31%であった。眼球運動障害では60歳以上の脳梗塞例が多かった。逆に病因は脳梗塞41%,脳腫瘍18%の順に多く,脳梗塞のほとんどが60歳以上の眼球運動障害例であった。視力障害では,特に下垂体腺腫において視野異常も伴っていた。今回の結果から,高齢者の眼球運動障害は脳梗塞の頻度が高いことが示された。また,原因不明の視力障害例は脳腫瘍を疑い,視野検査を行う必要性が明らかにされた。

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(P3-3-7) 硝子体手術により摘出した脈絡膜新生血管膜9例について,マクロファージと炎症性サイトカインでありかつ血管新生作用のあるIL-1b(interieukin-1b)とTNF-a (tumor necrosis factor-a)の分布について免疫組織化学的に検討した。マクロファージはCNVM (choroidal neovascuiar membrane)周囲のRPE層,間質,新生血管周囲に分布し,間質に多くみられた。IL-1bとTNF-aはRPE (retina-pigment epithelium)層,新生血管,間質細胞で陽性であり,IL-1bは主として新生血管,TNF-aは主にRPE層,新生血管において陽性であった。マクロファージは血管新生作用をもつIL-1bやTNF-aを産生することにより脈絡膜血管新生に関与する可能性が示唆された。

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(P4-3-3) 75歳女性が薬物に抵抗する右眼眼圧上昇で受診した。両眼に偽落屑があり,右眼は台形虹彩で,閉塞隅角緑内障と診断した。右眼に水晶体超音波乳化吸引術,アクりルソフトレンズ挿入,隅角線維柱帯切除術を行った。経過は良好で術後7日目に退院した。術後12日目の受診で,極端な浅前房があり,眼圧は36mmHgであった。毛様体水晶体嚢ブロックによる悪性緑内障と診断した。YAGレーザーで瞳孔領の水晶体後嚢と前部硝子体の切開を行ったが,眼内レンズと水晶体嚢が接着したままで,房水は前房に流入しなかった。その18日後,YAGレーザーで虹彩切開部から水晶体前後嚢切開と前部硝子体切開を行った。前房は深くなり,隅角は開大し,眼圧も無治療で12mmHgを維持している。悪性緑内障の危険がある眼にアクリルソフトレンズを挿入するときには,周辺虹彩切除を併用し,悪性緑内障発症後は虹彩切除孔からYAGレーザーによる水晶体嚢切開が有効なことを本例は示している。

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(P4-3-5) 20歳女性が3歳時に両眼の先天性白内障線状摘出術を受けた。以後経過は良好であったが,1年前から右眼眼圧が上昇し,点眼と内服に抵抗するために当科に紹介された。線維柱帯切除術を行ったが,濾過部に硝子体が嵌頓し,眼圧は降下しなかった。前部硝子体切除を併用する同手術で低眼圧になり,低眼圧黄斑症が併発した。硝子体手術によるガスタンポナーデで黄斑の襞襲は伸展したが,眼圧が再上昇し,毛様体光凝固で眼圧が最終的に下降した。このような高眼圧に対しては,硝子体切除術を併用することが望ましいが,低眼圧の危険がある。初回から毛様体光凝固を併用することがよいと考えられた。

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(P3-1-9) 68歳の男性が左眼の網膜剥離手術を受けた。術式は,網膜下液排液,網膜冷凍凝固,輪状締結術であった。その6か月後に交感性眼炎が両眼に発症し,全身ステロイド薬投与などで5か月後に消炎した。10年後の現在,起交感眼は緑内障のために光覚弁,被交感眼は視力0.7であり,脈絡膜に広範な脱色素がある。HLAは,A11,DR4が陽性である。発症から10年後に行ったインドシアニングリーン螢光造影で,脈絡膜血管からの色素漏出と斑状低螢光が観察された。この所見は,遷延した交感性眼炎では,不可逆的な脈絡膜の循環障害が生じる可能性があることを示している。なお,順天堂大学医学部附属順天堂浦安病院での術後の交感性眼炎の発症は,手術総数8,970眼中2眼(0.02%),経強膜網膜剥離手術894眼中1眼(0.11%)であった。

連載 今月の話題

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 移植は難治性網膜疾患の新しい治療法として,最近注目を浴びてきている。実験動物への応用から,あっという間にヒトにまで適応されるにいたった。他の治療法との比較など,まだ新しい治療法と呼ぶにはほど遠いが,これまでヒトに応用された報告の結果を紹介する。

