医薬ジャーナル 55巻13号 (2019年1月)

第Ⅰ部 これからの医療のゆくえ

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 臨床研究法の施行により,臨床試験に関わる規制として,「GCP(Good Clinical Practice)省令」,「臨床研究法・同施行規則」,「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」の3つが存在する。その結果,治験,特定臨床研究,特定臨床研究以外の医薬品等を用いる臨床試験,手術・手技に関わる臨床試験のいずれに該当するかによって,適用される規制が異なっている。このうち,医薬品等を用いる臨床試験で特定臨床研究に該当しないものは,今後,多くの医療機関で臨床研究法遵守の努力義務を考慮して法に則って行う方向に進み,これまで通り倫理指針に基づいて行うことは稀になると予想される。なお,GCP省令または倫理指針と,臨床研究法とでは,臨床試験の実施プロセスに大きな相違があり,今後,この相違を解消することが求められるかもしれない。

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 科学の進歩に伴い,再生医療製品のような新たなカテゴリーの治療方法が登場したり,従前は進行を遅らせることしかできなかった疾患が治癒可能となる等,近年,医薬品・医療機器開発を取り巻く環境変化は目覚ましい。新たな科学技術を適切に評価し,患者の診断・治療ツールへと繋げていくためには,国内および国外の連携はともに必須である。各Stakeholderが新規医療製品を創出する協働者として,互いに何をなすべきかについて考え,前例にとらわれることなく,限られたリソースを最大限に活用して,患者ニーズに応えていくことが重要である。

3.薬価制度のゆくえ 荒川裕司
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 年々増大する医療費に関連して,薬剤費の増大が医療保険財政に与える影響が懸念されている。抗がん剤オプジーボ®については,薬価収載時から適応が拡大し,市場規模が極めて拡大したことを受けて,薬価の引き下げといった対応がなされた。その後,薬価制度に係る検討が行われ,平成30年(2018年)4月には,薬価制度の抜本改革が施行された。その内容は,効能追加等に伴う市場規模拡大への速やかな対応,毎年薬価調査・毎年薬価改定,新薬創出等加算の抜本的見直し,イノベーションの評価,長期収載品の薬価の見直しといった幅広い項目を盛り込んでいる。今後は,消費税の引き上げに向けた検討が進められていく。

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 2018年,厚生労働省は「がんゲノム医療」の中心的な役割を担う全国11施設を「がんゲノム医療中核拠点病院」に指定,がん関連遺伝子を網羅的に解析できるがん遺伝子パネル検査も先進医療として実施可能となった。今後,がん遺伝子パネル検査を含むクリニカルシーケンスを実地臨床で普及させるために,・クリニカルシーケンスについて患者・家族への説明に必要な知識を有する看護師・薬剤師・臨床検査技師の育成,・クリニカルシーケンスを念頭に置いた病理検体の取り扱い,・検体発送から結果レポート受領までにかかる日数の短縮,・がんゲノム連携拠点病院も参加可能な専門家会議の開催,・治療薬へのアクセスの改善,が求められている。

5.地域医療構想のゆくえ 松田晋哉
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 地域医療構想の目的は,そこに示された数字を参考に各地域で安心して暮らすことのできる地域包括ケアの体制を,当該地域の条件を踏まえて構築することにある。そのためには,どのような医療介護サービスの提供体制が望ましいかについて,住民も含めた関係者で議論する体制づくりが不可欠である。地域医療構想調整会議の場は,そうした合意形成の場として機能することが求められている。

第Ⅱ部 注目の新薬

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 イブランス®カプセル(一般名:パルボシクリブ)は,サイクリン依存性キナーゼ(Cyclin Dependent Kinase:CDK)4および6に対して高い選択性を有する,世界で初めての CDK4/6 阻害剤である。 パルボシクリブは CDK4/6 とサイクリン D からなる複合体の活性を阻害することで,網膜芽細胞腫抑制因子(Rb)蛋白質のリン酸化を阻害し,細胞周期の進行を停止させることにより,腫瘍の増殖を抑制すると考えられている。本邦では2017年9月,「手術不能または再発乳癌」 を適応症として製造販売承認を取得した。ホルモン陽性乳がんにおいて有効な結果を示しており,抗がん剤と比較し,比較的副作用コントロールしやすい薬剤であるため,このタイプの乳がんにとって,CDK4/6阻害剤は待望の薬剤であった。現在新たなCDK4/6阻害剤も承認され,非常に期待される薬剤である。

