医薬ジャーナル 55巻2号 (2019年2月)

連載 感染症診断と病理(20)

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 胃生検標本にみつかる病原体としては,ピロリ菌(Helicobacter pylori)の頻度が圧倒的に高い。ピロリ菌の病理所見はすでに総論でも繰り返し紹介した。本稿では,あらためてピロリ菌感染の病理所見をまとめる。頻度は低いが,大型らせん菌のHelicobacter heilmannii感染症と胃梅毒についても紹介する。次回は,主として十二指腸に感染する病原体,寄生虫類について述べる。巻頭図に,ピロリ菌感染胃粘膜におけるアレルギー機序の存在を示す。

連載 臨床薬学のための病態生理(11)

各論 各種病態と薬物療法のターゲット

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 認知症とは,「記憶障害などの認知機能の低下により,日常生活や社会生活に支障をきたすような状態」を言う1)。一般的な認知症の症状は,記憶障害,見当識障害,判断力低下,言語障害(失語),失行,失認などの中核症状と,不安,抑うつ,興奮,攻撃性,不眠,幻覚,妄想などの行動・心理症状(behavioral and psychological symptons of dementia:BPSD)とされる。また,「年齢に比例して正常とは言えない認知機能低下はあるものの,認知症の診断基準を満たさない臨床症候群」を軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)と定義している。認知症をきたす疾患としては,アルツハイマー病(Alzheimer disease:AD)が最も多く,過半数を占める2)。的確な診断は,病態に応じた治療やケアの方針の決定,経過の予測や家族への説明,安心感につながる。また,臨床診断と病理診断の乖離の減少,病態の解明や根本治療薬の開発につながると考える。 【診療/治療ガイドライン】 ・日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン2017」3)

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 B型肝炎ウイルス(HBV)キャリアや既往感染者へ免疫抑制または化学療法を開始する際に,HBVスクリーニングを実施することが推奨されている。HBV再活性化に注意を要する医薬品は多数あり,中でもステロイドは使用法や使用期間,使用診療科がさまざまであること,処方枚数が多くスクリーニング実施状況の随時調査が困難なことなどから,対策が不十分な状況にあった。米国消化器病学会(American Gastroenterological Association)ガイドラインのリスク分類では,ステロイドの投与日数が考慮されている。そこで,リスクの高いステロイド長期使用患者を簡便に抽出し,スクリーニング実施が確認しやすい環境整備を行ったので報告する。

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 クリニカルパスは治療の標準化をもたらし,各職種が連携することで治療の推進とバリアンス分析による質の改善が図れるツールである。外科系疾患では比較的作成しやすいが,内科系疾患では難しいとされている。  日本人の死因第3位である肺炎は,高齢になるに従って患者数が増加する傾向にある。厚生中央病院(東京都目黒区)は,国が推進している地域包括ケアシステムにおける地域中核病院であり,肺炎患者は内科系搬送患者数で上位になっている。今回,夜間当直体制の問題解決と治療の標準化のため高齢者肺炎患者のクリニカルパスを作成したので報告する。

連載 患者のQOL向上と薬剤師の関わり PARTⅡ.服薬指導と病棟活動(130)

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 脳梗塞は罹患患者が多く,治療後は早期の社会復帰を目指し,エビデンスに基づいた薬剤管理を行う必要がある。脳梗塞の治療にはハイリスク薬を使用することが多く,薬剤管理内容が多岐にわたるため,薬歴記載時間は長くなる傾向にある。また,薬剤師の知識・経験によって指導内容や薬歴記載内容に差が生じるため,薬剤管理指導業務を標準化する必要があると考えた。そこで筆者らは,脳卒中治療ガイドライン2015に基づき,テンプレートを作成した。今回,このテンプレートの使用による薬歴記載時間の短縮,ならびに業務の効率化・個人の薬剤管理における質の向上の影響を検討したため,その結果について報告する。 脳梗塞,薬剤管理指導,テンプレート