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 緒言 家族性ドルーゼンはdominantly inheriteddrusenとも呼ばれ,遺伝性の黄斑ジストロフィーの一型である。その検眼鏡的所見はDoney'shoneycomb degeneration,Hutchinson-Tays centralguttate choroiditis,Malattia levantinese,HolthouseBatten's choroiditisなどの名前で報告されている1)。筆者らは特徴的な眼底所見と家族歴から,家族性ドルーゼンのMalattia levantinese1)と思われる2症例を経験したので報告する。

連載 眼の組織・病理アトラス・149

角膜移植拒絶反応 猪俣 孟
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 角膜移植comeal transplantationの透明治癒率は比較的高いが,まだ100%ではない。角膜移植片の混濁は,発症機序と関係して出現時期が異なり,早期,中期,晩期に分けられる。早期混濁は手術直後から起こるもので,内皮細胞の不適,もしくは内皮細胞の術中損傷による。中期混濁はいったん透明治癒したものが術後約3週間以降に突然移植片に混濁を生じるもので,主として免疫拒絶反応が原因である。晩期混濁は角膜移植後数年ないし十数年後に起こるもので,多くは宿主側の疾患,例えば角膜ヘルペスや角膜変性が移植片に及んで混濁する。

 角膜移植拒絶反応corneal graft rejectionには,周辺型とびまん性型の2通りがある。周辺型は移植片の一端から混濁が起こりはじめ,徐々に進行して全体に及ぶもので,混濁がはじまる部位に向かって宿主角膜に血管新生を伴う(図1)。移植片の混濁部と透明部の境界が明瞭で,いわゆる拒絶線rejection line (Khodadoust lineとも呼ぶ)が観察され,その境界線上に多数の角膜後面沈着がみられる(図2)。びまん性型は移植片全体が最初から一様に混濁してくるもので,宿主角膜には血管新生を伴わないこともある。

連載 眼科手術のテクニック・112

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 今回は,マイトマイシンCを併用したトラベクレクトミーにPEA+I0L (phacoemulsification andaspiration,intraocular lens implantation)を用いた同時手術について解説する。

 角膜切開を利用した同時手術の場合は,foldablelensを用いなければならない。Foldable lensは,過剰濾過による前房消失が原因で虹彩捕獲を起こす頻度が高く,レンズの光学部が直接角膜内皮細胞に接触し,角膜内皮障害を引き起こす可能性がある。しかし,シングルピースのレンズは,前房が消失しても虹彩捕獲を起こす頻度が低く安全である。この点から,最近はシングルピースのレンズを同時手術に用いることが多い。

今月の表紙

視神経乳頭欠損 鹿子木 尚子
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 患者

 女性 69歳

 飛蚊症を主訴として来院した。診断は,視神経乳頭欠損,白内障,後部硝子体剥離。

 撮影

 カメラはコーワPROI,フィルムはフジカラーREALAACE,画角は50°で撮影した。

 画角を20°,35°にしたほうが視神経乳頭欠損部を強調できるのであるが,50°のほうが黄斑部が入り,視神経乳頭欠損部の大きさを表現できると思った。また,20°,35°では,写真での乳頭欠損部および脈絡膜欠損部が大きすぎ,ファインダーから覗いた像のおさまりが悪かったため50°とした。

日眼百年史こぼれ話・3

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 陸上自衛隊衛生学校彰古館に熊本神風連の乱,西南戦争での戦傷の絵が多数保存され,120年前の出来事が鮮やかによみがえる。これらは,石黒忠恵が画家五姓田芳柳に描かせたものである。神風連の乱は刀による最後の戦闘といわれ,肩を袈裟がけに切られたもの,顔を水平に真っ二つに切られたものなど,生々しいものがあった。西南戦争は刀と鉄砲・大砲による最初の戦闘といわれ,大腿切断など大きい手術の絵があった。なかでも印象的であったのは,下眼瞼の大きい欠損を有茎皮弁で形成した術前,術後の絵で,今日の水準から考えても見事な手術である。

 別の棚には,日清,日露戦争の戦傷写真帳があったが,いずれも黄変して詳細がわからなかった。当時の写真技術では致し方ないことであるが,写真記録の保存能力に失望した。

第52回日本臨床眼科学会専門別研究会報告1998.10.23神戸

視野 溝上 國義
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[セッション1]Blue on yellow(B/Y)perimetry座長:鈴村弘隆(都立大塚病院)