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 これまでClostridioides(Clostridium)difficile感染症(CDI)に対する治療薬はあったものの,再発抑制の薬剤はなかった。ベズロトクスマブは,CDIの病態に主に関与するトキシンBに対するヒトモノクローナル抗体である。臨床試験では,プラセボ群と比較して統計学的に有意に再発率を低下させた。またトキシンAに対するヒトモノクローナル抗体との併用群と比較しても,再発率の低下はほぼ変わらない結果であった。高齢者や免疫能低下患者,再発を繰り返す患者,強毒株であるPCRリボタイプ027に感染している患者などに適応となる。非常に期待される薬剤であるが,今後効果の持続性や費用対効果などの臨床データを蓄積するとともに,どのような患者へ使用するのが効果的なのかということについても,検討していく必要がある。

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 ゾフルーザ®錠,同顆粒(一般名:バロキサビル マルボキシル)はプロドラッグ製剤であり,小腸,血液および肝臓で加水分解されて活性体となり,インフルエンザウイルス特有の酵素であるキャップ依存型エンドヌクレアーゼ活性を選択的に阻害し,ウイルスのmRNA合成を阻害することでインフルエンザウイルスの増殖を抑制する,既存の薬剤とは異なる新しい作用機序を有する抗インフルエンザウイルス剤である。本剤は,ほぼ20年ぶりに新規作用機序を有するインフルエンザ治療薬として単回経口投与でA型およびB型インフルエンザウイルス感染症患者に対して優れた効果があり,罹患期間の短縮および早期のウイルス減少効果が期待できるとともに,顆粒製剤が追加承認されたことにより患者のアドヒアランス向上が期待できる。

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 世界初の胆汁酸トランスポーター阻害剤であるエロビキシバットは,回腸末端部の上皮細胞にある胆汁酸トランスポーターを特異的に阻害し,大腸内に流入する胆汁酸を増加させることで,大腸管内の水分分泌と消化管運動促進という2つの作用を引き起こす。この2つの作用が相乗的に排便を促すことで,便秘に対する治療効果が発揮されるのが,本剤の特徴である。本邦の便秘治療として広く用いられてきた酸化マグネシウムとセンナ/センノシドは長期投与に注意する必要があるため,エロビキシバットは,これからの慢性便秘症治療における新たな選択肢として期待されている。

「サチュロ®錠100mg」 髙忠石
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 ベダキリンフマル酸塩(サチュロ®錠)は,ベダキリンのフマル酸塩であり,ジアリルキノリン系の新規抗結核薬である。ベダキリンフマル酸塩は,Mycobacterium tuberculosisのアデノシン5'-三リン酸(ATP)合成酵素を特異的に阻害し,増殖期および休眠期の結核菌のいずれに対しても抗菌(殺菌)活性を示す。2012年12月,米国で多剤耐性結核菌(MDR-TB:multidrug resistant-tuberculosis)による肺結核の新規治療薬として承認されて以降,2018年9月現在,MDR-TB肺結核に対する多剤併用療法の1剤として世界50以上の国または地域で承認され,本邦でも「適応菌種:本剤に感性の結核菌」および「適応症:多剤耐性肺結核」で2018年1月に製造販売承認を取得し,同年5月の市販開始時からResponsible Access Programに基づく適正使用が行われている。

「リムパーザ®錠100mg,同150mg」 杉山徹
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 オラパリブは,DNAの一本鎖切断修復の主要酵素であるPARP(poly ADP-ribose polymerase)を選択的に阻害する経口の分子標的治療薬である。本邦では2018年1月,プラチナ感受性再発卵巣癌を対象に,プラチナ製剤を含む化学療法施行後の維持療法(単剤)の適応にて承認された。再発卵巣癌治療においては,化学療法が繰り返し施行されるが,再発回数が増えるにつれて,化学療法の奏効期間は短縮する。化学療法奏効後にオラパリブ単剤を「維持療法」として使用することで,プラチナ感受性再発卵巣癌の無治療期間が延長することがランダム化試験で示された。有害事象は比較的少ないが,悪心・嘔吐や疲労感に加え,貧血に注意が必要である。