連載 副作用・薬物相互作用トレンドチェック

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〔今月の注目論文のポイント〕 1.英国の医療情報データベースを用いたコホート研究によると,ARB(アンギオテンシン受容体拮抗薬)と比較して,ACE(アンギオテンシン変換酵素)阻害薬では肺がん発症のリスクが高かった。 2.米国における無作為化比較試験によると,小児の抗精神病薬の使用による総体脂肪量やインスリン感受性への影響は,アリピプラゾールやリスペリドンよりもオランザピンで大きかった。 3.デンマークの医療情報データベースを用いたコホート研究によると,ジクロフェナクによる心血管系イベントのリスクは,イブプロフェン,ナプロキセン,アセトアミノフェンよりも高かった。 4.健康成人を対象とした試験によると,クラリスロマイシンの併用によりシンバスタチンのAUC(血中濃度?時間曲線下面積)が約4倍に上昇した。 5.西オーストラリアの医療情報を用いた症例調査によると,フルボキサミンを併用している場合,クロザピンの投与量が比較的少なくても十分な血中濃度が得られていた。 6.米国オンタリオ州の医療情報データベースを用いた調査によると,抗うつ薬,ビスホスホネート系薬,プロトンポンプ阻害薬の処方のそれぞれ46%,14%,45%が漫然処方であった。 Key Words● 肺がん,代謝機能,心血管系,代謝阻害,漫然処方

連載 医薬品情報(DI)室より 注目の新薬情報〈37〉

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製剤の特徴  「エンタイビオ®点滴静注用300mg」(以下,本剤)は,腸管選択的に免疫反応を調節する新しい作用機序を有する生物学的製剤で,中等症から重症の潰瘍性大腸炎またはクローン病に対する治療薬として,現在60カ国以上の国で承認を取得し,2018年5月時点で20万人/年以上の患者に使用されている。  本剤は,炎症を起こしている腸管組織に炎症性細胞の一種であるTリンパ球の遊走を阻害することで炎症を軽減する,腸管選択的なヒト化抗ヒトα4β7インテグリンモノクローナル抗体である。具体的には,ヒトリンパ球上のα4β7インテグリンと消化管粘膜に発現する粘膜アドレシン細胞接着分子-1(MAdCAM-1)との接着に拮抗することで,炎症を起こした腸管組織へのTリンパ球の遊走を抑制し,消化管炎症を抑制する。  また,他のα4またはβ7インテグリンの二量体には結合せず,中枢神経や皮膚等の多くの臓器に発現する血管細胞接着分子-1(VCAM-1)との接着には拮抗しないことから,全身的な免疫抑制をきたすことなく腸管へ選択的に免疫調節作用を発揮する。

連載 編集長VISITING(423)

論壇

平成薬事回想録 政田幹夫
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 平成時代も間もなく終わりを告げようとしている。この30年間を振り返ると,薬学教育・病院薬剤師・薬局薬剤師等,薬学の世界は激動の時代であった。筆者自身も薬系大学薬剤学教官として昭和の時代を過ごした後,平成元年(1989年)に京都大学胸部疾患研究所附属病院薬剤部長,平成3年(1991年)には福井大学病院教授・薬剤部長,平成27年(2015年)になると大阪薬科大学学長として,薬学教育・薬剤師業務を発展させ,社会に貢献すべく激動の平成時代の最先端を歩んできた。この度の世代交代に際し,平成を回顧して次の世代に飛躍する足掛かりとしたい。

メディカルトレンド 学会・ニュース・トピックス

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脳心血管抗加齢研究会2018(第15回学術大会)が,平成30(2018)年12月14・15日の2日間,梅田スカイビル(大阪府大阪市)で開催された。大会長は広島大学原爆放射線医科学研究所/広島大学病院未来医療研究センター教授の東 幸仁氏,大会テーマは禅語にならい「日々是好日~脳心血管加齢を処方す~」とし,“素晴らしい日常のために,脳心血管疾患を制圧する”という命題を掲げた。また,本大会は日本抗加齢協会第3回学術フォーラムと合同で開催され,臨床医や研究者だけでなく,企業の学術担当者および商品開発担当者などが一堂に会し,交流を深める場となった。ここでは近年のトピックスである「腸内細菌」と「n-3系脂肪酸」に関するシンポジウム2題を紹介する。       