1:(基調講演) Blue-on-yellow perimetryの原理と特徴 高橋現一郎(東京慈恵医大)

 近年開発され,特に緑内障早期診断に有用とされるB/Y perimetryの原理と特徴について講演された。自験例では青錐体系反応の感度分布は中心外3度にピークを有し,周辺に向かうほど低下するという結果で,他の心理物理学的結果と類似しているが,加齢により感度は低下することから,個人差,年齢差に注意して判定する必要がある。

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 1998年10月23日(金)午前9時から定刻通り本専門別研究会はスタートした。会の始めに発起人である北里大学名誉教授石川哲先生のご挨拶で,最近のVDTに関する研究動向と今回の基調講演における4名の演者の先生方の紹介がされた。

 一般演題は昨年と同様に少なく3題のみであった。

地域予防眼科 赤松 恒彦
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 今回,演題について特定せず募集した。

 学校保健関連演題2題,low visionを含めた視覚障害者関連演題4題,住民保健関連2題,海外医療事情関連2題で,時間的に余裕があり,討論が活発に行われた。

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 経過観察中に網膜色素上皮剥離から網膜色素上皮裂孔が発生した7例7眼を経験した。3眼は網膜色素上皮下血腫を伴った滲出型加齢黄斑変性で光凝固後に生じたもの,3眼は加齢黄斑変性で自然経過中に生じたもの,1眼は多発性後極部網膜色素上皮症の自然経過中に生じたもので,いずれも大型の網膜色素上皮剥離から発生した。どの症例も裂孔は色素上皮剥離の下方の辺縁に沿って生じた。光凝固後に生じたものは,凝固部と反対側の色素上皮剥離の辺縁から生じた。多発性後極部網膜色素上皮症では,裂孔が生じる前にmicroripがみられた。

 網膜色素上皮裂孔の形成には,大きい出血性網膜色素上皮剥離や,漿液性網膜色素上皮剥離の急激な増大,網膜光凝固部の収縮性瘢痕化が原因となっていた。

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 バヌアツ共和国でボランティア医療活動を行った患者405人のうち165人について,手持ち自動屈折計を使った屈折検査を行った。右眼の屈折異常は,遠視75眼,正視31眼,近視59眼であった。等価球面法による屈折異常値は+2.75Dから−5.00Dで,平均値は+0.05D±1.01D (平均値±標準偏差)であり,遠視が多かった。今回用いたレチノマックスは,操作が簡便であり,携帯可能で,検者による差がなく,明所でも測定でき,検査結果が印刷されるなどの利点がある。医療環境が悪くても,電源さえ確保できれば,多数の患者について簡便かつ迅速に正確な屈折検査ができた。また,一般診療の視力検査とともに,眼鏡処方や白内障手術後の管理にも有用であった。

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 石灰化した内頸動脈が原因と考えられた偽緑内障の1例を報告した。症例は61歳女性で,近方視力低下を主訴として来院した。眼圧は両眼13mmHg,視神経乳頭には両眼ともに垂直C/D比が大きく篩状板部も透見可能な深い陥凹がみられ,視野検査では右眼に大きな弓状暗点,左眼に孤立暗点と鼻側段階が検出された。正常眼圧緑内障が考えられたが、除外診断の目的にて頭蓋内病変をCTおよびMRI検査にて検索したところ,右内頸動脈の海綿静脈洞部に著明な石灰化病変がみられた。脳血筥造影では,海綿静脈洞部から末端部(Cl〜C3 segment)にかけて,嚢状動脈瘤を伴うS字状に屈曲蛇行し拡張した内頸動脈が確認された。正常眼圧緑内障と診断される症例の中には,本症のように頭蓋内の血管性病変が視神経を圧迫する偽緑内障が存在することもあり,注意が必要と思われた。

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 眼症状を訴えない乾癬患者28例と正常人18例について,房水フレア値の測定と角膜内皮撮影を行い,角膜内皮細胞密度,平均細胞面積,六角細胞出現率,変動係数の各パラメータについて解析した。乾癬患者の房水フレア値は正常人に比べて有意に高値であった。また,乾癬患者の角膜内皮細胞密度は正常人と比較して有意に低く,房水フレア値との問で負の相関がみられた。しかし,変動係数と六角細胞出現率については両者に有意差をみなかった。乾癬患者におけるsubclinicalな前房内炎症が角膜内皮細胞密度を低下させる可能性が示された。