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 抗サイトメガロウイルス(CMV)薬のレテルモビル(プレバイミス®)は,CMVのターミナーゼを阻害することでウイルスの増殖を抑制する新規抗CMV薬である。これは,ウイルスDNAポリメラーゼ阻害を主な作用機序とした従来の抗CMV薬とは大きく異なる特徴である。同種造血幹細胞移植後の非再発死亡の大きな原因の一つであるCMV感染症に対して,現在は,移植後にCMV感染のモニタリングを行い,CMVの再活性化を認めた時点で,抗CMV薬を開始する先制治療が標準的に行われている。しかし,CMV再活性化そのものが,非再発死亡を増加させることが明らかとなり,毒性の低いレテルモビルは,CMV予防としての保険承認が得られたことより,今後先制治療から予防治療へのシフトが期待される薬剤である。

第Ⅲ部 治療における最近の新薬の位置付け〈薬効別〉~新薬の広場~

抗菌薬 村木優一
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 テジゾリドリン酸エステルは,新たな抗メチシリン耐性黄色ブドウ球菌治療薬であり,同系統のリネゾリドとは異なったプロファイルを有する。また,RNAポリメラーゼを阻害し,抗菌活性を示すフィダキソマイシンは,新規のClostridium difficile感染症治療薬である。また,抗トキソプラズマ活性を有するスピラマイシンは,これまでわが国で未承認であった先天性トキソプラズマ症の発症抑制に使用できる16員環のマクロライド系薬である。本稿では,2018年に製造販売承認が認められたこれら3剤について概説する。

抗ウイルス薬 炭昌樹 , 寺田智祐
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 2018年には抗ウイルス薬として,抗インフルエンザウイルス薬であるバロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ(R))と,抗サイトメガロウイルス薬であるレテルモビル(プレバイミス(R))が上市された。  抗インフルエンザウイルス薬としてこれまで用いられてきたノイラミニダーゼ阻害薬とは異なる,新たな作用機序を有するバロキサビル マルボキシルは,治療開始早期に体内のウイルス量を低下させる点が大きな特徴と言える。一方,レテルモビルも新たな作用機序を有し,わが国で初めて同種造血幹細胞移植患者のサイトメガロウイルス感染症の発症抑制に適応を持つ抗ウイルス薬である。本稿では,これら画期的な2つの新薬について概説する。

ワクチン 柴原理志 , 石井健
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 2018年にわが国における新規ワクチンとして,乾燥組換え帯状疱疹ワクチンが承認された。帯状疱疹の予防として承認されていた既製剤は弱毒生ワクチンであるのに対し,本剤はサブユニットワクチンであり,免疫抑制状態でも使用することができる。また,過去に水痘ワクチン接種歴がある場合や,帯状疱疹を発症した既往のある場合の安全性と免疫原性についても臨床試験が行われており,将来性のあるワクチンである。  2018年時点で第・相臨床試験を行っている新規ワクチンの例として,エボラウイルスワクチン,クロストリジウム・ディフィシルワクチン,デングウイルスワクチンをあげ,紹介する。

免疫抑制薬 北郡宏次 , 三森経世
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 バイオテクノロジーの進歩により,さまざまな分野で分子標的治療が開発されている。しかし希少疾患では,新規薬剤の開発が困難であることも多く,既に他領域で承認されている薬剤について,分子生物学的な解析を元に,適応拡大という形で有効な治療の枠を拡げることがしばしば行われている。2018年には,これまで難治性の気管支喘息に適応のあった抗IL(インターロイキン)-5抗体が,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症に有効な治療薬として適応拡大となった。治療の進歩により低疾患活動性を維持した状態で日常生活を送る患者も増え,さまざまなライフスタイル,人生設計に対応した治療計画が必要となっている。さらに同年,これまでの免疫抑制薬の使用実績を元に,3種類の免疫抑制薬について妊娠,出産に関連した添付文書の改訂が行われた。

消化器癌治療薬 中島裕理 , 川添彬人
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 近年の抗癌剤領域では,従来の殺細胞薬に加え,分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬を中心に開発が行われており,消化器癌においても同様である。既に切除不能進行・再発大腸癌に対して承認されているトリフルリジン・チピラシル塩酸塩は,進行胃癌に対して全生存期間の延長を示し,現在承認申請中である。また分子標的薬は,切除不能肝細胞癌に対して有効性を示した報告が相次ぎ,これまで標準治療を大きく塗り替えている。近年,治療開発の中心である免疫チェックポイント阻害薬においては,ニボルマブが進行胃癌に対して全生存期間の延長を示し,実地臨床で使用可能であり,他の消化器癌においても複数の第・相試験が進行中である。また,2017年5月に,米国食品医薬品(FDA)は,ペムブロリズマブについて,microsatellite instability high(MSI-H)またはミスマッチ修復蛋白の欠損(dMMR)を有する固形腫瘍を対象に迅速承認を行い,今後,消化器癌領域においてもMSI-H/dMMRのスクリーニングが重要になると考えられる。