メディカルトレンド・姉妹誌から
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アレルギー・免疫(Vol.26 No.2)   特集・スギ・ヒノキ花粉症 最新の話題 CLINICAL CALCIUM(Vol.29 No.2)   特集・動脈硬化とカルシウム~カルシウムパラドックスの謎に迫る~ 血液フロンティア(Vol.29 No.2)   特集・Muse細胞 -現状と将来展望-

MONTHLY PRESS

特集 加速する核酸医薬開発

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 核酸医薬の開発が加速している。1998年に世界初のアンチセンス医薬のホミビルセンが米国食品医薬品局(FDA)に認可され,2004年にはアプタマー医薬のペガプタニブ,2013年にはミポメルセンが認可されたが,15年間で3品目に限られていた。しかしながら,2016年には,デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬のエテプリルセンおよび脊髄性筋萎縮症治療薬ヌシネルセンの2品目,2017年にはアジュバント(CpG DNA)含有B型肝炎ワクチンHeplisav-B,2018年には世界初のRNA干渉治療薬パチシランおよびイノテルセンの2品目(いずれもトランスサイレチン型家族性アミロイドーシス治療薬)が認可され,約2年という短期間で合計5品目の核酸医薬が上市された。本特集では,これら種々の核酸医薬の開発の現状と展望を各専門の先生方にご紹介いただくことを企画した。本稿では本特集の全体像をオーバービューする。

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 日本核酸医薬学会はアンチセンスDNA/RNA研究会の活動を継承し,核酸医薬に関する研究・教育を推進するとともに,産官学が一体となりわが国における核酸医薬の創出に寄与することを目的として,2015年4月に発足した。現在,一般会員346名,特別賛助会員2社,賛助会員27社となり,2018年6月には日本学術会議協力団体に認可された。同年7月の第4回年会には600名以上が参集し,化学,生物,DDS(drug delivery system),臨床,レギュラトリーサイエンスの5つの学術分野に加え,分野を横断するさまざまな課題が討論された。わが国では現在,複数の臨床試験が進行中であり,本学会の活動を通して更なる核酸医薬の誕生が期待される。

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 核酸医薬の実用化において解決すべき課題は,核酸誘導体の生体内における安定性の向上,デリバリー技術の確立,副作用の軽減など多岐にわたる。これらの課題を解決するための手法の一つとして,核酸リン原子の化学修飾がある。核酸のリン酸部位を修飾すると,確実に分解酵素耐性を獲得できる反面,リン原子上に不斉点が発生し,合成されるオリゴマーは立体異性体の混合物となる。リン原子修飾核酸類縁体は,リン原子の絶対立体配置によって物理化学的性質や生化学的性質が大きく異なるため,それらを立体選択的に合成することは極めて重要である。筆者らは,これまでにオキサザホスホリジン法によるリン原子修飾核酸の立体選択的合成法を開発してきた。本稿では,このプラットフォーム技術の概要と,この技術を元に設立されたWave Life Sciences社によるリン原子の立体化学を厳密に制御したリン原子修飾核酸医薬の開発について概説する。

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 アンチセンス核酸(antisense oligonucleotide:ASO)や2本鎖short interfering RNA(siRNA)は,生体内で遺伝子発現調節を行える有効な薬剤として開発が進められてきたが,標的臓器への到達量が少ないことや副作用のあることが,臨床応用を妨げてきた。我々は第3の新規核酸医薬として,ヘテロ2本鎖核酸(heteroduplex oligonucleotide:HDO)を開発した。α-tocopherol結合型のHDO(Toc-HDO)は,生体内でASOより高い標的臓器到達および遺伝子発現抑制効果を有し,肝毒性等の副作用は軽減が期待できる。HDOはペプチド・抗体など,さまざまなリガンドを結合できることが特徴で,修飾核酸等を合わせた工夫によりさまざまな標的や効果が期待でき,特に神経難病治療を目指して開発を推進している。