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 39歳男性がC型肝炎で紹介された。両眼とも眼科的に異常はなかった。インターフェロンβの1日2回連日投与を開始してから24日後に,右眼に軟性白斑が発見された。開始後51日目に,両眼眼底に軟性白斑が多発していた。視力は右0.06,左0.02であった。インターフェロン投与はただちに中止された。その6週後の視力は,右0.1,左1.0であり,投与開始から14か月後でも右眼視力は0.5であった。インターフェロン網膜症による視力障害が持続性である事例のあることを,本症例は示している。

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 80歳の女性が,右眼に疼痛と眼瞼浮腫を伴った急性閉塞隅角緑内障を発症した。前房は浅く隅角は全周で閉塞していたため,レーザー虹彩切開術を行ったが無効で,術後に著明な結膜浮腫と激しい眼窩深部痛が生じた。眼底には脈絡膜剥離がみられた。超音波検査では眼球後壁の肥厚がみられたが,CTでは眼球後壁の肥厚はわずかであった。MRIでは強膜の肥厚はみられず,脈絡膜とテノン嚢の肥厚がみられた。超音波検査における眼球後壁の肥厚像は本症例では強膜でなく脈絡膜に起因すると考えられた。緑内障発作の1週間後から症状は自然に軽快しはじめた。

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 術前視力良好な症例にトラベクロトミ—(A群:76眼)とシヌソトミーを併用したトラベクロトミー(B群:80眼)を行い,術後の視力低下についてレトロスペクティブに検討した。術後1年と3年の時点で2段階以上視力が低下した頻度は,A群ではそれぞれ5.5%と10%であり,B群では同様に18%と15%であった。また,術後視力が0.6以下になったのは,術後3年まではそれぞれ2%以下(A群)と4%以下(B群)であった。両手術とも40歳以下の症例に対して行っても視力低下の頻度は同様に低かった。術前の視野別の症例群における視力低下の頻度は術後3年まで,いずれの群でも10%以下であった。トラベクロトミーとシヌソトミー併用トラベクロトミーは術後の視力低下の頻度は低く,しかもその程度は軽度であり,特に若年者の早期緑内障例の術後視力を低下させない術式と考える。

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 網膜色素変性症に後部ぶどう腫,黄斑前膜,牽引性網膜剥離を合併した1例を経験した。51歳男性で,右眼の黄斑部から血管アーケードおよび後部ぶどう腫の辺縁にかけて黄斑前膜がみられ,黄斑部から上方の後部ぶどう腫の辺縁にかけて牽引性網膜剥離が進行してきたため硝子体手術を行い,黄斑前膜除去,人工的後部硝子体剥離作成,ガスタンポナーデにより網膜の復位を得た。術中所見では,肥厚した後部硝子体膜が網膜と強固に癒着して黄斑前膜と連続していた。黄斑前膜および後部硝子体膜の収縮により後部ぶどう腫内で生じる網膜接線方向の牽引が,本症例における牽引性網膜剥離の原因と推測された。

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 遷延化した前房出血を白内障手術後に呈した68歳女性の偽水晶体眼を1例経験した。出血は白内障術中に生じ,術中の止血は不可能であった。術後約1か月で出血は消退し,眼内レンズ前後面に嚢内血腫を形成した。その後,患者本人の希望で外科的治療は施行せず,血腫の吸収の徴候は9か月間みられなかった。全身検査を行ったが,吸収遷延の原因となるような所見はみられなかった。術後10か月目で血腫は吸収され,嚢内に膜形成を残したが,裸眼視力1.2にまで回復した。出血の原因,および遷延化した血腫が吸収された機序は不明であった。遷延化した前房出血は,長期間経過してもなお保存的療法で視力回復する例があると思われる。

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 Meesmann角膜上皮ジストロフィを4症例に発見した。33歳女性とその長女,24歳女性,45歳男性である。第1例では,父方の祖母,叔母,父,弟にも同様な症状があるとされ,遺伝性であることが疑われた。全例に共通する自覚症状は異物感であり,ときに着明があった。他覚的には,びまん性表層角膜炎に類似する角膜上皮欠損と,上皮内の小嚢胞形成であった。視力は一般に良好であった。補助診断法として,impression cytologyとスペキュラー・マイクロスコピーが有用であった。本症は,1935年以来,世界で23家系の約200例,本邦では11例の報告があるのみである。

基本情報

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臨床眼科
53巻3号 (1999年3月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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