肺癌治療薬 駄賀晴子
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 肺癌は大きく非小細胞癌と小細胞癌に分類され,それぞれに応じた治療方針の決定と薬剤選択が行われる。小細胞肺癌においては,免疫チェックポイント阻害剤などの新たな治療開発が行われているが,日本において新たに承認された薬剤はなく,大きな治療の変化は見られていない。一方,非小細胞肺癌においては,ドライバー遺伝子に対するキナーゼ阻害剤,免疫チェックポイント阻害剤を中心とした薬剤開発により,さらなる治療成績の向上が見られる。本稿では2018年に新たに承認されたBRAF V600E陽性肺癌に対するダブラフェニブ+トラメチニブ併用療法,ALK(anaplastic lymphoma kinase)陽性肺癌に対する第3世代ALK阻害剤のロルラチニブ,EGFR(Epidermal growth factor receptor)遺伝子変異陽性肺癌に対する初回治療として適応拡大になったオシメルチニブ,PD-L1(programmed death-ligand 1)阻害剤であるアテゾリズマブとデュルバルマブについて説明する。

乳癌治療薬 鈴木栄治 , 戸井雅和
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 生殖細胞系BRCA(breast cancer susceptibility gene)1/2遺伝子変異を有するHER2(human epidermal growth factor receptor 2)陰性転移性乳癌患者に対して,PARP(poly ADP ribose polymerase)-1阻害剤であるオラパリブが製造販売承認事項一部変更の承認を受けた。乳癌治療における新たな治療選択肢が得られるメリットはあるが,対応する医療者は,生殖細胞系BRCA1/2遺伝学的検査を行うにあたり,各施設ごとで適切に体制を整え,患者,家族への丁寧な対応が求められる。

婦人科癌治療薬 大神達寛 , 加藤聖子
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 2018年1月にPARP(poly〔ADP-ribose〕polymerase)阻害薬であるオラパリブ(リムパーザ(R))が「白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣癌における維持療法」に対して承認された。この薬剤はDNA修復機構である相同組換え(homologous recombination:HR)に関わる遺伝子(BRCA1やBRCA2など)に変異がある場合に有効とされるが,プラチナ製剤感受性であることがサロゲートマーカーとして使用される。重篤な有害事象の少ない内服薬であることに加えて,年単位の長期間の病勢コントロールが可能なこともあり,その維持療法としての有効性に大きな期待が寄せられている。また単剤維持療法のみならず,救援療法や他の分子標的治療薬・細胞障害性薬剤との併用でもその有効性が報告されており,今後の適応拡大が望まれる。

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 血液腫瘍に対しては近年継続的に新規治療薬が開発され,年々使用可能な薬剤が増えている。CD20に対する抗体医薬リツキシマブの導入後,B細胞リンパ腫の治療成績は改善してきた。一方で,リツキシマブを含む化学療法抵抗例の治療が課題となっている。新規の抗CD20抗体医薬であるオビヌツズマブが開発され,2018年,CD20陽性濾胞性リンパ腫に対して承認された。末梢性T細胞リンパ腫は,予後不良な疾患である。有効な治療薬の開発は遅れていたが,近年相次いで新規の治療薬が導入されている。2018年,再発・難治症例に対してロミデプシンが上市された。これらの薬剤により,難治性リンパ系腫瘍の治療成績のさらなる向上・改善が期待される。

膀胱癌・前立腺癌治療薬 三好康秀
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 膀胱癌(尿路上皮癌)に対するセカンドライン治療として,2017年に本邦で免疫チェックポイント阻害剤であるペムブロリズマブが承認され,治療戦略は大きく進歩した。免疫チェックポイント阻害剤は,さらに尿路上皮癌に対するファーストライン治療としての有効性も期待されており,複数の薬剤について第・相臨床試験が進行中である。  転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)に対する治療としてはPARP(poly ADP ribose polymerase)阻害剤の有効性が期待され,第・相臨床試験が進行中である。非転移性去勢抵抗性前立腺癌(nmCRPC)に対する治療としては,apalutamideとエンザルタミドの有効性が第・相臨床試験で認められ,治療戦略が大きく発展している。