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 Short interfering RNA(siRNA)は,RNA干渉により任意の遺伝子発現が抑制可能な機能性核酸である。多くの難治性疾患に対する新規治療モダリティとして魅力的であるが,単独では組織移行能を示さないことから,医薬としての応用には目的細胞へ選択的かつ効率的にsiRNAを送達する技術(drug delivery system:DDS)の開発が不可欠である。これまでに脂質,ポリマーやリガンド分子コンジュゲート等の多様な分子設計・マテリアル開発がなされてきており,複数の製剤が臨床試験に進んでいる。2018年8月には世界初のsiRNA医薬品が認可され,まさにsiRNA医薬時代の幕開けとなった。本稿では,近年のsiRNAのDDS開発状況を概説するとともに,今後の課題や展望について述べる。

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 CpGモチーフを含むDNA,いわゆるCpG DNAは,病原微生物に共通する分子パターンを認識するパターン認識レセプターの一種であるToll様レセプター(TLR)9のリガンドであり,各種サイトカインやインターフェロン産生を誘導する。この自然免疫を活性化する作用を,免疫アジュバントとして,がんや感染症に対する治療へ利用する試みが進められている。これまでに,構造的特徴や生理活性の異なるいくつかのクラスのCpG DNAが開発されている。最近,B型肝炎に対するワクチン製剤として実用化されるに至った。CpG DNAの作用は,標的部位への選択的なデリバリーにより増強可能であることから,TLR9を発現する細胞への種々のデリバリー方法が報告されている。

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 mRNA医薬とは,メッセンジャーRNA(mRNA)を体内に直接投与して,mRNAによってコードされたタンパク質を標的細胞で発現させることで治療を行う医薬品である。近年では世界的に研究開発が活発化しており,近い将来の実用化が期待される。mRNAは核への輸送が不要で,ゲノムへの挿入変異リスクも無いため,安全性に優れる一方,mRNAは生体内では極めて不安定な物質であり,効率の良い生体内投与にはDDS(ドラッグデリバリーシステム)技術などの応用が不可欠である。mRNAは原理的にどのようなタンパク質でも産生することができ,その適応範囲は広いが,特に酵素補充療法や成長因子徐放などが最初の適応として有力視される。将来的には再生医療やゲノム編集治療への応用も期待される。

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 20量体程度の化学合成したオリゴヌクレオチドは,細胞内で相補的な配列を持つメッセンジャーRNA(mRNA)あるいはpre-mRNA(mRNA前駆体)に結合してその機能を制御することができ,近年核酸医薬として応用されている。エテプリルセン(EXONDYS 51®)は重篤な遺伝性筋萎縮症であるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy:DMD)に対する核酸医薬品として2016年に米国で承認された。エテプリルセンはDMDの異常なジストロフィンmRNAのエクソン51をスキッピングし,ジストロフィンタンパク質を発現させるものである。本稿では,最近の核酸医薬を用いたDMD治療薬の研究開発について述べる。

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 脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する画期的な治療法として,核酸医薬品であるヌシネルセンが2017年に日本でも薬事承認された。ヌシネルセンは脊髄性筋萎縮症患者でSMN1変異,かつSMN2のコピー数が1以上を有する患者に適応を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。従来薬物治療のなかったSMAに対する新規治療法として期待がとても大きいものの,市販後も治療体制においてさまざまな課題が存在している。

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 近年,難治性疾患や遺伝性疾患に対する新しいモダリティ(治療手段)として,核酸医薬が注目を集めている。核酸医薬の臨床開発は,アンチセンスやsiRNA(small interfering RNA)を中心に大きく進展している。一方で,核酸医薬の品質・安全性評価については,規制当局が開発品目に応じて個別に対応しているのが現状であり,核酸医薬に特化した国際的なガイドラインは存在しない。このような背景から,核酸医薬の規制整備に向けた議論が活発化しており,核酸医薬の特徴を踏まえた考慮事項が整理されつつある。本稿では,規制の観点から重要と考えられる核酸医薬に特有の性質を概説した上で,規制整備の現状ならびに品質・安全性評価の考え方を紹介したい。

2019年3月号特集内容予告

基本情報

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医薬ジャーナル
55巻2号 (2019年2月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0287-4741 医薬ジャーナル社

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