癌治療補助薬 池末裕明
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 悪心・嘔吐は,がん薬物療法を受ける患者が最も不快に感じる副作用の一つであり,適切な予防と対策が必要である。アプレピタントは主に高度催吐リスクの抗がん薬投与時に予防投与が推奨されてきたが,近年,カルボプラチンなど中等度催吐リスクのレジメンに対しても,その高い制吐効果を示すエビデンスが蓄積されている。また,抗精神病薬であるオランザピンの高い制吐効果が第・相試験で証明され,最近わが国でも適応が追加された。  より安全で効果的な制吐療法の確立に向けて,制吐効果に関するエビデンスに加え,薬物相互作用や副作用に関する情報の更なる蓄積が望まれる。

抗リウマチ薬 山岡邦宏
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 関節リウマチ(RA)は,炎症に関与するサイトカインや細胞表面分子を標的とした生物学的製剤により治療が飛躍的に向上し,疾患概念も大きく変化した。開発薬剤数や治験の数も少し落ち着きつつあるが,膠原病に類する疾患で最も患者数が多いため,今でも新規薬剤の開発は盛んに行われている。合成抗リウマチ薬ではイグラチモド,生物学的製剤ではIL(interleukin)-6受容体抗体のサリルマブと各種バイオシミラー,抗RANKL(receptor activator for nuclear factor kappa B ligand)抗体のデノスマブ,そして新たな抗リウマチ薬カテゴリーである分子標的抗リウマチ薬に属するトファシチニブとバリシチニブがあげられる。本稿では各薬剤について,治療における位置付けを含めて概説する。

抗アレルギー薬 神尾芳幸 , 室田浩之
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 ヒスタミンはH1受容体に作用することにより,血管透過性亢進・血管拡張・?痒など多彩なアレルギー性皮膚疾患症状を引き起こす。抗アレルギー薬は特異的なH1レセプター拮抗作用に加え,ケミカルメディエーター遊離抑制作用,サイトカイン分泌抑制など,幅広い作用点を持つ抗ヒスタミン薬である。近年,新たな抗アレルギー薬としてデスロラタジン,ビラスチン,ルパタジンが承認された。本稿では,これらの新たな抗アレルギー薬に加え,抗アレルギー薬の効果の特徴と使用法,および使用の際に留意すべき点について概説する。

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 本邦では2009年にDPP-4(dipeptidyl peptidase-4)阻害薬,2014年にSGLT2(sodium glucose cotransporter 2)阻害薬が登場し,2017年9月にその配合製剤が発売された。また,2010年にGLP-1(glucagon-like peptide-1)受容体作動薬の連日製剤が登場し,2015年には週1回製剤も登場した。近々発売予定のセマグルチドは,国内外の第・相試験において,従来のGLP-1受容体作動薬と比較し,HbA1c低下効果や,体重減少効果により有効性のあることが示されており,特に肥満2型糖尿病患者での効果が期待されている。また,従来の超速効型インスリンよりもさらに速効性のある,超々速効型インスリン製剤(Faster-acting insulin aspart)や,基礎インスリン製剤とGLP-1受容体作動薬の配合製剤が海外で承認を得ており,第・相試験の結果が報告されている。その他,注射製剤以外の非侵襲性インスリン製剤,イメグリミン,グルカゴン拮抗薬,グリコキナーゼ活性化薬などの開発が進められており,臨床現場への登場が期待される。

糖尿病合併症治療薬 山原康佑 , 荒木信一
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 糖尿病合併症は有病率の高い疾患であり,新薬の開発にも重点が置かれている。2018年度,新規に上市された薬剤はなかったが,現在も鋭意開発が進められている。特に,糖尿病性腎臓病(糖尿病性腎症)に対する新薬の開発は,第・相臨床試験まで進んでいるものが多数報告されている。その中でも,bardoxolone methyl,SGLT2(Sodium GLucose co-Transporter 2)阻害剤,ミネラルコルチコイド受容体阻害剤,エンドセリン受容体拮抗剤,について概説した。また,糖尿病網膜症・糖尿病性神経障害に対する薬剤で第・相臨床試験まで進行しているものはないので,第・相臨床試験まで進行している候補薬について解説した。

骨粗鬆症治療薬 髙田潤一
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 抗スクレロスチン抗体であるromosozumabは,第・相試験において12カ月後にプラセボ群と比較して新規椎体骨折と臨床骨折を有意に低下させた。その後,両群ともオープンでデノスマブを12カ月間投与した後は,romosozumab/デノスマブ群はプラセボ/デノスマブ群よりも有意に新規椎体骨折のリスクを低下させた。ラテンアメリカでは,臨床骨折と非椎体骨折に有意な低下が認められなかったが,他の地域では有意に低下した。  副甲状腺ホルモン関連ペプチドであるabaloparatideは,高リスクな閉経後骨粗鬆症においてプラセボと比較して,新規椎体骨折,非椎体骨折,主要骨粗鬆症骨折,臨床骨折をいずれも有意に低下させた。また,テリパラチドと比較しても主要骨粗鬆症骨折を有意に低下させた。

抗凝固薬・抗血小板薬 松本直樹
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 ワルファリンの抗凝固効果の高さは相変わらず無視しがたいものがあることが,最近の知見で再確認された現在,直接型経口抗凝固薬(DOAC)の出血の少なさだけでは満たされないアンメットニーズが存在することが明らかとなった。今後の展開はワルファリンの歴史と同様にDOACの使用方法の改善のための研究を継続する一方,新たな抗凝固薬の開発に向かうものと思われる。そのターゲットは第・因子,第・因子,第・因子など,本質的に過剰な出血を伴わないと予想される,やや複雑な凝固経路への介入となることが予想される状況にある。本稿では現状の解説に加え,それらのターゲットを紹介する。

脂質異常症治療薬 蔵野信 , 塚本和久
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 2018年に新たに市場に出た脂質異常症治療薬として,新しいタイプのフィブラート系薬であるペマフィブラートと,アトルバスタチンとエゼチミブの合剤であるアトーゼット(R)があげられる。ペマフィブラートは,その選択的PPARα(ペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体-α)モジュレーターという特性のため,安全性(肝機能障害,腎機能障害)が従来のフィブラートと比較して優れているという特徴を有するとともに,インスリン抵抗性改善作用も期待されている。アトーゼット(R)は,現時点における高LDL(低比重リポ蛋白)コレステロール血症に対する第一選択薬と第二選択薬の配合剤であり,アドヒアランスの向上,医療経済という点で患者に利益をもたらすことが期待されている。

抗不整脈薬 矢崎恭一郎 , 庄田守男
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 非薬物治療の進歩が著しい不整脈の領域において,薬物治療の発展は2000年以降,本邦では進展に乏しいのが現状である。Ivabradine(If遮断薬)は,循環動態に影響を与えずに心拍数を抑制できる薬剤であると言われており,その特性から欧米では心機能低下例への慢性心不全例に適応となっている。本邦ではまだ臨床試験の段階であるが,心不全治療の新たなオプションとして期待されている一方で,その詳細な電気生理学的作用は,あまり周知されていないのが実情である。本稿では主に欧米でのエビデンスを中心に,ivabradineの電気生理学的作用も含め概説する。

心不全治療薬 平山篤志
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 循環器疾患の死因は,急性心筋梗塞によるものが一位であったが,数自体は増加していない。一方,心不全による死亡数は増加しており,やがては第一位になるであろう。この心不全増加の最大の要因は,高齢心不全患者,つまり収縮機能の保持された心不全(HFpEF)の増加である。治療に伴う心不全の問題は,死亡率が高いことと,再入院が多いために医療費が増大することである。これらを解決するような新薬の登場が期待されていたものの,残念ながらこの十年間は新薬が出なかった。しかし,ここ数年で欧米ではイバブラジン(ivabradine),サクビトリル/バルサルタン(sacubitril/valsartan)(ARNI)などの心不全に有効なエビデンスのある薬剤が開発され,使用されるようになった。わが国においても臨床試験後に使用できるようになるであろう。また,糖尿病治療薬として開発されたSGLT(sodium glucose cotransporter)-2阻害薬が,糖尿病に限定されているものの,心不全の予後を改善させる薬剤であることが大規模臨床試験で示された。今後,SGLT-2阻害薬が心不全治療薬となる可能性もある。

高血圧治療薬 樋口公嗣 , 大石充
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 現在使用されている主な降圧薬は,カルシウム拮抗薬,レニン・アンジオテンシン系阻害薬(アンジオテンシン変換酵素〔ACE〕阻害薬,アンジオテンシン・受容体拮抗薬〔ARB〕,直接的レニン阻害薬),利尿薬,β遮断薬などが知られている。しかし,最近は配合剤を除き,新規高血圧治療薬は上市されていない。現在,高血圧に対する開発中の薬剤は,非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬とアンジオテンシン・を標的とした高血圧治療ワクチンがある。欧米で心不全治療薬として使用されているARBとネプリライシン(NEP)阻害剤との合剤においても降圧効果の報告があり,本邦でも臨床試験が進められている。

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 気管支喘息の治療は,長期管理用の吸入ステロイド薬が導入された後に大幅に状況が改善され,これが喘息死患者の減少と密接な関係があるとされている。しかし,既存の吸入薬でも症状がコントロールできない重症喘息患者が存在し,その数は少数ではあるものの喘息総医療費の半分以上を占めるとされ,医療経済的にもその対応は重要である。近年は喘息発症の病態に基づいた抗体製剤の開発が盛んであり,臨床での使用頻度が高まってきた。  慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)領域の治療薬では,新たな吸入薬が市販される予定である。

消化器疾患治療薬 西原利治
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 2018年10月に「Clostridiodes(Clostridium)difficile感染症診療ガイドライン」が発刊された。これは,クロストリディウム・ディフィシルによる重篤な腸管感染症に新たな治療の均てん化を可能とする重要な取り組みである。それに併せて新たな機序や適応を持った薬剤も上市され,重篤なクロストリディウム・ディフィシル感染症診療に変革の到来が期待される年となった。炎症性腸疾患に対する新たな薬剤の製造承認や適応追加も続いている。B型肝炎ウイルスに対する新規核酸アナログやC型肝炎ウイルスに対するDAA(Direct Acting Antivirals)製剤の長期処方が可能となる一方,非代償性肝硬変やDAA製剤の前治療歴のあるC型肝炎ウイルスに有効で長期投与の可能な新規DAA製剤が上市されるなど,ウイルス肝炎の予後の改善に向けた取り組みも着々と進捗している。

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 この分野で新規に承認/上市された薬剤は,2014年のベルソムラ(R)であり,それ以降はSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)や非定型抗精神病薬の適応拡大のみであった。睡眠薬ではベルソムラ(R)と同様の作用機序を持つDORA(dual orexin receptor antagonist)やSORA(selective orexin receptor antagonist)の臨床試験が次々と行われている。

抗てんかん薬 山本吉章 , 井上有史
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 2016年に市販されたラコサミドとペランパネルは,小児治験を実施中で,4歳以上の小児部分てんかんに対する適応拡大を目標としている。現在治験中のミダゾラムの頬粘膜投与製剤であるbuccolamは,在宅で使えるレスキュー薬として有益性が高い。希少てんかんに関しては,結節性硬化症のてんかんに対する治療薬としてエベロリムスが承認申請中であり,Dravet症候群とLennox-Gastaut症候群の治療薬としてfenfluramineの治験が計画されている。部分てんかんの付加治療薬として,brivaracetamとpadsevonilが治験中であり,今後も難治てんかんの治療の選択肢が広がることに期待したい。

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 第二世代抗精神病薬は,統合失調症に対する薬物療法の第一選択薬として推奨されている。第二世代抗精神病薬は,第一世代抗精神病薬と比較して錐体外路症状などの有害事象は軽減したが,体重増加や糖・脂質代謝異常などの代謝性有害事象が新たな問題となっている。2006年に上市されたアリピプラゾールは代謝性有害事象に対する安全性・忍容性は高いが,ドパミンD2受容体のパーシャルアゴニスト作用によると考えられるアカシジア,不眠,悪心・嘔吐などの有害事象が報告されている。そこで,有効性が高く,より安全性・忍容性に優れた新規抗精神病薬として,ブレクスピプラゾールが2018年に上市された。ブレクスピプラゾールはSDAM(Serotonin-Dopamine Activity Modulator)という新たなカテゴリーの抗精神病薬である。本稿では,ブレクスピプラゾールについて概説する。

認知症治療薬 池内健
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 現在は4種類の認知症治療薬が上市されており,それぞれの特徴を活かした認知症治療が行われている。これら認知症治療薬は症候改善薬であり,脳内の病理変化の進行を止めることは期待できない。アルツハイマー型認知症の分子病態を標的とした疾患修飾薬の開発が進んでおり,認知症患者やその前駆期の方を対象とした臨床試験が活発に行われている。主力の疾患修飾薬は,抗アミロイド抗体薬,βセクレターゼ阻害薬,抗タウ抗体薬である。疾患修飾薬を用いた治験は早期介入が重要であり,軽度認知障害やプレクリニカル(前臨床)期の被検者を対象とする治験デザインへとシフトしている。本稿では,認知症治療薬の最近のトピックスと,現在,治験が進行している疾患修飾薬について展望する。

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 パーキンソン病治療薬の領域では,2018年6月にラサギリンメシル酸塩(アジレクト(R))が上市された。本剤は先発のセレギリン塩酸塩(エフピー(R))と同様,選択的モノアミン酸化酵素B阻害薬であるが,化学構造にはアンフェタミン骨格を持たない。適応はパーキンソン病における早期の単独療法と,進行期のレボドパ配合薬との併用療法であることから,効能・効果には「パーキンソン病」と記載される。服用方法は漸増不要の単一用量で,1日1回内服する簡便な薬剤である。国外では既に10年余りの使用経験とエビデンスの蓄積があるが,本邦では2018年,ようやく臨床に供された。本稿ではラサギリンメシル酸塩の薬理学的特徴を示し,国内で行われた早期パーキンソン病および進行期パーキンソン病を対象とした,プラセボ対照二重盲検比較試験と,その後引き続き行われたオープン長期試験の結果を概説する。また,パーキンソン病治療薬には既に本邦で臨床試験を終了し,申請準備中の薬剤がいくつか控えている。これから上市されるであろうこれらの薬剤の紹介に加え,これからのパーキンソン病治療薬開発の方向性についても触れる。

眼科治療薬 篠﨑寛一 , 北原隆志
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 眼科領域の治療は年々進歩し,近年では抗VEGF(vascular endothelial growth factor)抗体などの抗体製剤や,世界初のアプタマー医薬品であるマクジェン(R)といった新規作用機序の医薬品開発や再生医療の研究が進んでいる。2017年4月以降は,承認に至った新規薬剤はないが,2016~2017年に承認された薬剤については,その効果や安全性に関する情報が収集されつつある。一方,国内外における研究開発パイプラインに目を向けると,第・相段階にある薬剤は少ないものの,第・相,第・相段階の薬剤が多数あり,今後の開発状況が注視される。

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 排尿障害治療の原則は,・排尿筋収縮力の増強,・尿道抵抗の減弱,の2点である。治療薬として,前者にはムスカリン受容体活性薬やコリンエステラーゼ阻害薬が含まれ,後者には交感神経系α1受容体遮断薬,前立腺肥大症(BPH)のみを適応とする男性ホルモン5α還元酵素阻害薬,Phosphodiesterase type5 inhibitor(PDE5阻害薬)が含まれる。PDE5阻害薬タダラフィル(シアリス(R))は勃起障害に対しての適用であったが,2014年4月にわが国で「前立腺肥大症に伴う下部尿路症状」に対して保険適用となった。その後,韓国で開発されたPDE5阻害薬udenafilが,「前立腺肥大症に伴う下部尿路症状」を目的として臨床開発段階にある。α1遮断薬で治療中の前立腺肥大症に伴う排尿障害を有する日本人患者を対象とし,タダラフィルを加えた併用治療の安全性と有効性について検討するための市販後調査が進行中である。  蓄尿障害治療の原則は,・排尿筋過活動の抑制,・排尿筋弛緩機構の増強,および・尿道抵抗の増強,がある。・,・は過活動膀胱や排尿筋過活動に対する治療法であり,第一選択は抗コリン薬であるが,2011年に世界で初めて交感神経系β3受容体活性薬(ミラベグロン;ベタニス(R))がわが国で認可され,その後は世界30カ国以上で認可された。  交感神経系β3受容体活性薬ビベグロンが臨床試験を終了し,「過活動膀胱」に対する健康保険適用となった(ベオーバ(R))。抗コリン薬などの従来治療法に抵抗性の「神経因性過活動膀胱」および「難治性特発性過活動膀胱」に対して,A型ボツリヌス毒素の膀胱排尿筋内注射法が,2011年に米国で保険適用となり,欧州でも承認されているが,わが国でも臨床試験が開始される予定である。デスモプレシン口腔内崩壊錠は小児の「夜尿症」に対して承認されているが,「夜間頻尿」に関しては臨床試験段階である。

オーファンドラッグ 外山聡
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 「新薬展望2018」以降,2018年9月までに承認された希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)は,製造販売承認事項一部変更(一変)承認も合わせて35件,延べ54品目であった。医薬品の承認件数は2014年以降減少傾向にあるが,オーファンドラッグは,承認件数が横ばいであるため比率が高まっていた。ただし,新有効成分医薬品のオーファンドラッグの承認件数・割合は減少していた。  抗悪性腫瘍用薬の既承認薬がオーファン指定を受け,新効能等で承認される事例が増えつつある。

付 資料・薬価基準新規収載薬一覧

■索引

基本情報

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医薬ジャーナル
55巻13号 (2019年1月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0287-4741 医薬ジャーナル社

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